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努力戦士 〜彼女の為に俺は身一つで最強へと辿り着く〜  作者: ペペロンp
3章 青年期

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39 ニアとのデート 後編

随分と時間が空いてしまい申し訳ありません。

 一通りのストレッチを終えたころ、会場に一際大きな歓声が上がった。どうやらあの顔見知りの冒険者の試合が終わったようだ。つまり……。


 「次は、僕の番か……」


 スタッフが呼びに来る前に控室の扉を自ら開き会場へと歩みを進めて行く。すると通路の向こう側からススムを呼ぶはずだったスタッフがやって来る。


 「あっ、ガド―さん! 準決勝は少しインターバルをとる事もできますよ? 相手側の『剣聖』様は既にご準備ができているようですが……」

 

 相手が既に戦えるというならススムに待つ理由はない。


 「それなら私も今すぐに試合を始めたいです」

 「か、かしこまりました」


 Fランク冒険者が格上の相手に尻込みしていないのに少し驚いているようだったスタッフが試合の開始を伝えに横の通路へと入って行った。


 闘技場へと歩みを進めたススムは会場へと三度足を踏み入れる。


 ススムの姿が見えると観客たちは全く歓声を上げようとはしなかった。正体不明の力を見せたFランク冒険者のガドーがSランクにも届く力を持つ『剣聖』に挑む。その試合は一瞬も目が離せる物ではなかったからだ。


 ススムの視線に一人の男が映る。


 その『剣聖』は堂々と舞台に立ち、まるでススムがインターバルを取らない事を知っていたかのように居座る。


 「やぁ、やっと君と戦う事ができるみたいだね。正直この大会に出ている人達は全員つまらなかったよ。けど君は面白い物をみせてくれそうだ」

 「面白い……ですか。そうですね、"楽しみではありますよ」


 なにせこっちは負ける気だからな。


 ある程度の実力が知れたら適度な攻撃でも喰らって場外にでも吹き飛ぶことを考える。


 「お待たせしました!! 準決勝第一試合の開始です!」


 アナウンスが流れると『剣聖』アキスト・メアリスは一振りの剣を懐から抜きこちらへと構える。その神々しく黒く輝く刀身からは魔力の波動がこちらに伝わって来る。


 「魔剣か……」


 流石は貴族、使用している武具も一級品のようだ。


 ススムも拳を正面に構え、この大会初めての”真面目”な構えである。だがその構えをとった時、アキストが一つの剣をススムの前に投げ出した。いい素材で作られているとみられるその剣は地面に落ちると響きの良い音を放つ。


 「僕だけが武具を持っているのはフェアじゃないだろう? ぜひその剣を使ってくれ」

 「フェア……ですか」


 余裕のアキストの表情の中にうっすらと笑みが混じっていた。おそらく武器を使っていれば勝てた、などの言葉を試合後に言わせないための布石。つまりこのアキストは完膚なき勝利がしたいのだろう。いきなり現れた正体不明の実力者に完勝することでさらに自分の名声でも上げるつもりか。


 ススムは構えを解き投げ出された剣を拾い上げる。


 「いいですよ。ではありがたく使わせていただきます」

 「そう来なくっちゃ! 楽しませてくれよ!」


 互いの肩書が述べられる中、アキストは余裕からか笑みを浮かべ、ススムは視線を相手から外すことは無い。


 「試合を始めます」


 アキストの魔剣が構えられ攻撃の体制へと移る、一方ススムは手に取ったばかりの剣をブンブンと振り感触を確かめていた。


 そんなススムの態度に観客の中から小さな中傷の声が聞こえてくる。無理もない話である、貴族相手に試合をしようとする態度には今のススムは見えないだろう。


 「始め!!」


 その掛け声が放たれた瞬間、先に動いたのはアキストであった。


 「行くよ!!」


 余裕の宣言を叫ぶとその姿が一瞬にしてススムへと迫った。流石は『剣聖』身体能力は今までの冒険者とは明らかに違っている。この身体労力で繰り出される剣戟には誰もが驚くところであろう。


 ガキン


 だが放たれた剣は誰にも当たることなくその軌道をもう一方の剣によって止められていた。


 「なっ!!」


 アキストから驚きの声がとび出る。それは明らかにアキストの攻撃をススムが捉えている証拠であった。


 アキストは二撃、三撃と続けて剣を振るうがどれもススムに当たることなく剣は止められている。


 「や、やるじゃないか…」

 「……」


 相手側の賞賛にススムは反応することは無い。


 続けて放たれる連撃はススムに届くことは無い、全く身体を動かすことなく腕の動きだけでアキストの剣を止めているのと全身を使って攻撃をしているアキストを見ている観客は誰しもが思ったろう。未だ負けた姿を見たことが無い『剣聖』の敗北という二文字を……。


 「ハハ、これは凄いな。この攻撃を防げるのはエリナぐらいだと思っていたよ」

 「っ……」


 ススムにとって聞き逃せない名前がアキストの口から放たれる。


 「仕方無いね…まさかこの技を人相手に使うとは思ってなかったよ」


 つばぜり合いをやめ距離を取ったアキストの魔剣から魔力の波動が感じられた。魔剣とは何かしらの特殊な魔法の力を持った剣の事を指す。ススムの目から見ても一級品の魔剣の能力は十分に警戒するにあたる。


 魔剣を再び構えたアキスト、するといきなりその姿が掻き消えた。


 上から見下ろすように闘技場の全体を見えているはずの観客ですらその姿を捉える事は出来ない。だが次に客がアキストの姿を確認したのは先程と同じように魔剣をススムに止められた姿だった。


 「なっ……」


 再び姿が消えたアキスト、だがその姿は同じようにススムに攻撃を止められる事で露わになる。


 「なぜ……なんでこの攻撃を止められるんだ!」

 「なんでって…その魔剣の能力はおそらく使用者の”加速”ってところじゃないですか?」

 「っ……!」


 メアリス家が代々受け継いできた秘剣の能力がたった二撃だけで見破られた事にアキストは驚きを隠せない。


 「それが分かったところで…」


 再び加速によって姿が消えたアキスト、その加速と持ち前のスキルによって繰り出される連撃はもはや一呼吸の間に五を超える斬撃がなされている。だがどの攻撃でも顔色一つ変えないススムに止められていた。


 「なぜ止められるんだ!!」


 明らかに人間の反射速度を超える速さで繰り出される攻撃に完璧に対応していれば誰しも驚くだろう。”普通”の人間の反射速度ならだ。


 「慣れてきたな」


 その一言と共に今まで攻勢だったアキストの体が後方へと弾かれる。


 「な…この僕が…引かされただと!?」

 「この剣の重心にようやく慣れたな」

 「たかが普通の剣ごときで僕の魔剣にかなうはずがないだろう! 貴様ぁ、何をした!」


 先ほどまでの余裕の笑みは消えそこには自尊心を傷つけられ怒りに燃えるただの青年が居た。今まで負けを知らず、一級品の武具と神に選ばれたクラスとスキルで生きてきた功績をただの剣ごとき一本で崩されるというのはプライドの高い貴族には耐えられない事だろう。


 「何を怒っているんですか?」

 「何を…だと?」

 「早く本気の剣技を見せてくださいよ」

 「……何を言っているんだお前は、さっきから本気で…」


 その瞬間、今ままで普通のススムの表情が険しいものに変わる。


 「えっ、まさか今までのが剣技って言わないですよね?」

 「なっ、俺の剣は…剣技では無いと言いたいのか! 俺は『剣聖』だぞ! 剣技スキルだっていくつも…」

 

 三度加速したアキストの攻撃、今度は止めるだけじゃなく弾かれ次の攻撃につなげることが出来ない。


 「はぁ…『勇者』と肩を並べる力がどれほどの者か知りたかったんだけど…。まさかこの程度だったとは」

 「なっ、なにを!」


 今度はススムが剣を振りかざしその一線を放つ。


 ガキン、と金属の衝撃音が響くと防御の構えを取っているアキストの剣は細かく震えていた。


 「そんな…僕はちゃんと防いだはずだ!」

 「答えを教えてあげましょう。貴方の剣は『剣聖』の優れたステータスとスキルによって底上げされている。加えて”魔剣”の能力だ、ただでさえ早い剣が加速されるんだからなかなか対応できる奴なんて居ないでしょうね」

 

 そう。アキストは彼の家が持つ”魔剣”の力によって比類ない強さを持っていた。それはC級の魔物など取るに足りない程である。あらゆる冒険者としての依頼を凄い速さで達成してきた希望の新星。そんな『剣聖』はパーティメンバーのエリナとリナリーが王城に召喚されているために暇つぶしで参加した大会、そんなところで自分が、自分の剣が通じないことなどあってはいけないのだ。


 「そうだ!! 僕の剣は”Fランク”の奴なんかに負けるわけが――」


 再びススムが振るった一撃ではアキストは体制を崩され弾かれた剣を庇いように地面へと膝をつく。


 「アキストさん。貴方の剣には”術”がない。ただ刃の付いた剣を振るっているに過ぎないんですよ」

 「じゅ、術だって?」

 「剣の駆け引きも無い、力の強弱もかけない、魔剣の重心を理解していない構え……そういった”術”、技が無いんですよ」

 「だって僕のこの剣は…”魔剣”はどんな物だって切る事が――」


 確かにアキストの魔剣は一級品である。今のススムの肉体はそんじょそこらの攻撃なら傷一つ付かないがあの魔剣でなら腕を切り飛ばす事だってできる。そんな魔剣の刃をただの銅製の剣で防いでいること自体おかしいのだ。


 「そうか……これが『剣聖』の実力か」

 

 あきれたようなため息交じりの声を発したススムはアキストの魔剣を弾き飛ばし大きく宙を舞ってから鈍い金属の音と共に地面に落ちる。


 「くっ…」

 

 今まで見下ろす側だったアキスト、だが今は突然現れたススムに見下ろされる形となっていた。


 「はぁ……こんなもんかな」


 振りかぶった剣を捨てたススムはアキストに目もくれずスタスタと舞台から降りていく。


 「ちょ、ちょっとガドーさん! なにしているんですか! 降りたら負けになってしまいますよ!」


通路から伺っていたスタッフが大慌てでススムを制止する。


 「あぁ、負けでいいですよ」


 圧倒的有利な状況にいたススムは手のひらを反すように勝負を投げ出す。理解不能の行動にでたススムを誰も咎める事はしない。誰しもが信じられない出来事の連続に戸惑っている内に闘技場からススムは去って行く。


         〇


 「お疲れさまスス、じゃなくてガドー君! 『剣聖』はどうだった?」

 

 三位決定戦にでない事を伝えて四位になる事が決定したススムは早々と賞金を貰い会場の外に待っているニアと会っていた。


 「スキルや魔剣による攻撃は凄かったですよ。でも正直期待外れでしたね。前の二人の方がちゃんとした戦い方できる気がしますよ。それでどうでした僕の力量は」

 「うん、君は肉体面。つまり物理攻撃に関しては超越者だね。まぁこれで私の指導方針も決まったわ!」

 「指導方針?」


 そういえばニア姉さんは理想の男性、つまり自分よりも強者の者にしようとススムの事を指導すると再会した時に言っていた事を思い出す。


 「君には魔力方面、つまり魔法について指導していこうかな!」

 「魔法ですか? 確かに全く使えませんが……」

 「うふふ、そっちの方が育てがいの有りそうね!」


 これからの指導の事を思ってか少しニア姉さんが嬉しそうに見える。


 「ま、今日はそういう話はもうやめてデートの続きをしましょ!」

 「そうですね。任せてください! 今日だけならフルコースにだって耐えられますよ!」

 「それは……た・の・し・み・ね」


 見栄を張って調子にのった事を言った自分に後悔する事になるススムだった。

なるべく間があかないようにします……

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