表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶令嬢のやり直し。  作者: 夕鈴
学園編 一年生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/423

兄の苦労日記12 

レティシアがルメラ領に滞在中の頃のエイベルの話。

長期休みに入り父の命で王宮でクロード殿下の傍で近衛騎士見習いとして過ごしている。

妹は護衛騎士を連れてルメラ男爵領に1週間遊びに行っている。帰ってきたら社交で忙しくなるそうだ。この休みはお互いすれ違ってほとんど遊んでやれないだろう。

王宮ではレオ様に全く会わない。クロード殿下とは不仲なので、会うわけもないか。

クロード殿下は忙しい。いつも視察と執務に追われている。レオ様には任せられないため、その分も回ってくるとこぼしている。俺は手伝えないので、殿下の話し相手としか役にたてない。

妹はレオ様に穏やかな時間を過ごしてほしいと言っていたが、クロード殿下には穏やかな時間はあるんだろうか。


「クロード殿下、申しわけありません。レオ殿下が抜け出されました」

「放っておけばいい」

「御身を」

「何かあればルーン公爵に治療させろ」


飛び込んできた近衛騎士とのやりとりで空気がピリピリしている。護衛も連れずに王子がいなくなれば焦る。俺は見習いだし、いなくなっても問題ない。


「殿下、無礼をお許しいただけるなら俺が行きましょうか?」

「無礼とは?」

「武力行使」

「構わない。問題さえ起こさないなら。息さえしてればいい。市を探せ」


レオ様を嫌っているよな。弟に武力行使を許すほどクロード殿下は苛立っている。

不機嫌なクロード殿下に礼をしてレオ様を探しに行く。この人の多い場所でレオ様をどう探すか・・。

魔法で屋根の上まで飛び見渡すか。屋根の上を移動しながら探すと見つけた。

レオ様の前に降りると驚いた顔をされた。


「久しぶりだな」

「お久しぶりです。レオ様は何をされているんですか」

「兄ちゃん、ほらよ」


レオ様が果物を受け取り、袋に入れる。明らかに小さい袋に果物が入るのはなんでだろうか。


「母上の発明。無尽蔵に荷物が入る」

「さすがですね」

「ああ。兄上の命令か?」

「連れ戻せと。他に何か御用がありますか?」

「もう少し買い足したいから見逃してほしい」


事情もなく抜け出すような方ではない。妹の顔が浮かんだ。休みだし、いいか。


「買い物が終わったら俺が眠らせますんで、無理矢理連れ帰ったことにしてくれますか?」

「兄妹だな。俺はエイベルと鬼ごっこして眠るか」


屈託なく笑う顔を見て、妹の気持ちがわかった気がした。出会った頃の無表情のレオ様とは別人のようだ。


「レオ様、お忍びするならローブで外見を隠してください。危険です」

「ローブも買うか」


レオ様は魔石を換金し、ローブと食材を買っていた。妹が事情があると言っていた。俺は王家の問題に口を挟める立場ではない。


「もし必要な物があるなら俺が手配しますよ。必要ならいつでも声をかけてください」

「いいのか?」

「構いませんよ」

「母上に食材を用意している。信頼できない者からは受け取れない」

「レオ様、欲しい物のリストをください。日時を指定していただければ用意します。転移魔法で飛べるでしょう?」

「ああ。転移陣さえ仕掛ければ」

「レオ様の来る時間は人払いをしておきます。立ち会えないときは荷物だけ置いておきますよ。来週にはビアード領に帰るので、俺の部屋に仕掛ければいいですか?」

「いいのか?」


レオ様は命令できる立場なのに命令しない。何気ないことでも提案すると戸惑われる。


「王家のために働くのは当然です。不敬ですが、俺は友人としてレオ様が困っているなら力になりたいと思います。堂々とお助けできないのは心苦しいですが」

「まさか友人が持てるなんて思わなかった。」


俺も妹の目論見通り友人になるとは思わなかった。


「急いで買い物をすませましょう。クロード殿下が迎えにくるかもしれません」

「そうだな。」


レオ様の買い物をすませて、食事をするための店に入った。レオ様は購入した紙に転移陣と欲しい物のリストを書いていた。


「最高級じゃなくていい。食べれればいいから」


市民の食堂で王子が食事をしているとは。休みだから気にしないことにした。

妹も公爵令嬢らしくないし。

レオ様から受け取った紙に書かれているのは1週間分の食材だった。介入してはいけない気がして事情を考えるのはやめた。もし介入するならレオ様が望んだときだけだ。妹が勝手に首を突っ込まないといいけど・・。

用がすんだので俺はレオ様を魔法で眠らせて連れて帰る。


「エイベル、助かったよ。さすがビアード公爵家」

「遅くなって申し訳ありません」

「何も問題を起こさないならいい。御苦労だった」


クロード殿下の機嫌は直っていた。

俺はクロード殿下に礼をして退室した。レオ様に魔法をかけたことを咎められると覚悟したけど誰も咎めないって大丈夫なんだろうか・・。


***


王宮での見習い期間もおえたのでビアード公爵邸に帰ると、空気が淀んで活気がない。


「坊ちゃん、お帰りなさい」

「ただいま。何かあったのか」


執事長が暗い顔をしている。


「お嬢様はルメラ領に滞在されていたんですが、体調を崩され帰ってきません。マナから移動できる状態ではないと報告が・・。流行り病かもしれないので、応援も迎えもいらないと。旦那様達にもお嬢様から会いに来ないでほしいとお手紙が。旦那様も奥様もお忙しく、ご心配で荒れております。」


「行ってくる」


荷物を執事長に預けて、ルメラ男爵領を目指す。重篤なら余計に連れ戻さないといけない。ルメラ領だと満足に治療も受けられないかもしれない。うちに連れ帰ればルーン公爵家の力も借りられる。ビアード領のことを想うのはいいが、命のほうが大事だ。他人を大事にするくせに、自分のことを雑に扱う妹が良くなれば説教することを決めた。


「坊ちゃん、もう暗いので明日にしてください」


護衛騎士に止められ、足を止めた。明日の早朝に発つことを決め食事をとって早めに休む。


***


翌朝、護衛騎士と共にルメラ男爵領を目指す。

馬を飛ばして昼前に男爵領に着くと、見慣れた銀髪を見つけ気が抜けた。馬から飛び降り手綱は護衛騎士に投げて預けた。


「レティシア!!」


不満そうな顔をする妹を捕まえる。。


「お前、倒れて帰れないって言うから様子を見に来れば」

「お兄様、これから倒れます。今は大事なお話をしてますので見逃してください」


仮病だった。そして毒薬を飲んで倒れようとするバカに頭に血がのぼった。


「倒れなくていい。さっさと帰る」

「うるさいです。令嬢の前です。」


不満そうな妹の顔が歪んで真っ暗になった。

***


目を開けると妹の声が聞こえた。


「お兄様、おはようございます」


横には妹がいて、頬に手を当てると温かく顔色も良い。

生きてた。


「大丈夫か?」

「ご心配おかけました。私は元気です」


ふんわりと笑う妹の顔に安堵の息を吐いた。待てよ。

妹を迎えに行って、顔を見てからの記憶がない。なんで自分の部屋にいるんだ。


「俺は、」

「今日はゆっくり休んでください。お話してあげましょうか?」


妹の話し方がおかしく、変な笑い方をしている。仮病だったの思い出した。


「お兄様、今日から侍女が一人増えました。可愛らしい方ですが、好きな方がいるので惚れてはいけません。上目遣いにイチコロされてはいけません」


「お前は俺に言うことはないのか?」


とぼけている顔をする妹の銀の瞳を睨みつけると妹が頭をさげた。


「心配かけてごめんなさい」


性格に合わないよわよわしい笑いをしている妹を睨む。この笑いは作り笑いだと俺は知っているし両親のように騙されない。


「眠らせる魔法をかけてごめんなさい。」


気づくと魔法にかかっていたのは悔しい。打ち消す余裕もなくって、今は反省している場合ではない。そして、一番怒ってるのはそこじゃない。


「仮病を使って申し訳ありません」


沈黙していたが、ようやく口を割った手がかかる妹にため息が出た。


「心配するからやめろ。あと、毒薬飲むのもだ」

「善処します」


一瞬目を逸らした妹は全く反省してない。


「父上に報告してくる」


「ごめんなさい。もうしません。報告しないでください。護衛は私に騙されましたの。悪いのは私です。胸に留めてくださいませ」


泣きそうな顔で腕を掴み俺を見つめる妹の言い訳を聞いてやる。父上に報告してもこいつに甘い父上が簡単に許すのは目に見えている。先程までの演技が嘘のように、必死に謝る妹をみて、怒りがおさまってきた。俺の心配を返せ。半泣きの妹の頭を撫でるとふんわり笑った。この顔見ると、アホらしくて気が抜ける。


「念願のお友達はできたのか?」


「お兄様、ハク様を探すのを手伝ってください」


妹の返答は予想外である。

母親に洗脳されて育った少女が恋をした。恋を叶えるためなら手段を選ばず、家族も捨てたという話だった。自分の目的のためなら手段を選ばない人間だ。妹も利用され、全く素敵な友達ではない。俺はそんな危険な人物を妹の傍に置きたくない。どんなに説明しても少女の危なさは妹には伝わらない。俺は滅多にしない手段を選ぶか。


「二人っきりにはなるなよ。心も許すな。嫌な感じがする」

「わかりました。」


素直に頷く妹に免じて、嫌な役目を引き受けるか。警戒心皆無のコイツには任せられないし、両親にも話さないとか。


「新しい侍女については俺が指示を出す。お前も友達を疑いたくないだろうしな」

「よろしくお願いします。お兄様、私は貴方の妹に産まれて幸せです。」


極上の笑みを浮かべる妹の言葉は照れ臭い。手がかかるけど大事な妹にはかわりない。


「バカ」


妹が部屋から出て行った。

彼女を侍女として受け入れられたなら両親は説得されている。邸の使用人を束ねる執事長を呼び出す。


「坊ちゃん、どうされました?」

「レティシアが連れてきた侍女の監視を。俺は妹が騙されている気がする。」

「彼女はお嬢様の恩人です」


妹よ。どんな嘘をついたんだ。恩義や忠義を蔑ろにするのを嫌う執事長の咎める顔に首を横に振る。


「恩人ではない。あいつは彼女に恩はない。優しさと甘さを利用されている。あいつには話すなよ。新しい侍女の指示の権利は俺があいつから預かった。」

「かしこまりました。」

「レティシアと二人っきりにはさせるな。専属に迎えるのも許さない。できるだけ遠ざけろ。報告は俺に。父上達に報告しても構わない」

「お任せください」


顔付きの変わった執事長に任せれば大丈夫だろう。ロキにも近づけないように頼むか。ロキは子供なのに有能、なにより妹は子供のお願いに弱いからな。

動くのは明日からにして、体も軽いし少し動かしに行くか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ