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追憶令嬢のやり直し。  作者: 夕鈴
学園編 一年生

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第二十五話 帰国

海の皇国からフラン王国への帰国の船に揺られています。

外交も無事に終え、私もやりたいことが終わりました。迷いも消え、見張り台から小さく見える海の皇国を眺めています。レオ様は自室で休まれています。フラン王国の船にレオ様と同乗するのもよく考えれば不思議ですね。昔はクロード殿下と船の上で海を眺めることもありましたわ。

冷たい潮風が吹き、体が冷えてきました。過去を懐かしむのはここまでですね。時間は有限なので今世のやるべきこと、まずはレオ様のお友達を増やそうと思います。正直リオと関わりたくありませんがレオ様のためなら我慢します。マール公爵家との付き合いは研究者になりたいレオ様達にとって役に立ちます。三男でもマール公爵子息の持つ力は大きいですから。名残惜しいですが見張り台から降りてリオを探しましょう。見張り台から飛び降りるとマオが風魔法で包んでくれたのでふわりと着地しました。

乗組員の方々の視線を感じたので、礼をします。凝視しているリオに近づき笑みを浮かべます。


「マール様、お暇でしたらお茶に付き合ってくださいませんか?」


目を丸くしてしているリオが嬉しそうに笑いました。生前の息子を思い出すお顔ですわ。


「喜んで付き合うよ」


了承を得られたのでレオ様のお部屋に行き、戸惑うリオに気付かないフリをして笑顔で椅子を勧めます。

レオ様には自由に部屋に入る許可をもらっているので不法侵入ではありませんよ。


「レオ様、お茶しましょう。起きてください」


時間を持て余してベッドでゴロゴロしているレオ様に声を掛けるとゆっくりと起き上がりました。


「マール様をお茶に誘ったら喜んで招かれてくれましたわ。将来、サラ様に思う存分研究させてさしあげたいならマール様は仲良くなっておいたほうがいいですわ。マール様はクロード殿下の従兄ですがレオ様に意地悪したりしませんよ。もし意地悪したら私がやり返してさしあげますわ。座ってくださいませ」


無表情のレオ様に笑いかけしばらく見つめ合うと椅子に座りました。一歩踏み出す勇気はいつの世も大事ですよと言葉に出さずに、レオ様の乱れた髪を手櫛で整えます。


「俺とお茶を飲んでも平気か?」


無表情なレオ様にリオが社交用の笑みを浮かべました。


「はい。俺でよければいくらでも」


王子殿下のお茶の誘いを断る者はいませんが・・。マール公爵家で教育されているリオならレオ様との適切な距離を保ち、無礼を働くことはないでしょう。友達になれなくても練習相手には最適。

王子殿下に恐れ多いですがレオ様は人に慣れることから始めるべきなので。戸惑っているレオ様ににっこりと笑いかけます。


「安心してくださいませ。仲良くなればきっとレオ様の手料理も召し上がってくださいますわ」

「手料理?」


呟きに視線を向けるとリオに不思議そうな顔で見られてます。貴族は料理をしないので戸惑う気持ちはわかります。


「レオ様の最近のご趣味はお料理です。いつもエイベルの部屋のキッチンを貸りて料理してます」

「レティシアも好きだよな。こないだ部屋に甘い物の匂いを充満させて怒られてもやめないくせに」

「二人で料理されてるんですか?」

「ああ。おかしいか?」

「意外だっただけです。楽しそうですね」


さすがマール公爵家。無表情なレオ様に穏やかな笑みを浮かべて反応しています。

王族の前で感情を見せないのはさすがですわ。本音か引いているかはわかりませんが気にしません。

生前のリオは料理が得意でしたし私以外で料理友達も素敵ですね。リオの部屋には立派なキッチンもありますし、もし本当にレオ様のお友達になってくれるなら大歓迎です。


「レオ様、今度マール様と一緒にお料理されたらいかがですか?マール様の部屋にもキッチンついてましたよ。道具と材料は私が貸してさしあげます」

「さすがに」


私に戸惑いの視線を向けるリオに首を傾げます。


「駄目ですか?」

「俺は料理できないんだけど」


確かにこのリオは料理が全くできなそうですわ。料理は貴族子息の教養には含まれませんが、恥かしそうに羞恥で頬を染めるリオに笑みを浮かべます。


「マール様は手先が器用ですからすぐにできるようになりますわ。レオ様と二人で組めばいずれは料理人を目指せますわ」

「レティシアは不器用だからな」

「最初は私の方がうまかったのに・・。レオ様、エイベルの影響を受け過ぎですわ」

「エイベルは元気だろうか」

「元気ですよ。今頃訓練に励んでますわ。お手紙を書いてもお返事は来ませんでした」

「なんて書いたんだ?」

「内緒です」


私を挟んでの会話ばかりして、レオ様とリオの二人は会話が弾みません。これは退散したほうがいいですね。きっとマール公爵家の期待の外交官ならうまくやるはずですわ。


「私、お部屋にお菓子を取りに行ってきますわ。」


二人でお話できるように、にっこり笑ってゆっくり立ち上がり退室しました。マナを二人のもとに残してあるので大丈夫でしょう。自室に戻り、本を読もうとするとマナが苦笑を浮かべて入室しました。


「お嬢様、そろそろお戻りください」

「仲良くなれそうですか?」

「難しいかと」


今世のリオが頼りないのか、レオ様の警戒心が強いのか・・。

お菓子を持ってレオ様の部屋に入ると二人に安堵の顔を向けられました。生前はありえない状況に楽しくなってしまい慌てて笑いを堪えました。そんなに気まずかったんですか・・?


「お待たせしました」

「遅かったな」

「お菓子が見つかりませんでした」


不満そうなレオ様ににっこり笑いお菓子の箱を開けて、テーブルの上に置きます。海の皇子様に教えてもらった店で買った世界各国の国のお菓子が混ざった詰め合わせです。珍しい物が好きなレオ様が興味を示しています。

ステラとフィルのお土産用にも買いました。


「ビアード嬢はいつもお菓子を持っているの?」

「お父様に非常食として持たされてます」

「レティシアは気分ですぐに食が細くなるから」

「レオ様、私の事をネタにしないでください」

「お前はいつもエイベルをネタにしているじゃないか」

「一緒にいる時間が長いから仕方ないです。マール様もお兄様のお話を話題にしませんか?」

「うちは歳が離れているから」

「寂しいですね」

「いない方が気楽でいいけど」


リオのお兄様との話をレオ様が興味深そうに聞いています。二人の会話が続くことに安心してお茶を飲みながら眺めることにしました。

口にいれたお菓子が好みでなかったので慌ててお茶で流し込みました。このお土産は失敗かもしれません。毒味をしないとレオ様に差し上げられないので、渋々レオ様のために口に含みます。美味しくないので、ステラの分も全部、フィルにあげようかな・・。

レオ様は美味しくないのに楽しそうに召し上がられてます。

その後も何度かお茶を重ねるうちにレオ様はリオに懐き、お友達が一人増えたことに安心しました。

レオ様と騎士様のお世話をしていると気付くとフラン王国が見えてきました。穏やかな船旅も終わり、フラン王国に帰国しました。

下船手続きを終えたので、マール公爵にご挨拶をしないといけません。穏やかな笑顔のマール公爵に礼をします。


「レティシア、御苦労だった。君のお蔭で貴重な伝手と情報が手に入ったよ」

「光栄です。私の我儘を聞いてくださりありがとうございます」

「外交官の才能があるのに勿体ない」


伯父様、私は何も外交に携わってないんですが・・。

冗談だと思いますが、念のためお断りしましょう。


「私は社交は苦手ですので領地に引きこもりますわ」

「また是非同行してほしい。久しぶりの安全な船旅だった」

「マール公爵は褒めるのがお上手ですわ。お役に立てたなら私は堂々と帰宅できますわ。このたびはありがとうございました。失礼しますわ」


令嬢にいつも優しいマール公爵に礼をして、船を下りるとエイベルが迎えに来てくれているので手を振ると苦笑されました。


「ただいま帰りました」

「お帰り」

「私はローナに大きいお土産があるので今日は領地に帰ります」

「俺も帰る」

「お兄様へのお土産たくさん買ってきましたわ。楽しみにしていてください」


騎士様はマナに任せてあります。いつの間にか眉間に皺のあるエイベルの腕を抱いてビアードの馬車に乗り込みます。

私は馬車に揺られながらエイベルにローナ達の事情を説明すると思いっきり頭を叩かれました。これからも領地で保護するなら、きちんと説明しないといけません。

突然、ローナに貴族の来客がきたら不信に思ってしまいますの…。ビアード公爵夫妻にもきちんと説明しますよ。


「もう少し考えて行動しろ」

「よく考えた結果です」


ビアード公爵邸に入る前に表情の暗い騎士様の前に立ちました。

私は騎士様に申しわけないですがローナに会わせる前に約束させないけません。


『どんな事情があっても、子供への危害を加えたら許しません。また海の皇国の皇族の事情も話さないで下さい。命令です』


ぼんやりと見られましたが笑顔で圧力をかけたら頷きました。

ビアード公爵邸に帰るとビアード公爵夫妻が出迎えられ抱きしめられました。二人からの愛情はいつもくすぐったく笑みがこぼれます。厳格なビアード公爵夫妻が愛情深く優しいと知る方はどれだけいるのでしょうか。


「お父様、お母様ただいま帰りました。」

「レティ、お帰り。御苦労だった。体は大丈夫かい?」

「はい。体調を崩すことなく貴重な体験をさせていただきました。お父様とお母様とゆっくり過ごしたいのですが、その前にビアード公爵令嬢として大事なお話があります。お時間を作っていただけますか?」

「移動しようか。」


お顔が崩れていたビアード公爵の顔が凛々しいお顔に変わり、腕から解放されました。

ビアード公爵夫妻とエイベルと騎士様を連れて執務室に移動しました。同じ説明なのにエイベルも聞くんですね。人払いした執務室を防音の結界で覆い、メイ伯爵との話し合いのことを説明しました。


『ローナがいるんですか!?』


騎士様が驚いた顔をしています。フラン王国語で話したのに通じるんですね。私の一方的なフラン王国の授業が役に立ってるようで一安心ですわ。


『海の皇国では、情報が漏れる心配がありお話できませんでした。ローナは記憶喪失です。二人の子供と一緒に我が家で保護してます』


ビアード公爵に肩を叩かれました。


「レティシア、事情はわかった。彼には私が話しを聞こう。今日は休みなさい」


「かしこまりました。お父様、通訳が必要でしたらマナとマオに同席を」

『騎士様、私の命令よりも父であるビアード公爵の命令を優先してください』


マナ達は騎士様と一緒に海の皇国語を教えたので、優秀な二人は嗜み程度なら話せるようになりました。

礼をして退室します。ビアード公爵夫妻とエイベルの3人で尋問なんてしませんよね・・。当主の命令には逆らえませんし、騎士様頑張ってください。


「お嬢様、お帰りなさい」


執務室を出ると、ローナ達に会いました。笑顔のローナに笑みが零れます。ローナにとって記憶を失うほど、辛い過去。これからは幸せだけが訪れるようにと願いは口にせず、ローナに抱きつき、戸惑うお顔に笑いかけます。


「ローナ、ロキ、ナギ、貴方達はビアード領民です」

「お嬢様?」

「ビアード公爵令嬢として何があっても守ります。困ったことがあれば相談してください」


ローナと離れて、ロキとナギの頭を撫でて自室に戻りました。

三人はこの国で幸せになればいいんです。あんな怖い国には帰らなくていいです。私はローナ達が皇族ということは忘れます。三人は大事なビアード領民です。

ローナ達がビアードで幸せに暮らせるようにきちんと手を回しましょう。私はいつ消えるかわかりません。本物のレティシア・ビアード様が戻った時はどうか3人を庇護していただけるように日記にしっかり書き込み、換金すれば一生養えるだけの魔石も用意しましょう。魔石を作る魔力が私の物ではないと言うのは見逃してくださいませ。

ちゃんとレティシア・ビアード様が体に戻った時に困らないように準備もして、社交界でもきちんとした立ち位置を目指します。王家の覚えは悪いですがそれ以外は不自由なく公爵令嬢として全うできるように基盤を固めておきますので。私は誰に言い訳してるんでしょうか。いつの間にか抱いていた白い鳥の縫いぐるみを片付けます。

ベッドに横になると、どっと疲れが襲ってきました。疲れたので今はこのまま目を閉じて眠ってしまいましょう。幸せな夢が見られそうな気がしますわ。

エイベル、お父様、お母様、お土産は後で渡すので、今は寝かせてくださいませ。

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