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努力戦士 〜彼女の為に俺は身一つで最強へと辿り着く〜  作者: ペペロンp
3章 青年期

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37 ニアとのデート 前編

 王都の中央広場には大きな噴水が有り一種の観光スポットとなっている。主にカップルなどのデートスポットとしてだが……。


 そんな噴水のふちに腰掛けながらススムは大きくあくびをしていた。


 思った以上に従魔を連れて泊まる事の出来る宿を探すのに苦労してしまい結局探し終えたのは日が落ちた後だった。その後も日用品の買い物からシロ用の食料の確保までしていたらすっかり夜になってしまい日課の『神断流』の鍛練を宿の裏庭でしていたらすっかり夢中に…そして寝不足である。


 ススムの横を衛兵が過ぎていくが声をかけられることもない。白い髪となったススムはもう姿と隠す必要はない。


 「そういえば朝飯がまだだったな……時間までまだあるし軽く何か食うか」


 中央広場にはさまざまな屋台が店を連ねているため朝だろうと早くから開店しているところもあった。


 「すいません。この蒸しイモと干し肉を二つずつください」

 「はいよ。銅貨5枚だな」

 

 店主の視線、声高、体の動作、気のブレをススムは観察し店主の言葉の虚偽を見破る。


 「それは高いですね。銅貨2枚なら買いましょう。出なければ他の出店に――」

 「まちなまちな、朝から店開いてんだ。だからせめて銅貨3枚だ」

 

 適正価格は銅貨二枚が妥当なところで本当は銅貨二枚と小銅貨五枚にしたかったが朝早く店を開いく苦労もあるだろうから――


 「わかりました。銅貨3枚で」


 銅貨を手渡しお目当ての商品を受け取る。そのまま先ほど座っていた場所に戻り蒸しイモを取り出す。


 「キュイキュイ」

 「まてまて、シロにはこっちな」


 自分も空腹だと伝えてきたシロを膝の上に移し干し肉を渡す。生まれて間もないシロだが哺乳類などとは違い既に生物の肉を主食としているようだった。


 「~~♡」


 やはり肉は好物のようで機嫌よくバリバリと飲み込んでしまう。その速度に負けじとイモを口の中に居れるが蒸したてでアツアツなのもありシロの方が早く完食してしまった。


 イモを冷ましながら食べているとニアとの待ち合わせの時間に近づく。するととある方向から感嘆の声が聞えて来てそちらの方向を向くと待ち合わせの人物がやって来ていた。


 ギルドの受付の制服と違い普段着に身を包んだニアは通り過ぎる男どもの視線を集めため息や仕事の手を止めさせるほどの美貌を振りまきながらこちらに手を振る。


 「お待たせ~! ススム君早いね」

 「おはようございますニアさん。これでも眠いんですよ。師匠との生活ではまともに睡眠する時間もくれなかったですからね……その名残がまだあっ地上の生活リズムにはまだ慣れてなくって…」

 「けどデートに遅刻しなかった事は評価してあげましょう! あと姉さんが抜けてるよ?」

 

 やはり姉ポジションはニアにとって大切らしい。


 「ニア姉さん……」

 「よろしい! ところでそのドラゴンは?」


 ニアは頭の上で満足げに干し肉の余韻を楽しんでいるシロを指さす。


 「あぁ、そういえば昨日はローブに隠れて紹介してなかったですね。こいつはシロって言って俺の従魔です」


 シロの事を簡単に紹介するススムだったがニアの視線はシロを見続ける。頭上のシロが一瞬ビクっとしたのが頭上を伝わってススムも分かった。


 「ふ~ん……そういう事ね……まぁいいわ!」


 何か納得したようにうなずいたニアはススムの手を取る。


 「行きましょ!」


 楽し気にニアはススムの手を引っ張る事でデートは始まった。


 ニアは王都でも有名な人物のようで「ニアさんだ……」「いつ見ても綺麗だ…」と言った声があちらこちらからススムの耳に入る。だがススムと一緒にいる事をデートととらえている者は少ないらしく多くは微笑ましそうな視線を送る者だった。


 「なんか注目されているみたいですね」

 「良いんじゃない? どうせ歳の離れた兄弟ぐらいにしか思ってないよ」


 成長したと言ってもススムはまだ14歳、大人の女性とではまだ身長差もある。パッと見て美人の20代前半の女性と青臭さが抜け切っていない少年が恋仲と思う人はそういない。


 中央市場に近くにあるバザールへとやって来たススム達は露店に並ぶ雑貨を一緒に見ていく。


 「こんな風にデートするの夢だったんだ!」


 露店のアクセサリーを見ながらニアはそうススムにこぼす。


 「そういえば自分より強い男性がいいと言ってましたが、アーク師匠とはお付き合いしなかったんですか?」


 アークならばニアの条件に合致するところ多かったはず、その疑問をニアへと投げかける。


 「あ~……アークはダメね。あいつは女に興味はあったけど愛する事はできない男だったわ」

 「……なんかわかる気がします」

 「不老に近い存在になってからあっちこっちで女を作って孕ませて、女を作って孕ませての繰り返し。へたに名声があったから女にちやほやされてたけどアークは結局誰も愛してはいなかったわ。子供は愛してたみたいだけど……。私はね、少しでもいいから私を愛してくれる人がいいわ」


 かつて師からきいた話をススムは思い出す。女癖が悪くいろんな都市や町に女と作ってい手痛い目に合っていたとかつてアークは言っていた。その時は冗談か何かだと思っていたがまさか本当の話しだったとは……。


 白銀のネックレスを見ながらそうつぶやくニアの表情はどこか寂し気の感じがしていた。この人もいろんな思いを持ちながら長い年月を過ごしてきたのを考えるとススムは安易に言えなくなる。


 「ニアさんに認められたのわ嬉しいですけど……それでも僕は中ではエリナの事が一番大事です。これだけは僕の中で決まっている事ですから……」


 昨日は突然の出会いとニアの真実、圧倒的威圧感に流されてしまったがこれだけは変わらないススムの気持ちである。


 「『勇者』の子だっけ? いいのよ。私が言ってるのは10や20年の話じゃないわ。あなたアークの弟子なら『仙術』も使えるんでしょ?」

 「ええ、一応使えますけど」

 「なら少なくとも『勇者』の子よりは長生きするわ。私はその時でもかまわないの。君は真面目な子だから複数人を同時に愛する事に抵抗があるんでしょ?」

 「……ええ」

 「無理にとは言わないわ。できれば同時に私も愛してくれて、それが無理ならいつかでいいから。私は気長に待つわ」


 ニアの恋愛観をススムは正直理解できなかった。ただこの寂しそうな横顔は彼女の長い人生の中でどれだけの別れがあったのかを表しているようだ。


 「勘違いしないでね? 誰でもいいわけじゃないよ。前からススム君の事は気に入ってたし、もし君が私より強くなるならいいな~って思ってたよ」

 「……」

 「重く考えなくていいよ。結構難しい事を言ってる自覚はあるから。気長に君の答えを待つよ」

 「……はい」


 ニアはいつの間にか持っていたネックレスを購入していた。


 「ごめんね、なんか重い話になっちゃったね。どう似合ってるかな?」


 ネックレスを付けたニアがススムに見せびらかす。


 「に、似合ってますよ」

 「ありがと! あと…これ!」


 ニアはカポッとススムの顔に何かをはめる。


 「うわ、何ですか!?」

 「昨日の内に作っておいたの。この仮面だったら顔を隠せるんじゃない?」


 それは魔法がかかった仮面らしく顔に装着しているのに全く息苦しくなく匂いや風など付ける前と何も変わらなかった。次第に者視野も広がり本当に仮面を付けているのか錯覚するほどの出来栄えであった。


 「す、凄い……これを一晩で作ったんですか?」

 「そうよ。だてに最強の魔法使いと呼ばれてませんからね!」


 一般的に魔法のかかった道具、その価値は跳ね上がる。素人目でも複数の魔法がかかっていると分かるのでこれは売ろうものなら結構な価値になる。


 「ところで~できればこのネックレスはさりげなく買ってくれるのが良かったんだけどなぁ~」

 「えっ!? あっ、だ、代金は僕が――」


 ニアの話しにつられてボオーっとしていたススムはデートのエスコートの事をすっかり頭から抜けてしまっていた。直ぐに自分の財布を取り出すが――


 「うげ……」


 中には残り数枚の銅貨を残すのみとなっていた。宿代の先払いと日用品の購入でかつてススムが日雇いの仕事で貯めた金貨10枚は底を尽きかけていた。思えば王都から脱出するときの無理な移動でかなりの出費をしていたのだ。


 「あらあら」


 ススムの財布を覗いたニアの率直な感想だった。


 今すぐお金を稼ぐ手段としては手持ちの持ち物を売る事が一番早い。だが持っているほとんどの物はアークの所有物だった装備と『アビス』で倒した魔物の魔石である。


 「ニア姉さん。アーク師匠の装備ってどれくらいしますかね?」

 「アークの装備?」


 それでこちらの意図を理解したニアは少し考える。


 「やめておいた方がいいかもね。あいつの装備はどれも国宝級を超える伝説に近い物よ。そんな物普通の店で売ろうものなら確実にもめ事が起こるわ……国家級のね」

 「で、ですよね……ならこういった魔石はどうですか?」


 腰の袋から魔石を取り出す。『アビス』にてススムが倒した魔物の中でもそれなりの強さを持つ魔物の魔石を選んで保管していた。いつか外に出た時の為にと……。


 「あら、これSランクの魔石じゃない。うーんこれは装備程騒ぎは起きないだろうけど今日一日で鑑定して報酬は出せないわね」

 「マジですか……これぐらいの魔石しか持ってないんですよ……」


 選りすぐんだことが仇となってしまいデート代を用意することができない。だからといってニアに費用を出させるのも借りるのも男としてはしたくない。


 「う~ん……そうだ! こっち来て!」


 何かを思いついたニアはススムの手を引っ張りどこかへと連れていった。中央通りを抜けて商業区の一角へと連れて来られる。そこには円形のドームのように建造されたコロシアムがあった。


 「ま、まさか……」

 「そのまさか、ここで稼ごうか」


 コロシアムの受付に張られている張り紙を見ると現在冒険者のトーナメントが開催されており飛び入り参加可能と書いてある。参加可能なギルドランクに制限は無く、開催日は示し合わせたかの如く今日だった。賞金は4位から出され結構な金額である。


 「本気ですか? 相手は人間ですよ!?」

 「いいんじゃない、やっちゃった時はその時よ!」


 (あ~……ダメだ。昔師匠にノリで10階層落とされた時と似た感じがする……)


 「あー、仮面に魔法を付与するの疲れたなー。その報酬が欲しいなー」


 わざとらしい棒読みでススムに追い打ちをかける。


 「それに君の師範をする上で、どれだけの力量か見ておきたいしね」

 「はぁ~……わかりました。けど今日のデート代を稼ぐだけですから賞金がでる4位で負けますからね」


 ススムは大会の受付に参加の意向を伝え、自分のギルドカードを提示する。


 「”F”ランクで出場ですか……一応生死にかかわる攻撃は禁止されていますが保証はできませんよ?」

 「ええ、かまいません」

 「それと職業もお聞きしたいのですが」

 「あ~……なら――」


 職業を伝えると怪訝そうな顔をされながら参加が許可される。そると選手用の通路へと通された。


 「ニア姉さん、シロをお願いします」

 「わかったわ。シロちゃんと一緒に観覧席から見てるからバシッとカッコいいとこ見せてね~」

 「キュイ!?キュイキュイ!!(おいてかないで!)」


 最初の威圧的な出会いが原因で未だにシロはニアの事を苦手としてるらしく虚しい叫び声をニアの腕の中で発していた。


 通路を案内されると途中――


 「それにしても最後の一人が見つかって良かったですよ」


 スタッフの人が安堵していた。


 「最後? 僕が最後だったんですか?」

 「はい。この大会は昨日までは大勢の参加者がいてボトルロイヤルでトーナメント参加者を決める予定でしたがある人が参加を表明したせいで皆さん一斉に棄権しましてトーナメントの人数すら足りないとこだったんですよ」

 「へ~……ちなみにその人って誰ですか?」

 「あの『勇者』エリナのパーティの『剣聖』、アキスト・メアリス様です」

 「へー……それは面白くなりそうですね」


                  〇


 最後の参加者が集まった事で大会の開始が宣言される。その声を控室でススムは聞く。どうやら最初の試合が始まったらしく観客の歓声が始まった。


 控室を見わたすと自分以外にも六人ほどの選手が待機していた。おそらく対戦相手は会場の反対側の控室にでもいるのだろう。だがススムが興味のある『剣聖』の姿は見当たらなかった。向こう側の控室にいるのか、それとも貴族だから別の部屋にいるのか……。


 次々と試合が進んで行きどんどん控室から選手がさっていく。


 そのうち一回、とても大きな歓声が上がる。耳を澄ませるとところどころに『剣聖』という声が聞こえてくる。どうやら『剣聖』様は人気のある戦いをしているようだ。


 一回戦第七試合、その試合が始まった時――


 「ガド―さん。準備のほうをお願いします」


 ついにススムの番が来た。控室から出て廊下へとススムと歩みを進める。一歩一歩進んで行くと闘技場の会場へとたどり着く。周りを観客席で囲まれたコロッセオは元の世界の写真で見た世界遺産にそっくりな造りである。


 どうやらススムの前に行われていた試合はちょうど終わったらしく倒れた選手が会場のスタッフに連れられて舞台から去って行くところだった。


 「お待たせしました。一回戦第八試合――選手の入場です」

 

 魔道具によって増大された進行役の声が響くと観客席の歓声がワァーと盛り上がる。


 「Cランクにしてクラスは『騎士』。冒険者エルド―!!」


 対戦相手が手に持った剣を掲げ上げながら入場してくる。どうやらCランク程になれば名も知られているようで観客からエルドを応援する声が多数ある。


 「”F”ランクにしてクラスは『戦士』。冒険者ガド―!!」


 ススムの肩書を進行役が述べると観客の声が一斉に消え去る。


 「Fランクが!?」

 「Fランクじゃかなわないでしょ……」

 「そもそも『戦士』って何そのクラス、聞いたことないよ」


 ざわざわと小声だけが観客を包む。そんな中ですごく小さなパチパチと拍手するニアさんが観客に居るのが見える。


 そもそもススムには職業は存在しないのでどうせならとパッと思いついた物を言ってみた。『戦士』なんて大雑把過ぎる職業は存在しないがススムの戦い方としてはあながち間違いではない。


 「おうおう、Fランクの『戦士』さんよ。Cランクでレベル40の俺に殺される前にさっさと棄権したほうが良いぜ」

 「へぇ、レベル40ですか。ちなみに俺は0ですけどね」

 「はぁ?」


 1から始まるレベルは本来なら0なんて事はありえない。ススムのこの発言に怪訝な反応を示しても無理はない。


 「では試合を始めます」


 その掛け声と共にエルドは武器を構える。流石に実戦経験のある冒険者なだけあってエルドの闘志がこちらまで伝わって来た。自信はあっても油断はしないわけだ。


 ススムも相対するようにとりあえず構える。


 「始め!!」


 試合の開始と共にエルドがススムに一気に詰め寄り剣を振り下ろす。だが振り下ろされた剣は空を切り裂いて何も当たる事はなかった。


 最小の動きで横に少し避け剣を躱したススム。


 (どうするかな……『神断流』を使うと最悪殺しちゃうし……とりあえず当身をして隙を――)


 腹部に一撃を加え、それによってできる隙からの攻撃をしようとし、素早く軽い裏拳を放つと……。


 「グォハァッ!!」


 捉え切れない速度で打ち抜かれた”当て身”はエルドの腹部に大きくめり込む。単純な打撃に皮鎧もその下に着込んでいた楔帷子も役に立たず体は弾き飛ばされた。


 目にも止まらない攻撃(当身)にて吹き飛ばされたエルドは闘技場を囲う壁に突き刺さる。本来魔法防御を付与して上級魔法にすら耐える強度を持つ魔術防壁は全く存在しないように貫通する。


 瞬きをした瞬間に終わっていた試合に観客の誰も声を上げる事すらできない。ただ一人、パチパチと嬉しそうに拍手するニア以外には。


 「まじか……またやっちまった……」

 ちなみに小情報ですがギルドランクに比例して狩る事のできる魔物の魔石のランクは上がります。Fランク冒険者ならFランク、Aランク冒険者ならAランクといった感じです。


 よろしければブクマと評価をよろしくお願いします! あと感想をいただけたら嬉しいです。

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