第四十四話 ルーン公爵家
私はルーン公爵邸に訪問しております。
エイベルとリオは生前のお母様であるルーン公爵夫人の訓練を受けてます。
私はエドワード様とお茶をしています。
エイベル達の訓練中はエドワード様と過ごすことが日課になりました。私をおもてなししなさいとルーン公爵夫人から言われているんでしょうか。せっかくならお勉強を忘れて、休ませてあげられる時間を作ってさしあげたいです。今のエドワード様を甘やかしてくれるのはリオだけでしょう。度重なるお茶会のおかげで不審な目は向けられることはなくなりましたが笑顔は見れません。
「エディは好きなことはありますか?」
「特に…」
「そうですか。今日はどんなお勉強をされたんですか」
「剣術を」
「お疲れ様でした。お昼寝しますか?」
膝をたたくと横に移動したエドワード様が頭を乗せます。
「今日はなんのお話にしましょうか」
「ルーンの歴史以外」
前回のお話は気に入らなかったんですか。昔は抱っこしてお話をしてましたが、さすがに今の私が抱っこできません。膝枕ならリオで慣れてるので抵抗なく過ごせるようです。私もよくリオ兄様の膝を枕に眠りましたもの。
「わかりましたわ」
お話をはじめて、しばらくすると眠ります。疲れてますのね…。
弟の寝顔が可愛いのはいつの世も同じです。ゆっくりと頭を撫でます。
「エディ、姉様はビアードの次だけど協力します。ルーンの社交は多くて大変ですよね。伝手は作ってあげますわ。その後の交渉は貴方が得意よね」
生前はエディと二人で社交に駆け回ってましたわ。今世はエディは一人です。生前は頼りない姉だったので、今世は頼れるお友達を目指しましょう。私の優秀で可愛い弟が頑張りすぎないか心配です。無表情でも寝顔は同じで昔を思い浮かべ懐かしい気持ちがします。ここでリオとエディと3人で過ごしたのが懐かしいです。
「レティシア」
呼ばれた声に目を開けるとエイベルがいます。眠ってしまいました。エドワード様はまだ眠ってます。
目の前にエイベルとリオがいます。思い出しました。訓練が終わったんですね。気絶していないのは感動しました。
「エイベル、成長しましたね。エドワード様はもう少し寝かせてあげてください。」
「俺が運ぶよ」
リオにエドワード様を託そうとしましたが恐ろしいことを思い出しました。絶対に駄目です。ルーン公爵夫人は礼儀に厳しく客人の前で眠ったと知られたらお説教です。首を横に振ってリオの手を拒みます。
「もう少しで起きますよ。」
頭を撫でてしばらくするとゆっくりと目を開けてをぼんやり見つめる様子は可愛いです。
「おはようございます」
「うん」
抱きしめたくなるのを我慢して頭を撫でて、笑いかけます。
「二人も秘密にしてくださいます。ルーン公爵夫人に怒られないので安心してくださいませ」
「また来ますか?」
初めての言葉に嬉しくなりました。懐かれてませんが嫌われてはいないようです。
「はい。いつかうちにも遊びに来てください。ビアード領をご案内します」
「うん」
「お茶に付き合ってくれてありがとうございます。」
「また」
「はい。また会えるのを楽しみにしてます。今日、頑張るのは晩餐だけなのでもう一息です」
エドワード様が起き上がって手を出してくれました。エドワード様のエスコートで馬車まで送ってもらいました。しっかりエスコートするところはさすがルーン公爵家嫡男です。
馬車に乗るとエイベルに、呆れた視線を向けられました。
「お前は何をしているんだ?」
「お茶会です。エイベル、凄いですわ。とうとう」
「いや、ルーン公爵が治癒魔法を」
今日は誰も呼びにきてもらえなかったんですね。いつもは誰か教えてくださいますのに。まさかお父様、違いますわ。ルーン公爵のお世話になるなんて・・・・。
「訓練が終わったら私を呼ぶようにストーム様に頼んでください。謝罪しないといけません」
「そうだな。ただ謝罪はいらないって。なんで一緒に昼寝してたんだ?」
「ルーンの勉強は大変なので休憩にお付き合いしただけですわ」
エイベルにため息をつかれましたが気にしないことにしました。エドワード様はエイベルとは違った意味で大変なんです。どこの家も嫡男は大変なんでしょう・・。
あのフィルでさえも大変そうですものね。時々荒れてます。
***
おまけ
リオ視点
定期的にルーン公爵邸に叔母上の訓練を受けるために通っている。
レティシアは挨拶をすませるといつも離れていく。危険なので離れているほうがいいだろう。結界の中でも安全かはわからない。叔母上の高濃度の風の刃が結界を破るから。叔母上の前では結界なんて意味はない。今日はビアードと組んで叔母上に挑んだけど気付いたら気絶させられた。単体でも無理だが連携でも無理だった。
目を開けると叔父上がいた。
「大丈夫か?」
「申しわけありません。ルーン公爵」
隣でビアードが叔父上に頭を下げていた。
「構わない。ビアード嬢は息子に付き合ってくれている。気に入っているようだ」
わかりずらいが叔父上が嬉しそうな顔をしている。わかりにくいけどエドワードのことを心配している。母上が不器用なルーン公爵夫妻に頭を抱えている。
エドワードが気に入るってどういうことだろうか。
俺達は侍女に案内されてレティシアを迎えにいくと、目を見張った。
エドワードとレティシアが眠っている。しかもレティシアの膝を枕に・・・・。羨ましい。あの警戒心の強いエドワードが誰かの膝で眠るとは思わなかった。
叔父上の言葉はこういうことか。エドワードも話さなければ可愛いんだよな。
あどけない寝顔で眠るレティシアの可愛いさには負けるが。
「あのバカが」
ビアードが躊躇いもなくレティシアを起こすと、きょとんとしてふんわり笑った顔に目を奪われた。ビアードはいつもこんな顔を眺めているのか。
ぐっすり眠っているならエドワードをベッドに運ぶか。
俺がエドワードを運ぼうとすると断られた。優しい笑みを浮かべて頭を撫でている。
しばらくすると目を醒ましたエドワードがレティシアに甘えていた。お前、性格違うだろうが・・。
レティシア達を見送るとエドワードに無感情な目で見られた。
「なんですか」
「なんで、膝の上で」
「レティシアがどうぞって。気持ち良くて癖になりました。」
俺達の訓練の時はいつもレティシアはエドワードといるけど癖って毎回あんなことされてるわけじゃないよな・・。やはり起きたら全く可愛くない。
「お前が気に入るなんて初めてだな」
「リオだって同じでしょ?ビアードは僕の敵にならないから、いつでも頼ってって。僕の婚約者にはならないから、安心してって。ルーンにふさわしいのが僕だから。聞き慣れた言葉なのに初めて不愉快じゃなかった」
なんで知ってるのかとエドワードに思っても仕方がない。叔父上の教育の所為かエドワードは人の思考を読むのは得意だ。大体はどんなこともエドワードだからと言う言葉で片付く。
俺の学園の後輩よりもよっぽど優秀だから。
エドワードに近づくのは思惑だらけの者ばかりだ。ルーン公爵家嫡男と親睦を深めたい者は多い。エドワードは嫌気がさして、必要以上に人と関わることをしない。叔父上に従兄弟として時々様子をみるように頼まれていた。ただ俺は嫌われてないけど懐かれていない。
初めての親しい存在に喜ぶべきか?でも、あんな笑みを浮かべられて・・・。
エドワードの頭を撫でようとすると振り払われた。
レティシアの言葉は人の心に入り込むらしい。義姉上が一種の天才と言っていた。学園でも慕われてるもんな。
俺は全然親しくなれないのに、エドワードのほうが親しいのが悔しい。
どうすればレティシアの信頼を得れるだろうか・・・。
まずは叔母上の訓練に気絶しないようにならないとだよな。せっかく同じ場所にいるのに、寝ている時間が勿体ない。レティシアは治癒魔法をかけると気絶したビアードを連れて帰ってしまう。全然一緒に過ごせない。
それにビアード公爵に勝つために強くならないといけない。彼女の隣に立つためにはまだまだ先が遠い。




