殺戮ゲーム開始
「さて、お集まりの皆さん。
今日来たばかりの人から、
ベテランの方までお疲れさまです。」
フードを被った男がそう話はじめる。
「いまから行っていただくのは
悪夢狩りです。
日々辛い思いや苦しい思いをしている方の
そんな気持ちを
我が社の技術により作り上げた
具現化したモンスターを
倒していただきます。
たくさん狩ればポイントが入ります。
それだけあなた達の夢にも近づくことができます。
初参加の方は
詳しいことはやってみてからのお楽しみ。
いつもながらさくっと倒してください。
ではどうそ!」
そういうと奥にあった扉が開く。
なんとそこから見える景色は
高層ビルの屋上と思われる高さから
下を一望できるほどの夜景。
俺たちは夜景にまっ逆さまに落ちろと言うのか?
そう思っていると人が一人外に走っていった。
たたたたっダン!
なんと空中に着地していた。
なにが起きたんだ?
能力か?
「この扉から外が戦いのフィールドなんです。
透明のフィールドになっているのでどごまでも
いけますよ。」
そうか、何かの力でそうなってるわけか。
そう思いながらたたずんでいたら
テスラが首輪とナイフを渡してきた。
「戦いには装備が必要ですよ。」
そういってにこやかに渡してきた。
首輪はつけてみるが
何も変わらない。
ナイフはサバイバルナイフようなものが
鎖で繋がれており戦うには十分そうだ。
「いってらっしゃいませ」
そうテスラがいった。
おそるおそる外に出てみる。
当たり前のようにそこに地面があった。
もうゲームは始まっているのか、
各々ぞろぞろと外に出ると、
オレンジ色の人形の
スライムのようなものが現れた。
俺はそいつが襲いかかってくるのと同時に
首の右側にあるボタンを押した。
するとマントとフードがでてきた。
その瞬間、
景色か変わった気がした。
いや自分が変わったのか、、、
目の前のものを殺したい。
急速に自分を包む殺人衝動。
鎖付きのナイフをスライムめがけて
飛ばす。
的が弾けとんだ。
スカッとする。高揚感が自分にみちあふれてくる。
もっと壊したい。そう思った。
辺りを見渡すと
青い人形のスライムのようなものもあった。
二種類のスライムはいったいなにを
表しているんだ?
いやこの際どうでもいいか……
俺はつぎつぎと刺し、
倒していった。
何体も何体も何体も……
なぜだかオレンジのものばかり向かってきたからか
辺りはオレンジ色で埋め尽くされていた。
これが何を意味するか知らずに
ふとスマホがなった。
スマホの画面にポイントが表示されていた。
希望 40
40ポイント
絶望 15
15ポイント
なかなか稼げたんじゃないか?
「おい!テスラ
結構稼げたぞ!そっちはどうだ?」
「私はテラーですから、
あなたを案内するのみで、
参戦したりはしないのですよ。」
相変わらずの笑顔で答える。
「そうなのかよ。おもしろくねぇな。」
オレは苛立ちながらも
ふとテスラの暗くどこか後ろめたそうな表情が
気になった。
「いったん休憩しますか?
先程のエントランスで。」
ふとテスラが促してきた。
「そうだな…」
休憩に戻るとそこには
スクリーンに映像が流れていた。
フードの男がまた映っていた。
『皆様、お疲れさまです。
たくさん狩れましたか?
新人の方は、
スマホに写し出された
この数字はなんだろうか?と
思っているのではないですか?
知りたいですか?
知りたいでしょう?
仕方ないですね!
教えちゃいましょうー!』
男は意気揚々と話す。
まるでとても楽しいことがあったかのように。
ポロロン
ふとスマホに写し出されたのは、
たくさんの人の、顔写真だった。
「なんだ……これ……」
「秋川様……あなたは何も悪くないですよ。
それはですね……」
そうテスラが言いかけた時だった。
『あなたが死に導いた人たちです!』
「……?」
突然のことに言葉を失った。
なんだって?
死に導いた?
こいつは何を言ってるんだ?
『オレンジと青の人形スライム達、
希望と絶望の表示、
何かと思ったでしょう?
オレンジは人の希望
青は人の絶望を表しています。
この世界とは違うあの外から見れる景色は
あなた方が、元々居た世界です。
その世界の人から
希望と絶望を抽出し、
具現化している場所なのです。』
なんなんだ……訳が分からない。
『つまり、
オレンジの希望のスライムを殺せば
人の希望の気持ちを殺し、死に至らせます。
青の絶望のスライムを倒したら、
人の絶望した気持ちを殺し、
死を思いとどませるという仕組みなのです。』
俺が、誰かを殺したって言うのか?
なんだそれ……?
何の実感もない。
俺はただ目の前のスライムを倒しただけだ。
どくん……どくん……
心臓の鼓動が伝わってくる。
だんだん早くなってくるのがわかる。
冷や汗がでてくる、止まらない。
息がうまくできない……!
吸っている感じがしない!
思わずフードに手を伸ばす。
被ると、この状況から脱っせると思った。
鼓動や冷や汗や息苦しさ
それが一瞬にして消え去った。
ふと思った。
俺は人を救ってやったんだ。
そう思った。
フードを被っていると大丈夫だ。
落ち着いていられる。
いやそれどころか
俺は救ってやったんだ!
死にたくてたまらないやつ、
毎日死のうとしてるやつ、
生きてたって仕方ない奴がごまんといるなかで、
死にたいという願いを叶えてやったんだ。
死を思いとどまらせることもした。
何も悪くなんかない。
「テスラ、お前はこれを知っていたのか?」
「はい。すべて知っておりました。」
「言えば俺がやりたがらないだろうと
言わなかったのか?」
「そうです。すみませんでした。」
「これはつまりは、
人の生死に関わって
誰かが死ねば夢に近づいていくって
ことなんだよな……」
「そうともとれますね……」
「べつにまぁいい、俺はこのナイフで
死にたがり達を殺せばいいんだからな。
」
「秋川様、私とともに、どうか夢をつかみましょうね。」
ふと思った。
こいつを刺してもポイントにならないのだろうか。
「あぁ、あのさぁ、
お前を殺したら何かポイントが手に入るのか?」
「パーカーを被ってこその思考ですね……。
あなたと私は、一応パートナーです。
パートナー殺しは逆に減点になります。」
「なんだそうか、残念だな。」
「ふふふ……」
相変わらずの笑顔で答える。
周りの人たちは信じられない
受け止めきれないと落胆するもの
ポイントが手に入り
盛り上がっているもの様々だった。
泣き崩れている人もいた。
誰かはドロップアウトしていくのだろか?