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追憶令嬢のやり直し。  作者: 夕鈴
学園編 一年生

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第十五話 ルメラ男爵領

ステイ学園の長期休みになりました。私は試験の順位をエイベルに勝ったのでビアード公爵夫妻におねだりしました。念願のルメラ男爵領に1週間滞在します。エイベルは王宮に用があるのでいません。護衛騎士を側から離さないという約束ですが簡単ですわ。お菓子もたくさん用意していただきました。

ルメラ様と親しくなって洗脳されないように頑張りますわ。

お菓子を持ってルメラ様の家を訪ねます。お洋服も質素なものに着替えています。護衛騎士は私のお忍びに慣れてますので気にしません。今日は愛用のローブは脱いでます。

ノックをするとルメラ様が出てきました。


「お菓子を作りすぎたので、良ければ」

「貴方、ルリ?」

「覚えていただけたんですね。ありがとうございます。」


まさか数年前のことを覚えていてもらえるとは思いませんでした。お菓子を渡すと不思議そうな顔で見られます。


「もしも、お暇でしたら案内してくださいませんか?」

「いいよ。行こう。」


ルメラ様に手を引かれて歩きます。このルメラ様はまだ言葉が通じます。生前に関わったルメラ様は私が何を言っても言葉は通じませんでした。村を歩くと視線を集めます。ルメラ様は可愛らしいからですよね。


「女の子はみんなリアナが嫌いなの」

「私は貴方のことが知らないので、好きか嫌いかわかりません。」

「変なの」


不思議そうな顔で見られます。


「よく言われます。リアナ様。私、1週間程滞在しますの。お暇でしたら私と遊んでくださいませんか?」

「遊ぶ?」

「はい。読書したり、お散歩したり、お菓子を食べたり」

「うん。いいよ。」

「ありがとうございます。嬉しいです」

「ルリはお母さんのお話のレティシアにそっくりね」


洗脳はすでに始まってました。ルメラ様のお母様は頭がおかしい人なんです。夢と現実を区別できないんです。夢の世界を娘に押し付けようとする恐ろしい人間なのです。そのせいで二度目のルメラ様の人生はたくさんの悲劇に見舞われました。

怪しまれないように、話を合わせます。


「お母様のお話ですか?」

「リアナのお母さんはお話と絵が得意なの。リアナはお姫様って教えてくれたの」


洗脳が始まってます。お姫様は存在しますが貴方ではありません。

隣国には本物の王女様がいます。


「続きを教えてくださいませ」

「リアナはたくさんの人に愛されるんだって。でもリアナはお話に出てこない人が好きなの」


たくさんの人に両殿下やリオ、エイベルなども含まれてます・・。

ルメラ様に好きな人ですか!?初耳ですわ。ルメラ様が現実と物語の区別がついているのなら、まだ間に合いますわ。気分が浮上してきましたわ。


「でしたら、その方と結ばれればいいのではありませんか?」

「いいのかな?」


きょとんとするルメラ様に、笑みを浮かべます。


「貴方の人生ですもの。」

「でもね、ハクとリアナとは住む世界が違うの」


ルメラ様のお話に出てくる両王子殿下が一番住む世界が違います。余計なことは話して警戒されたくないので、心に留めます。


「ハク様は貴族なんですか?。私、協力しますわ。ただ貴族社会は厳しいです。それでも良ければ、私が貴方とハク様の恋のお手伝いをしますわ」

「なんで?」


今世は貴方に幸せになってほしいからです。生前の私は幸せでした。好きな人に愛されることは奇跡なんです。もう私のリオはいませんが・・。


「私の愛する人はもういないんです。ただ恋した人と一緒になる幸せを知っています。私に貴方の恋を見届けさせてくださいませ」

「リアナの話、聞いてくれる?」

「はい。」

「お姫様になりたくないって言っても?」

「勿論。貴方の意思は自由ですわ。私は王子様が怖いので、王家から逃げたい気持ちはよくわかります」

「怖い?」

「王子様のお妃様になるには厳しいお勉強と恐ろしい女性たちとの闘いが待っております。私は想像するだけでお腹が痛くなって寝込んでしまいます。関わらなくてすむならこの国の王子様とは関わってはいけません」

「ルリ、面白い」


肩を震わせて笑うルメラ様が微笑ましいです。純粋に笑える方とは知りませんでした。

目の前のリアナ・ルメラ様は無垢な子供のようですわ。ハク様との恋を応援しましょう。ハク様が誰かわかりませんが、まだ詳しいことは聞けません。

その日からリアナ様のお話を聞きながら毎日一緒に過ごしました。ルメラ様のお母様はルメラ男爵の愛人です。ルメラ男爵が会いに来た時に物やお金を置いていくので、夫人は家から出ない生活をしています。お話すると、夢うつつで、精神異常者のようでうちで保護したかったんですが、いつか迎えに来てくれる男爵を待っていると強く拒まれるので、私にはどうすることもできません。大人は自己責任なので放っておきます。

ビアード公爵夫妻との約束の滞在期間が気付くと終わってしまいました。

もう少し滞在させてほしいとビアード夫妻にお手紙を書きましたが帰還命令がでました。仕方がないので、体調を崩したので回復したら帰りますとお手紙を出しました。一応弱い毒薬を持っているのでいつでも飲めます。

もう少しルメラ様と親交を深めてハク様の情報が欲しいです。

今日はルメラ様と散歩をしています。すでに滞在期間を3日も延ばし、そろそろ帰らないとまずいです。

ルメラ様はハク様が大好きです。目を輝かせてハク様のお話をする姿は可愛いく、他の殿方がイチコロされても仕方ありません。


「リアナ様、ハク様に毎日会えたら嬉しいですか?」

「ハクに会えるの!?」

「この国の貴族なら学園に通ってます。礼儀のお勉強をしていただけるなら侍女としてお連れします。ただ住み込みなんですが」

「リアナはハクに会えるならなんでもする」


目を輝かせるリアナ様は恋のためなら手段を選ばない方なんですね。

意欲があるなら、力を貸しましょう。そのためには正体を明かさないと進めません。


「わかりました。リアナ様、私は貴方に謝らないといけないんです。ルリは私のお忍び用の名前なんです」


「レティシア!!」


最低です。聞き覚えのある声の持ち主に期待してませんがたまには空気を呼んで欲しかったです。

エイベルに肩を強く掴みかかられてます。さすがにエイベルの大きい声も慣れたので驚きません。


「お前、倒れて帰れないって言うから様子を見に来れば」

「お兄様、これから倒れます。今は大事なお話をしてますので見逃してください」

「倒れなくていい。さっさと帰る」

「うるさいです。令嬢の前です。」


邪魔ですわ。魔法をかけてエイベルを眠らせ、倒れた体を受け止めて寝かせます。きょとんとするルメラ様に優しく笑いかけます。


「リアナ様、眠ってるだけなので気にしないでください。疲れていたみたいですわ。私、レティシア・ビアードと申します。これは兄のエイベルです。うるさいし、ポンコツですが立派な貴族です」


「レティシア?エイベル?」


戸惑うルメラ様に頭をさげます。


「ごめんなさい。お忍びに来てたんです。貴族って色々面倒なんですよ。でも私はリアナ様が好きですし、ハク様との恋を応援したい気持ちに嘘はありません。どうか信じていただけませんか」

「ハクとのこと応援してくれる?」


ハク様以外のことはどうでもいいみたいです。


「もちろんです。定期的に家にも帰します。お母様の説得は私がしますわ。もちろんお給金も払います」

「行く」

「いつから来られますか?」

「ここで待ってたらハクは会いに来てくれるかな?」


一年に数回しか来ないハク様が訪ねる可能性は低いと思います。


「たぶん来ないと思います。今は忙しいので・・」

「荷物まとめてくる」

「お母様の説得をしますので、私も行きます」


護衛騎士にエイベルを運ぶように頼み、ルメラ様に手を引かれて、家を目指します。

中に入り、夫人に礼をします。


「挨拶が遅れて申しわけありません。ビアード公爵家のレティシアと申します。私、お願いがあって参りましたの」

「え?」

「御息女のリアナ様をうちで雇わせてくださいませんか?ご本人の意思は確認してあります」

「お母さん、私、行きたい!!」

「うちの子は将来王妃になるの」

「でしたら必要な教育を受けさせなければなりません。領主の許可はとりましょう。もちろんご本人の意思なら帰省させます」

「お母さん、私は行く!!お手紙書くね」


笑顔のルメラ様の言葉が軽い・・。いいですわ。

ブツブツと娘が王子に選ばれると話す夫人は放っておいて、ルメラ様の荷物を纏めるのを手伝いました。

次は領主の家に向かいます。ルメラ様には書類を作ったのでサインをしていただきました。文字が書けてよかったです。

先触れもないのにルメラ男爵夫妻は快く迎えてくれました。男爵家が公爵令嬢の私の訪問を断ることはできませんが・・。


「先触れもなく、訪問をお許しください。お初にお目にかかります。ビアード公爵家のレティシア・ビアードと申します。」

「頭をおあげください」


ルメラ男爵の声に顔をあげます。


「本日はお願いがあって参りました。私は療養のため、滞在したときに一人の少女に会いました。倒れたところを彼女が見つけてくださいました。彼女にお礼がしたくて、家庭環境を聞いたら驚きましたわ。村から離れた家に母親と二人暮らしで村人との交流もないそうです。母親は彼女は王子殿下や私の兄を誘惑してお姫様になりなさいと教育してますの。私は恩人をそんな環境に置いていたくありません。少女の同意は得ております。本人が望むなら定期的に母親との面会も約束します。この少女はうちで保護してもよろしいですか?」

「ビアード公爵令嬢、さすがにそれは・・」


ルメラ男爵に困惑した顔を向けられるので、悲しそうな顔を作ります。


「私は恩人を不敬罪にしたくありません。母親の証言も得ております。必要でしたら私の護衛に証言させましょう。まさか平民の少女が王子殿下や兄にそのようなことを・・・。私の兄を取り巻きの一人にするなんて不愉快です。ルメラ男爵家に監督不行き届けとして」


「どうぞ。お好きになさってください」


男爵夫人が男爵に睨まれてます。


「お前」

「いつもなら貴方は構わないとおっしゃるのに」


揉めてる男爵夫妻の話が終わらないので、言葉を遮りましょう。公爵令嬢の前で言い合いなど礼儀違反ですが見逃しましょう。悲しい顔をやめて、穏やかな顔を作ります。


「ではリアナ様はビアード領民として保護しますわ。できればお母様も療養所にいれたかったのですが、旦那様を待っているそうなので。領民の保護は領主の務めです。リアナ様のお母様のことはお任せしてもよろしいですか?」

「責任を持って、対処します。ですからこの件は」

「私も穏便にすませたいと思っております。ルメラ男爵次第ですわ。」


優雅に微笑みます。ルメラ男爵にサインをしてもらったので、帰ることにしました。


「リアナ様、私は両親に嘘をつくので合わせてください。」

「うん」

「敬語の練習しましょうね。」


馬車に乗って、ビアード公爵領に帰りました。エイベルはうるさいのでこのまま寝かせておきます。

ルメラ様の恋の応援のためにビアード公爵夫妻を説得しますわ。

今世はどうか現実を見て育ってくれるといいんですが・・。

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