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追憶令嬢のやり直し。  作者: 夕鈴
第一章  幼少期編
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第四話後編 ターナー伯爵家

エイベルと一緒にターナー伯爵家で過ごしています。二度目の人生の夫であり従兄だったリオと会いました。リオとの関係性の違いを受け入れきれずにできるだけ関わらないようにしていました。リオに会っても挨拶だけして立ち去ります。

私は今世は最低限しか関わるつもりはありません。できれば関わらずに生きていくつもりでした。

ターナー伯爵である伯父様の試練に崩れ落ちそうになりました。

伯父様、森での野営の修行を3人でさせるなんて酷いですわ。

私はまだ木剣なので早いと思うんですが・・。強くなりたいと願いましたが・・。きっとエイベル達のおまけですよね・・。


「協力して、3人で一緒に過ごすんだよ。離れてはいけないよ」


伯父様は帰ってしまいました。1泊2日を森の中で安全に過ごすターナー伯爵家の修行の一つです。護衛騎士も配置されてますが見守るだけです。

茫然としている場合ではありません。暗くなるまでに行動しないといけません。


「お兄様、マール様、寝る場所を探しにいきましょう」


荷物を抱えてふらふらと立ち上がります。やっぱり荷物が重いのはいつの世もかわりません。


「レティシア、荷物をよこせ。」


エイベルに荷物を取られました。力持ちの兄に有り難く甘えましょう。

水の魔導士は水の気配を探れます。水の気配を探って進むと大きい池を見つけました。洞窟は見当たりません。


「お兄様、マール様、ここで休みましょう。」


大きい木の下を指さします。二人が頷くので荷物を置いてもらって整理をはじめました。

エイベルの広げる荷物の中から袋を出して腰に下げます。短剣と剣と弓も身に付けます。

剣は護身用にとビアード公爵がターナー伯爵家に向かう日に贈ってくれました。いずれは華麗に使いこなせるようになりたいですわ。


「私、ご飯を探しに行って参ります」

「待て」


エイベルに腕を掴まれました。


「3人で行動しろと言われてただろうが」

「忘れてましたわ」


エイベルに頭を叩かれました。リオは静かに見ています。全然話さないリオが不思議ですが関わりたくないのでいいでしょう。


「お兄様、マール様、食材は私が調達するので薪を集めていただけますか?」

「レティシア、食材をどう調達する気だ?」

「私、植物に詳しいのです。お肉は動物を狩ります」

「ビアード嬢、捌けるの?」

「もちろん。え?マール様は捌けないんですか?」

「勉強不足で申しわけない」


このリオは誰ですか・・?生前のリオはなんでも捌けましたが・・。申し訳そうな顔で見られています。

エイベルに肩を掴まれ睨まれました。


「俺はなんでお前が捌けるか教えてほしい」


生前の経験のおかげで、もとから捌けました。腕がなまらないか心配なので、時々狩りに行ってました。


「領民の狩りに混ぜてもらって教えてもらいました。ビアード領を出ていませんわ」

「お前は何を目指すんだ!?」


声を荒げられても、私としては狩りができない二人のほうがまずいと思います。エイベルの大きい声にも慣れましたわ。

まだ子供ですから多目に見ましょう。


「将来ビアード公爵家のお役にたてるように頑張りますわ。もしお金に困ったら、辺境伯に売り飛ばしてくださっても構いませんよ」

「妹を売り飛ばさないとおさめられないなら、爵位を返上する」

「情けないですわ。その時は私が多額の資金援助をしてくださる家を見つけて差し上げますので、しっかりしてくださいませ。暗くなる前に急ぎましょう」


エイベルとリオに呆れた視線を向けられました。むしろ呆れたいのは私ですが子供相手に大人気ないので見逃しましょう。ビアード公爵令嬢に生まれたので務めは果たしますよ。

二人は放っておいて、用意ができるのを待ちました。二人を連れて歩き出しました。薪は二人に任せて食べられる葉や果物を採集し袋の中に入れていきました。鳥が飛んでいたので2匹ほど弓矢で撃ち落としました。

鳥を捌く様子をエイベルとリオは顔を青くして見てました。二人は情けなく、全く頼りになりません。

子供なので仕方ないですわね。

荷物から火打ち石を出して火をおこします。これで獣は寄ってきません。

エイベルには水を汲みに行ってもらいました。

リオには串焼き用の串を削っていただきました。器用な所は同じようです。私が1本削っている間に4本作りあげていたのは虚しくなんてありません。

私のほうが経験豊富なのに悔しいですわ。

串焼き肉と香草と肉を葉に包んで焼き上げました。今日と明日の分の食事の用意は終わりました。護衛の皆様の分の食事も渡したので食べ始めました。二人共文句を言わずに食べる姿はほっとしました。公爵家の二人に食べさせるものではありません。調味料がないので我慢していただくしかありませんが。

今日はあと一つだけやることがあります。


「火の番の順番を決めましょう」

「俺とマールで回す」

「私もやります」

「お前は体力ないんだから寝ろ。こんなに興奮して動いて、熱が出たら伯父上を呼ぶからな。」


体は弱くないのに・・。そんなに興奮してないのに酷いです。呆れた顔のエイベルを睨みます。


「エイベルが何もできないから」

「助かったよ。だからお前の今日の役目は寝ることだ。俺はお前を背負って山道をおりたくない」

「ビアード嬢は休んで。年下のご令嬢に火の番をさせて眠るなんてできないよ」

「かしこまりました。よろしくお願いします」


譲ってくれない二人に諦めて、代わりに片付けを引き受けました。片付けをおえると、エイベルが早く休めとうるさいので寝袋に入り目を閉じました。エイベル達は二人で何か話しています。

生前のこの訓練はエイベルと二人っきりでした。あの時もエイベルは何もできませんでしたわ。

いつになったら今の暮らしを受け入れられるんでしょうか。


***


目を開けると、リオが向かいで眠っていました。リオの幼い寝顔の記憶はありません。このリオは私のリオではありません。わかっているのに悲しくなって、座っているエイベルの背中に勢いよく抱きつきました。


「起きたか。」


乱暴に頭を撫でてくれる手に慰められます。


「エイベル、かわりますよ。目が覚めました」

「眠くないからいい。情けない顔だな」

「固くてよく眠れなかったんです。変化を受け入れられない時はどうすればいいんですか?」

「変わらないものなんてないだろうが。俺の妹はよくわからないが、妹であることには変わらない」


確かにエイベルもビアード公爵家の皆様も偽物の私に戸惑いながらも優しくしてくれます。


「失礼です」

「この環境で泣き事言わずに、耐えていることは褒めてやるよ」

「ありがとうございます。」


怪訝な顔で見られてます。実は兄になったエイベルは心配性です。

よく考えると生前から面倒見は良かったですわね。


「エイベル、泳いできてもいいですか?」

「駄目だ」

「わかりました。食事の用意をしますわ。マール様はよく眠られてますね」

「勝手に起きてくるだろう」


エイベルから離れて食事の用意を始めました。

しばらくするとリオが起きてきました。


「おはようございます。火の番をありがとうございました」

「これくらいしかできないから。むしろほとんど君に頼っている」

「いえ。私でお役にたてれば光栄です。」


私は未だにリオを受け入れられません。

向けられる視線も言葉も違和感ばかりで寂しくなります。穏やかな笑みを纏って礼をしてエイベルの所に逃げました。

食事をして片付けもおえたので伯父様との待ち合わせ場所に向かうだけです。荷物はエイベルが持ってくれました。生前はこの辺りで熊に会いましたが、今回は大丈夫そうですね。足をのんびり進めると、不穏な気配に顔をあげました。

油断してはいけませんでした。熊のほうがマシでした。目の前に白くて大きい蛇がいます。目が合い体が震えます。


「いやぁああああああ」

「レティシア?」


リオが私の足についた蛇を手に持って、噛まれて倒れた光景が頭に浮かんできました。


「リオ兄様、駄目、また死んじゃう」

「ビアード嬢?」


蛇がこっちに来ます。汗をいっぱいかいて、苦しそうで倒れて起きないリオ兄様、駄目、蛇は、


「シアの所為で噛まれる。いや、だめ、来ないで」


「マール、悪いがレティシアを任せた」


視界が真っ黒になりました。

目を開けるとベッドにいました。横にはエイベルとリオが眠っています。状況がわかりません。二人の肩に手を置いて治癒魔法をかけます。


「レティ、起きたの?」


伯母様が部屋に入ってきました。


「伯母様、私は」

「お疲れ様。大蛇が出る時期ではなかったんだけど。さすがに怖いわよね。護衛騎士が動く前にエイベルが倒したわ」


優しく頭を撫でられます。

大蛇?記憶がぼんやりしてよく覚えていませんが失敗してしまったみたいです。


「エイベルとマール様は」


伯母様がクスクスと楽しそうに笑いました。


「エイベルって実はシスコンよね。貴方はリオの服を掴んだまま倒れたのよ。二人っきりにさせるのは嫌だったみたいでずっとついていたわ。妹にいつ近づいたってリオに怒っていたわ」


覚えていませんが私はリオを間違えたみたいです。どれだけ迷惑をかけたんでしょうか。

エイベルの肩を揺らします。


「エイベル、起きてください」

「起きたのか」

「お兄様、ごめんなさい。結局、」


エイベルに肩に手を置かれて真顔で見られてます。


「お前の兄は誰だ?」


たぶん私は妹のはずです。


「エイベルです」

「これは」


エイベルの視線の先にはリオが寝ています。


「マール様です」

「そうか・・・。もう平気か?」


エイベルに安堵の笑みを浮かべました。倒れたから心配かけたんでしょう。


「はい。お兄様、ありがとうございました。」

「妹を守るのは兄の務めだからな。父上から帰還命令だ」

「私が倒れたからですよね・・。お兄様は残ってください」

「いや、俺も帰るよ」


エイベルの優しさに笑みが溢れます。


「エイベル、私は貴方の妹で良かったです」

「バカ」


リオが私のリオではありませんがエイベルがいてくれます。無条件に大事にしてもらえるってすごいです。生前の私はエディにとってこんなに頼りになる姉だったでしょうか・・。慣れない違和感だらけの世界もエイベルがいれば耐えられる気がしてきました。ポンコツなところはエイベルがお嫁さんを迎えるまで私が支えましょう。

リオが起きました。


「マール様、このたびはありがとうございました。不甲斐ない姿をお見せして申しわけありません」

「いや、構わないよ」


物足りなそうに見つめられるのは、ビアード公爵令嬢として情けない姿を咎めたいんでしょうか。野外訓練の途中で倒れるなんて情けないです。


「二人共、部屋で休みなさい。」


伯母様の言葉に二人が出ていきました。帰宅の準備を整えると伯父様が訪問しました。伯父様には蛇のことは気にしなくていいと言われました。訓練としては及第点をいただきましたが複雑です。2度目なのにまた倒れてしまいました。

情けないです。もっと頑張らないといけませんわ。

レティシアの苦手な物は一番が変態で二番が蛇です。

最初の人生で監禁された時に話したレオを変態と認識しました。その後から変態を見るとトラウマが刺激され震え出します。

また幼い頃に蛇が足に巻き付き、リオが助けましたが、その後リオが蛇に噛まれ倒れてからはトラウマです。必死に我慢すれば耐えられますが、警戒してない時に見ると発狂します。


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