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見切り発車シリーズ

歪んだ彼女は死人を変える~生まれ持った唯一が忌み嫌われた彼女は安らぎを失いどこへ行く~

 恐らく好き嫌いが別れると思います。あと自分でわかるくらいぐちゃぐちゃです。直しはしましたけど直ったかは自信がありません。ご了承願います


 マルセイル大陸の南東、国の三方を大国に囲まれ、残りの一方は海に面している小国、リンデベル。そんな国のはるか北、辺境の大都市でクモール辺境伯領の領都クモールの一角にあるスラムに程近い比較的治安の穏やかな区画の路地裏にひっそりとたたずむジュエリーショップ、モールエクラ。そこの店主兼この店唯一の職人、それが私、エタンセルの肩書きだ。

 この世界では魔術と言うものと共存している。そのなかで人は、産まれながらにして固有術式というものをもっている。読んで字のごとく自分だけの魔術を記した式だ。

 それは、産まれた時点でどういった基準か分からないが生物の脳に直接刻まれる。これは似たもの、例えば『水を造り出す』術式と、『大気中の水素と酸素を結合させて水を生成する』術式は同時に存在し得る。しかし、全く同一のもは存在しないとされる。

 ちなみに、一般的に言えば後者より前者の方が術式としてはすぐれているとされている。水素や酸素何て言う概念は三代前の勇者、フミタダ・アキシノが説いた教えで、あまりよく分かっていない。それ以前は同一の術式も存在するとされていた。

 もちろんこの固有術式には優劣がついており、今の勇者様の術式は、『世界の理を越える力を操作する』らしい。これは歴代の勇者のなかでも最もすぐれているとされている。

 それに対して、私の術式は、『生物を鉱石、宝石に変換する』ものだ。私のような生物を他のものに変換するような術式を持つ者は忌み嫌われている。

 当たり前だ。いつ自分達にその術式が牙を向くか分からないのだ。そんなやつを18年も育ててくれた両親には頭が上がらない。しかし、そんな両親も3年前の大暴走で死んでしまった。

 ここで説明しておくと、大暴走とは、不定期に発生する災害の1つ。多種類の魔物と呼ばれる異形の存在たちが繁殖期の重複があっために起きる災害で、増えた生物が陥る慢性的な食料不足、そして食料を求め魔物たちが行く先が人間の住む場所だった。本来なら自分達の縄張りから出てこない魔物たちは、数が増えすぎて餌がなくなり領域から溢れだした魔物たちはその目に写るすべてを喰らう死神になる。

 両親は、凄腕のハンターで、その術式もすぐれていた。詳しくは教えてくれなかったが、父が操作型の術式で、母が干渉型の術式だった。

 術式は操作型、干渉型、変化型、強化型、具現型、万能型の全部で6つだ。まぁこの中でも細かく分けられているから把握しきれない。




 いつもは人ッ子一人いないモールエクラに、フードを深く被った怪しげな人物が訪れていた。


「噂を聞いてきたのだが嘘偽りはないんだな」


 その怪しい人物は比較的低めの声でそう訪ねた。


「ええ、どの噂か存じ上げませんが恐らくは合っていますよ」

「なら証明してくれ」


 そういってその人物は、おもむろに回復ポーションの材料にもなる薬草を取り出した。

 私の術式は()()に作用する。それは決して動物や魔物、人間だけではなく、生きていると認識できればどんな()にでも作用する。そう、例えば今目の前にある鉢植えに植えられた草でさえも。

 

「これはメディア草ですか?」


「あぁ、少なからず魔力を宿したものが良いと聞いたのでな」


「フフフ」


「・・・っ何を笑っている」


 怒らせてしまったようだ、これは謝って機嫌を直してもらわなければ、


「申し訳ありません、まだ成人も迎えていないだろう()()が精一杯背伸びする様が愛らしくてつい」


「っな、なんのことだ?」


 息をのむ音が聞こえた。どうやら隠しきっているつもりだったようだ。


「これは失礼を。今のは聞かなかったことにしてください。

 今か見せることも他言無用でお願いしますね」


 実は両親にも言ったことがないのだが私の術式はいくつかの副次的効果がある。まず変換する対象だが生きて()()人や動物、植物と生きて()()人や動物、植物。つまり死体も対象になり得る。そしてその対象に魔力があればその魔力に応じて様々な効果が出てくる。術式を織り込むことも可能だ。そして最後に死後数分程度ならその魂すら対象となり得る。

 私の表の肩書きは宝石の魔術師。裏では死宝の魔術師。今来ているお客さんは裏の客らしい。


 用意されたメディア草に術式を使い緑がかった宝石が出来上がった。これには魔力を流すことで回復魔術と同じ効果が得られる。それを見たクライアントは「これなら・・・」っと呟いていた。どこで知ったかわからないが、術式の関係か生物の年齢、性別、生死そして健康状態がある程度わかる私の目にはこのクライアントは10代後半の女性。睡眠不足ぎみらしい。こういった場合だいたい親を形見にしたい貴族だったりする。


「それで?どういった依頼ですか」

「・・あぁそうだったな、貴様の噂が正しければそれが生きていようと、死んでいようと、動物でも植物でも、たとえ()()でも今のように変化できるのだったな?」

「ええ。おっしゃるとおり人間であろうと宝石へ変えることができますよ。ということは形見作りということでよろしいですか?」

「・・・そうだ私の母と父を形見にしたい」


 これは珍しい。普通はどちらか片方なんだけど、・・訳ありかな?まぁ私には関係のない話だ。


「それでは対象の確認をしたいのですが、」

「分かっている、今日はつれてきているから今見てくれ」

「では奥にお願いします」


 本当に珍しい、後日持ってくるか家に伺うことが多いのに。これは少し覚悟していた方が良いかもしれないね。


「この二人ですお願いします」


 これは驚いた。今まで生きてきた中でも一番驚いたよ。今目の前にいるのはどう見ても先代国王夫妻、つまり彼女は王女様ってことだ。しかし、先代の国王夫妻はまだ死んでいないはずだし実際目の前に二人は生きている。そして今の国王と恐らく目の前の彼女、第一王女マリエナ殿下はなかがよろしくなかったはずだ。・・・仕事は選ばない方だけどこれは断りたいなぁ。


「ふふふ、さすがに死宝の魔術師でも予想外でしたか?」

「ええ、断りたくなるほどに」

「まぁ、やっぱりアリシアの娘ね」

「っ!母をご存じで?」

「ええ、私の唯一の妹ですもの」


 それは初耳だ。そして本当の事だと言うのもいやと言うほど分かっている。


「やはりそうですか。似ているとは思ってましたがまさか本当とは」

「あの娘は言ってないみたいね。ところであなたはここに住んでいるの?」

「ええ、一人で住むならこの広さで十分ですから」

「少し意外ね、あの娘が娘を一人で暮らさせるなんて、父親より結婚に反対するっていってたのに」

「・・ええ、きっと反対したでしょうね。一人暮らしなんてかなり反対されてましたから」

「・・・ちょっと待って、ねぇ、もしかしてだけどさっき、反対したでしょうね、って言った?」

「ええ、過去形で言いましたよ。その反応ということは知らなかったんですね」

「そ、そんな」


 母に家族がいたこと等知らない私には母の家族にその死を伝えるすべなどなかったし伝えようとも思えなかった。同様に父もそうだ。まぁ父は孤児で親などいないらしいけど。

 本当に悲しいのだろう前王妃は声にならないほど泣いている。もう克服した悲しみが私にも押し寄せるほどに。同時に言い様のない罪悪感さえも。そんなとき唖然としたようの王女のとなりで聞いていた前国王が重々しくその口を開いた。


「それならジェラルドはどうしている。あいつも同じくらい過保護なはずだ」

「二人は本当に仲良しだったようで三年前に同じ日の同じ時間に私の腕の中で」

「っそれはすまないことを聞いた。その話は後からゆっくり聞きたいのだが、今は依頼の話をしたい」

「そうですね。二人を生きたまま変化した方がいいですか?それとも一度死にますか?」

「できれば生きたままがいいがなにか違いがあるのかな?」

「大きな違いは二つ、まず値段が大きく変わります。生きたままの方が安くなります。そして生きたままだと解除すれば以前の姿に戻れます。何故かは私も知りませんが年も取らず術式を使う以前と変わらない容姿で変わらぬ年齢でね。逆に死ぬ場合体と魂を分けて変化させるので融通が利きます。例えば身体を金属にして魂を宝石に変えるなんかもできます。」

「ふむ、・・・今回は生きたままの方が良いようだ」


 これは嫌な予感が的中したかな?まぁ好都合な方に転びそうだし別にいいかな?


「じゃぁ生きたままだと1000万エリルになりますが、お願いを聞いてもらえればただでやりますよ」

「内容によるが、」

「まぁそうでしょうね、私の願いはひとつ、具現型で人形系の術式、出来ればある程度の自由度のある術式を持っている囚人もしくは犯罪奴隷を用意してもらっていいでしょうか?」

「まぁ探せばいると思うが何に使うつもりだ?」

「秘密ですよ」

「まぁあまり詮索はしないがあまり無茶はしないでくれ」

「もちろん」




 無事に報酬も受け取り二人は公には亡くなったことになった。

 ここで私の術式の商売にしていない部分、誰も知らない部分を紹介しよう。それは二つあるのだがまず私の術式で変化させられた生物は実は意識が残っている場合がある。それは生きたまま変化させた場合、死んですぐ変化させた場合の二つだ。つまり魂がある場合にのみ意識が残る。そして意識を覚醒させたままにするかそれとも睡眠状態のように意識のない状態にするかは私の自由になる。疑問に思った方もいると思うが私の腕の中で死んだ両親を変化させなかったのか?っと。もちろんさせたさ。意識を残したまま。だからあの二人が来たときどういった間柄なのかも聞いていた。

 そして次に私の術式ではからだの部位ごとに変化させることもできる。例えば固有術式の刻まれた部位だけなんかもできる。この能力は応用することで一つしか持てない術式も2つ持つことが可能ではある。術式として埋め込まなくても効果は発揮する。特に具現型は私の術式と相性がよく何の維持費もなく半永久的に存在することができるようだ、だからこそ私はあのとき報酬で人形系具現型術式の使い手を欲した。そうすることで体を用意したかったから。

 今なら私だけでもこんなこと簡単にできるが当時は体と魂の分離変化ができずこんなに遠回りをしてしまった。これでやっと・・・・・・






「久しぶり、父さん母さん」

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