第十一話 魔法の授業
レティシア・ビアードです。なぜか3度目の人生をやり直しております。ステイ学園の一年生です。
廊下を歩いているとエイベルが柱の陰に隠れてます。
「エイベル、何してますの?」
声を掛けると驚いた顔で見られ手が伸びてきました。
「黙ってろ」
口を塞がれます。エイベルの視線の先には令嬢達が贈り物を胸に抱えています。あの令嬢達は確かエイベルのファンですよね。まさか・・・。
「ビアード様!!」
令嬢の声にエイベルがビクッとしました。エイベルの態度に笑いが堪えられません。口に手を当てて必死に笑いを、駄目です。体が震えてきました。私がお相手してさしあげたいですが、うまく話せませんわ。仕方ありません。エイベルの耳に囁きます。
「エイベル、私の体調不良を伝えてください」
目を閉じてハンカチを口元にあてて必死で笑いを堪えエイベルの胸に顔を埋めます。肩が震えるのはエイベルの体で見えないようにと願いましょう。令嬢モードも今は無理ですわ。
「妹の体調が優れないので」
「まぁ!?ビアード様」
「お大事になさってください」
「失礼します」
棒読みの言葉を令嬢達が信じたようです。エイベルに肩を抱かれて令嬢達から離れました。ほっとした顔のエイベルが余計に笑いを誘います。エイベルに手を振って別れて、急いで人目のない場所に移動して結界で覆いました。笑いが止まりません。令嬢に追いかけられてたなんて。あのエイベルが令嬢を怖がるなんて面白すぎです。笑いすぎてお腹が痛くなってきました。そろそろ移動しないと授業に遅れます。必死に笑いを止めて、結界を解除し授業に急ぎました。
後でエイベルのことを調べて手を回してあげましょう。女嫌いになったら大変ですからね。強引な令嬢が苦手と知ってましたが、ここまでとは・・・。思い出したらまた笑いが。
ぼんやりしていたら目的地につきました。
なんとか授業が始まるまでに落ち着きましたわ。フィルの背中に隠してもらったおかげですわ。
今世は魔力があることを隠してないので魔法の授業を受けます。魔力のある生徒は魔法の授業は必ず受けなければいけません。魔力持ちの魔力制御を教えさせるために建てられたのがステイ学園の始まりです。
ステラは魔力がないので、隅で見学してます。武術を極める上で魔法の知識は必要です。それに貴族として必要な教養です。
初めての魔法の授業は魔力の覚醒です。
自分の中にある魔力を見つけ、魔石を作る魔法の基本操作を身に付ける授業です。
魔力の流れを意識して、手に魔力を貯めると魔石ができます。
魔石は大きさでなく純度重視です。純度の高い物ほど色が濃いものになります。
魔石の大きさもイメージ次第。ただ大きくなるほど、魔力を均等にこめるのが難しいので純度が高く大きい魔石は価値が高くなります。
純度が高く大きい魔石を作れるのは名家の直系の生徒くらいです。
名家は魔力が強い両親を持つので、もともと魔力の適性が高い子供が産まれやすいんです。
エイベルも立派な魔石を作れますが生前のリオには全く敵いませんが。
魔石の使い道は魔道具の作成や魔力の回復など様々です。
魔石を作ると生前と変わらない純度の水の魔石ができました。ビアード公爵も優秀な風の魔導士で魔力の量はルーン公爵よりも多いと聞きました。私にも魔力は引き継がれているようです。エイベルからもらった魔石は魔力操作が甘いため私の作ったものより純度が低いです。これは後で自慢しにいきましょう。
「先生、できました」
先生に魔石を確認してもらうと視線が集まりました。
「ビアード、確認なんだが君が作ったのか?」
不審な目で見られているため先生の前でもう一つ魔石を作りました。
「悪かった。あまりに早くて驚いたよ。純度も申し分ない。後は好きにしていい」
「ありがとうございます」
礼をして見学をしているステラの隣に座ります。
「ステラ、あげます」
「え?」
「魔石と魔法陣を使えば、ステラも魔法が使えます。ステラのお兄様に魔石をもらってもいいですし、水の魔石は私がいくらでも作ってあげます」
「レティシア様・・・」
ステラは魔力がないことを気にしてます。泣きそうなステラの手を握ります。魔力のことはステラ自身で折り合いをつけないといけません。ここでは人目があるので、泣くわけにはいきません。
「移動しますか?」
「大丈夫です。ありがとうございます。」
徐々に魔石を作る生徒が出てきました。マートン様やフィルも作りおえました。
「ビアード様、魔石は大切なのは早さではなく純度ですわ」
偉そうな物言いのマートン様と取り巻き達が近づいてきました。
「承知しております」
「ビアード公爵家なのに風属性を受け継がなかったなんて」
「私はお母様の属性を引き継ぎましたので。」
「まがいものが」
マートン様の取り巻きがこぼした言葉に苦笑します。私は水属性に産まれるように調整されただけなんですけどね。
「エイベル様の前で言えますか?」
ステラが口を挟むとは思いませんでした。泣きそうな顔ではなくなったので良かったですわ。
「エイベル様はレティシア様を妹と大事にされています。まがいものとお伝えしておきますわ」
「ステラ、黙りなさい。」
マートン様の取り巻きの令嬢にステラの言葉を止める権利はありません。マートン様がステラを睨む様子も取り巻きの蔑む視線も不愉快です。私自身のことは気にしませんが、ステラを巻き込むならお相手しましょう。
もともとマートン様達がステラにしたことは許せませんでしたし、丁度良い機会ですわ。
「貴方達にステラの言葉を止める権利はありません。家格のお話をするなら、私に話しかけるのも不敬ですわ。ここは学園ですから関係ありませんね。私のような、まがいものよりも皆様はさぞ素晴らしい魔石を作られるんですよね?」
先生に見せた魔石よりも純度の高い魔石を作って差し出しました。さすがに本気の魔石を作るつもりはありません。本気で作って魔力切れを起こすのは愚かなことです。あまり高度な物を作ったら不自然で目立ちますので調整はしてますわ。
「まがいものの私の魔石などガラクタですわ」
魔石を睨まれてます。手を抜いても私の魔石は公爵家に恥じない純度のものです。マートン様達に負けることなどありません。
「偶然よ!!」
睨まれたので笑顔で受け流します。私はマートン様達に負けたりしませんわ。視線が集まっているのでステラの手をとり移動しました。ステラがマートン様達に意地悪されないように気をつけましょう。
「ステラ、意地悪されたら教えてください」
「レティシア様、私は負けませんのでご安心ください」
愛らしい笑顔のステラの言葉は聞き間違えでしょうか・・。
ステラってこんな好戦的な性格でした?
気にするのはやめましょう。授業の時間は終わっていないので、ステラと一緒に図書室に行きました。ステラに魔法陣の本を紹介します。ステラが心配なので自衛のためにいくつか魔石の魔法を覚えてもらいましょう。
何冊か本を借りて私の部屋に移動しました。
魔石を幾つか作ります。魔法陣を書いて水の魔石を置きます。しばらくすると魔石の魔力で満たされた魔法陣から水が噴き出しました。
「自分で発動したもの以外の魔石は触れてはいけません。魔石に触れずに、紙を抜き取れば魔法は消えます。すぐに消したければ魔法陣を破きます」
ステラが興味津々に見ています。あとでエイベルとフィルから魔石をもらいましょう。
ステラが魔法陣を書き写してます。魔石を置くと魔法が発動しました。目を輝かせている姿が可愛いです。
「魔法陣は便利ですが、あまり授業では教えてもらえません。慣れると自分で魔法陣も作れます。」
魔法陣を書いてステラに渡します。
「魔法の授業中は危険なので、この魔法陣の上に水の魔石を置いてください。大技でなければ、結界が吸収してくれます」
「レティシア様は魔法にも詳しいんですね」
ステラにキラキラした目で見つめられ、あまりの可愛さにうっとりしてしまいました。ステラに引かれないように慌てて笑ってごまかします。
「公爵令嬢の嗜みですわ。」
生前は魔法の授業中にマートン様達によく攻撃をされました。お守り代わりにリオから攻撃を跳ね返す魔法陣と魔石を渡されていました。私の魔法陣は攻撃を跳ね返したりしないので、どこで使っても支障はありません。
私は放課後にエイベルを訪ねて風の魔石をたくさん作ってもらいました。せっかくなので土属性の魔石も欲しいです。知り合いの属性までは把握してません。
火の魔石をくれるフィルがいるので、火の魔法陣を調べることにしましょう。ただフィルは魔力が少ないので、私の魔力を送って使えるようになってもらいましょう。そしたら火の魔石も、もっとたくさんもらえますわ。
水と風の魔法陣は生前にたくさん勉強したので今は必要ありません。
魔法のお勉強とフィルの特訓を頑張りましょう。




