第四十一話 王族
短期休みに入りビアード公爵領で過ごしてます。
机の上には王家のお茶会の招待状と愛用の小瓶があります。私はビアード公爵令嬢です。ため息をつき小瓶を引き出しにしまいました。諦めて参加しましょう。エイベルは王宮でクロード殿下の側近候補として励んでいるのに、私が逃げるわけにはいきませんよね・・。
私は今世では初めてアリア様主催の王宮のお茶会に参加を決めました。
王宮の案内された部屋に入ると視線を集めましたが笑みを浮かべ礼をして席に座ります。
正妃アリア様とお会いするのは社交デビュー以来です。ここはクロード殿下の婚約者の見極めの場でもあるので、絶対に目立たないように気をつけないといけません。
侍女のアリア様の入室の声を聞き、立ち上がり礼をして迎えます。
「楽にして。どうぞ。座って」
頭を上げて椅子に座り、アリア様がお茶に手をつけたのでお茶をいただきます。王宮のお茶は高級な茶葉を使っているのに、緊張で味がしません。なぜかずっとアリア様の視線を感じています。
「ビアード公爵令嬢は初めてお茶会よね」
「申しわけありませんでした」
「いいのよ。仕方ないもの。まさかうちのクロードに不満はないわよね?」
謝罪の言葉を遮られ、美しい笑みを向けられ探られてます。
「ありがとうございます。クロード殿下には生徒会でいつも助けていただいております。聡明なクロード殿下のお力になれるように努力したいと存じます」
「そう。クロードの傍に侍りたい?」
答えを間違えれば殿下の婚約者候補を望んでいるように捉えられます。了承の答えを出せばアリア様の機嫌はよくなりますが、避けたいです。アリア様はクロード殿下への賞賛を好まれます。自分の子供が1番優れていて王に相応しいと。生前はクロード殿下の婚約者だったのでアリア様とのお付き合いもあり、機嫌の取り方は知ってますが、嫌われる答えを選びます。
「兄がクロード殿下にお仕えするために励んでおります。私は兄が憂いなくクロード殿下にお仕えできるようにビアード公爵領の安寧に心を配りたいと思います」
「励みなさい」
声のトーンが下がったので私の答えは気に入らなかったんでしょう。アリア様の関心が逸れ一安心です。他の令嬢がアリア様とクロード殿下の称賛で盛り上がってます。一安心ですがアリア様は気まぐれなので気を抜いてはいけません。穏やかな笑顔を作って相槌をうちながら見守ります。
「クロードが執務をしてるの。誰か休憩にお茶に付き合ってくれないかしら」
私とカトリーヌ様以外の令嬢達が立候補しました。
「ビアード公爵令嬢にお願いするわ。兄君の様子も気になるでしょう?」
目が笑っていないアリア様が怖い・・。断れないので笑みを浮かべて了承します。令嬢達の嫉妬の視線が痛いです。
立候補しなかったのが気に入らなかったのでしょうか。クロード殿下の腹黒はアリア様の遺伝ですよね・・・。
「お心遣いありがとうございます。かしこまりました」
礼をして侍女に案内をされて立ち去りました。帰りたいです。次回は毒薬を飲んで寝込もうかな・・。
クロード殿下の執務室に着いてしまいました。
許可が出たので、中に入ります。書類から顔をあげたクロード殿下に不機嫌な顔で見られました。相変わらず書類の量が凄いです。エイベルはいませんのね。
「殿下、お茶をお持ちしました」
執務机の横にある小さい机にお茶を置きます。たぶん今は休憩よりも執務に集中したいようですわ。
「何かお手伝いできることはありますか?」
「母上にお茶に付き合うように言われただろう?」
「殿下の邪魔をするつもりはありません。お許しいただけるなら、一人でお茶を飲み退室しますわ。アリア様の命令通りに」
「手が空かない。手伝え」
「かしこまりました」
殿下に渡される書類を受け取ると私にもできそうですわ。ペンを借りて、来客用の椅子に腰かけて進めていきます。今世は一人で執務をされてるんですね。なぜかアリア様のものも混ざっています。
「殿下、戻りました」
エイベルが入ってきました。
「御苦労だった。問題は?」
「特に。市を見学されていたので眠らせてお連れしました」
「そうか」
エイベルが殿下の傍に控えました。
視線を向けられたので力なく笑いかけます。この状況は驚きますよね・・。私も予想外です。エイベルはきちんと殿下のお役に立っているので良かったですわ。
終わった書類をクロード殿下の机に置きます。しばらくして殿下が確認して次の書類を渡されます。
殿下のペンの進みが遅くなったので侍女にお茶の用意を頼みます。私の用意したお茶はもう冷めてますから飲めませんわ。お茶の匂いに気付いた殿下が顔をあげ、侍女に差し出されたお茶を飲んで、空気が冷たくなりました。茶葉の選択を間違えたんでしょうか。今世の殿下は冷たいんです。生前の殿下はいつも穏やかな笑みを浮かべている方でした。腹黒でしたが温かみのある方でした。今の殿下は無表情と作り笑いばかりです。ただ視線で語るので、ある意味わかりやすいんです。怖いですが・・・。
「殿下、私にお茶をご用意させてくださいませ」
「レティシアが?」
「はい」
「好きにしろ」
侍女に別室に案内されて、お茶の道具を用意してもらいました。
クロード殿下の好きな茶葉を選び、お茶をいれます。お菓子は飴を。書類が汚れるお菓子は嫌がられます。今世の殿下は効率重視で、お茶を楽しんだりしません。
殿下の執務机の空いた場所にお茶とお菓子を置くとゆっくりとカップを手に取りお茶を飲みましたが、空気が凍らないので合格ですわ。
「レティシア、どうしてこれを?」
「眠気をとるお茶と書類を汚さないお菓子がよろしいかと。休憩される様子はありませんので」
「そうか。御苦労だった」
「失礼します」
もうお茶会は終わってますね。念のため戻ると誰もいないので帰りましょう。次回は欠席してもいいでしょうか・・・。
まさか翌日も王宮に呼び出されるとは思いませんでした。
案内されたクロード殿下の執務室に行きました。
「手伝え」
「かしこまりました」
クロード殿下のお手伝いをして、お茶を淹れ過ごすことになりました。殿下は食事中も書類を読んでます。忙しすぎませんか!?
私も用意されたサンドイッチをいただきました。
「休憩」
「ご用意しますわ」
私はお茶を用意して執務室に戻ると殿下は庭園の椅子に座ってました。
お茶を差し出すと視線で座れと合図されたので、座りました。
侍女が私のお茶も用意しました。殿下とお茶会は遠慮したいです。
「レティシア、王妃の教育を受けたことあるか?」
「ありませんわ」
「任せた書類は母上の仕事だ。」
「申しわけありません。なんとなくです。できそうだったので自己判断で進めてしまいました」
「午後から視察に行く。付き合え」
「はい?殿下、私はお役にたちませんわ」
「いるだけでいい」
嫌な予感しかしませんわ。ただ断れる立場ではありません。
「かしこまりました」
殿下の視察先は孤児院でした。私は殿下の後ろに控えてついていきます。
殿下に好きにしろと言われたので子供達と遊ぶことにしました。王宮は怖すぎます。可愛い子供に癒されます。
いつの間にか殿下達が戻られたので、抱いている孤児を降ろして礼をして控えました。
「どうだった?」
「世話人の人数が少ない以外は気になることはありません」
「なぜ?」
「幼い孤児は手がかかります。」
「そうか」
殿下が考え込んでいます。
「レティシア、どこまで体が弱い?」
嫌な予感がします。病弱設定を利用しましょう。
「子供を産めるかわかりません」
「子供など問題にならない」
殿下の婚約者候補にはなりたくありません。
「定期的に倒れますので公務に向きません。」
「残念だ」
納得していただけて良かったです。私は王家に関わりたくありません。
次の王家のお茶会は愛用の毒を飲むことを決めました。
休みが終わるころにはアロマの家族は体調が回復しました。仕事先の薬草園の近くの家を用意しました。領民にも馴染んでいるので良かったです。




