第三十八話 兄のため
私はルーン公爵邸に訪問してます。
ルーン公爵夫人にリオも師事を始めました。関わりたくありませんがルーン公爵家に迷惑をかけるのでエイベルを一人で行かせるわけにはいきません。
エドワード様とお茶をして、訓練が終わったので迎えにいくと、エイベルとリオが倒れてます。エドワード様がリオが倒れていることに動揺しないか心配で、顔を見ると静かに見つめております。動揺を他人の前で顔に出すなと両親に教えられているだろうエドワード様の頭を撫でて、二人に治癒魔法をかけます。
「エドワード様、リオ兄様は眠っているだけなので心配しないで下さい」
「わかりました」
「私達は失礼するので、リオ兄様をお願いします。楽しいお茶の時間をありがとうございました」
礼をして、エイベルを水魔法で浮かせて立ち去ろうとすると、スカートを掴まれました。
「レティシア、エディでいいです」
つい生前の癖でエディと呼んでしまうのを気づかれてました。咳や言葉でごまかしましたが聡明なエドワード様には通用しなかったんですね・・・。怪しい人間と思われないだけ救いでしょう。
「エディ様」
「様もいりません」
拗ねるようなお声が、無表情なのに可愛いくつい笑みがこぼれてしまいます。
私のエディも外見は愛らしく可愛らしかったですわ。懐かしいな。あの小さい体をギュっと抱きしめて癒されたい・・。見上げられる青い瞳を怖がらせないように優しく見つめ返します。
「わかりました。エディ。兄が不甲斐なくてごめんなさい。いずれは歩いて帰れるようになるので、見逃して下さい」
「母上に、勝つの?」
意外そうな声に信じられない気持ちはわかります。ルーン公爵夫人は恐ろしく強いので…。今は駄目でも、遠い未来は勝てるかもしれません。
「いずれはきっと。私のお兄様も貴方と一緒で努力家なのです。失礼します」
私は執事長と次回の予定を決めエイベルと一緒に学園に戻るため馬車に乗り込みました。しばらくするとエイベルが起きました。
「お疲れ様です。次回は来週です」
「悪いな」
眉間に皺を見て笑ってしまいます。気まずそうにしなくても、まだまだ風の天才には届きません。
「風の天才のルーン公爵夫人が相手ですもの。いずれは勝てると信じてますわ。いつかはエイベルにも通り名がつきますかね」
「さぁな。マールは?」
「治癒魔法をかけて、エディにお任せしました。起きたらエディと遊んで帰るでしょうから、置いてきました。」
「エドワード様と親しくなったのか」
「無表情なのでわかりません。いずれは笑わせてみたいですわ」
学園に戻るとエイベルに訓練に誘われました。
小さい水球を大量に出して攻撃してほしいと言われました。
エイベルは水球を風の刃で相殺していきます。
「デイーネ、お願いします」
デイーネと一緒に細く大量の水の刃をエイベルにめがけて放ちます。エイベルが風の刃で相殺しますが、間に合わず、取りこぼしが多い為、魔法を止めます。
「エイベル、終わりにしましょう。集中力が乱れてます」
「そうだな」
「ルーン公爵夫人との訓練は大丈夫そうですか?」
「ああ。強い。ちゃんと防御を優先するから心配すんな」
「はい。」
エイベルは怪我をしないように気をつけてくれます。リオのように攻撃優先で防御をないがしろにするときはお説教しました。治癒魔法も万能ではないので、怪我はしないほうがいいのです。
目標の打倒エイベルとは矛盾しますが、努力家の兄が誰よりも強くなれるようにお手伝いしましょう。
***
学園内にはファンクラブがあります。リオはもちろんエイベルにもあります。
私はエイベルのファンクラブのお茶会に定期的に参加してます。
エイベルのファンクラブの会長はパドマ公爵令嬢です。意外ですよね。パドマ様がエイベルが好みだったなんて知りませんでしたわ。クロード殿下一筋だと思っていました。
お茶会ではエイベルのお話を提供します。
エイベルは令嬢達の贈り物を受け取らないので月に1回だけファンクラブを通してエイベルへの食べ物の差し入れを受け取ることにしてます。贈り物を受け取らないことも不満が出ます。エイベルに渡すために付き纏われないためです。押しの強い令嬢はエイベルは苦手なので、私がしっかり手を回します。
パドマ様からの贈り物に首を傾げます。
エイベルの好きな物はリストで渡してあります。いつもは嫌いなものはないんですが、おかしいです。
「レティシアの分もあるわ。二人で食べて。うちの領の新商品だから、感想聞かせて」
笑顔のパドマ様からの贈り物には私の好みの美味しそうなお菓子がたくさんあり笑みが零れます。
「ありがとうございます。大事にいただきます。いただいたお菓子は訓練のあとに差し入れします。エイベルに頼まれて返礼をお持ちしました。こちらはパドマ様に、私がお世話になってると。ファンクラブの皆様にはこちらを」
「ありがとう。嬉しいわ」
花で飾られたお菓子と小さい花束を渡すと綺麗な顔で微笑まれました。パドマ様は嫌われなければ良識のある令嬢です。ファンクラブを統率してくださるので、過激な令嬢がステラや私に意地悪することもないので助かってます。ステラには私のかわりにエイベルの情報を渡して、お茶会に参加してもらうこともあります。今世はステラに頼ってばかりです。
「最近は忙しくエイベルが顔を出せずに申しわけありません」
「私はエイベル様のお邪魔になることは望みません」
「お心づかい感謝します」
「そのかわり・・」
期待した目で見られてます。
「情けないお話でよければお話します」
「もちろんです」
令嬢達の目が輝きました。令嬢達はエイベルのどんな話も好きなのです。時々エイベルの噂の真偽を聞かれるので、正直にお話をします。エイベルファンの令嬢達は私に情報をくれます。ビアード家門が優秀な生徒の情報を欲しいと知っているのでたくさんの情報を仕入れてくれるので、良いご縁になった時は特別に贈り物を。贈り物は私が用意してますがエイベルにカードにお礼を書いてもらってます。エイベルは私に言われたままに書いてるだけなのは内緒です。今世は生前ほどポンコツではないので、令嬢達の話も合わせてくれます。
私の一番の情報源はマナですが、次点はエイベルファンの令嬢達です。
エイベルがファンの対応に困っているのは気付きませんでした。生前も実は困っていたんでしょうか。いや、上手にあしらっていた気が、もしかして私の兄は生前のエイベルよりポンコツですか!?
悲しい事実に気付かないフリをしてお茶を口に含みエイベルをネタにして令嬢達の機嫌を取りましょう。




