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9 入学式にて

 俺は沢山の人混みの中、自分の試験が行われる会場へと進んでいた。今隣にはエリナもリナリー様もいない。入学試験がない貴族が少し羨ましい。


 自分の番号が書かれた席に着くとすぐに試験監督の人が教室に入り部屋の話し声が一斉に消えた。


 そしてすぐに問題用紙が配られ試験が開始される。


 「それでは……はじめ!」


 開始の合図と共に俺は回答を始めた。さて、王立騎士学校はいかほどな物かな!?




 「26番 ススム 合格だ」


 二時間後俺は合格通知を一番最初に受け取っていた。


 あまりにも簡単すぎた。

 考えてみれば高校でトップの成績をとっている人が小学校の『お受験』をしたものだった。五分で終わってしまった俺はあまりにも暇すぎた。

 そのあとの面接も全力で敬語で話したらあっさりと合格の通知がもらえた。結構緊張して挑んでいたのに拍子抜けである。


 意外に早く終わったので屋敷で待っているであろうみんなに報告に行かなければ。そう思った俺は駆け足で校門へ向かうとそこに見知った顔があった。


 「「ススム(君)! 」」

 「もしかして待っていてくれたの?」


 エリナとリナリー様が校門に立っていた。もちろん護衛付きで。

 白銀の騎士に守られた女の子達がいる光景は今学校から出てくる人は平民ばかりなので軽い人だかりになっていた。


 「結果はどうだったのススム?」

  

 そう問われた俺は二人に合格通知を見せびらかす。するとエリナはまるで自分の事のように喜ぶ。


 「よかった~!昨日の夜もしかしたらって心配だったの!」

 「エリナは心配性ね。私は心配なんかしてなかったわ!」


 そう言ったリナリー様だったが、合格通知を見た時に胸を撫で下ろしていた。


 「じゃ、帰って宴会よ宴会!パーッとやるわよ!」

 「帰ろ!ススム君!」


 すっかり二人は打ち解けているようだった。ここ数日でわかったのだがリナリーはやはり豪快な性格のフレイドさんの血を引いているらしく俺たちの中でリーダーのように引っ張って行く。


 リナリーが走って行ったのでそれを追いかけるように俺達も追いかける。


 リナリー様……。遠慮がなくなったのは嬉しいのですが、重い鎧を着た騎士の方々がとても大変そうです!もうちょっと周りも見てあげてください!


                      〇


 「先程学院の方から正式な通達があったのだが、どうやらススムの成績は入学した生徒の中で一番だったそうだ!」

 「やっぱりか!私は信じてたぞススム君!」


 フレイド様とフロストさんが嬉しそうに酒の入ったグラスを高らかに上げる。


 学園から帰った俺を待っていたのは豪華な食材がふんだんに使われた食卓だった。どうやら俺が帰ってくる前から準備を進めてくれていたらしいのだ。


 (もし俺が落ちていたらどうするつもりだったのだろうか……まぁフレイド様は俺が合格するとしか考えてなかったのだろうけど……。)


 普通に平民をしていたら味わえないであろう凄い待遇とお酒の入ったフォード兄弟のヨイショに俺は恥ずかしかった。娘二人は楽しそうに談笑をして、俺は酒の入った親たちに絡まれる形になる。


 「ススム君なら将来、大物になれる職に就けるさ!」

 「いや、男なら騎士団に入って団長ぐらいを目指せ!」


 どうやら二人とも俺の事をえらく気に入っているらしい。きっと子供が娘だけなので俺を仮想の息子として可愛がっているのだろう。それは嬉しいのだが……この兄弟、正直酒が入るとウザい……。


 「そういえばススム君はどんな子が好きなんだい?」

 「おぉ、それは俺も興味があるな!ススムどうなんだ?」


 中年の父親の絡みと全く一緒だ。お酒が入るとどこの世界でも人は同じとゆうことなのだろうか。それに6歳の子供に何を聞いているんですか……。

  

 ふと気が付くとエリナとリナリー様もこちらを向いている。エリナは不安げな顔を、リナリー様は恋バナに興味津々な女の子の目をしていた。


 「えっと、特には……無いです」

 「そうか、男と言ってもまだ子供だしな。そうだ!リナリーはどうだ?可愛いだろう。君の黒髪が気に入ったらしくてな最近よく話してくれるんのだ。英雄の様だとよく私に――」


 いきなりフレイド様による娘の暴露話が始まった。


 「それならうちのエリナだって!昔っからススム君の話ばっかりさ。今日はどんな事をしただの、明日は何をするだのいっぱい私に――」


 負けじとフロストさんもエリナの暴露話が始まった。


 もう既に俺の好みの女の子の話ではなくなり親同士の娘の暴露話大会になっていた。


 「「や、やめて~~~~~!!」」


 そんな娘たちの悲痛の叫びが聞こえた後も高らかに笑う声は夜通し響いていた。


                 〇


 娘たちの暴露話があった宴会の翌日の朝。フロストさんはエリナを王都に残しタタカ村へと帰って行った。エリナはアイシャとの別れ程寂しがることもなくまたフロストさんもそれほど心配はしていなかった。兄のフレイド様を信頼しているのだろう。


 そしてついに入学の日がやって来た。


 今年度入学する平民は10人。その他の生徒が貴族である。その全員が同じ学園の制服に身を包み今この場にいる。


 俺が入学の式場に入ると黒髪にであることが少し周りの視線を集める。貴族とは別の席に着くと式は着々と進んでいった。


すると式の途中横の生徒が話しかけてきた。


 「君の髪は珍しいね。」


やっぱりこの黒髪は珍しいのか。


 「あぁ、黒色は珍しいみたいだね。」

 「僕の故郷では黒色の髪ってのは幸運の象徴とされているんだ。」


 どうやら黒色の髪ってのは場所によって意味合いが違うのか。リナリー様は勇気て言ってたし。


 「君といるといいことがあるかもね。僕ライトっていうんだ。」

 「僕はススム。これからよろしく。」


 そんな事があり無事に入学式は終了した。


見学できていた保護者も会場を出始める。

 俺はライトと別れた後エリナとリナリー様と合流するとフレイド様のもとへと向かった。だが、フレイド様は数多くの貴族に囲まれていてとても話しかけることができる状態ではない。そういえば前から疑問に思っていた事があったのだ。


 「リナリー様。フォードの家って貴族の中ではどのぐらいなのですか?」

 「ススム知らなかったの?王国内じゃ3番目よ。」

 「3番!?」


 やはり、とんでもない人だった。

 

「フォードはセントリア王国の三大貴族の一つよ!」


リナリー様は誇らしげに教えてくださる。


 フレイドさんが俺たちを見つけると周りの大人たちに一言何かを呟く。すると蜘蛛の子を散らすように人々が去って行った。それに合わせて俺達は駆け寄る。


 「リナリー、エリナ。今日から学園に通うが頑張るのだぞ!」

 「「はい!」」


 二人に声をかけたフレイドさんは次に俺の方を向く。


 「ススム君、君は今日から寮での生活になる。何か困った事があったら遠慮なく私を頼りなさい。君はもうフォード家人間だ。」


 そう言ってくださったフレイド様は俺に短剣を渡してきた。


 「これはフォード家の男性が生まれた時に送る剣だ。家族を守る力、という意味がある。この剣は成人した時に貰った人に返すのが決まりでね。短剣など必要ないほどに強くなる意味が込められているのさ」


 いつもの豪快な姿ではなく保護者としての一面を見せていた。彼の眼差しには力強い何か、があるように感じる。

 

 「だから、私にこの剣を返す時まで頑張りなさい!」


 本当にフォード家の人達は優しすぎる。こんな見ず知らずの俺を家族と呼んでくれるなんて……。元いた世界との違いに少し笑ってしまいそうになるのを抑えてフレイド様の目をしっかりと見る。その眼力に負けないように―――。


 「はい。頑張ります!」




                  〇




 だが、この時の事を将来のススムが思い出した時、こう言うだろう。


 「あの時、入学試験に落ちていたら……現実を知らずに済んだのかな……。」

 

 と。

入学できた……。


さぁここからが作者が書きたかった物ですよ!ようやくタイトルの意味が分かると思います。


えっ、遅い? ごめんなさい……。

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