Prologue
この小説はフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
【セレーネの神話より】
彼女は愛する男を不老不死にする為に永遠の囹圄に閉じ込めた。彼は生きながら永遠の眠りについた。それが彼女の望んだ愛のかたち。
【序章】
※十年前の地元紙の記事より抜粋
「人魚を目撃」
上越市雁子浜で散歩を楽しんでいた松平忠輝さん(仮名)は、浜で倒れている少女を発見した。慌てて駆け寄ったところ、その少女の下半身は鱗で覆われ、まるで人魚のようだった。松平さんがびっくりして声を出すと、その少女は海に逃げたそうだ。松平さんは夢を見ているようだったと話す。海洋生物の専門家、海洋研究開発機構主席研究員、芹沢大助博士によれば、人魚伝説のもとになったジュゴンのように、小型の海洋哺乳類を人間と見間違えることはよくあるそうだ。
※十年前の全国紙の記事より抜粋
「行方不明の少年、無事保護」
先月の二十九日から行方不明になっていた少年(6)が二週間ぶりに新潟県上越市雁子浜で発見された。外傷はないが、衰弱が酷く新潟県立S病院で治療を受けている。警察は少年の回復を待って事情を聞く予定。警察は事故と事件を視野に入れて捜査にあたる。なお、ここ一カ月で新潟、富山、石川の三県で行方不明者は十名にのぼっている。