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努力戦士 〜彼女の為に俺は身一つで最強へと辿り着く〜  作者: ペペロンp
2章 成長期

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23 希望と絶望の穴

  「おう、坊主。もうすぐお前さんが言ってた場所に着くぜ」

  「……はい」


  とある行商人の馬車が王都の遥か東の平原を走っていた。積み荷は油、織物、彫刻のど様々な物が詰め込まれぎゅうぎゅうに詰められる中にローブを頭までかぶって全身を隠している人が人乗っていた。


  「にしてもお前さん、あんなところに何の用があるんだ? あそこには普通の密林があるぐらいだぞ?」

  「どうでしょうね……目的の物があればいいんですけど」

  「? 変なやつだな。まぁこっちは前金をもらってるから別にいいんだけどな……」

  「……」


  ただ、目的地までの一時的な同行。その間柄には事務的な会話しかなく直ぐに無言となり車輪が地面を転がるのみが響き渡った。


  目的の場所。密林の入り口に到着した馬車からローブの男が飛び降り後金の金を行商人に渡しその場から去ろうとする。


  「……金をもらっているから余計な事には首を突っ込むつもりはないがお前さんみたいな子供が町や村みたいな守られた場所以外に何の用なんだ」

  「……」


  荷台の人は少しの沈黙後口を開いた。


  「僕……俺はもっと強くなりたいんですよ」

  「強く? でもお前さんの神託は……」

  「そんなの関係のない程の力が欲しいんです。そのための場所がきっとこの先にあるんです」


  鑑定スキルを使って事情を察した行商人はローブの人物の異様なまでの執着心を少し不気味に思う。


  「……なぜそこまで。何の為に力を……」


  動機、それはきっと――――――


  「多分、自分の為であり……他人の為でもあるんだと思います。大切な人に自分の人生を大切にしてもらう為に……自分一人でこの世界に立つために俺は何にも屈しない”力”を求めるんです」


  そう言ってススムは一人で密林に消えて行った。


  その後ろ姿を見送りながら行商人はつぶやく。


  「強いんだな……坊主。けど、その小さな体には重すぎる願いだと思うぜ……」


  

                    〇


  足場の悪い密林をススムは一人歩いていた。一体どれくらいの距離を進んでいるだろうか……。


  森に入ってから三回目の朝日の中、ススムは森の奥深くに潜る。王都から逃げ出すように離れて既に二週間が経過していた。王都から出るのにはギルドのギルドカードがあったおかげで簡単に出る事ができた。しかも冒険者としての名前は「ガドー」、それらが追手から逃げるのには活用できたのだ。


  行商人や冒険者の一団に同行して町から町へと移動を繰り返しここまで来たのだ。あの時の傷は既に治療術によってもう体に無い。左腕の骨折は傷がなくなった後全部の治療術の力を左腕に集めることで二週間という速さで既に完治に近かった。


  左腕を使って枝をどけて進む。


  治療術で疲労を回復しながら歩き続けてどれぐらいだったろうか……


  「あった……本当にあった!」


  一本の太くそびえ立つ巨木が目の前に見えてきた。一体何百年ここにあり続けているのか遥か上空まで成長しえ伸びた大きさは圧巻であった。


  「木はあった……次はどこだ……」


  背負っていた荷物から一冊の本を取り出し開く。その中を見ながら巨木の幹を見ると一つ大き穴が開いていてその穴は下方へ向けて伸びているようだった。


  「これが……この穴が『ダンジョン』なのか」


  ススムが探していたのは人々に忘れ去られたダンジョンだった。


  ダンジョンとは魔物を生み出し貴重な資源が生成される場所で冒険者が力試し、そして金稼ぎの為にこの穴に潜る。だが、それは遥か昔の事だった。


  世界にいくつもあるダンジョンは何百年と探り、探索され既に資源は取りつくされているダンジョンがほとんど、魔物は外にもいるためわざわざ罠や危険が多くあるダンジョンに入るメリットはもう無い。


  だがススムにはメリットがあるのだ。魔物の肉がススムの強化に欠かせないため様々な種の魔物がいるダンジョンは鍛錬の場所にはうってつけである。しかし、世界にいくつもあるダンジョンの中でなぜこのような人も寄りつかない果ての場所にあるようなダンジョンに来ているか……。


  それはこのダンジョンの性質にある。ここはかつて六天の英雄アークが自らの鍛錬の為に潜ったとされるダンジョンなのだ。それを『六天の歴』によってススムは知っていた。本によるとここは階層によって別れているらしく下に行くほどに魔物のレベルが上がっていく。だがその層の数がその他のダンジョンの比ではないらしい。


  そのダンジョンにススムは挑もうとしているのだ。己の鍛錬、強化、そのために。


  改めて気合を入れなおしたススムはダンジョンの中へと歩みを進めて行った。


  ある程度狭い穴を進んで行くと広い空間にたどり着く、見たところ魔物もいないようなのでその場に荷物を置いてとりあえずのキャンプ地とすることにした。


  荷物を置き更に奥へと進んで行くとウサギの姿をした魔物が一体、地面にたまった水たまりを飲んでいるところに遭遇する。こちらに気が付いたウサギはススムをギラリと睨みつける。


  「ラッドラビットか!」


  奇しくも初めて喰らった魔物であるラッドラビットがダンジョンでの初めての相手となった。


                     〇


  外で拾ってきた枯れ木に火を付けてキャンプ地でたき火を熾していた。その火にはいくつかの肉が焼かれている。


  一つの肉を取ってススムは喰らった。


  鶏肉のような軽い味が口に広がる。いつも食べていたフォードの弁当とは天と地の差があるがこれはこれで美味しいと感じる。


  魔物の肉を普通の食のように食べていたら筋肉の圧縮部位の不足による内臓の圧縮を招いてしまい死亡してしまうだろう。だが同じ魔物の肉を食べ続けると圧縮の効果が弱まる事は判明していた。ラッドラピットの肉は何度も食べているため既に食料として食べることができるのだ。


  ダンジョンの壁が含んでいる鉱石が発行することによって周りは明るく照らされることがススムを少し安心させてくれた。パチパチと木が燃える音だけが聞える事がよりいっそう自分が一人でいることを実感させる。


  今いる一層はススムでも簡単に倒す事ができるエリア、だがここはダンジョンなのだ。常に周りには魔物の殺意が渦巻いている場所である。ここでの失敗は死に直結する。しかも一人でいる今は誰も手助けしてくれる人は居ない。その事実はこのダンジョンにおいて生き残るには常に頭に置いておかなければいけない……。


  「でもここでなら俺は強くなることができるはずだ……!」


  ススムが強くなるにはそのぐらいのリスクは負う必要があるのだ。


  もう一つの魔物の肉を取り口に含む。それはここで初めて見つけたトカゲの魔物の肉、つまりススムの肉体を圧縮する効果がある肉を食したのだ。


  この行為そのものがリスクなのだ。少しでも圧縮が筋肉の量を上回った時、それは死を意味しているのだ。この強化のたびに死のリスクがある。


  それは普通の人間だったら選ぶことのない道、だがススムにはそこまでして強さを求める理由がある。


  肉を食べ終えるとススムは荷物から『六天の歴』を取り出し内容を確認していった。


  アークの実体験を書いてあるこの本でこのダンジョンの存在を知った。多種多様な魔物がいて、広大な広さをほこるダンジョン『アビス』。


  400年前、この『アビス』で無類無き強さを手にしたアーク。その彼はこの穴の事を『鍵』と読んでいたそうだ。はたしてその人と同じダンジョンに潜れば強くなれるというのは安直だろう。でも強くなったというのは本当なのだ……実績があるのだから不可能ではない。


  「ふ~……これで三時間後まで筋トレでもするか……」

  「ほ~ん……面白い事をしてる小僧がいるな」

  「!!!」


  聞こえるはずのない声が聞え驚いて声の方向に向くとそこには一人に男性がたき火に座っていた。


  「だ、誰!?」


  このダンジョンにはもう誰も来る人なんていない。ここに来るまでに立ち寄った町のギルドや商人にここの『アビス』について質問をしたがその存在すら知らないようだった。そんなダンジョンに来る冒険者がいるなんて思いもしなかった……。


  それに目の前の人は冒険者と言うには装備がただの旅人のような様子。ただ目的もなくこんなダンジョンに来る事なんてあるだろうか?


  あともう一つ、今まで会ったことのある人間と決定的に異なる点があった。


  「黒色の……髪……」


  目の前にいる人物はススムと同じ漆黒の色をした髪をしていたのだ。ススムは自分以外の黒色の髪を持った人物に驚きを隠せない。


  「おぉ、君も黒色なのか。俺とおんなじだな」

  「あなたは誰なんですか……それにどうしてここに」


  その男の瞳がススムを捉える。するとニヤリと笑うと驚愕の言葉を発した。









  「俺の名前はアーク。お前さんと同じ元日本人だよ、我道 ススム」

 はい、アークがようやく登場!!


 さぁ、始まります。ススムのターン。


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