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追憶令嬢のやり直し。  作者: 夕鈴
学園編 一年生

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第九話 第二王子

レティシア・ビアードです。

私は一つ大事なことを思い出しました。王家とは関わりたくありません。

ですが念の為第二王子のレオ殿下の情操教育をしなければいけません。最初の人生はレオ殿下のクロード殿下への歪んだブラコンにより私は監禁されました。クロード殿下の関心を引くためだけに監禁され命を落としたことはいまでも複雑です。2度目の人生はレオ殿下の情操教育に成功し、立派な公爵に育てあげました。美しいお嫁さんも迎え、1度目の頭のおかしい変態とは同一人物には思えないほどマトモになりました。

今世の私にはレオ殿下の情報はありません。

側妃のサラ様のお子で継承権を持ってない以外知りません。

エイベルの話にはクロード殿下は出てきますがレオ殿下は一度も出てきません。王家の情報は極秘なので、第二王子のレオ殿下がどんな生活を送っているかは知りませんが監禁は回避したいです。ただ接点が全くありません。近づく方法をあとでゆっくり考えましょう。


放課後にエイベルが迎えに来たのでカーチス様と一緒に生徒会室に向かいました。

入室すると、役員が全員揃っていました。

そういえば、レオ殿下が生徒会に入っていないのはどうしてなんでしょうか・・。一度も生徒会に所属されてませんでしたが、王族は生徒会長を務めるのは慣例のはず。

エイベルの視線を感じて、周りを見るとクロード殿下から生徒会役員の先輩方の紹介が終っていました。私はしばらくはカトリーヌ様について仕事を教えていただきます。カーチス様にはリオが指導係につきました。

エイベルに睨まれて、ようやく意味がわかり、礼をします。ぼんやりしている場合ではありませんでしたわ。


「レティシア・ビアードと申します。ご指導よろしくお願い致します」

「クラム・カーチスです。よろしくお願いします」

「困ったことがあれば遠慮なく。今日は解散。」


クロード殿下の声で各々が散っていきました。

殿下への違和感がわかりました。殿下は常に穏やかなお顔をしていますが微笑んでいません。私の知る殿下は常に穏やかな笑みを浮かべている方でした。違和感がわかってスッキリしましたわ。

カトリーヌ様に声をかけられました。

私はカトリーヌ様の部屋に案内されました。カトリーヌ様の特別室に招待されたのは初めてです。落ち着いた雰囲気の設備の整ったお部屋です。


「エイベル様ではなく残念かしら?」


侍女の用意してくださった、お茶に口をつけます。やはり美味しい。お茶が好きなレート公爵夫人の影響か非常に完成度の高いお茶の味に笑みがこぼれます。ビアード公爵家はレートやルーンほど完成度の高いお茶がでないのを残念に思っていたらいつの間にかマナが完璧なお茶を出してくれるようになりました。うちでお茶をいれるのがうまいのはマナとロキです。

ぼんやりしている場合ではありませんでした。


「カトリーヌ様に教えていただけるなんて光栄です。お兄様は残念ながら頼りになりません」

「容赦がないわ。」

「事実ですので。カトリーヌ様、どうしてレオ殿下は生徒会に入られてないんですか?」

「レティシアは知らないのね。両殿下は不仲よ。生徒会役員の打診の話もレオ殿下は断られたわ」

「そうなんですか・・・・。」

「何かあれば相談して。パドマ様とはうまくやってる?」

「今のところは。ですが派閥の統制は乱れております。」

「そう。」


カトリーヌ様が綺麗な笑みを浮かべました。これは逆らってはいけないお顔です。


「うちの派閥に愚かな者はいないと思うけど、目に余るなら」

「はい。しっかりと対処させていただきます」


カトリーヌ様が私を生徒会に入れた理由がわかりました。生徒会の仕事で一緒にいるなら目立ちません。私は敵対派閥の情報を集める間者役を期待されています。カトリーヌ様には逆らえませんので、最低限のお役目は果たしましょう。またうちの派閥を揺るがす者がいないように公爵令嬢として統制をとれとも仰せです。カトリーヌ様に逆らう者はいないと思いたいのですが・・。

仕事の説明は終わったので、退室しました。生前は学園内では派閥のために働いていなかったので変な気分です。

生徒会の仕事が早く終わったので本を借りに図書室に向かいました。見覚えのある本を手に取ります。復習は大事ですから。借りる本を選んでいると見覚えのある髪色に足を止めました。なんとレオ殿下を見つけました。

生前の癖でレオ様と呼ばないように気をつけないといけません。気配を消して様子を見るとレオ様は薬草辞典を真剣に読んでいます。

見ているのは古い辞典です。確か、新しい薬草辞典があったような・・。本棚を探すと最新の薬草辞典を見つけたので手に取ります。この本は2年に一度最新のものが出ます。生前の愛読書の一つでした。

どうやってお渡しすればいいのか悩みます。この本はなんでしょうか。手を伸ばすと、バサバサ、ドタンっと抱えていた本を勢いよく落として大きい音を立ててしまいました。


「申しわけありません」


礼をして落とした本を拾います。


「ほら」

「ありがとうございます」


顔をあげるとレオ殿下でしたわ。本を拾ってくださるとは、まだ変態ではないようです。レオ殿下の視線が本に向けられてます。


「読むのか?」

「良ければどうぞ。私は先にこの本を読みますので」


新しい薬草辞典を差し出しますが手に取っていただけません。なぜかレオ殿下が固まってます。


「人でも殺すのか?」


視線の先には毒薬の作り方と書いてある本がありました。見覚えのない本なので手に取っただけです。飲むとすれば王家の社交から逃げるためなので人に使う予定はありません。


「自分用ですわ」

「え?」


無表情で驚いた声を出すレオ殿下に笑顔でもう一度本を差し出します。


「気にしないでください。これどうぞ。その本は定期的に新しい物が出ます」

「毒や薬草にも詳しいのか?」

「嗜み程度ですが」

「付き合ってほしい」


図書室の奥に腕を引かれます。強引ですが落ちた本を拾って持ってくれるところは優しさを感じます。


「これを知っているか?」


レオ殿下の制服をめくった左腕には黒い痣が無数にあります。他国の呪詛で魔法を使いにくくするものです。大事な御身になんてことでしょう。持っていた本を棚に置きます。この呪詛なら解除の方法がわかりますわ。


「殿下、触れてもよろしいでしょうか?」

「ああ」


レオ殿下の腕に手をかざします。治癒魔法を使って魔力を腕に流し込みます。治癒魔法は体全体にかけるものと弱った箇所を探し、局所的にかけるものの2種類に分かれます。レオ殿下の体を魔力で調べると呪詛の核を見つけましたわ。呪詛は核を壊さないと解けません。集中して核に魔力を流し込んで、壊しました。

大事な御身から呪詛が消えたことに安堵の息を吐きます。体がふらふらして視界が歪んできました。久々に魔力を大量に使ったからでしょうか。

目を開けると保健室でした。

運んでくれて、付き添ってくれるレオ殿下は優しいです。今世は情操教育はいらないでしょうか。

横に座っているレオ殿下に頭を下げました。


「殿下、申しわけありませんでした。」

「いい。むしろ礼を言う」

「私でお役にたてるなら、いつでも声をおかけください」

「は?」


困惑した声のレオ殿下に自己紹介をしていないことを思い出しました。


「名乗るのが遅れて申しわけありません。レティシア・ビアードと申します。」

「いや、名前ではなく、俺の傍にいると誤解される」

「父より特に命は受けてません。私はビアード公爵家のものとして王家のお役にたてるように精一杯努めますわ」

「俺は継承権もなく、誰にも期待されない」


事情はわかりませんが王家の生まれだけで尊いです。

王族は私達の頂点に、君臨する至高の一族です。継承権は関係ありません。臣下の事情は王族にはわからないかもしれません。


「関係ありません。私は殿下は優れた方だと思っております。」

「変な奴」

「否定はしません」

「殿下はいらない。レオでいい。兄上と同じ呼び方はやめてほしい」


無表情で無感情な声。本当に不仲なようです。

そういえば最初の人生も二人は不仲でした。


「ではレオ様、私は治癒魔法は使えます。体に支障があればご相談ください。決して他言は致しません」

「あの痣は」

「魔力を使いにくくする他国の呪いです。」

「そうか・・・。」


無表情で暗い瞳に嫌な予感がします。

王家の事情に関わることが許されるのは限られた者だけです。今の私には権利はないので気にするのはやめて、ポケットからお菓子を取り出し1口だけ食べて残りは差し出します。


「レオ様、疲れた時は甘い物が一番です。どうぞ」


じっと見つめられしばらくするとレオ様がお菓子を受け取りました。


「レティシア、また会えるか?」


同じ学園にいますのにどういう意味でしょう。やはり情操教育が必要でしょうか。


「レティシア!!」


エイベルが飛び込んできました。


「レオ様、兄のエイベルです」


エイベルがレオ様を見て頭を下げました。


「殿下、申しわけありません。妹が」


エイベルの言葉を遮ります。


「お兄様、謝罪と感謝は私はしっかりしてレオ様にお許しをいただきましたわ。兄として感謝したいのなら、お兄様のお部屋でレオ様にお茶を振舞わせてください」

「は?」

「レオ様、運んでくださったお礼にお茶をご馳走させてください。毒味は私にお任せください」


私は困惑しているエイベルの手を引いてエイベルの部屋に向かいました。エイベルの部屋のほうが設備が整っていますし、もし見られても問題ありません。私の部屋へのレオ様のご招待は人に見られると異性のため誤解をうみますので。噂好きな生徒の餌食になるのはごめんですわ。


「お兄様、私がお茶を淹れてる間にお話し相手になってください」


私はお茶とお菓子の準備を始めましたが二人は無言です。やはりエイベルはポンコツでした。おもてなしもできないなんて。

仕方がないので、代わりにお茶を出しながら自己紹介をしましょう。


「レオ様、兄のエイベルはレオ様より1つ年上です。趣味は訓練で馬術が得意です。苦手なものは甘い物と押しが強いご令嬢です。」


頭を叩かれました。


「不敬だ」

「レオ様はそんなに心の狭い方ではありません。」


エイベルの隣に座り、一口飲んだお茶をレオ様の前に出します。クッキーも半分に割ったものを差し出します。エイベルに不審な顔で見られています。


「エイベル、毒味です。不敬なことはしてません。王宮に行かなくても、毒味の作法は覚えてますわ。レオ様、何も知らない兄で申しわけありません」


「いや、構わない。いただくよ」


レオ様は兄の不出来を気にせずお茶を飲んでます。全然会話が続きません。あまり人と話すことに慣れてないんでしょうか。


「レオ様、話し相手が欲しければいつでもここにいらしてください」

「殿下、嫌なら断ってください。図々しい妹ですみません。」

「俺と関わる覚悟はあるのか?」


付き合うのに覚悟は必要ありません。

複雑なお立場なので私達のことも警戒されているのでしょう。


「ここは平等な学園です。ビアード公爵家の力が目当てならお断りいたしますが、私やエイベル個人としてのお付き合いでしたら歓迎いたします。」

「変な奴」

「申しわけありません。私の兄が変なのはどうにもなりません」


突然笑い出したレオ様を見ながら情操教育を頑張ることを決めました。

私はエイベルにお説教されながら寮まで送ってもらいました。

翌日レオ様が令嬢を抱きかかえていたことが噂になりました。レオ様は私を運ぶ時に上着で顔を隠してくださったことに感動しました。令嬢達がレオ様の抱きかかえていた令嬢を気にしているので余計なことは言わないことにしました。

優しさと気遣いのできるレオ様が変態にならないようにお手伝いしたいと思います。

今世も監禁回避のために頑張りましょう。

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