表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
努力戦士 〜彼女の為に俺は身一つで最強へと辿り着く〜  作者: ペペロンp
4章 ジリア連合獣国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/63

55 VS ベギル 前編

更新が遅れましたすいません……

 数か月ぶりに全力の状態へと戻ったススム。


 取り戻しつつある力は未だその上限が見えず、通常の人間では理解できない程に膨大な物となっていた。


 互いに咆え、そしてその身は掻き消える。残されたのは地面をけりつけた跡が二つ、それも巨大なひび割れとなっていた。


 先程行ったことと同じ構図、互いに接近しお互いを殴り合う。ふたりとも魔法や遠距離武器、剣といった近距離用の武具ですら一切使わない素手。その極限が真正面からぶつかる。


 殴る右手と止める左手。


 その一撃は前回と全く同じように両方が完全に止める事で進展はしない。だがさっきと違うと言えばベギルが初めて驚愕を見せ、ススムが楽しそうに笑っている事だろう。


 「ワシが押されるとは…五百年ぶりかの」

 「これぐらいで満足すんなよ、ジジイ」


 ススムの全力の解放に歓喜の声を上げるベギル。観客席から見ている二人には瞬きをするよりも早く動くススムとベギルの豪速には意識が追い付かない。


 互いの拳が止まった一瞬の制止、それを打ち破ったのはススムであった。


 「お返しだ!!」


 素早く『神断流』の構えをとり、地面を踏みつける力を拳へと伝達させる。踏み込みの強さは拳の強さに大きく関係する。彼の拳がどれだけ驚異的な物なのかはその踏み込みが証明しているだろう。瞬間的に踏み固められた地面は丸い凹みを作る事すら許さずまるで雪に脚を突っ込んだように地面へと突き刺さる。


 「っ!!」


 今まで余裕をもって相対していたベギル、だがこの強靭な踏み込みを見て流石に今回は胴体をがら空きにするわけにはいかず腕を下ろし防御の構えへと移り始めた。


 鋭く、だが硬く握られた拳が風、音、衝撃すら追い越してベギルの防御の上に硬く打ち付けられる。


 止めた、とベギルは心の中で一瞬の安堵を迎える。が、確かにベギルはその拳を止めていた。だが彼が受け止めたのはただの拳ではない。


 ススムが命を削りながら死ぬ思いをして身に着けた『神断流 虎花』、単純にして単調。


 『虎』の直接的な攻撃を『花』によって流動させ相手の内へと伝道させ内側から攻撃する型。


 ススムが編み出した唯一にして最強の攻撃なのだ。


 まるでその場で火薬が暴発したかのような爆音と共にベギルの体を衝撃が襲う。


 「ゴハァ!!」


 防御の上から伝わった衝撃は体の内側に直接ダイレクトにヒットし、より多くの鮮血が口から飛び出ていた。


 だがススムのターンはまだ終わらない。


 撃ち込んだはずの拳には少しの空間が作られていた。そのわずかな空間、それを利用したタメの打ち込み。八極を応用した『虎』は連続の二連弾となっていた。


 「ハッ!」


 掛け声と共に防御した腕の上で制止したはずの拳が再度速度と衝撃を纏いベギルへと襲い掛かる。


 今度は衝撃を内部に伝えるのではなく、体全体に打ち込んだ拳。つまり後方へとベギルは吹き飛ばされ闘技場の外周、そこに張られている魔法壁へと突き刺さった。さながら先ほどのススムがされた事をそっくりお返ししたのだ。


 「ふ~……」


 ようやくダメージらしい攻撃を与える事ができたススムは自身の実力にある程度の自身の回復ができていた。


 「どうだいじいさん。俺の拳は満足か?」


 めり込んだベギルは吐血をしながら獣人らしい尖った牙を見せながら笑う。


 「ぬかせ小僧!! 数百年にわたる倦怠、このような一撃だけで晴れるわけがあるまい!」

 

 口から滴る血を拭うと分厚い魔法壁から抜け出るのではなく魔法壁その物を破り壊し、その壁を足場にしてススムへと迫り来る。


 斜め上からせまるベギルはその身を書いてさせ回し蹴りによる踵落としをススムへと放つ。最初にくらい、耐えることが出来なかったその踵落とし。その蹴りをススムは『花』的確に力のベクトルを掴み取り、空を切らせる形で流す。


 すると横の地面が風圧と衝撃波によって綺麗に裂ける。もし直撃していたら人の肉体など原型を留めそうもない攻撃、そんな物が自分に向けられていたら普通動揺するのが人である。実際、観客席にいる二人はただの”余波”でひび割れ、壊れていく闘技場に動揺を隠せない。


 攻撃を放った反動で少しの滞空をしていたベギルが重力につられその身が地面へと落ち始める瞬間、再びその身は空中でねじられ今度は拳が放たれた。


 そんな拳も再度『花』で流される。今度はその勢いを利用したススムが裏拳をベギルの腹部へと叩きつける。


 「グッ!」


 そんな苦痛の声がベギルから漏れ出る。が、それと同時にススムの腹部にも激痛が走った。


 「ガハッ!」


 肺の空気が強制的に押し出される中、自身の状態を即座に確認する。そこにはベギルの脚が深々と撃ち込まれていた。


 流石は『六天』、先ほどの一撃で自分の攻撃が流されるのを理解し、相討ち覚悟の攻撃に出たのだ。


 互いに打ち付けられた衝撃が体へと伝わりその身は反する方へと吹き飛ばされる。魔法壁へ、そして地面へとめり込んだ二人は何事も無かったように直ぐにその身を起こす。


 「小僧、おぬしの拳…体の芯まで来るわい。えげつない攻撃をするよのう…血を流すのなんて本当に久しい」

 「じいさんこそよく生きてるな。あれ本気で殺す気で打ったんだぜ?」


 互いに口から流れる血を拭いながら楽しそうに笑う。


 「それにしても指輪を取った瞬間から別人の様じゃの」

 「一種のスイッチみたいなもんだ。正真正銘今の俺は『ススム』なのさ」


 ススムの口調は柔らかな万人受けのする丁寧な口調から、荒々しい口調へと変わっていた。これまでもこういった変化はある。私や僕が『ガドー』なら、俺が『ススム』なのだ。


 「小僧…いやススムと言ったな」

 「ああ。それが俺の本名だ」

 「ならススムと呼ばせてもらおう。その拳確かにアークの物に似ておる、だからこそお前に対する認識を再度改めるわい」

 「認識?」

 「おい、王よ」


 ベギルはいきなり観客席に向かって言葉を投げかける。だが、ここ数百年間、一度も負けずジリア連合王国の頂点と伝説であり続けたベギルが一撃をもらい、その口から鮮血と実力を認める発言などありえない。そんな事態が目の前で起こっている事に認識が未だ追いついていなく返答が帰ってこない。


 「王! ババラ坊よ、しっかりせい!!」

 「はっ。な、何でしょうか大おじ様」

 

 呼びかけによってようやく王の意識がこちらへとむく。隣にいるララスも共に自分たちに問いかけが起こっている事にようやく気が付いていた。


 「今から『半魔化』する。あとはわかるな?」

 「なななな」


 ベギルが言った『半魔化』という言葉に驚きを隠せないジリア王。初めて会った時の威厳ある風格はどこかへと過ぎ去りただの狼狽する大人であった。


 「おやめください!! 二百年前にそれを行い、国の首都を崩壊させたのをお忘れですか!!」

 

 (あ~なるほど。だからこんな国境線の近くに首都があるわけか)


 首都が崩壊したから場所を移した。言葉で言えば単純だが、それはベギルの言った『半魔化』の恐ろしさを表している。


 「二度は言わん。はよせい」

 「くっ……ララス! 無理だとは思うが大おじ様を説得してくれ! 私はこの事を他の者へ伝えに行く!」


 そう叫んだジリア王は一人観客席から去ってゆく。


 「そんな……あんな師匠、止められるわけが…」


 そうボソッと嘆いたララスだがそんな言葉は誰の耳にも届かない。


 「じいさん。いいのか? 随分な事をしようとしてるみたいだが」

 「構わんよ。こんな絶品な獲物てきを前にして力を出し惜しむ理由もあるまい」


 するとベギルは自らが来ていた上着を脱ぎさる。そして露わになったのは500歳を超えているとは到底思えないほどの洗礼された肉体であった。獣人特有の獣毛が腹部や腕回りにあるが腹部の腹筋のあたりには生えてなく、完璧に鍛えられた筋肉が晒される。


 「行くぞ…ススム!!」


 次の瞬間、ベギルの放つ気が段々と変わっていっていた。ただ強大で覇を持っていた気だがその性質その物が全く別の物へと変わりつつある。その気はまるで――


 「魔物……」


 バキバキと異音を縦ながらベギルの骨格が変わっていく。獣毛が生えていなかった部位にすら毛が生え始め爪は堅く鋭くなり、ちらりと見えた牙は人の物ではなく全てが犬歯のように鋭く伸びる。


 身体の変形による異音が収まるとベギルは人間のような二足歩行ではなく重心を前に倒した前傾姿勢、四足歩行に近い体制をとる。


 「なるほど……『半魔化』ね」

 「気が読めるならワシが何を行ったのか理解出来るだろう?」


 ベギルの声色すら先程よりも低く雑音が混じった声となっていた。


 「獣人の血には『魔物』の血が混じっているのか」


 どうやら正解のようでひとの顔から長細く伸びた口でニヤリと笑う。


 「ワシら獣人の祖先はどうやら『魔物』か、それに近い血を持っていたのであろうな。たまにこうやって『半魔化』で魔物の姿に近づくことが出来る者が生まれる」

 「……それで? 姿が変わったところで何が違うんだよ」


 確かに気の性質は変わった。だがその量や密度までは変化していない。ススムにとっては本当に形が変わったとした捉えられなかった。


 「その程度の認識だと……」


 その瞬間には既にススムの眼前に拳が迫る。


 「死ぬぞ?」

 「ッ…」


 寸前で状態を逸らし回避するがベギルの攻撃は止まらない。加速されたベギルの手はススムの首を掴み取り闘技場の外へと投げ飛ばす。


 「ハァァァァァァァ!!」

 

 これまで貫通する事はなかった魔法壁ですらたやすくススムの体を通し、その身は外の森の中へと飛ばされある程度進んだ樹の幹にぶつかる事でようやく止まる。


 「んだよそれ…反則じゃねえか」


 掴まれた首にはっきりとベギルの手形が残っていた。


 「ほれ、また意識が他へ向いておるぞ?」


 飛ばされた樹の直ぐ上に飛ばした張本人であるはずのベギルが既にこちらを見ていた。


 何が起こったのか判断するため距離を取ろうと直ぐに樹を蹴り飛ばし先程まで戦っていた闘技場へ破られた魔法壁の穴を通り戻る。相手の気を感じて場所を探るがベギルの気は四方八方から発せられる。それもそのはず、ベギルは今ススムか感知できない程の速さで闘技場の周りを飛び回っているのだ。


 すると横の魔法壁が破られると同時に目に見えない何かがススムへと迫る。


 魔法か、それとも遠距離武器か。その判断も許さない程の速度で迫る攻撃にススムは一か八かの反撃にでる。


 「クソが!」


 『虎』の一撃にて迎撃した拳の先には何も存在はしなかった。


 そう、飛翔してきたのはただの衝撃波。拳か、脚か。そのどちらかの衝撃が堅牢な魔法壁を貫通しススムへと届かせているのだ。


 続いて四つの衝撃波が全く異なる方向から迫る。だが全力を解放したススムとてこの程度ではない。


 「なめるなよ!!」


 集中力を出来るだけ高め始めたススムは目に見えない筈の衝撃波を次々に撃ち落とす。続く連撃も危うい物は『花』で流し、『虎』で迎撃をする。


 「ほう、やはりこの程度の衝撃波ではびくともせんか」


 全方位からベギルの褒める声が届く。だがベギルのペースで戦ってはいけない。


 明鏡止水、これが『神断流』の基本。だが師は言った、クールで冷静に、そして熱くなれるのが強い男だと。


 「そこかぁぁ!!」


 ススムが振るった拳は闘技場の外にいるベギルに当たるはずもない。だが気によって洗練され、飛ばされた衝撃波はベギルよりも鋭く、そして素早く目標へと着弾する。闘技場の外に巨大な土煙が生まれるど同時にその場に大きな地揺れが起こる。それと同時にベギルが煙を貫き上空へと跳躍をしていた。


 「見つけた!」


 その後を追うように跳躍したススム、魔法壁によって崩壊はしていないが既に原型を留めていない闘技場だったがこの跳躍の脚蹴りによって完全に地面がひび割れ魔法壁は崩れさる。


 いくら素早くても足場が無ければ空中で動きようがない。そう考えていたススムの予測は簡単に裏切られる。


 ただ空中に居るだけと思われたベギルはいきなり下方向へと加速を始めたのだ。その直後上空の雲がいきなり掻き消え真っ青な晴天が見える。


 (衝撃波を反動に加速したのか!!)


 同等の速度で迫る両者、だが互いに避けるなどという選択肢は存在しない。振るわれる拳を脚、互いに直接ぶつかり合った瞬間、強烈な反発力にて二人の体はあらぬ方向へと吹き飛ばされる。ベギルは遠く離れた山の中腹に、ススムは闘技場からかなり離れた密林の中へと突き刺さる。


 その後上空に手発生した衝撃はあたりの木々をなぎ倒しながら周りへと広がっていた。


 すぐさまその場から飛び起きたススムはベギルが飛ばされたであろう山を確認すると巨大な土煙が連続して巻き上がりどんどんとこちらへと迫り来る。


 だがこの瞬間、ススムは別の生命体の気を感じ取っていた。密集するようにあるその気は何百、何千、万にも達しようとする気の数。


 (まずいここは首都の近くか!!)


 すぐさまこの場から離れようとしたが目測で数十キロ離れていたはずのベギルが既にススムの気の感知圏内に入る。このまま首都の近くで戦闘するわけにはいかないススムは豪速で突っ込んでくるベギルを真正面から掴み取る。


 「クッ…とまれクソじじい!!」


 互いの手を掴み合い、強引にベギルの勢いを殺しながら抑え込む。だが勢いに押され後方へと押され既に防壁が見える位置に来ていた。


 「ジジイ!! 首都の近くだ、とりあえずここから離れるぞ!!」

 「そんな事ワシには関係ないわい!! もっとワシをたぎらせろススムゥゥ!!」


 どうやら『半魔化』によって理性を失いかけているベギルはこの戦いで他者を巻き込む可能性を考慮できない程になっていた。だがどんどん押される力は強大になりススムは地面をえぐりながら首都の方へと推し進められた。


 「クソっ…止まれって!!」


 ついに防壁を突き破り二人は首都の中へと侵入する。そとの柔らかい土から硬い地面になったおかげで進行を止める事はできたがベギルを押し戻すことが出来ない。


 すると首都に大きなサイレンのような音が鳴り響く。おそらく緊急事態の警告音だろうがこれが防壁を破った事による物なのか、それともジリア王による物なのかは今のススムには判断する余裕はない。


 すると防壁近くに住んでいる民家から獣人の家族が壁の崩壊する音を聞いて家から飛び出てくる。


 「な、一体何がおき……ってベギル様!?」

 「さがれ!! 今このじいさん理性を失いかけてる!!」


 そう告げると理解したようでサイレンを聞いて出て来た者達にもそのことが伝えられその場から一目散に去ってゆく。そのあいだススムにできる事は一秒でも長くベギルを抑えておく事だ。


 「じいさん!! いい加減にしろ、自分の国の奴を殺すつもりか!!」

 「アアアァァァ!!」


 口からは涎が滴り落ち、その目は明らかに人の物ではなく殺意をいだく獣の物となっていた。


 「ッ……いい加減に」


 ススムの体から蒼い稲妻が発せられる。次第に増大するその稲妻は彼の全身を包み込む。そして力による単純な比べ合いにて初めてススムが優勢となりベギルの体を押し戻す。


 「しろって言ってんだろうが、ジジイ!!」 

もうちょっとベギル戦続きます。


よろしければブクマと評価をお願いします!


もし感想などをいただければ執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ