第三十話 訓練
ダンスパーティより先に合同訓練の日を迎えました。サイラス様とソート様には無礼を許してくださいと頼んであります。エイベルとフィルは頼む必要はありません。せっかくなので私とステラも参加します。
「レティシアも参加するのか?」
「はい。そんなに強くないですが」
3組の生徒達と仲良くなりました。やる気のある生徒を見ると頬が緩み将来が楽しみです。
基礎訓練の参加しかエイベルに許してもらえなかったので手合わせは見学をしてます。さすがに手合わせでエイベル達に勝てる生徒は一人もいません。残念ながら今のところ見込みのありそうな方はいませんね。エイベルが苦戦するならスカウトしようと思ったのに・・。
「レティシア様、ありがとうございます。」
ソート様と手合わせを終えた生徒達が寄って来ました。
「お安い御用です。今後も希望があれば教えてください」
「ありがとうございます。魔法の手合わせしないかなぁ」
「見てぇ!!」
盛り上がる生徒の声を聞き、確かに手合わせの見学もいい経験になりますわ。絶対に四人は見応えがあります。何より学年が違うので授業でも武術大会でもお目にかかれない対戦です。
「エイベル、魔法の手合わせが見たいです。サイラス様、ソート様、フィル、お願いできませんか?」
快く了承してくれたので生徒達を集めて結界で覆います。見応えを期待してましたが動きが早くて見えません。忘れてましたわ。風を操り速さが武器のエイベルと身軽さと勘の良さは同世代で一番のフィルに剣の腕なら学園で5指に入るサイラス様と補助が上手く万能型のソート様、空気を切り裂く音と土煙や煙が立ち、全く見えない。これは見学の意味がありませんわ・・。
後輩の勉強になる手合わせをとお願いするのを忘れましたわ。4人とも夢中で手合わせしてますわ。こうなれば勝敗がつくまで止まりませんし、声も届きません。
「はやっ!!」
「見えない」
「やはり魔力か・・・」
あの四人の速さは魔法の力だけではありません。
魔法を使わなくても、学生にしては十分強いと思います。フィルは武術の授業の手合わせで負けなしですから。
「魔力がなくても立派な騎士になれますわ。ビアード家門には魔力を持たない優秀な騎士がいます。厳しい鍛錬は必要ですが」
「平民でも?」
「はい。私の護衛騎士に平民出身者もいます。貴族より根気強く融通が効くので非常に重宝されています」
私の護衛騎士のマオは平民出身ですが優秀です。どこでもついてきてくれまし、狩りもあっさり了承してくれました。ビアード領内だけですがマオのおかげで自由に過ごしています。マオは魔力を持ってますが。
「いいな。いつか会いたいな」
「でしたらビアード領に訓練を受けに来ますか?」
「いいんですか!?」
目を輝かせる様子に笑みが溢れます。
「御家族の許可がありましたら。魔力に関係なくやる気のある騎士見習いは大歓迎です」
「生徒会はすごい」
「優秀な方ばかりですから。私はお話についていけないことがよくあります」
いつの間にか終わりましたね。生徒達が拍手してます。よく見えませんでしたが、凄いものだとわかったみたいです。結界を解除します。
「レティシアは戦える?」
「嗜み程度でしたら」
「やろう!!」
四人の様子に触発されたんでしょうか。生徒にエイベル達が囲まれてますし、少しならいいでしょう。
「わかりました」
魔法なしの剣の手合わせならすぐ終わりますね。礼をして、正面から向かってくる剣を躱します。剣筋が読みやすく、剣で斬りかかると止められますが剣はそれほど重たくありません。剣を合わせて、バランスを崩したので足払いをかけて、剣を飛ばします。最近は足払いの成功率があがりましたわ。武術の授業も生前よりは勝率は上がり、同級生なら勝率は半々です。時間切れで引き分けが一番多いですが、生前のように連敗記録を重ねることはありません。フィルには魔法なしだと一度も勝てません。
拍手が聞こえ振り向くと愛らしい笑顔のステラでした。拍手をもらえるほどではないので、くすぐったく、礼をして、倒れている生徒に手を差し伸べます。
「弱い?」
「はい。私は弱い方です」
頭に衝撃を受けました。嫌な予感がして振り替えると眉間に皺のあるエイベルがいます。
「基礎訓練のみと」
見つからないと思っていたのに予想外ですわ。ごまかすためにニッコリ笑いかけます。
「申し込まれたら受けるでしょう?」
「病み上がりが」
「大丈夫ですよ。今度ビアード家門の訓練に彼らを参加させてもいいですか?」
「馬車が必要だな」
「どんどん賑やかになりますね。将来、うちに入ってくれる方はいますかね。気に入った生徒がいればスカウトするので教えてください」
「お前がスカウトするのかよ」
「訓練は役に立たないので、交渉はお任せください」
頭を乱暴に撫でられました。エイベルには駆け引きは期待してません。とりあえずエイベルの気が逸れたのでお説教はありませんね。
「レティシア様はエイベル様の恋人ですか?」
生徒の声に首を傾げ首を横に振ります。
「私は自分の頭を叩く恋人はごめんですわ」
「叩かせてるのはお前だ!!」
「大きい声を出さないでください。驚きますわ。エイベルが驚かせてごめんなさい。そろそろ解散にしましょう。お疲れ様でした。ビアードは志のあるものは大歓迎です。訓練やビアード家門に興味がある方はいつでも声をかけてください」
「ありがとうございます。」
ブツブツと呟きながら去っていく生徒達を見送ります。是非精進して立派な騎士を目指して欲しいですわ。
「レティシア嬢、控えめに」
サイラス様に咎められるのは初めてです。
「はい?」
「最近、ビアード家門が大きくなりすぎじゃないか?」
優秀な騎士の取り合いは仕方ありません。それにうちの当主はビアード公爵ですから魅力的な騎士に憧れるのは仕方のないものですわ。エイベルも是非お父様のように成長して欲しいですわ。
「さすがお父様ですわ。父が申しわけありません」
「君に仕えたいって」
サイラス様の冗談は珍しいです。
「社交辞令ですわ。サイラス様もうちの家門に大歓迎致しますわ。婿入りしていただいても構いませんよ?」
「その冗談を本気にする奴出るからやめて」
「令嬢に人気のサイラス様の相手は私では役不足ですわ」
憐れみの視線を向けられてますが自分の身の程をわきまえてます。ふざけるのはここまでにして切り替えて礼をします。
「今日はありがとうございました。またお付き合いくださいませ。ささやかですがお礼です」
お礼に作ったお菓子と魔石を渡します。
「治癒魔法を付与してあります。体力回復と小さい怪我なら治ります」
「こんなに魔法の腕が凄いのにな」
魔石を眺めて、不満そうな顔をするサイラス様もソート様も優しいです。二人の優しさが嬉しくて頬が緩んでしまいます。私の腕はまだまだですけどね。
「気にしないでください。どの令嬢も悪名はありますもの。私はまだマシなほうですわ」
ビアード公爵家で風属性をもたずに、常に王家の行事を欠席する私はまがいものの深窓の令嬢と囁かれています。生前の無属性設定の時ほど言われてませんが。ルーンの恥さらし、偽物貴族令嬢、人形など色々言われた頃が懐かしいですわ。皆様、よく思いつくと感心しました。
とりあえず無事に合同訓練が終わりました。
さてダンスパーティの準備を頑張らないといけませんね。中々今世も忙しいですわ。




