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追憶令嬢のやり直し。  作者: 夕鈴
第一章  幼少期編
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第二話 ビアード公爵令嬢

ごきげんよう。

3度目の人生はレティシア・ルーンからレティシア・ビアードになったビアード公爵令嬢です。


部屋を抜け出し書庫に行くと大騒ぎになったため大人しく自室で療養してました。

まさか使用人に囲まれてエイベルに怒られ、ビアード公爵に抱かれてベットに戻されるとは思いませんでしたわ。

過剰に心配するビアード公爵夫妻や使用人達に困惑したため、ずっとベッドで眠ったフリをしていました。

眠ったフリをしていれば、気を遣って一人にしてもらえますので。毎日医務官に診察を受け、熱はないのに自室療養がなかなか解けませんでした。体に異常がないのに、数日経ってようやく医務官に風邪の完治のお墨付きをもらいました。風邪なのに大げさですわ。混乱して日付感覚がなくなりました。

休んだ分のお勉強が貯まっていることを想像するとため息がこぼれました。

やっと自由に出歩けるようになり慌てて必死に情報を集めました。

ビアード公爵家の使用人達の話を聞くと、レティシア・ビアードはお転婆で我儘なお嬢様です。

悪戯が大好きで、お勉強からも逃げていたため、礼儀作法が身に付かず王家の行事は体調不良で強制的に休まされていたそうです。娘に毒薬を飲ませ寝込ませるのはどうかと思いますが…。

ありがたいことに王太子であるクロード殿下との接触はありません。

彼女は王子様に憧れていました。王子様と運命の出会いをして結ばれるのを夢見るとは、現実を知らないって幸せですわ。

血筋では王子の婚約者を目指せる立場なのですが、この年で礼儀が身に付いていないのは公爵令嬢として許されません。貴族の恥を王族の前に曝すわけにはいきませんわ。

王子に夢を見てはいけません。

第一王子のクロード殿下は2歳年上です。文武両道で外見だけなら美しく理想の王子様ですが、中身は違います。いつも穏やかな笑みを浮かべていますが腹黒です。穏やかな笑みで警戒心を解かせ、場を支配する恐ろしい方です。色々思い出したら寒気がしてきました。

今はクロード殿下のことはどうでもいいですわ。


ビアード公爵家は驚くほど甘くて優しい環境のようです。

ルーン公爵家でお勉強から逃げたらお母様の恐怖のお説教と倍の課題が待ってました。

一度だけ我儘を言って、お勉強をサボりマール公爵邸に泊まらせていただいた翌日は恐怖でしたわ。もう二度と投げ出さないと誓いましたわ・・・・。

昔の記憶に惚けている場合ではありませんわ。

ビアード公爵夫妻はいつまでも甘やかせないので、無理矢理お勉強させる計画中だったようです。無理矢理の方法が怖くて聞けません。全て使用人の言葉に聞き耳を立てて集めた情報なので真偽はわかりませんが・・。


療養生活も終わったのでお勉強がはじまるでしょう。

今日の予定がわからないので、専属の侍女であるマナを呼びました。


「マナ、今日の予定を教えてください」

「お嬢様?」


マナに困惑した顔を向けられます。

もしかして予定を聞くのは不自然ですか・・?まだビアード公爵令嬢になって日が浅いので、勝手がわかりません。病み上がりということで目を瞑ってくれることを願いましょう。今の所、誰にも記憶喪失はバレていません。

静かに待っているとゆっくりと口を開きました。


「午前中は作法のお勉強が入ってます」


沈黙が続きます。見つめ合ってしばらく立ちました。マナの顔が青くなりました。まさか、


「それだけですか?」

「はい」

「他の時間の予定は?」

「ありません」


言葉を失いました。

組まれている予定が驚くほど少ないのです。物心ついた頃から1日中お勉強してました・・。

伯母様であるマール公爵夫人の配慮でお勉強を減らして貰った2度目の人生さえ、もっと予定がつまってましたが・・。

病み上がりなので気遣われているのでしょう・・・。そうですよね。だって療養生活も異常でしたもの。毎日顔を見に来るビアード公爵夫人に戸惑いましたもの。多忙な公爵夫人は用がなければ娘の部屋など訪ねませんもの。

悩んでも仕方ないですわ。


「マナ、1週間の私の予定をまとめてください」

「お嬢様、気分が優れないならお休みでも」


顔色が悪く眉を下げて、さらに不安そうな声を出すマナに笑顔で圧力をかけます。

了承の返事が欲しいだけです。


「お気遣いありがとうございます。体調は問題ありません。よろしくお願いします」


マナは困惑した顔のまま退室していきました。

侍女がこれほど表情豊かで大丈夫なんでしょうか。気にしてはいけませんわ。

なぜか自室の扉の外には騎士が配置されてます。邸内で護衛がつくことに慣れないですが気にするのはやめましょう。

先生を待っていると驚愕した目で見られました。


「お嬢様、今日はお逃げにならないんですね。えらいですわ」


感嘆した声で褒められる理由がわかりません。正しい返答がわからないので、頭を下げました。


「よろしくお願いします」

「レティシア様、やっと挨拶を」


瞳を潤ませる先生に困惑しました。

貴族の挨拶の授業でした。内容はすでに頭に入ってますが怪しまれないように、真面目な顔をして静かに授業を受けました。

先生はずっと瞳を潤ませて過剰に褒めてくれます。教わる内容よりも褒め言葉が多くドン引きするのを隠して平静を装います。先生はレティシア・ビアード様の教育に悩んでいたようです。公爵家の教師をクビになれば、どこも雇ってはくれません。

私のことではありませんが、同じ貴族が迷惑をかけたことに罪悪感が沸いたので頭を下げました。


「先生、今まで大変失礼致しました。心を入れ替え頑張りますのでご指導よろしくお願いします。」


礼をするとさらに号泣しました。この先生は大丈夫なんでしょうか!?おかげでこの後、医務官に診察を受けました。名誉に関わるので私よりも先生を診察してほしいとは言えませんでしたわ。


周囲の反応を観察するとレティシア・ビアード様は私には想像もつかないお転婆なお嬢様でした。使用人宿舎に悪戯に行き、厨房の皿を割り、邸を抜け出し、使用人の後に忍び込み驚かせる…。話を聞くたびに目を丸くしました。

私の常識を超えています。真似するのは諦めましたわ。

公爵家の多忙な使用人の仕事の邪魔をして無邪気に笑うなどできません。

彼女に甘い使用人達も微笑ましく見守っていたそうです。令嬢の悪戯はビアード公爵夫妻に報告し厳しい罰を受けさせるべきなのに…。

頭の痛くなる話のおかげで新発見がありました。周りが戸惑ってもにっこり笑えば大体は許してくれます。私とレティシア・ビアード様との違いに戸惑う使用人達にはにっこり笑ってごまかすことを覚えました。


「お嬢様、お体はいかがですか?」

「元気です。お気遣いありがとうございます。失礼します」


心配そうな顔をする執事長ににっこり笑いかけて、礼をして書庫に向かいます。聞かれなければ気にしません。今のところは私の記憶喪失はバレてません。

フラン王国の公爵令嬢らしくあれば問題ありませんわ。評価が良いほうが本物のレティシア・ビアード様に体を返す際に不満は出ませんものね。

ビアード夫妻も上機嫌なので、この方法できっと大丈夫です。変な顔で見るエイベルは気にしません。

悩みましたが、私には他の名案は浮かびませんでしたわ。

晩餐の席でビアード夫妻が上機嫌な笑みを浮かべています。


「レティ、教師達が褒めていたよ。」

「最近は振る舞いも上品になって」


礼儀作法は体に染みついてます。この程度で褒められることに困惑してしまいます。

2度目のやり直しの人生の時も作法を両親に褒められたことはありません。公爵令嬢なら当然です。

涙するビアード公爵夫人に笑みを浮かべます。先生方も未だに私の授業態度に感動されて時々瞳を潤ませます。


「私はまだまだです。先生方のご指導のおかげですわ」

「無理はするなよ」

「今のレティならいつでも社交デビューできるわ」


優しく微笑むビアード公爵夫妻に首を横に振って拒否を示すと頭を撫でられました。

エイベルは無関心に食事をしています。

社交デビューはできればギリギリまで避けたいです。


「お母様、私は社交デビューよりもやりたいことがあります」

「なにかしら?」

「私にも武術を教えてください」


カトラリーが落ちる音がしました。エイベルの手からカトラリーが落ちていました。

ビアード公爵夫妻とエイベルに凝視されます。エイベルのマナー違反は注意しないんですね。

にっこりと笑顔を浮かべてビアード公爵を見つめます。今世の両親も驚くほど私の笑顔に弱いのです。


「私、お兄様に勝てるようになりたいです。それにビアード公爵家の者が弱いなど許されませんわ」

「レティ、いずれは嫁ぐんだ。強くならなくてもいい」


優しく咎める声に笑みを崩さず見つめ続けます。

公爵令嬢が武術を学ぶのは非常識です。ですが今後のために必要です。


「私はお父様の命に従います。ただ嫁いでもビアード公爵本家の者として恥じないように、自分の身と臣下は守れるようになりたいですわ。」


ビアード公爵をじっと見つめると優しく笑って頭を撫でてくださったので、私の勝ちですわ。


「ちゃんと、言うこと聞くんだよ」

「お父様大好きです。約束しますわ」


マナー違反ですが、食事の席を立ちビアード公爵に抱きつきます。抱き上げてデレデレしたお顔で頭を撫でるビアード公爵にも慣れました。

優しい顔でお茶を飲んでいるビアード公爵夫人と呆れた顔のエイベルがいます。


「レティ、そろそろ戻りましょうか」


ビアード公爵夫人に声を掛けられ、ビアード公爵の膝の上から降りました。食事はおえています。

羨ましそうな顔をするビアード公爵夫人ににっこり笑いかけます。


「はい。お母様。寝る前にお話を聞かせてくださいませ」


嬉しそうに笑ったビアード公爵夫人と手をつなぎ、礼をして退室します。ビアード公爵夫人は多忙なので、あまり一緒の時間を作れません。レティシア・ビアード様はよく両親の寝室に潜り込み共に眠っていたそうです。私には恐れ多くてできないので、眠る前にお話をお願いすると嬉しそうに微笑まれ頭を撫でられました。照れてしまいますが、幸せそうなお顔のビアード公爵夫人のお話に耳を傾けて眠りにつくのが日課になりました。お話の内容が王子様の話ばかりなのは不満ですが、我儘はいけません。

優しい声とお腹を叩く優しい手に甘えて今日も目を閉じました。



ビアード公爵夫妻は娘に甘いです。私にとってレティシア・ビアード様は非常識の塊ですが甘やかされて我儘な子が育ったのは仕方がない気もしました。

申し訳ありませんが、私も二人の甘さを利用させてもらいましょう。記憶喪失を知られるわけにはいきませんので。


***

訓練が始まりました。エイベルのお古の訓練着を借りました。マナの咎める視線は笑顔で無視しました。

ビアード公爵家は大きな訓練場が2つと小さい訓練場が幾つもあります。ビアード領には森がたくさんあり、森も訓練場として使用しているそうです。

エイベルがいつも訓練をしている一番大きな訓練場に案内されました。


「お嬢様、いらっしゃいませ」

「今日からよろしくお願いします」

「はい。お体が一番ですので、無理は禁物ですよ」


指導騎士に挨拶をして、今後の予定を教えてもらいました。

訓練は基礎体力作りから始まりました。

指示通り訓練場の周りを走りました。すぐに息切れがして体がフラフラします。何か声を掛けられる気がしましたが、答える余裕はありません。指示された10周を走り終え、フラフラと木陰に移動しました。座り込んで息を整えていると視界か真っ暗になりました。


***

初めての訓練の翌日は筋肉痛になりました。エイベルに笑われましたが、訓練場で眠った私を部屋まで運んでくれたようなので苦言はやめました。

騎士達は私の訓練を暖かく見守ってくれます。

訓練量が少ないですが、子供の体に過度な訓練は成長の妨げになるので、一人で勝手に訓練はしていけないとビアード公爵と約束しました。エイベルの訓練も厳しく管理されているそうです。


厳選された使用人しかいないルーン公爵邸とは違い、ビアード公爵邸は騎士が多く全然雰囲気が違います。使用人と私の距離も近く礼儀正しい使用人しかいないルーン公爵家では考えられないやり取りがされています。例外の不作法な使用人のケイトとダンを思い浮かべましたがお友達なので数えるのはやめました。私の無礼を使用人は咎めず、お母様にも報告しないのでビアード公爵邸は気が楽です。使用人と冗談を言い合えるなど思いもしませんでしたわ。

常に緊張していたルーン公爵邸での日々が嘘のようですわ。

またありがたいことに今世は護衛騎士を連れれば、自由に出歩くことが許されてます。

私のお勉強の予定は恐ろしいほど少なかったです。求められるレベルの低さに驚きましたが気にすることはやめました。

自由時間が多いので護衛騎士と一緒に出掛けることが日課になりました。


***

今日はお勉強の予定はありません。

私は行きたい場所があるので料理人に頼み、贈り物用のお菓子を用意してもらいました。

お菓子を持って馬に乗り、ルメラ領を目指しました。

馬で出かけるなんてルーン公爵家では考えられませんでした。ビアード公爵家はお勉強さえしっかりすれば自由ですばらしいですわ。

門限を守り護衛騎士から離れないと約束はありますが。

ルメラ領に到着してから大問題に気づきました。朝早くに出発したのに到着したのはお昼過ぎでした。

確実にビアード公爵夫妻と約束している門限までに帰れません。


「お嬢様、大丈夫なんですか…。」


苦笑している護衛騎士のマオに、にっこり笑いかけます。

もう着いてしまったので仕方ありません。マオに行き先を教えてませんでした。乗馬中は集中するので、声を掛けられることはありません。


「私が怒られます。マオはちゃんと諫めたと伝えます。」


マオに笑顔で圧力をかけると頷いてくれました。

怒られる覚悟はできたので目的を果たしましょう。ルメラ様の家を探します。

領民に聞くと親切に家を教えてくれました。

村から離れた場所にある小さな家の扉を叩くと、幼いルメラ様が出てきました。


「貴方は」


不思議そうな顔をしているルメラ様に警戒されないように微笑みかけます。


「お菓子を作りすぎたので、お裾わけに」

「うちに?」

「はい。」


じっと見つめられます。子供はお菓子で警戒心を解いて仲良くなれるかと思いましたかが甘かったですか?


「リアナ、どうしたの?あら…」


色白で綺麗な方はルメラ様のお母様でしょう。生前お会いした時は、痩せて、髪も乱れたお姿でした。お元気そうで何よりですわ。頭がおかしい夫人には見えません。

甘味は貴重なので喜ばれるといいんですが。


「お菓子をお裾わけにまいりました。私はルリと申します。」


礼をしてお菓子の詰まったバスケットを幼いルメラ様に渡し、ずっと笑顔を浮かべてますが、私は不審者と思われているようです。凝視されています。

これはお菓子作戦は無理です。今日は引き下がりましょう。


「では、私はこれで失礼します」   


礼をして立ち去ります。不審者として人を呼ばれても困ります。

ゆっくりしている時間はないので急いで帰りました。

マオの風魔法で馬の足を早めてもらいましたが門限は過ぎていました。

ビアード公爵邸に帰ると優しく怒られました。

申し訳ない顔を作って、謝罪するとすぐに許してもらえました。ビアード公爵家、甘すぎませんか?

当分はルメラ様の所に通いたいんですがどうしましょう。ビアード公爵夫人に探りを入れましたが門限を延ばすのは無理でした。夜は危ないので仕方ありませんわ。暗くなる前に帰ってくる約束を再度言い聞かせられたので、反省した顔で頷きました。


試しにお兄様にお願いしてみましょうか。


「エイベル、お願いがあります。」


外で素振りをしているエイベルが手を止めて呆れた顔をしました。


「そろそろ寝る時間だろうが」

「お兄様は訓練ばかりで、私の相手をしてくれません」


膨れた顔で睨むと近づき、頭を乱暴に撫でられました。今世はエイベルがわかりやすく優しいのが不思議です。


「明日、時間を作るよ。風邪を引くから屋敷に戻って寝ろ」

「約束ですよ」


エイベルの言葉に頷いて自室に戻りました。邪魔するつもりはありません。なぜかビアード公爵家では私が体が弱いと思われてます。


***


翌日、エイベルが部屋を訪ねてきました。約束を守るところは生前のエイベルと同じです。エイベルをじっと見つめます。


「お兄様、お願いがあります。私、ルメラ領に通いたいんです。お父様を説得してください」

「は?」

「お願いします。お兄様」


エイベルが眉間に皺を寄せて、頭を掻いてます。


「ルメラ領は遠いし、うちと交流がない」

「お友達になりたい可愛い子を見つけましたの」

「お前、行ったのか!?」


突然声を荒げたエイベルに驚きました。


「護衛を連れて行きましたわ。夢を見たんです。ルメラ領に素敵な子がいるって」

「父上はビアード領内なら自由にと」

「え?」

「他領に行く許可は出ていない」


自由って領内でしたの・・。

武門名家は恨みを買っております。

国のために正しいことをしても、全ての人にとって正しいことなどありません。制圧された加害者の遺族に刃を向けられることも、珍しくはありません。

ルメラ様とお友達計画は失敗ですわ・・・。

それより、気にしなければいけないことがありました。護衛騎士が怒られます。

真顔のエイベルを説得しないといけません。


「そんな・・。お兄様、騎士を怒らないで。お父様達に内緒にして。私が悪いんです。何も言わずに連れまわしたの」

「うちの騎士はお前に甘いからな・・。これから領を出る時は、父上達の許可を取るのを忘れるなよ」


拍子抜けするほど説得は簡単でした。これってもしかして、ルメラ様とのお友達計画もいけますか?


「ルメラ領の少女とお友達になれた後は、必ずと約束しますわ」

「報告してくる」


つい笑ってしまったのがいけませんでした。部屋を出て行こうとするエイベルの手を掴みます。

説得再開です。


「お兄様がお皿を割ったことお父様に言いますわ」

「なんで知ってる!?」


驚いた顔をするエイベルににっこり笑いかけます。

エイベルはビアード公爵の大事にしているお皿を割ったと使用人が噂をしてました。必死に隠蔽するエイベルを微笑ましく見ていたそうです。どこが微笑ましいかは私にはわかりません。


「お皿を埋めた場所もわかります」

「お前は気配を消すの上手いんだよ・・。どうしても行きたいなら、旅行でも強請ればいい」


顔に手を当てて茫然としています。そんなに怒られるのが怖いんでしょうか。

家族で出かけたらルメラ様と仲良くなる時間はありません。まずビアード公爵夫妻がずっと私を離してくれない気がします。多忙な夫妻の貴重な休みは必ず相手をさせられますもの・・。今世の両親が私を好きすぎて、生前の厳格なビアード公爵夫妻のイメージが崩れ落ちましたわ。


「お兄様、ルメラ領はなにもありません」

「友達が欲しいなら、茶会でも開けよ」

「貴族のお友達は面倒ですわ。」

「おい・・。噂のビアード公爵家の深窓のご令嬢がこれかよ。これを見た者達の不満が凄そうだ」


私には変な悪名があります。毎回王家の行事を欠席していたので病弱なビアード公爵令嬢と言われてます。病弱令嬢では響きが悪いので深窓の令嬢と囁かれています。病弱設定なら王子の婚約者候補からは外れるので利用することにしました。

怖がるフリをしたら王宮行事を休む協力者になってくれるでしょうか。

怯えた顔を作って呆れた顔のエイベルの手を握ります。


「怖いですわ。お兄様、いじめられたら守ってください」

「お前ならやり返すだろうが。」


失礼ですわ。

笑い出したエイベルをじっと見つめます。将来、目の前の彼が私を攻撃するんでしょうか。最初の人生で私を監禁した協力者はエイベルでした。


「お兄様は私に攻撃を向けることはありませんか?」

「妹だからな。バカなことしたら叩くけどな」

「約束ですよ」

「バカなことはやめろよ。」


頭を乱暴に撫でてくれる手は優しいです。

ルメラ様のことは保留にします。社交デビューがすんだら、ルメラ男爵夫人と仲良くなりましょう。私はビアード領で過ごしているので、貴族には顔を知られていません。

おかげでエイベルや騎士に遊んでもらいながら、平穏に過ごしています。

エイベルは時々王太子のクロード殿下に会いに行っていますが私のことは話題にしないでと頼んであります。クロード殿下に興味を持たれないようにしないといけません。

平穏生活のために王家との関わりは回避です。貴族としてどうしても必要な時以外は・・・・。

レティシアは2度目の人生で成人しています。体に引っ張られて心も退行しています。

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