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努力戦士 〜彼女の為に俺は身一つで最強へと辿り着く〜  作者: ペペロンp
3章 青年期

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29 生物型携帯端末 シロ

 師匠が消えてからその場に何分程いただろうか、師匠が『神』と言っていた相手からの音沙汰もないので俺は師匠の装備が保管されている言っていた扉の奥に入った。


 そこには二つの革袋と一つの手紙だけが置かれていた。


 「……え!? これだけ!?」


 かつて英雄とまで言われた男の装備と言えるものは何一つ無くだだの倉庫ほどの空間にポツンと置かれた袋と手紙、ボスを倒して開けた扉の先にある報酬にしては随分と質素である。


 とりあえず手紙の方を手に取る。手に取ってみると分かるがどうやら中に入っているのは手紙だけではないようだ。なにやら硬い小さなものも一緒に入っている。


 封を開け中の物を取りだすと手紙と白銀の指輪が出てきた。


 「なんだこれ?」


 手紙の内容に目を通していく。『ススムへ』と題名が”日本語”で書かれた手紙はどうやら師が自分の為に残した手紙である。


 『とりあえず勝利おめでとう。正直色々と書くのは面倒なので簡単に書く』


 こういった別れた者に残す手紙にすら面倒くさがりが出ているのはとても師匠らしい。どうやら書いてある手紙は一枚だけで終わりみたいだ。


 『俺の使っていた装備は全てこの『アイテムボックス』に入っている』


 『アイテムボックス』とはこの革袋の事だろうか……そう思って袋を手に取り中を覗いてみるとそこにはありえない程の空間が広がっており絶対に外見以上の体積が中にはあった。何も入っていないただの袋だがどう考えても魔法の道具、魔具の類である事は明らかだ。


 「うげ……なんだこりゃ。空間が曲がってるのか?」


 昔見た本の中に『アイテムボックス』の記述があった事を思い出す。結構珍しいアイテムで所持しているのは相当な地位にある貴族か名の有る商人ぐらいだったはず。そんな貴重な物を同時に二つも手にしたことに少し手が震えた。それも無理はない、金を出せば買える類の物ではないからだ。


 手元の手紙を再度確認する。


 『一つが俺の装備が入っている、もう一つは空だ。好きに使え』


 もう片方の袋を覗くとそこには禍々しいオーラを放つ剣、おそらく魔剣と言う物だろうか。金属の光沢が七色に光る鎧など多種多様な武具が入っていた。それなのに全く袋からは重さを感じない……。


 「凄いなこの袋……」


 『それとこの手紙と一緒に入ってた指輪を付けてみろ』


 そう書かれていたのでとりあえず左手の中指に指輪を付けた。すると全身の力が指輪に吸われる感覚があり体が重くなったように感じた。いや、確実に先ほどまでよりも体が重くなり手を握る力も弱まっている。


 「な、なんだこれ!」


 急いで手紙の続きを確認した。


 『これは呪いの指輪でな、持ち主の身体能力を半減させるメリット皆無のクソみたいな指輪だ』


 「はぁ~!? 何考えてんだあの師匠!?」


 せっかく鍛えた肉体の力を奪う指輪、しかもメリットがそれ以外ない物を弟子に送るとはあの師匠は一体何を考えている!?


理不尽な指輪に文句しながら続きに目を通す。


 『正直に言って今のお前の力は強すぎる。そんじょそこらの敵では拳ひと振りで肉塊になるだろう。だがそれでは『神断流』の修行にはならない。お前がもっと高見へ行くには力だけではなく技も磨け』


 そう書かれていた内容にススムは納得してしまった。


確かにこのダンジョン魔物のでさえもうまともな攻防ができる相手は居ない。だからこそ自分が怠けないための、力だけに頼らないようにするためのデメリットなのかもしれない。


 (でも俺で勝てない強敵と戦う時に外れないと困るぞ……)


 と思ったススムだったが指輪はあっさり指から抜けた。つまり普段はこれを付けて生活をして全力を出さないといけないような敵にだけ指輪を外せという事なのだろう。


 「しかしなんでこんな意味のない指輪なんて持ってたんだろうか……」


 手紙の内容は以上で他に書かれてはいなかった。本当に簡単に書いてあったのだ。


 「もうちょっと弟子に贈る言葉ぐらいあるだろうに……いや、あの人はそんな人じゃないか」


 装備の入っていた袋から手ごろな大きさのローブがあったので引っ張りだしそれを着込む。どうやらこのローブには何の魔法もかけられてはいないようで何の気兼ねなく切る事ができた。


 (実は超高価な物を普段から身に着けていました……とかは嫌だな)


 先ほどの『アイテムボックス』の件でアークの持ち物の貴重さが分かったススムは装備の入った袋の方は絶対に他人に見せてはいけないと悟っていた。


 魔剣やちらっと見えたアダマンタイトの武具は人に知られて絶対に良いことは無いとフレイド様からもらった剣の件でススムは体験済みである。


 『アイテムボックス』二つを腰につけ、部屋から退出するとさっきまでアークと戦っていたボス部屋におかしな物がある事に気が付く。


 「なんだあれ……岩が盛り上がってる」


 部屋の中心の下からもこもこと盛り上がる岩がある。人の頭ほどの大きさの隆起した岩から白い球体のような物だ飛び出してきた。白く、でも楕円のような形をしたそれはまるで鳥類や爬虫類が生む卵のような形をしていた。


 「まさか……もう新しいダンジョンボスが生まれたのか!?」


 ススムはいつでも先制がとれるように構える。でも左手に呪いに指輪があるせいで全身の力は半減、アークとの戦いで使用した気はまだ完全には回復していない。いきなり師の言いつけを破るようだが指輪をとろうかと考えたその時――


 『ま、待ってください!』


 急に女性の声が聞えてきた、いや女性のようにも聞こえるが中性的な声だ。しかもその発生源は今目の前にある卵からだった。


 ピキピキとひび割れた卵の割れ目から中の者と目が合う。明らかに人間の物ではない瞳を見てすっと構え直し拳を強く握ると――


 『この子は敵ではありません!』


 再度声が聞こえてきた。


 「お前は何だ」

 『私は『神』です』


 「……は?」


 なんと目の前の卵が自らを『神』と名乗り始めた。何が起こっているのか分からないススムはとりあえず構えを解くが警戒はし続ける。


 「えっと今俺の目の前にいる卵が『神』だって言うのか?」

 『あ、いや違います。私はこの子を通じてあなたに語り掛けています。あ、もう生まれますので攻撃しないでくださいね』

 

 殻を破って中の魔物が姿を現した。


 「ドラゴン……」


 全身が透き通るほどの白い宝石の鱗で覆われたそのドラゴンは二枚の翼を持ち胴体程ある長いしっぽがするりと卵の中から抜け出た。


 「このドラゴンが話しているんじゃ……いるんじゃないんですか?」


 相手は自称『神』を名乗っているのでとりあえず敬語に切り替える。


 『いえ、あなたわかりやすく言うとその子を端末にしてあなたに伝えています』

 「つまりあなたと話すにはこの子が居ないといけないわけですか?」

 『はい、生物型携帯端末……みたいな?』


 確かに今生まれたばかりの赤ちゃんドラゴンはあたりをきょろきょろ見渡し体を起こそうしては転び、起こそうとしては転び、と言った可愛らしい動作をしていた。そんな魔物に人間と会話できるほどの知性があるとは思えない。


 「それであなた師匠が俺に言っていた俺に『全て』を教えてくれるっていう人ですか?」

 『はい、そうです。アークに変わりあなたに全てを教えましょう』


 形はどうあれようやくすべてを知ることが――


 『と、したいのですがそこは私の力が届きにくいんです。もうすぐこの会話も途切れてしまうのでそのクリスタルドラゴンを連れて表層まで上がってきてもらえますか?』

 「またお預けですか……」

 『いいです……か……地上……まだ……でな……くださ……』


 まるでノイズが混じったラジオのように声が聞こえなくなっていく。残されたのはススムとドラゴン。


 二人の目が合うと急にドラゴンがススムに飛びかかる。


 「うわっ」


 飛びかかったドラゴンは体に捕まりながらススムの顔にほおずりをして「キュピ~」と可愛らしい鳴き声を上げた。


 子供を抱っこするように持ち上げると直ぐに大人しくなる。


 「もしかして生まれたばかりのひな鳥が初めてみた生物を親と思うってやつか?」

 「キャピ~」


 するりと手から抜け出たドラゴンは肩と頭をよじ登りススムの頭頂部に座り込んだ。どうやらそこが気に入ったらしく「キュイキュイ」と嬉しそうに鳴いていた。


 「一緒に来るのか?」

 「キュイ」


 どうやら言っている事が理解できるらしく投げかける言葉にイエス、ノー程度の反応をしてくれる。


 「あの『神』もお前を連れてこいって言ってたしな、行くか!」

 「キュイ!」 


                〇


 「ドドはどうだ?」

 「キュ~……」

 「ダメか、ならクリスタルだからクリとか」

 「……」

 「返事すらしてくれないのか」


 ススムは『アビス』の階層を全速力で駆けながら上へと目指していた。100層もあるので普通なら長期間かかっての道になるのだがここを住処にしていたススムにとってこの『アビス』は庭のような物、指輪の効力で能力が半減していても難なく階層を駆け上がって行く。


 現れる魔物は下層の方ではちゃんと戦う形式をとっていたが上に昇るにつれ魔物のレベルは弱くなるため中層あたりからはまともに戦ってすらおらず全部素通りしていた。


 暇なので頭に乗っているクリスタルドラゴンの名前を決めているのだがなかなかこの子のOKが出ずにススムは難儀していた。


 あたり一面湖になっている階層に着いたが泳ぐのも面倒なので力一杯跳躍し湖ごと飛び越える。


 軽く100メートルは跳躍したススムは着水と同時に水面を弾き再び跳躍した。簡単に言えば水の上を跳ねて進んでいる。そうやって一つ一つの階層を信じられないスピードで進み上がっていくススム。


 「トカゲ! ヘビ! ポチ! タマ!」

 「……」

 「お気に召さないか、なら白いからシロとかは?」

 「……キュイ」


 もうそれでいいよ、と言いたいかのような鳴き声で返事をするシロ。


 「ならお前の名前はシロだ!」

 「キュイ!」


 ようやく名前が決まったころにススムは1層、かつてススムとアークが初めてであった場所まで来ていた。


もう跡は殆ど残っていないが始めてこのダンジョンに来た日の焚き火の炭の粒が床に転がってる。


 「そっか、外に出るのは四年半ぶりか」

 『まだ外には出ないでくださいね?』

 「うわっ! ビックリした……いきなり話しかけないでくださいよ」


 唐突に『神』からの声が聞こえてきたので動揺してしまった。


 「ここまで来ればいいですか?」

 『はい。そこでしたら”向こう”に聞かれる事なく伝える事ができます』

 「じゃぁ教えてください、”全て”を」



 「ええ、教えましょう。”全て”を」


 


 ススムの相棒、生物型携帯端末シロ……生後1時間ぐらいです。

 電話帳には『神』しか載っていませんけど。


 次回ススムの使命が判明。


 大切な部分を入れ忘れていたので22話を割り込みで入れました。それがなければ分からない部分があったのでこれで大丈夫かと思います。


 よろしければブクマと評価よろしくお願いします!

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