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追憶令嬢のやり直し。  作者: 夕鈴
二年生

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兄の苦労日記22 

妹の災厄が入学してきた。ルメラ男爵領のことはステラが調べていた。


「エイベル様、これを」


ステラから渡されたのは妹の治癒魔法の付与された魔石だった。慣れた魔力なら魔石の作成者がわかる。


「ルメラ男爵の懇意にしている商人から買い取りました」


妹はルメラ男爵夫人に魔石を贈っていた。公爵令嬢の贈り物を売るとは・・・。妹が知れば乗り込むだろう。ルメラ男爵夫妻は不仲である。妹がどんなに親身になって治療しても無駄だろう。他家の夫婦問題に口を出すつもりはない。


「レティシア様に伝えません。」

「ステラ、あいつのために動いているのは感謝する。危険なことには首を挟むな。最優先はステラの安全だ。お前に何かあればレティシアが泣く。」

「気をつけます」


ステラの去っていく背中を見送った。ステラにはうちから武芸に優れる侍女を妹がつけさせた。ステラとは派閥が違うがグレイ伯爵夫妻は二人の友情を暖かく見守っている。

ステラのためにと願う妹の頼みを快諾していた。妹はうちの派閥に入れるつもりだったがステラが望まなかったのでやめた。ステラにとって今のままのほうが動きやすいんだろう。

それに派閥は違ってもビアード公爵令嬢のお気に入りに手を出す令嬢は少ないだろう。


***



妹は海の皇族の接待でクロード殿下と共に学園を休んでいた。

ルメラは妹に嫌がらせをされていると騒いでいる。見回りをして、マールとルメラが抱き合っているのはよく見る光景だから気にしない。ルメラは妹の不在を知らないようだ。

妹は下位貴族や平民、武門貴族には好意的に見られている。

妹に指導された生徒達に、成績を抜かれたやつらは妹を逆恨みしている。

下賤な者に利用されるビアード公爵令嬢と。


「エイベル様、レティシア様が・・・」


俺への無礼を忘れたルメラに腕を掴まれそうになり躱した。


「私が相応しくないって。それに・・・」


うるんだ瞳で見つめられても嫌悪しかない。

妹がこいつのためにどれだけ心を砕いたか・・・。男爵令嬢として相応しくないのは誰が見ても明らかだ。相手はせずに立ち去った。

頭のおかしいやつにかける時間は無駄だ。妹に近づけないようにだけ手を回せばいい。この精神異常者の相手は妹には無理だろう。同情して面倒を見ると言い出したら最悪だ。

学園では妹がルメラを虐めているという噂が囁かれたが、信じてないものが大半だった。ルメラが妹の悪評を仕立てあげようとしていた。ロキを洗脳して働かせていると騒いでいる。

ロキを連れて歩く俺に視線が集まっていた。


「ロキ、帰るか?」

「いいえ。僕にお任せください。僕はお嬢様達さえ認めていただければ充分です」


頼もしく笑うロキを見守ることにした。いつの間にかロキへの視線がやんでいた。


***

接待が終わりクロード殿下が生徒会室に顔を出した。


「レティシアは休ませてる。接待はよく務めていた。今回の接待で倒れなかったのは評価に値するよ。エイベル、労ってやれ」


妹は何をしたんだろうか。クロード殿下が満足しているならよく務めたんだろう。クロード殿下にとって妹は有能な部下であり問題児だ。

副会長から留守の間の報告を聞き、殿下の周りの空気の温度が下がった。

ルメラの件だろう。生徒会役員の悪評は殿下がレオ様の次に嫌いなことだった。


「レティシアが留守でも広まっているのか・・・。面白がって助長させてる生徒もいるな」

「うちの妹は悪評になることはしません。現状を知れば自身で解決に駆けまわると思いますが、兄としてはルメラの取り巻きの男に危害を加えられるのは避けたいので、関わらせないことを望みます。」

「俺も賛成です。ルメラ嬢は危険です。今回は役員としてではなく生徒として保護したほうがいいと思います。」

「当分は見回りは下級生と令嬢は一人で回るな。一番言い含めたい役員はこの場にいないが。レティシアとルメラ嬢の件はエイベルに一任する」

「ありがとうございます。」


これで妹は生徒会として動く必要はなくなった。

ロキやステラ達に妹の傍を離れないように頼んでおくか。

妹には関わるなとは伝えてある・・。避けられないなら人目のある場所で関わるように言っておこう。ルメラがなにかしでかして、生徒が助けを求めるのは妹の可能性が一番高い気がしてならなかった。


***


やはり妹がルメラに関わらずに過ごすのは無理だった。

ルメラを訪ね、言い負かしたようだ。アロマが駆けつけて仲裁したか…。


「お兄様、自室に帰ったらカードにこのメッセージをお願いします」


妹は俺の邪魔にならないように令嬢達を纏めている。令嬢関係は妹に従うことにしている。妹が入学してからは令嬢達に追いかけられないのは感謝している。


「エイベル、聞いたよ。お前、恋人の条件を公言したんだって?」

「は?」

「令嬢達が盛り上がっていたよ。貞淑でレティシアに認められる恋人ができるといいな」

「すでに気になる相手はいるのか!?」


うちの妹の仕業だとわかり放課後に問いただした。


「令嬢達がエイベルに迫ることはありません。当分期待される視線を向けられることだけ我慢してください」


俺がルメラに迫ったという噂を消すために必要だから我慢しろと窘められた。放っておくことはできないらしい。仕方がないから友人達の揶揄いに耐えるか。


「エイベル、好きな方ができたら教えてください。邪魔はしませんが令嬢達に手を出されないように手を回します」


「お前は自分の心配だけしていればいい。婚約者の選定は父上に任せてある」

「お兄様は恋愛に向かなそうなので私が作戦を考えてあげますから安心してください」


パチンとウインクして俺で遊ぼうとする妹は放っておいて仕事をするか。

ステラによると俺とルメラの噂は広まる前にレティシアが動いたらしい。

ルメラは色んな男に近づいている。妹はルメラを不愉快に思う令嬢達が余計なことをしないように駆けまわっている。ルメラと接触しないならいいか。

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