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2120年10月1日

「高校の日本史の復習からはじめましょう。戦争では様々な人やモノが登場、活躍し、脚光を浴びてきました。第1次世界大戦では戦車、戦闘機がはじめて登場しました。第2次世界大戦ではコンピュータが活躍しました。では第3次世界大戦で活躍したのは誰ですか」


夏休み開けの最初の講義でT先生が当てたのは、僕の隣にいるHだった。


「はい、女性です」


とても簡単な質問だった。だからこそ、Hが無事に答えられて、僕は安心した。


「そうですね。女性はそれまでは慣習を理由に不当に差別され、兵士の職から除外されてきました。軍隊に配属されたとしても、後方支援に回され、十分な活躍を妨げられてきたのです。しかし、従軍後のPTSDに罹患する割合は、男性よりも女性の方が少ないという研究成果が発表されてから、その状況は変わりました。実際に第3次世界大戦で、連合国側が勝利したのは、女性が殆どの敵を倒したからです。兵器が平等に支給されていれば、女性は国防においても、男性より優秀であることが証明されたのです」


当たり前の話だった。どうせ兵士も教師も技師も医師も、優秀なのは皆女性なのだから、女性しか職業につけないよう法律に定めた方が効率的なのではないだろうか。今は目が閉じないように開いておくので精一杯だ。タイミングよく、Hが僕の肘をつついた。


「さすがにバカな男だって、こんなこと位知ってるよな」


僕は頷いた。いい機会なので最近見つけたモノをHに見せることにした。


「そういや、レイワ時代の法律で面白いのがあってさ」


「は?なんだこれ!女性は全員、重い物や有害な物質を扱う所で働いちゃいけない?コレ、やばくない?働けるとこないじゃん」


スマホを見たHは期待通りの反応をした。音声のスイッチが切ってあることは確認済だった。


「うん。それもニンシンとかいう刑罰を受けてる女性は、もっと酷い」


「うわあ、これじゃあ、仕事どころか外出も出来ないし」


ニンシンの女性ができないことは一頁にぎっしり書かれている。Hはすっかり呆れていた。


「女性でこれなら、男性はもっと酷いだろ。つまりは、レイワ時代は、家に引き込もるのがデフォルトだったということさ。外に出られるのは特権階級、つまりはニンシンの刑に課されていない女性だったってことだよ」


僕はまた一つ、未開の時代についての知識を披露でき、すっかり満足だった。


「なるほどなあ。女性でさえ自由に外を歩けないなんて、ほんとレイワは野蛮な時代だったんだなあ。じゃあ俺らは今、レイワ時代でいえば、女性しか出来ないことをしてるってことだな。ハハ」


太陽が紫色の光を僕達の腕に伸ばしている。今日の濃度は低い。お昼休みには10分ほど外でのんびりしても、フィルターの電池は持ちそうだ。

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