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光焔の剣  作者: 調兼隊/ちょうけんたい
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5話 オーラ、訓練

 ザファストに帰還し、依頼を取りやめると同時に瓶を返した受付に渡すアッシュ。そして、時計塔を出て街中を歩く。


(はぁ……俺、スライム一匹すら倒せないでこの先どうするんだよ……)


 空を見上げながらアッシュはそう思った。


(今日の報酬でナズナさん達に土産渡してお礼言って、これ以上迷惑かけないように宿に泊まろうと考えていたんだがな……)


 深くため息をつくアッシュ。とその後ろからアッシュに声をかける誰かが居た。


「冒険者よ、力が欲しいか?」


 アッシュが振り返るとそこには、黒いローブを羽織り、フードで顔が隠された人物が立っていた。


「力が欲しい?誰だ……?」


「答えたまえ。力が欲しいか……」


(力?……ま、まさか、俺にも異次元のパワーが!?)


「あぁ!欲しい!」


 ーーーー異世界あるあるその4ーーーー

 《絶大な力を与える者が現れる》

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


(少し、インチキくさいけど……このままスライム一匹狩れませんでしたで帰るのも嫌だ……)


 アッシュは承諾の返事をし、それを聞くとローブの人物は


「ついてこい」


 とそのまま歩き始めた。そして、アッシュもその後に付いていく。


 数分歩くと、街の路地裏に入っていき人混みが少なくなっていく。


 そして、路地を歩いてしばらくしたところで、ローブを羽織る人物は少し古びた建物の扉を開け中に入っていった。


(怪しい香りがするが、このまま引き返すわけにはいかない……)


 アッシュも続いて建物の中に入っていった。地下に繋がっているのか、入ってすぐ下に続く階段があった。すたすたと降りていくローブの人物の後をアッシュは深呼吸をした後ついていった。そしてその先には扉があり、鍵がかかっていた為ローブの人物はローブの中から鍵を取り出し中へ入る。


「さぁ、入りたまえ」


 そう言われて恐る恐る中に入っていくアッシュ。


 中は十畳ほどの大きさの部屋があり、壁に数個ランプがかけてあるほかには全く物の置いていない奇妙な部屋だった。


 アッシュが中に入った後、ローブの人物は部屋の扉を閉める。そしてその後カチャという音がアッシュの耳に入る。


「え?」


(今、鍵閉めたか……?)


 怪しさからか、アッシュの心に不安が募る。


「さぁ、始めようか」


 ローブの人物はアッシュに向かってそう言うと、アッシュ返事と共に質問をする。


「まずは何をすれば……?」


(今から何が行われるというんだ……俺の体に魔術のような力をかけるのか?それとも、伝説級のアイテムを渡したり……いやいやそんなうまい話があるわけないだろ。こんな不気味なところに呼び出したんだ。わけがあるに違いない)


 アッシュがそう色々と考えているとローブの人物は言った。


「そこに座れ」


(座る……?)


 疑問に思うアッシュだったが素直にその場に座った。


「目をつぶって、集中しろ……」


 言われた通りにアッシュは目をつぶり、その場で集中した。

 しばらく静かな時が流れる。そしてローブの人物は


「感じるか?」


 と言った。


「いや、何も感じない……」


(もう俺に新たな力が手に入ったというのか……?」


 そう返すと、どこから出したのか、ローブの人物は木の棒でアッシュの肩を叩いた。


「いって!何してんだ!」

「何してんだはこっちのセリフだ!オーラすらまともに感じ取れないのか!」

「オーラって言っても…」

「オーラすら使えないで、よくそれで冒険者になろうと思ったな!」

「なんでそれを……!?」

「スライムの戦いからずっとお前を見ていたからだ!」

「なに!?」


(あの時からずっと俺の事を見ていたというのか……)


 ふとアッシュはその時の事を思い出す。


(いや、あの時は周りに人なんていなかったはずだ、この人は一体誰だ……)


「あなたは一体……」


「人の事どうこう言う前に自分のその未熟さを知れ!」


 そういうと、さっきの落ち着いた雰囲気から感情的になっているローブの人物。


「俺に力を与えてくれるんじゃないのか。俺に強くなれる力を、俺は強くなりたいんだ!」

「甘えるな!簡単に力が手に入るならこの世に魔物なんか居ないんだよ!」

「なっ……」


 アッシュは反論できずに言葉がつまり、何も言えなくなった。


(俺はまた……間違えるところだった。簡単に強い力が手に入るなんてそんなうまい話は無いんだ。あれだけ死ぬほど痛感したじゃないか)


「ナズナにスライム一匹倒せませんでしたって言っても良いんだぞ……?」


 黒いローブの人物から思わぬ言葉を聞いてしまい、アッシュは困惑する。


(なんでナズナさんの事を……本当にこの人は誰なんだ……)


「それで……俺は何をすれば良い?」

「私はこれから先生だ。態度を改めろ」

「は、はい」


 弱みを握られたのか、正論を言われてしまったのかアッシュは何も言うことができずに素直に従うことを決めた。


「オーラを使えるまで徹底的にその身に叩き込んでやる」


(まぁ、オーラが使えるようになるなら願ってもない話だ。どんな訓練だろうと乗り越えてやる。)


「その前に、一つだけ質問良いですか?」

「なんだ?」

「あなたはどうしてそこまで俺なんかに構うんですか?あなたは一体誰ですか?」

「お前がちゃんとオーラを扱えるようになったら教えてやるよ」

「分かりました」


 ー初日ー


 その日、オーラを感じ取ることもできずアッシュは成果を出せずにいた。そしてナズナの家に帰り冒険者になれた事、しばらく王都内で暮らす事を伝え礼を言うとすぐに家を出て例の古い建物に向かった。

 それから毎日アッシュは古い建物で泊まり込みで修行を始めた。ローブの人物も毎日その場に現れてはアッシュに指導を行った。


 ー二日目ー


 最初に教えてもらった事は、オーラを感じ取る事。

 これが出来なければ何も始まらないとのことだ。

 やることはただ一つ。ひたすら集中して集中力を研ぎ澄まし自分の体から放たれるオーラを感じ取る事。

 アッシュは一日中集中を繰り返し、七日目にしてようやくオーラを感じ取ることができた。


 ー七日目ー


 目を閉じてオーラを感じ取ることができたアッシュが次にすることは、目を開けた状態でオーラを感じ取ることだ。

 あくまで最初のアッシュが感じ取れたのは目をつぶっていた事による相乗効果であり、普段目を開けた状態では視界に集中してしまい、オーラをうまく感じ取れないのだ。

 普段から集中を切らさずにオーラを感じるには、今まで以上に集中力を高めなければならない。そうすることにより、相手の力量が一目で分かるようになる。

 やることが変わらないからか、アッシュはコツを掴み、始めてから三日で会得した。すると、自分のオーラだけでなくローブの人物のオーラも感じ取ることができたアッシュ。目で感じ取れるようになると色も認識でき、ローブの人物からは白色のオーラを感じ取ることが出来た。赤色は猛火のオーラ、青色は水龍のオーラ、黄色は迅雷のオーラ、緑色は疾風のオーラ、白色は慈愛のオーラ、黒色は沈黙のオーラである事を教えられアッシュはふとサクヤから教えてもらったことも同時に思い出していた。

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