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追憶令嬢のやり直し。  作者: 夕鈴
二年生

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元夫の苦難6

レティシアとクロード殿下は海の皇族の接待のため休んでいる。

レティシアに嫌がらせをされたと泣きつくルメラ嬢は彼女が留守とは知らないんだろうか。一部の男子生徒は味方につけているが令嬢達には嫌われている。だがレティシアを敵視する令嬢達はルメラ嬢の話を喜々として広めている。レティシアを貶めても、自分の評価は上がらない。嫌がらせは隠れてやるべきだ。堂々とわかりやすく単純な方法で家格の高い令嬢を貶めるのがどれだけ愚かなことかわからないんだろうか・・。少なくともまともな男は浅はかな令嬢を選ばない。


父上からレティシアがうちの夜会に参加し一泊すると教えてもらい帰宅した。海の皇国から皇族に随行した貴族の接待のための夜会だった。


「リオ、外交官の自覚が出てきたんだな」


久々に会うレイヤ兄上に陽気な笑顔で肩を組まれた。


「レイヤ、違うよ。うちのためじゃない。恋い焦がれる令嬢に近づくためだ」

「カナト様、無粋です。理由などなんでもよろしいです。驚異の早さで海の皇国語を覚えたそうです。これからが楽しみです」


カナト兄上夫婦にからかわれている。


「久々に揃っているわね。リオ、夜会が始まるまではレティシアは休ませてあげて。疲れ果てていたわ。倒れないかしら・・・・。」


頬に手を当てて、母上が苦笑している。レティシアはすでに到着してたのか・・。

夜会まで時間があるから油断していた。迎えに行きたかったのに、兄上達に捕まったから・・。


「疲労を顔に出すほどですか?」

「ええ。朝早くから夜遅くまで接待ですって」


母上が遠い目をして義姉上と話している。

初日の歓迎会で挨拶はしたけど、大人しそうな皇族だったような・・。


「貴方がいると休めないから放っておいてあげて」


母上の一言にカナト兄上がニヤリと笑い愉快な視線を向けてきた。


「初めて会うから楽しみだよ。将来の義妹か」

「リオ、頑張れよ。お前なら大丈夫だよ」

「今度はどなたから婚約を申し込まれるかしら。リオはダンスに誘えるかしら」


レイヤ兄上以外は楽しんでいる。

レティシアが参加したうちの夜会では婚約の申し込みが凄かったらしい。レティシアは美人で器量も良く、婚約を申し込みたい気持ちはわかるけど、これ以上敵は増やしたくない。


***


夜会が始まり招待客からの挨拶を受けていた。

レティシアは上品な青色のドレスを纏い、父上に挨拶の口上を述べ綺麗な笑みを浮かべている。久しぶりに着飾り美しさが増したレティシアの笑みは綺麗で目が奪われる。父上への口上が終わり、俺達に視線を合わせて微笑む顔に顔が赤くなるのを堪えて平常心で笑みを浮かべる。

レティシアをエスコートしたいけどまだこの場所を離れられない。マール公爵家として挨拶を受けながら、彼女を目で追うと令息にダンスに誘われ可憐に踊っている。軽やかなステップで笑みを浮かべ可憐に踊る姿は視線を集めている。レティシアと見つめ合い踊る男の言葉に微笑み、男の頬が染まっている。あの男は密着しすぎじゃないか!?恋人や婚約者と踊るように顔を近づけ、リードのステップを変えている。レティシア、危ないからソレから離れて、そんな至近距離で微笑み返さなくていいから、


「リオ、ダンスに誘って連れ出しなさい」

「義姉上?」

「あの子、ずっと踊り続けるわよ。接待のためのダンスは令嬢は断れないのよ。彼女に見惚れて、ダンスに誘おうとする貴族が後を絶たないわ。後は任されてあげるから、一曲踊って連れ出しなさい」


義姉上からの有り難い申し出に甘え、レティシアにダンスに誘うために手を差し出すと躊躇うことなく重ねられた。笑みを浮かべて踊るレティシアがしばらくすると不思議そうな顔をした。会話の返答もあったけど無意識で踊っていたんだろうか?よく見るといつもより化粧が濃いから本当は顔色が悪いんだろうか・・。


「ずっと踊ってるけど大丈夫?」

「ダンスを断ることはできません」


義姉上の言う通りだった。曲が終わる前にダンスホールから連れ出すと、笑みを向けられ、久しぶりに俺に向けられた笑みに顔が緩むのを堪える。俺が傍にいればダンスには誘わせないのでグラスを渡して、一緒に休んでいると嫌な男と目が合いレティシアの腰を抱いて引き寄せる。海の皇国で知り合った女好きの男の視線はレティシアに注がれている。


『リオ、いつまで独占してるんだ?』

 

離れようとするレティシアの腰を強く抱いた手は緩めない。抗議の視線に笑って目を合わせると、抵抗をやめて、俺に寄り添い上品に微笑んだ。俺の腕の中におさまり、微笑んでいる姿に顔が緩むのを抑えて男を追い払う。男の姿がなくなると離れようとするレティシアと話しているとまた声を掛けられる。レティシアが傍にいるからかいつもりより声をかけられる。談笑していると今までは俺達に向けられていたレティシアが視線を時々泳がせ微笑んだ。視線の先にはメイ伯爵だった。


「お話中申しわけありません。人酔いしましたので、夜風に当たって参りますわ」


離れようと礼をするレティシアの腰に回している手は緩めない。一人で歩かせるのもメイ伯爵と二人で話されるのは嫌だった。談笑相手はレティシアを俺の婚約者と勘違いしているけど敢えて匂わせたままにする。誤解でも広めてもらえたら大歓迎だ。敵は一人でも減らしたい。

談笑をやめてレティシアをバルコニーに連れ出し、ずっと視線を向けられるメイ伯爵を連れて来ることにした。

海の皇国で付添いをしていた時に突然話していた二人の姿が消えて、しばらくすると抱きかかえられて戻って来た時は斬りたかった。外交問題になるから堪えたけど。その後も時々二人の世界で話す様子は不愉快だった。文句を言う権利はなく嫌われるのが嫌で心に留めたけど。

メイ伯爵は俺を覚えていたようで、目が合うと近づいてきた。


『メイ伯爵、お久しぶりです。よければあちらで話を聞かせていただけませんか』

『もちろんです』


バルコニーに行くとメイ伯爵を見たレティシアが嬉しそうに笑って挨拶をした。可愛いけど向けられた相手が複雑だ。

うちの制服を着たレティシアの侍女がグラスを持ってきた。メイ伯爵が侍女に話しかける様子を笑顔で眺めていたレティシアは二人に近づき流れるような自然な動作でメイ伯爵のグラスと侍女のお盆を取り上げた。不思議そうな顔をする二人に微笑みかけ侍女の後ろに回り背中を勢いよく押し、よろけた侍女をメイ伯爵が抱きとめる姿に嬉しそうに笑っている。初めての人を傷つける行為にレティシアは正気だろうか?

侍女がメイ伯爵に必死に謝罪していると、レティシアが侍女の隣に立ち、メイ伯爵を見上げた。


「メイ伯爵申しわけありません。私がよろけたばかりに。うちの侍女をありがとうございました。お怪我はありませんか?」


レティシアの心配をしている侍女を宥めて立ち去らせた。侍女はレティシアに押されたとは思わないらしい。明らかに押された感覚はあっただろうに。まさか日常茶飯事?侍女は虐められているのか?侍女はレティシアを何か怒らせた?それなら辞めさせればいいのに。


「私の不注意で申しわけありません。お詫びにわが領でおもてなしさせていただきたいので、いずれ訪ねていただけると幸いです。我が家自慢の最年少の執事にお世話させますわ」


「是非。いつか私的に伺わせてもらうよ」


「お待ちしております」


レティシアが満面の笑みを浮かべてるけどメイ伯爵が好きなのか!?彼女の好きな奴って違うよな・・。女性は切り替えが早いとも聞くけど、次の相手は妻子孫持ちなのか・・・。父親よりも年上だけど、どこに惹かれるんだよ。

二人は見つめ合っているけど伯爵も乗り気なのか!?確かにメイ伯爵夫人と比べればレティシアのほうが比べものにならないほど魅力的だけど、どう考えても二人は結ばれないだろう!?レティシアは騙されているのか?二人が中に戻っていくので慌てて追いかけると会場はざわついていた。


『母上、ご無事で』


人混みの中心からレティシアと招待していない皇子の声が聞こえた。人混みの中心に父上が進んでいくので後ろに続く。

人混みの中心ではレティシアの侍女が皇子に絡まれている。

父上が皇子を別室に案内しようとすると皇女が皇子の腕を抱いて、拗ねた顔で見つめている。離れたくないという皇女に皇子が困り果てて、父上が仲裁した。

皇族がダンスホールに向かったので壊れた夜会の雰囲気を整えるため兄上達が動き出した。

レティシアは皇子に絡まれていた侍女を連れて移動している。


「お嬢様・・・」

「ローナは私が守ります。これからもビアード領での生活を望みますか?」

「はい」

「でしたら、任せてください。家族から引き離したりはしません。私を信じてマナと一緒にいてください」

「はい。私はお嬢様を信じます。失礼します」


顔色が悪く、困惑した顔の侍女はレティシアの言葉に安堵の顔を見せていた。レティシアは侍女を嫌ってはいないようだ。あんなに優しい顔を向けてるから大事にしているんだろう。待てよ。

状況はわからないけど、皇子に逆らう気なのか!?外交問題にならないだろうか・・。

レティシアは侍女が会場から出て行く背中を見送り、寒気がするほど美しい笑みを浮かべて父上に近づいて行った。


「リオ、おもしろいことになりそうね。義妹はどうおさめるかしら」


義姉上が楽しそうに微笑んでいる。

皇子はずっと皇女と踊り、挨拶に回らず皇女と共に過ごし二人の世界だったため挨拶に行ける雰囲気もなかった。海の皇国の貴族に好きにさせてほしいと頼まれたので挨拶にいくのは諦めた。海の皇国では見慣れた光景らしい。歓迎会で見た淑やかな皇女は外面だったのか。

レティシアはずっとあの我儘な皇女に付き合っていたのか・・・。自分が中心で周りは気にしない正反対の相手の接待は相当大変だったんだろう。

まさか最後まで皇女達は二人の世界とは思わなかった。本当にダンスするためだけに来たのか・・。

父上が皇子のために部屋を用意したが夜会が終わっても二人の世界のままだった。皇族が会場から立ち去らないと誰も帰れない。


『先に帰ってほしい』

『嫌です。あの女のもとには行かせません。お兄様には私の認めた者以外近づけません』


兄妹だよな?

兄の腕に抱きついて声を荒げる様子に目を見張るのは俺だけだった。海の皇国の貴族は苦笑し、レティシアは穏やかな表情で見ていた。

二人の世界に母上が近づいた。


『皇女様、お話が終わるまで私におもてなしさせてください。皇子様には夫とレティシアが同席します。間違いなどおきません』


皇女は不機嫌そうに母上を見たあと、レティシアに視線を向けた。視線に気づいたレティシアが礼をした。


『レティシアが?』

『息子もつけましょう。うちの息子は彼女に夢中です』

『レティシアやあの女がお兄様の特別にならないようにしてくれる?』


それは俺も避けたい。これ以上敵を増やしたくない。母上から頷けと視線を送られ、できるかわからなくても断れる雰囲気ではなかった。


『約束します』


皇女は俺をじろりと睨むように見て母上と一緒に立ち去った。父上が皇子を連れて会場を出たので参加者はこれで帰宅できるだろう。兄上達が夜会をおさめるだろう。義姉上に足を思いっきり踏まれたので我に返り父上達を追いかけた。

一番下座に座ろうとするレティシアを父上が横に座らせた。レティシアに申しわけなさそうな顔で見つめられ笑みを返すと小さく俺に頭をさげたレティシアが顔を上げて結界を構築した。


『私の母を保護していただきありがとうございます。連れて帰ります』

『恐れながら、皇子様、彼女は記憶を失っております。最近、ようやく穏やかな顔を浮かべるようになりました』


穏やかな顔の皇子に上品な笑みを浮かべたレティシアが即答した。


『これからは私がお守りします』

『彼女は望んでおりません』

『私はずっと』


皇子とレティシアが冷笑を浮かべ合い静かに侍女について言い争い部屋の温度がどんどん下がり一瞬寒気がした。


「レティシア、会わせてやりなさい」


見かねて仲裁した父上の言葉にレティシアが父上を冷たい瞳で見つめた。父上は静かに見つめ返し、無言の睨み合いが続き、しばらくすると侍女を呼び出した。


『母上、覚えてないですか!?』


皇子の期待する顔に戸惑う侍女がレティシアを見た。


「行方不明のお母様を探していて、貴方に似ているそうです。皇子様フラン王国語でお話ください」

「母上、皇宮に帰りましょう。あの頃とは違います。守ります」


侍女の体が震えレティシアが一瞬皇子を睨んで、侍女の手を握った。皇子に向けた冷笑が嘘のように優しい笑みを浮かべている。


「ローナ、大丈夫です。私は貴方が望まないなら手放しません。帰りましょう。私達はビアード領民を守ります」


侍女の震えが止まったので、お茶の用意を命じて退出させた。レティシアには皇子よりも侍女優先か。

深呼吸をしたレティシアが穏やかな顔で茫然としている皇子に向き直った。


『彼女を保護した時は衰弱していました。過去を聞くと発狂しました』

『皇子様、ローナはビアード嬢にお任せしましょう。国に帰って苦労するより、ここで穏やかに暮らしたほうがよろしいかと』

『私はなんのために今まで』

『無事に見つかりました。生きて笑ってます。私はそれだけで十分です』


皇子の肩に労わるように手を置いたメイ伯爵と皇子のやり取りを切なそうに眺めていたレティシアは侍女に向けた優しい笑みを皇子に向けた。


『皇子様、ローナは責任もってお預かりします。いつでもお越しください。心からおもてなしします」


皇子は顔を上げて、レティシアをじっと見つめて手を握った。


『ビアード嬢、私と結婚してくれないか』

『ありがたい申し出ですが、うちは皇子様を婿にもらうことはできません。また嫁ぐ際もローナはビアード領に残します』


断ったことに俺は安堵したけど、皇子の願いを躊躇いもなく断る様子は問題だった。父上が止めないからいいのか。


『私は母上がいなければ、』


皇子は侍女と一緒にいるために求婚したのか。レティシアが皇子に握られていない手を皇子の手に重ねて、下を向いている皇子の顔を覗き込んだ。


『あんなに妹君に慕われてます。貴方を必要とする方はたくさんいますわ。いつでもビアード領にお越しください。歓迎します。傷が癒えて思い出す日もあるかもしれません。ローナは愛情深いので皇子様の幸せを喜ぶと思います。皇子様とローナの絆はなくなりません。私の想像ですが、皇子様を残して消えたのは貴方のためだと思います。皇位争いに巻き込まれれば皇子様のお命も危険に晒されます。ローナが皇宮に戻らなかったのは、母として生きてほしいと願ったからではないでしょうか。ローナのためを思うなら幸せになってください。皇子ではなく旅人として訪問されても構いません。』

『いずれ、伺うよ』


顔を上げた皇子にレティシアは優しく笑って手を解いた。


『歓迎しますが、妹君を説得してからお願いします。皇子様を探して国を荒らされてはかないません』

『善処しよう。母上を任せるよ』

『お任せください。』


退室していく皇子を礼をして見送った。

レティシアが優しいのは知っている。ある意味特別な関係にしてしまったかもしれない。

メイ伯爵家を訪ねた理由も夜会でのやりとりの意味もわかった。メイ伯爵が侍女の父親で侍女は行方不明中の妃か。

レティシアが礼をして立ち去った。これから眠って早朝には王宮に戻るのか。すでに日付は変わっているからほとんど休めないけど大丈夫なんだろうか・・。


「リオ、他言無用だ」

「父上、レティシアが海の皇国に同行したのは」

「保護した侍女の親と今後の相談がしたいと頼まれた。対価に貴重な情報を用意して」


レティシアが強引に連れ帰ったウォントも関係者か。父上を動かせるほどの情報を用意したってどうやって。危ないことをしているわけではないよな・・・。ビアードが許さないか・。いや、ビアードは放任だから信用できるのか・・。いつも事後にレティシアを叱り飛ばしている。ビアードの諜報部隊がうちより優秀とは思えないんだけど。


「侍女と関係者のことは他言無用だ。漏らせば、確実に嫌われるだろうな、皇子と喧嘩するとは思わなかったよ」

「なんでそこまで」

「大事な家族らしい。ビアード公爵から侍女の件はレティシアに一任するので世話になると頼まれたよ。彼女の傍にいるのは大変だろうな」

「努力します」


侍女一人のために海の皇国に行き、皇子と喧嘩するって。

一歩間違えれば首が飛ぶ。わかってるんだろうか・・。

父上と別れて部屋に戻り、着替えて寝ようとしても目が冴えていた。部屋を出ると書庫のドアが開いていた。中では椅子の上で薄い夜着に身を包んだレティシアが丸まって眠っている。

風邪を引くので部屋まで送るか。ぐっすりと眠る無防備な顔を兄上達に見せたくない。頬にかかっている髪に触れると「リオ」と呼び口元が緩んでいる。彼女にとって幸せな夢を見てるなら起こすのは気が引ける。そっと抱き上げると、ゆっくりと瞼が持ち上がりうつろな瞳に見つめられる。


「リオ、おかえりなさい。怪我はありませんね」


満面の笑みで手を伸ばし首の後ろに手がまわり吐息が触れ合うほど顔が近づく。首を傾げ、頬を染めながらはにかみ笑う。


「わかりました。きちんと約束守りましたわ。覚えてますよ」


指が頬に添えられレティシアの顔がさらに近づき、唇が重なる。触れるだけの口づけが段々深くなっていく。漏れる甘い声と艶めかしい音と濃厚な口づけにどんどん胸の鼓動が速くなり、甘さと熱に頭がおかしくなりそうで、目を開けると頬を染めたレティシアが甘い笑みを浮かべている。


「今日はもう終わりです。休みましょう。リオの独占権は私にくださいませ」


甘えた声に頷くとはにかんだ笑みを浮かべ頬から離れて手が首にまわり胸に顔を埋めている。囁き声がちいさくなっていき寝息が聞こえた。寝ぼけているんだよな・・。体の力が抜けてぐっすりと眠るレティシアとの行為で体が熱く、胸の鼓動も激しい。彼女のリオなら続きがあったのかとあらぬ想像をするとさらに体が熱くなる。無防備なうなじに痕をつけ、夜着を乱して柔らかい肌に、何を考えてるんだよ!?欲望に負けないように白い肌から目を逸らして、落とさないように抱く手に力をこめる。肌が触れ合う柔らかい感触に逆効果だった。

俺を間違えているレティシアは口づけると普段は見たことがないほど幸せそうな顔をする。口づけると涙が止まり切ない顔が一瞬で明るくなると知ってから、俺から口づけた。冷めた視線を向けていた恋に溺れる奴らの気持ちがわかった。節度さえ守れば恋愛は許されている。婚約者さえいなければ恋人を作ることも。リオの代わりでも手を出すことは躊躇ったのに、レティシアを前にすると止められなかった。俺との行為で涙が止まって、幸せそうにする様子が堪らない。彼女のためと言い訳をしてレティシアとの触れ合いに俺が溺れている自覚もある。

このままだと欲望に負けそうで急いで客室に送り届けて、ベッドに寝かせる。俺の顔の熱は引いていないからレティシアの侍女に会わなくてよかった。寝言でリオと呼ぶ声も彼女との行為も頭から離れず、熱を冷ます方法がわからない。ただ安心するのは早かった。


「リオ、夜這いか?」

「書庫で眠っていたので送っただけです」

「つい手を出したか」

「・・からかわないでください」


カナト兄上のからかう声は無視して足早に自室に戻り体を冷やすためにバルコニーに出た。

俺ならずっと傍にいて離さないのに。

レティシアのリオと呼ぶ声の響きは特別だ。自分ではないとわかっているのに自分が呼ばれた気になってしまう。おかえりと抱きつかれて・・・・・。

彼女との未来を想像すると顔が緩む。

ルメラ嬢の潤んだ瞳に見つめられ落ちた男もいる。俺はなんとも思わない。レティシアの色んな感情のこもった瞳と比べ物にならない。泣かないでほしいのも笑ってほしいのもレティシアだけ。

後輩のロンは「守りたいから守る。相手にとってどう思われても関係ない」とフィル・カーソンに教わったらしい。

ルメラ嬢は自分を選べば真の願いが叶うと言っていた。彼女を選んでもレティシアが手に入るとは思えない。ルメラ嬢に抱きつかれる様子を見られたら俺の願いは遠のく。今度からは遠慮なく振り払おう。万人に優しい男よりもたった一人を大切にする男がいいらしい。まさか家として利のない後輩と親しくしてこんなに有益な情報をもらえるとは思わなかった。

どうしたら手に入れられるだろうか。

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