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努力戦士 〜彼女の為に俺は身一つで最強へと辿り着く〜  作者: ペペロンp
2章 成長期

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22/63

22 彼はなぜ――

 書いたと思ってた大切な部分がごっそり抜けていました!!

ススムが行栄不明になってから既に三日が経過していた。


 フォード邸の応接室、その一室にフレイド、リナリー、エリナの三人がそろって座っている。だがその間にはいつもの明るい会話はない。


 「ご主人様、騎士様がいらっしゃいました」


 扉越しに初老の執事の報告を聞き室内の空気が一気に緊張でいっぱいになる。


 「うむ、ここに通せ」

 「かしこまりました」


 ドアの前から押し音が去って行き客人を迎えに行く。


 フレイドは二人寄り添うように座っている娘と姪に視線を向ける。どうやらリナリーはエリナの事を心配する事ができるぐらいには心を強く持っているようだが問題はエリナの方である。三日前、あの”事件”が起こって以来学園は休校しているがエリナは自室から出ようとはしなかった。だが――


 (無理もない……か)


 第一報を聞いた時は自分も耳を疑ったのだ。ススムが何者かに襲われ行栄不明だと……。


 家に帰って来た時の二人の動揺した表情と困惑、リナリーは顔が血の気が引いたように青ざめて、エリナは彼の名をうわごとのように呼び続けていた。そこまで悲惨な現場だったのだろう。


 だが詳しい情報を知ろうとしても王立の教育機関で起きた事件なだけに外からは全く触れる事ができなかった。いや、あそこまで蚊帳の外にされるのは確実に私、フォード家をこの案件に関わらせまいとする何者かの力が働いている。


 でも、どう動くにしても情報が全く降りてこない。そのため事件の調査をしている騎士の中でフォード家と繋がりがある者を秘密裏に呼び出して詳しい事を聞き出そうとしてた。


 コンコン


 「入れ」

 「失礼します」


 ノックの後、一人の40代の男性が入室する。秘密裏な会合なので男性は仕事着の鎧を身に着けてはおらずそれなりに整った格好をしていた。


 「本来なら手厚く歓迎したいのだが……来たばかりですまない、話を聞かせてくれないか?」

 「お気になさらず。そのために来たのですから」


 騎士はエリナとリナリーの正面に座り上座のフレイドへと視線を移した。


 「事件の話を聞きたいと伺っていますが……どういった内容を知りたいので?」

 「娘たちから聞いた内容以上の事は知らない。突然彼の部屋が血まみれで行方不明になったと……」

 「わかりました、では事件の概要を述べさせていただきます」


 騎士は持ってきた袋から幾つかの書類や証拠品を取り出していくと、その中に血に染まったススムの制服の切れ端が出てきた瞬間エリナとリナリーの手が硬く握られる。


 「これは事件の第一報者で被害者であるススム君の学友のライトという少年の証言からの話です。事件当日、ライト少年は人質とされススム君は学園にある魔獣管理の場へと呼び出されたそうです」

 「呼び出された……誰にだ」

 「首謀者とされているのはグレイ・レイガスト。レイガスト家三男です」

 「レイガスト……」


 その名はフレイドがまだ若いころ王国では圧倒的な力を持ってた家。だが今では衰退し力こそないが昔培った人脈や家々との関係でいまだに王国内では影響力のある貴族である。


 「呼び寄せたススム君に向けて魔物を放ち襲わせる、そういった筋書きだったそうで」

 「魔物……彼は魔物に襲われたのか」

 「はい、制服の破け具合などから間違いないです。ライト少年が言うにはまるで見世物のように魔物に襲わせて楽しんでいたそうです」


 見世物。


 その言葉を聞いたリナリーから溢れんばかりの魔力の波動が発せられていた。誰にも伝えていない真実、グレイ・レイガストにススムは日常的に痛み付けられこのような事件も起こし、見世物のようにしていたなどと聞いたリナリーは無意識に魔力の暴走をさせていた。


 「リナリー……客人の前だ、抑えなさい」

 

 フレイドが一括すると放たれていた波動は直ぐに収まっていく。


「ごめんなさい……」

 「すまんな、続けてくれ」

 

 流石フレイドといったところなのか冷静に話を続けようとしている。だが彼も内心はリナリーと同じ気持ちなのを押し殺して冷静に頭を働かせる。


 「はっ、そこで魔物に襲われたススム君は夜中に魔物の管理場に入り込み運悪く脱走した魔物に襲われる……といったシナリオなのでしょうがそれはススム君によって阻止されたそうです。彼は捕獲されていた他の魔物を解き放つ事によりその場をパニックにさることによって実行犯の生徒達は散り散りに逃げて行ったそうです」

 「なんと……」


 そんな絶望的状況を危険過ぎる方法で突破したススム。だが彼の神託を知っている者ならその決断は聞くだけで末恐ろしさを感じた。


 「ライトさんは無事だったんですか?」


 エリナはそう問いかける。三日前に合っているがあの時は消衰しきっていた様子であったしその後もまともに会ってすらいない、ススムの数少ない友人が危機的状況にいたと聞いてはエリナは心配になる。


 「その時のパニックに乗じてライト少年も逃げ延びたそうで怪我やなどは無いです」

 「そうですか」


 エリナはひとまず安心を得ることはできた。ススムの友人だけでも無事、それはススムが大切なエリナにとっては重要な事だった。


 騎士は視線をエリナから再び上座へと移す。


 「ですのでここからは証拠や痕跡からの話です」

 「うむ」

 「証言の場所には四体の魔物、ブラックウルフの死体が発見されています。一か所に固まって合ったことからおそらくススム君はその後に四匹のブラックウルフと戦闘をしていると思われます」

 「ブラックウルフだと!? あの魔物を彼が……ススムが倒したというのか!」

 「はい。その可能性が高いかと」


 フォード家の3人、いやススムの『神託』を知る者であったら耳を疑う。何の能力もスキルも持たない10歳の子供が勝てるはずがない相手、『勇者』であるエリナですら4体同時に相手をするのは厳しい。それを”あの”ススムがやってのけたなど信じられなかった。


「ブラックウルフの牙には血痕と微量の肉片が……恐らくススム君の物かと」

「……」


ブラックウルフに襲われながら、彼の血肉が食い破られながら4体も相手にしていた。その事実はいつも明るいフォードの者を暗く静かにするのに十分であった。


 「その後、血痕の跡から寮に向かっています。そしてその時にお嬢様方がご覧になった血痕が付いたのでしょう」

 「そうか……そんな事が……」


 騎士の報告が終わったのか室内は沈黙が続いていた。


 そんな空気に痺れを切らしたのかリナリーが立ち上がる事で視線が集まる。


 「そんな事はどうでもいいの! 知りたいのは彼が無事なのか、今どこにいるのか、どうなんですか!?」


 リナリーとエリナが聞きたかった本題を直接騎士に問いかけた。すると騎士は目配せするようにフレイドを見る、伝える事の許可を求めているのだろうか、その許可はフレイドが頷くことで下りた。


 「正直に申し上げます。未だ彼の安否は不明です」


 安否不明、その答えはエリナとリナリーの口を堅く閉ざすものであった。再び沈黙が流れる。


 「それにしても彼は賢い子ですね。寮の生徒から夜中に何人もの大人の足音が聞えたという話も聞いていますがおそらく追手でしょう。部屋を荒らしている事から彼は追手には捕まっておらずそれを予期して逃げている事になります。魔獣を更に放ったり、10歳の子供の判断とは思えない程です」

 「追手!? そこまでしてあの子を狙っているのか」


 追手まで出して他者に事件を察知されながら彼を狙う理由がわからなかった。


 「結構派手に動いてススム君の事を探していますよ。被害者であり証言者である彼の命を狙うのはわかりますがここまで大々的に動くのはもっと他の理由がありそうです……」

 「……まさか……リナリー、ススムは私が渡したあの剣はどうしていた?」

 「あの”短剣”ですか? それならススムはいつも大切そうに持ち歩いていました」


 短剣、その言葉を聞いた時騎士の中でのピースが埋まるようだった。


 「短剣? ……もしかしてススム君はフォードの短剣を所持しているのですか!?」

 「あぁ、入学の時に彼に渡したが……まさかあれか?」

 「ブラックウルフに付いていた傷は短剣によるものでした。つまりあの夜、彼はフォードの短剣を所持していた……なるほど、でしたら彼は既に王都には居ないかもしれませんね」

 「王都に居ない? なぜそう言える」

 「彼の立場で考えてください。王都で生きている限り追手に追われ続け身寄りのない子供だったらすぐに捕まってしまうでしょう。一番してはいけないのは短剣が他人の手に渡る事です。なのでおいそれと捨てるわけにもいかない。なら彼が短剣を持ったまま生き残るには王都から脱出して追手の手から逃れるしかないでしょう」


 この説明でフレイドは理解した様子を見せていたがエリナとリナリーは互いに理解できていない様子で困惑が顔に出ていた。


 「つまり、彼は生きている可能性が高いということです」

 「生きて……本当に生きているの!?」

 「あくまでも可能性ですが、ああいった判断ができる子、そして未だにレイガスト家が追手を動かし続けているのを考えると彼は捕まっておらず、追手の手の届かない距離にいるのではないか……と」


 その言葉にエリナの瞳から涙がうっすらと零れ落ちる。


 「よかった……よかったよ……」

 「エリナ、よかったわね」

 「うん……」


 三日間ずっと暗かった二人に明るい雰囲気が戻り始めていた。これを見たフレイドは――


 「よかったな二人とも。聞きたい事はもう聞けたろう、二人ともろくに食事もしてなかったようだから下がって休憩してきなさい。私はこの方ともう少し話すことがあるから」

 「はい、わかりましたお父様。エリナ、行きましょ」

 「うん」


 久しぶりに見せた娘と姪の笑顔に笑って部屋を出るのを見送ったフレイドだったが――


 「はぁ~……」


 二人が部屋を出て行くと深くため息をつくようにうなだれた。


 「伝えなくてもよろしいのですか」

 「彼女たちはまだ10歳だ。現実を知るのは後でいい、おそらく気が付くだろうが今は彼生きているという事を喜べればいい」

 「そうですか……それもそうですね。10歳の子供が一人で城壁の外の世界で生きる事がどれだけ危険でつらい事か……それは今は知らなくてもいいかもしれませんね」


 フォードが彼を”殺し”かけたような物だと。


 力も家の加護も持たない少年に身に余る物を持たせ、娘達の期待に応えるため自らの時間を捨て労働をして、結果貴族同士の陰謀に巻き込まれた。もし責任があるとすればそれは剣を渡した張本人である自分にあるのだとフレイドは思う。


 だがどう後悔してもはっきり言って状況はススムにとっては最悪だ。


 王都に戻ろうものならススムに証言させないためレイガスト家はあの手この手で命を狙うだろう。外で生きていくにしても厳しい環境。


 「フォード家は彼に救われた事になるな」

 「ええ、そうですね。それにフォード家に連なる家々も同時にですね」


 もし、あの短剣で事件でも起こそうものなら絶対にフォードの立場はまずい事になっていた。それはフォードの名の力の低下を意味していてその傘下にいる貴族の危機も意味していた。


 「それにしても”第一王子”傘下のレイガストか……厄介な相手だ」

 「フレイド様、発言にはお気を付けください。私はフォード家に連なる家の者ですがあくまでも王に仕える騎士ですので……」

 「そうだな。すまん、忘れてくれ」


 派閥が違う貴族同士の因縁、それは今に始まった事ではないが相手が問題だった。


 「私が彼の為にしてやれることはあるのだろうか」

 「もどって来た時に彼を守ってあげられることができるぐらいに家の力を高める事では?」

 「家の力を高める……」


 今現在、フォード家は他の貴族が持ちたない大きな武器を持っている。


 『勇者』エリナ


 その存在を使えばきっとフォードの名をもっと大きなものにすることだって可能なはず。だが――


 「エリナを家の為に使う……か。彼が一番嫌いそうな事だな」


 ススムは何のためにここまでの事をしたのか。多分、フォードでも自分の為でもない。エリナとリナリー、自分であるフレイド、メイドのアリア。彼はフォード家の名を守ろうとしたのではなくてそこにいる人を守ろうとしたのだ。ならその意志は守らなければ。


 「ススム、君は今どこにいる……」

 伏線がある大切な部分を向いたまま話を進めていました……。書いてあったんですがいつも間にかに消えていたみたいで……。


 この話は割り込む形で入れています。この先の話でのよく分からなかった会話なんかはこれの話です。

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