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追憶令嬢のやり直し。  作者: 夕鈴
第一章  幼少期編
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兄の苦労日記5

ターナー伯爵家の修行から帰ってきた。

妹目当てにうちの訓練に参加する騎士が増えた。まさかターナー家門の騎士がビアード家門への入団を希望するのは予想外だが優秀な騎士が増えるならいいか。

妹は料理を覚えてから騎士達に差し入れをはじめた。おかげで妹の人気がまた上がった。

母上からマールがうちの訓練に参加希望をしたと話されて驚いた。

妹とマールの関係はなんだろう。

差し入れを受け取り、隣に座ると不思議そうな顔で見られた。いつも訓練中は放っておくからか。



「レティシア、マールが嫌なのか?」


妹の眉間に皺が寄った。


「私は令嬢に人気のある殿方は近づきたくありません」

「そうか。明日はマールが来るから訓練場に近づくなよ」

「ありがとうございます。どうしようかな・・」


妹は明日の予定を悩みはじめた。会わないように出かけるか書庫に引きこもるか悩んでいる。

ここまで避ける人物は珍しい。嫌がっているなら協力してやるか。

時々訓練に参加しているマールが妹を探しているのは知っていても気づかないフリをする。

マールが訓練に参加する日を妹に告げると、決して訓練場に近寄らない。妹は相当マールが苦手らしい。ターナー伯爵家で大蛇を見てマールに縋った妹は混乱しておかしかったのか・・・。妹にマールの話をしても全く興味を示さなかったので、マールの毒牙にかかっていないことに安堵した。


「ビアード、妹は参加しないのか?」

「あいつの訓練は別の日だ。今日は出かけてる」

「そうか・・」



残念そうな顔で言われても会わせる気はない。

マールは妹を取り巻きにいれたいらしい。俺は気に入らないから徹底的に邪魔することにしている。

ただマールほどではないが、妹が距離をおく奴らがいる。


「なんで、ソートはレティシア様と親しいんだ!?」

「知らない。勝手に懐かれた」

「ビアード、なんで俺は避けられるんだよ」


友人に必死な形相で詰め寄られている。


「うちの妹は女慣れしてるやつは苦手なんだ」


さすがにモテる奴が苦手とは言えない。


「じゃあ仕方ないな」

「俺、モテなくて良かった」


マールほどではないが女に人気の友人が顔を顰めている。


「待てよ、エイベルだっていつも囲まれてるだろうが」


一緒にしないでほしい。俺がどれだけあいつの面倒を見てきたと思っているんだ。


「兄だから別枠だ」

「俺は諦めない」


うちの妹は人気がある。ただ邪な気持ちがあるなら家の騎士達が排除するから気をつけろよ。そろそろ社交デビューが近づいているからダンスの約束を取り付けようとしてる奴も多い。妹ももうすぐ10歳か。俺は学園に入学するけど、あいつ大丈夫だろうか…。


***

妹は社交デビューに大人しいデザインのドレスを選んだ。母上の瞳の色とビアードの風を意識したドレスの説明を聞いて両親や使用人は大絶賛していた。母上の瞳の色よりドレスの色が薄いのは気にならないんだろうか。



学園の休養日に社交デビューの妹をエスコートするために帰ってきた。


「エイベル、お帰りなさい」

「ただいま。おめでとう」

「ありがとうございます。私は壁の花を目指します」


着飾り意気込む妹に緊張感はない。令嬢達の憧れの社交デビューを面倒ですと苦笑している姿を知ってるのは俺とマナだけだ。


妹の目論見は外れた。

会場で妹は目立っていた。初めて社交の場にでるビアード公爵令嬢というだけで視線を集める。

それに目立つ理由はもう一つあった。

華美で豪華で目がチカチカしそうなドレスを着る令嬢の中で、妹のドレスは目に優しく視線を集めていた。

王家への挨拶とダンスをおえたので、妹の願いで壁の花になろうとしたけど無理だった。妹は俺の所為で視線が集まると言っている。ビアード公爵嫡男の俺に近づく令嬢は多い。嫉妬の視線が痛いと囁く妹は令嬢達の視線は気付くけど、男の視線は気付かないらしい。俺が離れた途端に男に囲まれるだろう妹のために傍にいてやる兄心は気付かないらしい。

妹に強引に令嬢とダンスさせられた。ダンスしながら妹に視線を向ける。妹が令嬢達に囲まれている。好戦的な妹が令嬢達の挑発を流せるかも心配だった。ダンスをしても次の令嬢に手を差し出され踊り続けた。社交デビューの令嬢からのダンスの誘いを断るのは無礼とされている。

いつの間にか妹もダンスに加わっていた。何曲か踊ってバルコニーに逃げて行く妹に苦笑した。壁の花計画は諦めていないらしい。

俺はようやくダンスフロアから抜け出したが令嬢達に囲まれた。


「エイベル様、いらしたんですね。」

「妹君はどちらに?」

「あの噂の」

「優秀なエイベル様の隣にまがいものは相応しくありませんものね」


ビアード公爵家は妹をまがいものと言う奴を許さない。笑顔で話しかける令嬢達は知らないんだろうか。

妹が手を振って呼んでいるのが目に入った。


「失礼します」


俺は目の前の令嬢は無視して妹の所に行くことにした。目の前の相手にダンスを誘うのは礼儀で、ダンスに誘われない令嬢が恥をかくのは知っている。妹の敵なら俺の敵だから気遣う必要はない。妹は見慣れない令嬢を連れていた。

絶対に意思を曲げない顔をした妹は俺に友達をダンスに誘えと囁いたので従うことにした。戸惑いながら強引に俺とダンスを踊ることになった妹の友達に謝罪することにした。


「妹がすまない」

「いえ、私、レティシア様に相応しくなるために頑張ります」


弱々しく笑う令嬢の言葉に目を丸くした。


「え?」

「あんな素敵なレティシアをまがいものなんて許せません」


貴族の友達が面倒と言っていた妹の初めての友人に好感を持った。


「妹をよろしく頼むよ」


妹は彼女に高位のものとダンスさせろと言ったので、侯爵家の友人に代わってもらった。何人かに妹の友人をダンスに誘ってほしいと頼むと快く了承してくれた。妹の友人と教えたら率先して誘いに行く奴も現れた。

妹はいつの間にか父上と一緒にいた。父上の視線を受けて回収することにした。


「レティシア、帰るか」

「ステラを回収してきます。エイベル、ありがとう」


にっこり笑った妹がダンスフロアから友人を連れて戻ってきた。


「レティシア様…。」

「お疲れ様。ステラ、また会えるのを楽しみにしてます」

「私もです」


二人の別れがすんだのでレティシアを連れて会場を後にした。


「エイベル、私のお祝いにお願いがあります」

「は?」

「お茶会の作法を覚えてください。私の隣で一緒にお茶を飲んでいてくれるだけで構いません」


相変わらず妹のお願いは俺の予想をこえていく。


「なんで?」

「私がエイベルのファンのご令嬢達に意地悪されないためです」


俺をお茶会に同行させる気だろうか。


「気が向いたらな」

「やる気がないのが伝わってますよ」


社交デビューをした妹は忙しくなるだろう。俺も一緒に連れ出されるのだろうか。久々に学園から帰ってきたし、明日は妹に付き合ってやることにした。

帰ってきた父上は妹に悪い虫が群がっていると嘆いていた。酒に酔った父上が自分よりも弱い奴には妹を渡さないと言っている。母上は隣で愉快に微笑んでいた。社交界で妹を自慢するのが楽しかったらしい。両親の温度差についていけずに、執事長に任せて先に休むことにした。


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