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追憶令嬢のやり直し。  作者: 夕鈴
学園編 一年生

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第三十一話 ダンスパーティ

ダンスパーティの日を迎えました。

平民や下位貴族の生徒達のダンス指導も終わり、嗜み程度の技術に仕上げましたわ。


前日の夜遅くまで準備をしてましたがなんとか間に合ってよかったですわ。

第二寮は個室にお風呂がなく大きなお風呂があります。申請して朝から使えるようににして薔薇を浮かべました。ドレス借用希望の生徒達には集合場所に向かう前にお風呂に入って汚れを落とすように頼んでいます。水魔法が使えるのでお風呂掃除も簡単です。

会場の飾りや料理の確認をして、ドレスの着付けをする教室に来ています。

カトリーヌ様が用意した侍女達が生徒達にドレスを着せています。初めてのドレスアップに目を輝かせる生徒達は可愛いです。頑張って準備した甲斐がありましたわ。


「お嬢様、そろそろ準備を」

「私もここで」

「駄目です。お立場を」


マナに連れられて自室に戻り支度を整えました。

私は学園に置いてあるドレスで良かったんですがビアード公爵夫人から新しい真っ赤なドレスが届けられました。濃い色は目立つので着たくありませんが、今回だけは特別です。

パーティはうちを始めたくさんの貴族の寄附もあり、会場は可憐な花が飾られ、豪華な料理も用意され気合いを入れて用意した公爵家の夜会のようです。私は大道芸を呼びたかったんですが警備の都合と趣旨が異なるため却下されました。

そのかわりダンスパーティの音楽は国内一の芸術一家であるリール公爵家が楽団を手配してくれました。リール公爵家が認める楽団はの演奏はうっとりするほどすばらしい演奏を奏でるので楽しみですわ。


会場に入ると赤を纏うエイベルを見てお母様の意図がわかりました。目を見張り動揺している顔にニッコリと笑いかけます。


「エイベル、お揃いですね。お母様は楽しんでますわ」

「母上にドレスを任せたのか。必ずこれを着ろって届けられた・・」

「今日は目立つことがお役目です。頑張りましょう。」


エイベルが盛大なため息をつき眉間に皺を寄せて手を出すので手を重ねます。エイベルのエスコートに慣れるなんて人生何があるかわかりませんわ。兄妹でお揃いなんてからかわれます。私は色々言われるのは慣れてますので、気にしませんが。エイベルに対処できるか心配ですが、今日は無礼講なので頑張ってもらいましょう。だからパーティにふさわしくない不機嫌なお顔も許してあげます。

どんどん人が増え、賑やかになっていきますわ。ドレスコードはないので制服で参加している生徒もいますわ。

クロード殿下の挨拶とともにダンスパーティが始まりました。

演奏が始まったので私はエイベルと軽やかに踊り、場の空気を温めています。婚約者がいる方は婚約者と、殿下はカトリーヌ様と踊っています。クロード殿下をはじめ、生徒に人気な生徒が参加するため上位貴族はほぼ参加してます。今回は無礼講ですが、特別ルールがあります。

ダンスに誘う言葉が出ない時は花を渡して誘います。

恥ずかしい生徒のために仮面も用意しました。

残念ながら生徒会役員は仮面の使用は禁止です。

私はダンスに誘われるのは知り合いばかりですが大丈夫なんでしょうか。ビアードと縁が欲しい方はいませんのね。欲しい生徒はスカウトするから、問題ないですが…。

平民の男子生徒は豪華な食事に夢中です。下位の生徒達は生徒会役員が率先してダンスを申し込むようにカトリーヌ様から厳命されてますが食事を楽しむならダンスに誘うのは無粋ですね。

差し伸べられた手を取り顔を上げて微笑むと仮面をつけている方に素で笑みが溢れました。仮面をつけても瞳の色でわかります。


「レオ様、参加していただきありがとうございます」


レオ様に準備を手伝ってもらいました。配る花をまとめる作業では器用なレオ様にたくさん作っていただきました。


「必死に作った花は必要か?」

「私達にはいりません。でも初心な方にはきっかけになりますわ。それに思い出にもなります」


花を持ってモジモジしている生徒に視線を向けて、ふざけてパチンとウインクするとレオ様が笑ました。レオ様はダンスのエスコートが上手く踊るのが楽しいです。ダンスが終わると一輪の花をくださいました。


「ありがとうございます。」

「順番が逆だがな」

「構いませんわ。お暇でしたら、壁の花の生徒達と踊ってあげてくださいませ。王子様とダンスなんて夢のようです」

「俺でもか?」


レオ様は、サラ様譲りの切れ長な目に整った顔立ち、仮面なしで微笑みかけダンスを申し込まれたら赤面する令嬢もいますわ。ご自分の魅力がわからないのは残念ですが、いくら言っても信じてもらえません。


「仮面をとればわかります。特に平民の生徒にとってレオ様は立派な王子様です。もちろん私にとっても」

「レティシアの頼みなら仕方ない」

「王子様に願いを叶えていただけるなんて光栄です」


悪戯っ子のように笑いかけるとレオ様が私の手に口づけを落とし礼をして去っていきました。周りの視線を集めてます。仮面を取ればさらに絵になるのに残念ですわ。王族らしくレオ様はエスコートもダンスも上手です。エイベルは私が鍛えてますが、まだまだ荒くそれなりで、気が利かないのでレオ様には全く敵いません。エスコートとダンスはセンスが必要なので、努力してもレオ様レベルになるかは難しい…。なにより本人にやる気がないから無理ですわね。

その後もパートナーを変えて踊り続け、もう何曲踊ったかわかりません。

さすがに踊り疲れたので休憩するため場を離れます。


「レティシア」


食事に夢中な生徒に声をかけられました。

テーブルの上の空のグラスに水を注ぎを、ゆっくりと口に含み乾いた喉を潤します。


「忙しそうだな」

「はい」

「食べるか?」

「お気持ちだけ」


笑顔で無理矢理口の中に肉を入れられました。無礼ですが、今日だけは許しましょう。

ゆっくり咀嚼して飲み込みます。グラスの中身を飲み干し、そろそろ戻りましょうかね。


「楽しんでください。私はダンスに戻ります」

「俺と踊って」

「喜んで」


固い顔で誘われ笑みを浮かべて了承しますが、手を差し出されないので、手を取ってダンスホールに戻り、リードしながら踊ります。緊張してるのでニコリと笑いかけます。


「お顔が固いです。ダンスは楽しみましょう。私に任せて力を抜いてください。お上手ですわ」


うっかりダンスの指導をしてしまいましたが最後には笑っていたのでいいでしょう。礼をして離れるとリオに花を差し出されました。無礼講なので家格の高いリオの誘いを断っても許されます。


「マール様、私よりも踊るべき方がいますわ」

「リードに疲れたから付き合ってくれないか?休んでいたらレート嬢に睨まれる」


慣れない方とたくさん踊り続けるのは大変。ダンスの下手なリオは特に・・・。苦笑しているリオから花を受け取ると嬉しそうに笑い手を差し出されます。そこまで慣れない方とのダンスに疲れていたんですね。ゆっくりとしたテンポのワルツをリードしながら踊ります。


「疲れるな」

「そうですね。毎年と思うと過酷ですわ。私はこんなにダンスを踊ったのは初めてです」

「俺達のダンスはカウントされてる」

「私もですか?」

「ああ」


リオが休憩せずに踊っている理由がわかりましたわ。最下位になればペナルティとかありませんよね!?カトリーヌ様の綺麗な笑みが浮かび気を引き締めます。


「ありがとうございます。事前に教えてほしかったです。後半に巻き返しますわ」


ダンスが終わったので礼をして離れます。

会場の隅にポツンとたたずむ令嬢を見つけました。固いお顔の令嬢に笑みを浮かべて近づき話しかけます。


「どうされました?」

「どうすればいいかわからなくて」


下位貴族かしら?無礼講でも身分の高い方ばかりの初めてのパーティーは緊張しますよね。


「良ければ踊りませんか?」

「え?」

「私がエスコートしますわ」


無礼講のパーティですから令嬢同士が踊っても許されます。

戸惑う令嬢に紳士の礼をして、恭しく手を取り微笑み、エスコートしてダンスの輪に混ざります。


「お美しいご令嬢、どうか私にお任せください」


緊張で頬を染める令嬢の表情は固く緊張が抜けませんがリードをして踊ります。令嬢が好む甘い言葉でもかけようかと思いましたが、気持ち悪く怯えさせそうなのでやめましょう。

ダンスが終わったので、花を恭しく差し出し、女性受けする綺麗めな笑みを浮かべます。フィルとステラと一緒に女性騎士が浮かべるような、格好いい表情を練習しました。お手本は昔はたくさんの令嬢の心を掴んだという元お母様ローゼ・ターナーの話を夫人に聞いて想像しながら作りました。


「楽しい時間をありがとうございました」


頬を染めた令嬢が花を受け取り照れたように笑うお顔に礼をして立ち去ります。どうか楽しい思い出になりますようにと願いをこめて。


「レティシア様、私も」


ステラに花を差し出すと愛らしい笑顔で受け取り物凄く可愛いです。

ステラと一緒にダンスを踊ります。これはいいのかよくわかりませんが、ステラが楽しそうなのでいいですわ。視線を集めているのは気にしません。その後も令嬢と何曲か踊り、無事にパーティは終わりました。殿方のパートの練習と令嬢受けする表情を身につけて良かったですわ。人生は何が役に立つかわかりませんわね。

カトリーヌ様はご満悦でした。

なんと一番ダンスをたくさん踊ったのはエイベルでした。

体力があるからできたんでしょう。

エイベルはしっかり鍛えたのでダンスは上手に踊れます。

何事もなく終わって良かったです。

生徒の望み通り縁を作ることができたかは知りません。

私は踊りすぎて誰と踊ったか覚えてません。でも笑っている生徒も多く学園生活の楽しい思い出になったでしょう。幸せな思い出があれば生きる支えになります。いずれ親の庇護がなくなり、広い世界に飛び出し、様々な風や波に立ち向かう方々が乗り越え、逞しく育ってくれるように夜空の星に願いをこめます。どんな場所からでも見られる星は今日も輝いています。

ふわりと頬を撫でる優しい風に笑みを浮かべて、幸せな思い出に浸って目を閉じれば素敵な夢が見られそうですわ。

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