第三十九話 学力向上
私は学園で令嬢に誘われるお茶会には積極的に参加してます。令嬢同士の交友を深めることは大切です。私が婿入りを希望していることは有名です。有力貴族に嫁ぐ予定がないので、令嬢達の敵視の視線が少ないのはありがたいです。それでも、嫌われることもあります。
「ビアード様はお気の毒ですわ。公爵令嬢なのに、婿を希望されるなんて」
「令嬢たるもの家のために嫁ぐものですもの」
「でもまがいものなど所詮は・・・」
「貴方に従う令嬢も今だけですわ。」
私に取り巻きはいません。1度目の人生はクロード殿下の婚約者だったので取り巻きの令嬢もいました。私の周りにエイベルとエドワードという名家の嫡男、殿下の側近のリオと令嬢が嫁ぎたい殿方がいましたし、王太子の婚約者の紹介の良縁目当てに目がギラギラとした令嬢達が・・。ただ取り巻きの令嬢の管理は大変なんです。必要ないなら作るつもりはありません。
「皆様に良縁が訪れることをお祈り申し上げますわ。私なりに家のために励みますのでご安心ください」
睨みつけられますが、穏やかな笑みを浮かべて礼をして立ち去ります。私は予定があるので令嬢達の話に付き合うつもりはありません。
私は目的の1年3組に来ました。試験が近いので勉強の手伝いです。3組には定期的にエイベルの訓練希望者の予定調整に来ています。またビアード家門に興味をもつ生徒も多いのです。ただうちにも入団試験はありますので将来合格できるためにお手伝いをしています。うちとしても優秀な騎士が増えるのは歓迎です。男女関係なく受け入れ口があると言うと女生徒の目も輝きました。優秀な魔導士が欲しいのはどの領も同じです。魔導士や騎士以外も職はあります。勤勉で善良な領民は大歓迎です。
「レティシア様、ご相談が」
ビアード公爵令嬢と知られても、遠慮なく話しかけてもらえるようになりました。
「私にお仕事をいただけませんか?」
学園でも仕事の斡旋はあります。平民の生徒のためです。貴重な労働力である子供を学園に通わせるので、学園でお金を稼ぎ仕送りすることで不満が出ないようにしています。生徒によっては学園にお金を稼ぐために通うものもいます。成績が優秀なら学費免除の制度があります。学費免除の枠は決まっているので、うちは辞退しています。
真剣な顔で頼まれるので何か事情があるんでしょうか。
「お金が必要な理由を教えてくださいますか?」
「弟がいます。ただうちは苦しくて・・・。仕送りしても弟は学園には入れられないって。弟は私より勉強が好きなんです。2つ下なんですが、なんとかしてあげたくて。それに最近は母の体調も優れなくて」
領主に相談できないんでしょうか・・。
「お父様は?」
「畑を耕してますが、今年は出来も悪く」
うちは学園に通うための制度も医療にも力を入れています。他領のことは不正等がなければ関われません。この状況ならうちの領なら対処できます。
「ビアード領にうつりますか?うちは学ぶ意欲がある子供には学園に通わせるための支援があります。将来働きはじめてから、お金は返してもらえばいいのです。国やビアードに認められる功績があるなら返金も免除されますわ。最近は新しい薬草の栽培を始めましたの。薬草の世話をしてくださる方を探してるんですが・・。お給金から差し引きますので家等はご用意します。お母様は私が看てあげます。ビアードは武門と併用して医療にも力を入れたいのです。」
「レティシア様」
縋る視線に笑みを浮かべます。
「もちろん領民になれば貴方も制度を受けられますわ。」
「お世話になってもよろしいんでしょうか」
「歓迎しますわ。でもお仕事をさぼれば、お給金を引かれるので気をつけてくださいませ。うちは移民も多いので、意地悪されません。意地悪されたら教えてください。私達が指導に伺わないといけません。ビアードは民への教育も厳しいですが貴方なら大丈夫だと思います」
鞄から切手の貼ってある封筒と便箋を数枚取り出します。
「これ、間違えてしまったんです。よければ使ってください」
手紙を送るのにもお金がかかります。仕送りのためのお金を減らすのは本意ではありません。戸惑う彼女に笑みを浮かべて差し出します。
「捨てるものですので、よければ貰ってください」
「ありがとうございます」
「決まれば教えてくだい。ビアードの書類は私が用意しますわ。移動の際の領主印だけはもらってください。もし困れば教えてください」
「この御恩はいつかお返しします」
「生活が落ち着いたら家族とゆっくり過ごす時間を作ってあげてください。それで充分です。孤児院で学園の入学試験の勉強もさせているので、嫌でなければ通わせても構いませんわ。孤児に意地悪しないと約束していただければ」
泣きそうな生徒ににっこり微笑みます。兄や姉は強いです。弟を大事に思う気持ちはよくわかります。優秀な子供ならロキとお友達になれますかね。ロキのお友達が全然できません。孤児院に遊びに行ってもロキは私の傍から離れません。
「今は試験勉強を頑張りましょう」
頷いてお勉強を再開しました。手をあげる生徒のもとに行きましょう。皆様勉強熱心で何よりですわ。私は1年生は3度目なので試験勉強はそこまで頑張らなくても平気です。
やはり3組の生徒は授業についていけない生徒が多いみたいです。丁寧に教えればすぐに理解します。他の学年は大丈夫なんでしょうか。これは動いたほうがいいかもしれません。
***
翌日に生徒会室に行くとクロード殿下と侍従しかおりませんでした。
今日は会議はないから集まってないんですね。
「レティシア、どうした?」
また何かやらかしたか警戒されてます。私は生徒会では問題児扱いです。
「殿下、まだ詳細はまとめてないのですが、相談してもよろしいでしょうか?」
「聞こうか」
1年3組の生徒のことを説明します。やる気はあっても、学べる環境が整っていないことを。3組には平民の面倒をみる貴族もいません。自分のことで精一杯の生徒ばかりです。話し終えると殿下が不愉快な顔をしました。
「殿下、優秀な民は殿下のお力になると存じます。」
「教師は?」
「彼らは平民です。周りの目もあり相談することはできません。また教師達も彼らに期待はありません。定期的に指導役をつけて学びの場を用意してさしあげたいのですが。平等の学園の精神に反しますが上位貴族よりも平民や下位貴族に手厚い環境を整えてさしあげることは、」
「言いたいことはわかった。そこまで彼らは不自由しているのか?」
聡明なクロード殿下も学園の全ての生徒のことを把握することはできません。
「彼らは耐えることに慣れ過ぎてます。身分の高い者に虐げられることも。声をあげられない者がほとんどです。それは私達が察してさしあげることが務めかと」
探るように見られてますが視線を逸らしてはいけません。
「検討しようか。試験が終わった後だな」
「ありがとうございます」
殿下の視線が逸れたことに緊張が抜けそうになりました。欲しい答えをもらえて一安心です。
「公務の話をしてもいいか?」
「はい」
「他言無用だ。次年度、海の皇族を王宮に招く。海の皇国語を話せる未成年の付添いを希望されている。任せられるか?」
断りたいですが、断れません。
「殿下の命とあれば精一杯務めます」
「よもや体調不良で」
疑われてます・・・。必要なら務めは果たしますよ。さすがに国の威信に関わる公務から逃げません。私しか適任者がいないから声が掛かるんですよね・・。
「自身に治癒魔法をかけてでも参内致します。殿下の命に逆らい、他国への恥となる行為は致しません」
「そうか。それだけだ」
「かしこまりました。殿下、恐れながら少しお休みください。お顔の色が優れませんわ」
「え?」
「眠られたほうがよろしいかと存じます。大事な御身です。お時間をいただきありがとうございます。私は失礼します。」
私は礼をして1年3組に向かい試験勉強の指導をすることにしました。
まさか試験の総合成績を2組を抜くとは思いませんでした。クラスでの合同得点も発表されます。3組が2組を抜くなど前代未聞です。2組の生徒が3組に意地悪をしないように気をつけないといけません。
この結果を受けて、クロード殿下は定期的に勉強の場を提供することを決めました。月に2回休養日に各学年に教室を開放し教師に指導させるそうです。自由参加です。ただ時々殿下が様子を見にいくため教師達は必死に指導するでしょう。平等の学園とはいえ王太子殿下の期待に答えない者などフラン王国にはいません。私は初回だけ顔を出しました。それからは先生方と生徒達に差し入れを用意してます。休養日は予定があるので、毎回付き添えるほど時間はないんです。ルーン公爵令嬢ほどではありませんが、ビアード公爵令嬢も忙しいんです。




