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追憶令嬢のやり直し。  作者: 夕鈴
二年生

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元夫の苦難7

朝起きると集中して魔石を作る。今まで魔石を作るときは魔力をこめるだけで特に意識していなかった。魔力の流れを意識すると純度が上がるけどレティシアの魔石にはまだまだ敵わない。集中して作るのは疲れるけど、強くなるために必要だし、この後会える彼女のことを思えば疲れは吹き飛び体は軽くなる。

早朝の学園は生徒が少ない。

2年1組に足を運ぶとレティシアは真剣な顔で本を読んでいる。パタンと本を閉じ顔を上げたレティシアに声を掛けると挨拶をかえされた。今まではギリギリの時間に登校ていたけど、朝一番に彼女の挨拶を受けられるなら早起きも悪くない。今朝作った魔石を渡した。授業と訓練以外の魔法の行使は禁止でも、彼女に咎められることはなかった。


「これを」

「マール様、生徒会でお会いした時で構いません」

「昨日よりうまくいったから見てほしくて」


いつもと同じ言い訳をすると、真剣な顔で魔石を見てニコッと笑った。時々見せる無邪気な仕草が可愛くてたまらないず顔が緩んでニヤケそうになるのを抑えて、平静を装う。


「昨日よりも純度が上がってます。魔力操作はエイベルよりもお上手ですわ。お疲れ様でした」


お疲れ様と微笑みかけられると疲れは一気に吹き飛ぶ。ビアードの騎士が強いのは彼女のおかげもあるんだろう。


「ありがとう。これあげるよ」

「いえ、いりません」

「また」


断る彼女の言葉は聞こえないフリをして魔石を机の上に置いて立ち去る。魔石を贈るのは特別な相手だ。所有印代りの魔石を婚約者に送り身に付けさせる生徒もいる。彼女がたくさんの人間から魔石をもらっているのは知っている。俺だけ受け取ってもらえないのは悔しいから強引に押し付ける。もし彼女が一つでも大事にしてくれれば夢のようだけど・・。

教室に入るとほとんどの生徒が登校していた。


「リオ、どうだった?」

「彼女に騎士志望の生徒が集まる理由がわかった。あの笑顔で労らわれるなら苦労が吹き飛ぶ。いずれはレティシアの純度を超えたいけどまだまだだ」


しばらくすると彼女に魔石の合格をもらってしまった。

笑顔の称賛は嬉しかったけど会いに行く口実がなくなった。昼休みに1年3組で食事を共にしても、俺と彼女の会話は少ない。人気者のレティシアは後輩やロキと話してばっかりで、グレイ嬢が一緒のため教室に送ることもできない。朝の時間は二人の世界だったのに残念だ。


「マール様、お返しです」


俺は令嬢から魔石を差し出された。


「受け取れない」


令嬢に悲しそうな顔で見られているが受け取れば面倒なことが起きる。まずいらない。


「申しわけありません。気持ちが先走りました。私はいずれマール様に受け取っていただけるように頑張ります。候補とはいえ私を選んでくださりありがとうございます」

「候補?」


礼をして令嬢は立ち去った。

最近は魔石を差し出し、言いたいことだけ言い去って行く令嬢が多い。


「リオはモテモテだな。令嬢に魔石を贈られるとは」


クラスメイトに羨ましそうに見られている。

俺としては代わってほしい。

魔石を恋人同士で送り合うのは学園内で流行している。

貴族の令嬢は魔法は基本操作さえ覚えれば十分である。レティシアのように本気で魔法を学ぶ令嬢は少数派だ。令嬢達は魔石を装飾品として扱っている。魔石で魔法を使う令嬢はレティシアの指導する生徒を除けばほとんどいないだろう。


「断った」

「贈り物を受け取るのにな」


俺が受け取らないとレティシアに迷惑がかかる。

何度断ってもレティシアに託されるので大人しく受け取るけど礼は言わないし返礼もしない。それでも贈り物は減らない。贈り物は孤児院に送って手紙は読まずに捨てている。


「お返しと言われても何も贈っていない。最近は人の話を聞かない令嬢が多くて嫌になる。魔石もいらないし、受け取って誤解されたくない」

「すでに誤解されているからね」

「アナのアドバイスでレティシアに魔石を贈ったけど、全く効果がなかった。もう充分な出来とお墨付きをもらって会いにいく口実がなくなった」


苦笑しているサイラスと話していると肩を思いっきり叩かれた。


「リオ、とうとう諦めたんだな」

「は?」

「レティシアがリオの手から逃れたって一部の奴らが喜んでいるよ。違うのか?」

「今は会いに行く口実がなくなり悩んでいるとこ」

「お前が婚約者候補に魔石を贈ってるって話題になっていたけど。令嬢達の牽制が怖いってレティシアは嘆いてるけど・・・」


そういえばレティシアは当分は昼食は1年3組に顔を出せないとアナが言っていた。

婚約者候補・・?


「俺は婚約者にしたいのは一人だけだ。レティシア以外に魔石を贈っていない。待てよ、まさか・・。嘘だろう・・・。好きにしていいって言ったけど」


レティシアは俺の魔石を令嬢達に渡したのか・・・。


「リオ、レティシアにとって魔石は道具で特別な意味なんてない」


慰めるように肩に手を置かれた。

笑い声が聞こえ、声の主はリール嬢だった。


「レティシアはマール様の恋人達に魔石を渡したそうです。自分よりも喜んでくれる相手がいるなら返すほうがいいと。マール様も女心がわからないと苦笑してましたわ」

「恋人?」

「はい。マール様の恋人の皆様に誤解がないようにお届けしたと。おかげでお茶会に遅刻したと謝罪されました」

「恋人なんていない」

「頑張ってください。あえて誤解させてるご令嬢もいますので。人気者は大変ですね」


リール嬢は楽しそうだが労らわれているんだろうか。


「どうしたら誤解が解けるんでしょうか?」

「本人と話すしかないと思いますよ。レティシアに誤解を誘う令嬢達も対処しないといけませんが」


リール嬢が誤解を解いてくれる様子はない。

情報はくれるが、協力はしてくれない。

彼女はレティシアの味方だから当然か。

授業の始まりの鐘の音に各々が席に戻っていった。どれだけ俺の心象を悪くするやつがいるんだよ・・。

誤解を解くために放課後に生徒会で捕まえよう。


***

放課後に生徒会室にレティシアはいなかった。見回りに行っているレティシアを探しに校内を歩いた。ようやく見つけると最近うちの派閥入りした伯爵令嬢とレティシアが見つめ合っている。

レティシアの顔は困惑している。また絡まれているのかと声をかけ見回りを口実に引き離す。レティシアはまた一人で見回りをしていた。

突然腕を掴まれ視線を向けるとルメラ嬢がいた。


「私のリオ様に用ですか?」


レティシアにとんでもないことを言うルメラ嬢の手を解こうにも解けなかった。腕に喰い込む手を無理やり解くと笑いかけられた。


「私はお邪魔する気はありません。失礼します。マール様、私は生徒会室に戻りますのでご心配なく」


曇りのない笑顔で立ち去るレティシアに慌てて声をかけた。


「待って、俺も行くから」


「殿下には私用と伝えておきますので、ごゆっくりどうぞ。お幸せに」


振り返ったレティシアの笑顔に崩れ落ちそうになった。俺は意識されてないのはわかっているけど。


「リオ様、私がレティシア様を怒らせてしまいました」


潤んだ瞳で見つめられているけど怒りたいのはレティシアではなく俺の方だ。


「何の用?」


「私、レティシア様がいたので怖くて」


震えるルメラ嬢の相手をするつもりはない。レティシアは何もしていないし、近づいて来たのは自分だろうが。


「用があるから。あと名前で呼ぶな」


腕を無理矢理解いてルメラ嬢は放って、レティシアを追いかけた。生徒会室に向かうなら道は一つだけだ。

レティシアを見つけて声をかけても反応がなく、腕を掴むと不思議そうな顔で見られた。


「レティシア、待って、誤解してないか。俺は彼女と何もない」


何度か瞬きをした彼女に上品な笑みを向けられた。


「相手を間違えないでください。マール様が気に掛けるのは私ではありません」

「俺は君にだけは」


長いため息が聞こえて言葉を飲み込む。


「マール様、態度に気をつけてください。純真な令嬢達は誤解しますわ。誰にでも思わせぶりな態度はお控えください。貴方が誰と仲を深めようと構いませんが、本気にされる令嬢もいます。自分を好きな令嬢を大事にするのは悪いことだとは思いません。たださじ加減を間違えないでください。私への気遣いは不要です。そのお心は貴方が本当に心を傾けたいお相手に向けてください。では」


誤解され、拒絶されている。俺は彼女に意識されてないのは知っている。

レティシアにとって、俺は酷い男なのか?俺が大事にしたいのはレティシアだけだ。


「俺が心を傾けたいのはレティシアだけだ」

「私で遊ぶのはやめてください。」


無感情な声だった。俺を見ないレティシアの肩に手を置いて、無理矢理顔を見つめた。


「レティシアだけだよ。俺は特別になりたい」


俺の瞳を見つめてうっとりとして、恥ずかしそうな顔で下を向いた。


「シア、好きだよ」


頬に手を添えそっと顔を持ち上げて顔を覗くとふんわり笑い俺を見つめてゆっくりと目を閉じたので、口づけると胸を強く押された。


「そういうことは恋人としてください」


目を吊り上げて睨んでるけど、あれは口づけて欲しかったんじゃなかったのか!?


「間違いは誰にでもありますので、今回だけは見逃します。アナ達に同じことをしたら沈めますので覚えておいてください。失礼します」


綺麗な笑みを浮かべたレティシアは誤解していた。俺の告白を受けてくれたのではなかった。俺は口づけても意識されないのか!?足を進める彼女を慌てて追いかけた。


「間違いじゃないから。俺は君にしか手を出さない」

「どういうことだ?」


聞き覚えのある声に肩を掴まれた。


「エイベル、どうしたんですか?」

「会議が始められないから迎えに来た。レティシア、何をされた?」

「人違いです。誰にでも間違いはあります。何でもありませんわ。殿下を待たせるわけにはいきません。行きましょう」


レティシアがビアードの腕を抱いて笑顔で足を進めた。

彼女の態度は全く変わらない。

レティシアもだが令嬢達はどうやれば俺の言葉を聞いてくれるんだろうか。

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