01 異世界に召喚されたようです
懲りずに新作を書きました。
この作品も応援をよろしくお願いします。
「ふあ~」
「もう、兄さんそろそろ帰りますよ」
「わかっちゃいるけど…眠すぎて動けん…」
「昨日の夜中までゲームしてるからです!」
俺は柊 卓。 ごく普通の高校二年生。
一方、俺を叱っているのは双子の柊 有栖。 不思議の国のアリスを彷彿とさせる髪型と容姿の可愛さで人気があるのだとか。
さっき言ったように俺達は双子なのだが、有栖は俺を兄さんと呼んでいるので、妹と言う扱いになっているし、容姿すら似ていない。。
しばらく有栖に怒られた後で、なんとか身体を起こし、帰宅の準備をする。
「しかし、私達は双子なのになんでこうも性格が違うんですかねぇ」
「それを言うなよ…。 さて、帰ろうか」
帰宅の準備を終えて、有栖と帰ろうとした時だった。
先に一人の男子生徒がドアを開けようとしたが…。
「あれ、ドアが開かない?」
「え…!?」
ドアが開かなくなっている事に気付き、他のクラスメイトも驚きを隠せなくなる。
「お、おい、こっちも開かないぞ!!」
「ドアだけじゃない! 窓ガラスも開かないし、割れない!!」
どういう訳か教室内に閉じ込められて、クラスメイトが騒ぎ出した。
ドアが開かないだけでなく、窓ガラスも開かなくなっており、ガラスを割ることが出来なくなっていた。
「兄さん…! 空が…!!」
「え、暗くなって…!?」
有栖が驚愕の表情を浮かべながら外を指さしていたので見てみると、なんと外が真っ暗になっていた。
しかも、雲一つ見えず、ただ暗黒に塗りつぶされたような状況だった。
その時…。
「え…、足元が…!?」
「ま、不味い、これは…!!」
「に、逃げろー!!」
「だ、ダメだ、教室中が光に包まれて…!!」
クラスメイトは足元から段々と強くなっていく光にどうしようもない位に混乱している。
「に、兄さんっ!!」
「離れるなよ、有栖!!」
逃げることは出来ないと判断した俺は、有栖を抱き寄せる。
光がさらに強くなり、余りの眩しさに目を閉じた。 そして、何か引っ張られる感じがしながらも徐々に意識を失っていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…さん、兄さん!!」
「…む、ぅ…」
しばらく意識を失っていたが、不意に有栖の声が聞こえてきた。
目を開けた瞬間、俺は固まった。
中世風の作りの部屋に、俺と有栖はいたからだ。
「兄さん、あぁ…良かったぁ」
有栖が、俺が起きた事に安堵し、俺も有栖が側にいたことに安堵したが、すぐに有栖にここは何処なのかを聞いてみた。
「有栖、ここは?」
「私も分からないです。 さっき目が覚めたばかりなので…」
「だけど、この部屋の構造なんか見てたら…」
「はい、間違いなく私達が通っていた学校ではないですね」
辺りを見回しても、やはり中世風の部屋であることに変わりはない。
そして有栖の言うように、ここは俺達の学校ではない。
となると、俺達は…。
「#%*◇■●△※%」
「「はい!?」」
「…!!」
突然、部屋にドレス姿の女の子が出て来て、何かを言ってきたが、何を言ってるのか分からなかった。
英語でも、中国語でもない別の言語か?
「■◇%■◇%※*#△」
「◇%※◇■」
言葉が通じない事に気付いた女の子は、後から来たメイドさんに何かを伝えると、すぐに部屋を出ていく。
「何なんだ?」
「さぁ…」
俺と有栖は、呆然としながらお互い顔を見合せる。
しばらくすると、メイドさんが何かを持ってきた。
(プリン…?)
メイドさんが持ってきたのは、プリンだった。 そのプリンの入った器を有無を言わさずに俺達に渡してきた。
「食べろって事でしょうか?」
「たぶんな。 食べてみよう」
せっかくなので、俺達はプリンを食べてみた。
「美味しい…」
「ああ、すごく美味いな」
予想以上に美味しかったので、食が進み、全部食べられた。
「ごちそうさまでした」
俺と有栖が同時に器をメイドさんに返す。
すると…。
「どういたしまして」
「「!?」」
急に言葉が通じた事に、俺達は驚くしかなかった。
今まで言葉が通じなかったのが、プリンを食べた後、言葉が通じるようになったのだから。
「よかった。 効果は抜群だったね。 これでお互いの言葉が分かるようになったよ」
「あのプリンで…ですか?」
「うん。 あ、私はアリア・リム・エルネシア。 今はこの屋敷に住んでるけど、エルネシア王国の第三王女だよ」
この部屋、アリア王女の屋敷の部屋の一つだったのか…。
「アリア様直属のメイド、クリスタと申します」
「あ、俺は柊 卓です」
「私は柊 有栖、双子の妹です」
「スグルお兄ちゃんとアリスお姉ちゃんだね。 宜しくね」
自己紹介が終わった所で、俺はふと気になった事をアリア王女に聞いてみた。
「さっき、エルネシアという聞き慣れない国の名前を聞きましたが、もしかして…?」
「そうだよ。 この世界はスグルお兄ちゃん達から見れば『異世界』なんだよ」
信じたくなかった。
夢であってほしかった。
しかし、俺と有栖が異世界に転移してしまったという事実が、アリア王女の口から発せられたのだった。
それを聞いた俺達は、暫く時が止まったように固まった。
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