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光焔の剣  作者: 調兼隊/ちょうけんたい
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4話 初依頼、スライム

 そして、徒歩一五分程歩きザファストの東門までたどり着いたアッシュは、冒険者セットとして武器と同時に支給された王都周辺が描かれた地図を片手に、東門を抜ける。


 ザファストと呼ばれる王都は、国のシンボルである時計塔を中心にして円形の城壁で囲まれた王都だ。造りは比較的に分かりやすく四箇所の門があり、一番大きな正面の門は通称南門と呼ばれ、一番出入りの多い場所であることから、旅人や商人が魔物に襲われないように騎士が整備しており、安全な地帯となっている。時計塔から北に進むと、ザファストで一番高い建物である立派な城が建っているのが特徴だ。城の裏には今は使われていない北門がある。逆に、アッシュが現在いる東門の先には好戦的な魔物は少なく冒険者にとっては良い狩場であり、広い草原であることから訓練場として利用する場合も多い。


 門を抜けると、アッシュは見晴らしの良い草原に出る。


「おお……始まりの草原って感じだな」


(こういう景色をみると、本当に異世界に来たんだなって改めて実感するな。まあ最初に襲われた時は死ぬかと思ったが)


 アッシュは冒険者になった喜びや、広大な草原を目の当たりにし、胸騒ぎが止まらずにいた。そして、イノシシに襲われた時のこともふと思い出したのだ。


(俺もいつか、あんな化け物と対等に戦える力を手に入れて、前の生きにくい世界とは違う平和な世界で暮らすんだ!それに色んな種族とも話してみたいしな)


 自分の思いを再度認識するアッシュ。そして、本来の目的であるスライムの粘液を集めるべく、スライムを探す。


「さて、スライムスライムをっと……」


 しばらく草原を歩くと、半透明の水色の物体を確認した。


(もしかしてあれか……?)


 直径一メートル程の大きさである水色の物体は、半分透けていてカタツムリのようにノロノロと動いている。

 その姿は、アッシュがこの世界に転移する前にライトノベルの挿絵で目にしたものにそっくりだった。


(これスライムだよな……思ってた通りの姿過ぎて逆に驚いたわ。近づいても何もしてこないんだな)


 と、興味本位でスライムを指でつつくアッシュ。すると、つつかれたスライムはさっきの動きとはまるで変わってアッシュと距離を取ると、そのままアッシュの顔にめがけて飛んできた。本能的に避けなければいけないと感じたものの、あまりの変貌ぶりに反応出来ず、スライムのタックルを顔面で受けてしまった。


「ぶはっ!?」


 顔に飛びかかってきたスライムは再びアッシュと距離を取った。


(この野郎……!!)


 ムキになるアッシュは即座に背負った剣を鞘から抜くと、すぐに構えた。


(スライムのくせに、スピードは早いんだな……)


 模造刀を振り回していた時期、アッシュが好きだったラノベに剣の持ち方や構え方が書かれた部分があり、その通りに振り回していた為か、構え方は一人前の剣士に見える。しかし、唯一違うのはアッシュが使っていた模造刀と今の真剣は重さが違うということだ。重い分体勢が崩しやすくなっている。


(くそっ、やっぱり重いな……けど、スライム一匹倒せなくてどうする)


 顔つきが変わるアッシュ。強く剣を握りしめ、体全身で剣を支える。そして、距離を取ったスライムまで一気に走り込み、その勢いとともに斬り上げる。その剣は見事にスライムの体を切り裂き、スライムの体は綺麗に割れた。


(よし!手応えはある!)


 しかし、攻撃がうまくいったためか気が緩んでしまい、思い切り剣を振った遠心力でアッシュは身体を持っていかれる。


「うおお!?」


 咄嗟に態勢を整える。


(危ない危ない……当たり前だが戦闘中に気を抜くと大事故だな……)


 相手はスライムとは言え立派な魔物である。自分が魔物に対面しているという緊張感を身に染み込ませた。そして二つに切れたスライムを背に、アッシュは剣をしまう。しかし、そんなアッシュの背中で二つ切れたスライムは動き出し、二つのスライムはアッシュの背に向かって同時に飛び込んできた。


「ぐは!」


 ぶつかった瞬間にアッシュは受け身も取れず、衝撃とともに前方へ転がり込む。


「なん……だよ……」


 不思議に思ったアッシュがスライムの方向に目を向けると、そこには先ほど切れたはずのスライムがまた結合し元の姿に戻っていくのを目にした。


(何故だ!?まさか物理攻撃が効かない?)


 そう考えていると、感情があるのか分からないスライムも怒っているのかアッシュに近づき始める。そしてそのまま座り込んでいるアッシュに向かって初めて攻撃を仕掛けた。


(やばい!)


 アッシュは咄嗟の判断で飛んでくるスライムに対し、真横に転がり込む。


(背中が痛むな……)


 隙だらけの背に思いっきり当てられてしまったアッシュの背中はかなりのダメージを負っていた。そのため回避をするだけで背中はズキズキと痛む。


(物理に効かないスライムは大抵、魔法がよく効くと言われているがこの世界には魔法が存在しない……)


 再び考え始めるアッシュだが、スライムは問答無用で飛びかかる。動きが単調であることからアッシュはスライムのどの攻撃も避けることが出来た。そしてもう一度剣を振るうがスライムはその度に結合する。それは何度も続き、アッシュの体力を徐々に削っていくのであった。


(くそっ、このままじゃ……)


 そう熟考するアッシュは一つの答えに辿り着いた。


(そういえばサクヤさんが魔法は無いけどオーラはあるって……オーラなら魔法と変わりない力を得られるって……けど、オーラの使い方って俺まだ何も知らなくないか? それにかなりの鍛錬が必要だって……もしかしたらまだ魔物と戦えるような実力なんてないのか)


 自分がまだ依頼を受けられるほどの実力がないと気付いたアッシュ。


(目先の事ばかり考えすぎてしまったか……)


 何度切っても倒れないスライムの魔物、剣を振るうにしても重さに耐えられずに態勢を崩してしまうアッシュ。そしてオーラを身に纏うことすら出来ない。アッシュは勝てないと判断して悔しみながらをスライムを背にその場から立ち去った。

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