000-d2 帝歴392年:『聖国崩壊』皮接ぎのヨアヒムの語り
「街の上に、ずっと白い城があったんだ」
聖なる人達が、聖なる王の名のもとに集って、聖なる戦に負けた後に出来た城だ。
負けるはずのない戦いで、聖なる加護に護られた聖なる国が
野蛮な蛮族が寄り集まった国に負けて出来た城だ。
大昔の聖なる人達と聖なる王が
負けた事をどうしても認めたくなくて作ったその城は
大きくてキレイで、まるで聖なる説教に出てくる天の国の様な城だった。
その城は、血も肉も搾り取られた俺達下等民の骨で出来ていた。
冗談じゃなく、本当に白い骨で塗られた城だった。
俺達みんなが産まれてから死ぬまで
死んでから、骨になっても
その全部が、みんなみんなあの城と、あの城の中で生きている聖なる人達の為にある―――あった。
その、あまりに長くて俺達下層民は誰も本当の名前を思い出せない《骨の城》の
ひときわ白くて、キレイで、大きな真ん中の塔が
ある朝いきなり、ぶっ壊れた。
俺達は夜も働いてる。
朝日は聖なる城の方から差し込むから
昨晩仕事中に死んじまったヤツらを運んでた俺は
あぁ、今日も朝が来たと思った。
「そん時、でかい声が聞こえたんだ。
何言ってるかよくわかんなかったけど、キレイな声で
『終わりが来た』みたいな事を言ってた気がする」
そしたら青い光が朝日に向かって飛んでいって
城にぶっささって、ぶっ壊した。
真っ青な騎士様がその光を追って、真っ白い城にすっ飛んでいって
たくさんの騎士様が出てきて、物凄い音がして
俺達はどうしていいのかわからないまま
ただずっと、みんなで泣きながら、城が崩れていくのを見てたんだ。
他には、なにもわからなかった。
「けどさ…神様が助けに来てくれたって、俺は思ったんだよ―――そん時はな」
帝歴392年:『聖国崩壊』皮接ぎのヨアヒムの語り