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努力戦士 〜彼女の為に俺は身一つで最強へと辿り着く〜  作者: ペペロンp
2章 成長期

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17 学園の日常(2)

  いつものように日陰のベンチで昼食を取っている三人の姿がそこにあった。この昼食風景は入学した当初から変わることなく続いている。


  「――――でそうなったんだよ!」

  「……うん……」


  だが、今日のエリナとリナリーはどこか心ここにあらずと言った感じでこちらの問いかけに反応するだけの様子が続いている。


  「あのね、ススム君もしかしたらこれから一緒にお昼を食べれなくなるかも……しれない」


  その二人の様子の原因について話し始めたのはエリナだった。


  「ッ!……」


  思わず言いだしそうになるがススムはエリナの続きの言葉を待った。


  「私達、10歳でしょ? 冒険者としてもう登録をしたんだ……『勇者』と『魔導士』だから今の歳から少しづつレベルを上げた方がいいって。それでねパーティを組むの……。で、冒険者のパーティは信頼が一番大事だからこれからはなるべくその人達とすごしなさいって先生が……」

  「なるほどね……」


  やはりそうなったか、とススムは思った。初等部は座学のみで本格的に冒険者や騎士としての訓練ができるのは中等部からなので戦闘系の職業を持っている人は登録が許される10歳から冒険者として登録しレベルだけでも上げていくのである。


  その話を聞いた時、戦闘系職業の中でも選りすぐりのクラスを持っているエリナとリナリーはこの道を進むことになると確信した。それはつまり本格的なステータスによる強化が始まるという事、二人との時間が減り差が開き始める時なのだ。


  来るべき時が来た。


  ススムはこの予想していたとはいえ実際に現実になると作り笑顔が壊れそうになる。


  「なんとかこの時間だけは作るからさこれからもこうやって―――」

  「エリナ、これは二人にとって大切な事なんだよ?」

  「でも……ススム君が一人に……」

  「心配するなエリナ。僕は僕なりに君たちに近づいて見せるさ!」


  立ち上がって格好つけたようにそう言ったススムの顔は悲嘆や諦めなど微塵も無くただ自分の進むべき道が見えていたのだ。


  そんなススムを見てエリナは「流石私のススムだ」と思うのであった。


  「ススム……私達じゃなくてあなたはそれでいいの?」


  リナリー様はエリナより勘が良い。自分たちがこれからもっとススムとの時間が取れなくなっていくとどうなるか予想しているのだろう。でもススムにとって自分の事は二の次なのだ。エリナが、この二人が無事かどうか幸せかどうか、それから自分についての思考が働く、その順番だ。


  自分の感情や都合でこの先輝かしい未来の二人の邪魔はできない。


  「いいんですよ、リナリー様。二人が頑張ってくれたら僕も嬉しいですから!」

  「「……」」


  自分達の将来を応援している、そうススム本人に言われては二人は何も言い返す事はできない。


                     〇


  昼が過ぎ、五年生にもなれば午後の授業もそれなりにある。それらを終えたススムはエリナやリナリー、ライトと別れ校舎の裏へと向かっていた。


  正直、こんなところへは行きたくない。今から起きる事は何の益も無い無駄なのだから。


  「ハッ! ちゃんと来たみたいだな平民!」


  校舎裏にはグレイとその取り巻きが待っていた。

 

  「俺様のいう事を聞かないからこうなるんだぞ!」


  手を上げたグレイ、その合図で取り巻き達がススムの周りを囲みだす。この行程はいつも同じだ。


  「お前らやっちまえ!」


  その号令と共にススムの四方から魔法が展開された。だがススムは回避どころか防御の体制にも移らずそのまま棒立ちを続ける。10歳となって覚えたての魔法は発動まで遅く初級でも五秒はかかった。


  「ウィンドバレット!」

  「ファイヤーショット!」

  「ロックシュータ!」


  三つの魔法がススムに直撃する。風魔法は腹に、火魔法は肩。土魔法は顔面へと当たりその場所から血がにじみ出る。だがススムはただ立ち続ける。


  「ハハハ! そうだ平民、そうやって動くんじゃないぞ! そうすればお前の”友人”がどうなるか解っているだろ!?」

  「グレイ様、ライトに手を出さなければ私をいかようにしても構いません」


  今まさに攻撃を仕掛けて来ている相手にススムはお辞儀をした。


  「俺わぁ……お前のそうゆうところがきにくわないんだよぉ!」


  グレイ本人がススムへと殴り掛かる。彼は『騎士』のクラスを持っているのでスキルか何かで筋力が高いのだろう、ススムの体は後方へと殴り飛ばされた。口の中に鉄の味を感じながらススムは再び立ち上がる。

   

  「お前達も好きにやっちまえ! 練習台だ!」


  ススムに取り巻き達の魔法やスキルによる攻撃が向けられるのだった。



                    〇


  「ふん! これに懲りたら身の程をわきまえろ!」


  殴り疲れたのか、はたまた時間が来たのか、そのどちらでもいいがグレイと取り巻き達が歩き去って行った。ススムは校舎の壁にもたれかかり崩れるように腰を下ろす。


  腰のポケットから魔具の時計を取りだし時間を確認する。


  今日は一時時間で終わったのか……。


  そして夕方の仕事までは時間がある、今はこの傷を手当てしなければいけない。


  治療術のスキルを発動させて自身の治癒力も高める。すると少しづつ赤く血がにじみ出る傷口がふさがっていった。


  今日のような集団リンチは二年ほど前から始まっていた。その日のうちでグレイに反抗的な態度をとるとこうやって授業後に”おしおき”が待っている。グレイはおそらくエリナとリナリーに好意を持っている。よく二人に話しかけるが軽くあしらわれているのが現状、その怒りをススムにぶつけているのだ。


  とりあえず、服で隠しきれない傷跡や痣は治す事ができたので立ち上がり校門へと歩みを進める。だが歩くたびに体の節々から痛みが走りその都度顔が歪む。


  治療術と言ってもレベル1、でもこのスキルは治す場所を集中させることができ今は体の表面にできた傷を集中的に治している。ただ、それは両面にすぎないので体内にできた傷跡はそのままだ。これは一日かけて治療術で治していかなければいけない……。


  幸い、学生服には汚れを落とす術がかけられているので傷さえ治してしまえばばれる事は無い。


  傷による痛みを隠しながらススムは仕事場へとやって来ていた。店主と挨拶を交わし店の制服に着替えて仕事を始めた。


                     〇


  レイガスト邸――


  「くそ、くそ。あの平民の奴が本当に目障りだ」


  親指の爪を噛みながらグレイはブツブツと妬みの言葉を呟いていた。グレイにと言って自分は誇り高いレイガスト家の人間でフォードの娘二人を傍に置くべきなのは自分だと思い込んでいた。


  しかし、本人には見向きもされず自分がいるべき場所にはたかが平民がいる。それが許せないのだ。


  「グレイ、フォードの娘との仲はどうだ」

  「お父様……」


  呟きながら廊下を歩くグレイに父親のレイガスト当主が話をかけた。レイガストの家はひと昔前は栄えていたが現当主になってから落ち目となっている。そんな家の栄光を取り戻すためレイガスト当主は息子のグレイに『勇者』であるエリナか次期当主となるリナリーをレイガスト家に引き込むように言っていたのだ。


  グレイ自身、あの美形な二人のどちらかでも自分の者にできたらよかったのだがそれには目障りな障害があるのだ。

  

  「お父様……実は目障りな平民がおりまして―――」


  グレイは父親にススムがどんな存在で目障りな人間かを伝えた。


  「フォード当主の……確かあの家には男が……グレイよ、まさかその男短剣を持っていたりするか?」

  「は、はい。あいつはいつも一本の短剣を持ち歩いています」


  そこ答えを聞いた父親の表情がニヤリと笑みを浮かべる。


  昔噂話で聞いたことがあるのだ。フォード家の男は小さいころに剣の贈り物を当主から受け取り成人したら返すしきたりがあるとか。あまり知られていないしきたりだがかつて栄えていたレイガストには耳に入っていた。


  「グレイよ。これは神がレイガスト家に再び栄光を掴むための機会を与えてくださったのかもしれんぞ……そのためにお前にやってほしい事がある」

  「は、はい! 我がレイガスト家の栄誉の為なら何でも!」


                      〇


  仕事を終えたススムは報酬を得るためにギルドへと足を運んでいた。


  夜になるとギルドの建物の中は帰って来た冒険者で賑やかになっていた。飛び交う罵声と歓声。酒の飛沫がが宙を舞い男の歌が場を盛り上げる。それはまるで生きる生命が溢れんばかりの下品な明るさを持っているように見える。ススムはこの光景は嫌いではない。


  自称ススム担当となっているニアさんに仕事の報告をする。


  「はい、これが今日の分ね」

  「ありがとうございます。それといつもの物を見せてもらえますか?」

  

  そう言って報酬のお金とお願いした物を受け取る。


  近くにあったテーブルに座り受け取った資料に目を通し……たいのだが……。


  「あの……ニアさん。なんでここにいるんですか?」

  「私今日はこれで仕事終わりなの」

  「いや、そうではなく……なぜ僕と同じ椅子にいるんですか……」


  ススムは今ニアに後ろから抱き着かれるように椅子に座っていた。10歳と大人の女性では身長差がまだあるために腕の中にすっぽりと入った状態になってしまう。


  「だってお姉さんススム君担当だし」

  「答えになってませんよ……」

  「ほら、資料見るんでしょ?」


  ニアさんに諭されるようにこのままの状態が続くことになってしまった。そう言って更に身を近づけられるとエルフにしては大きすぎる二つの柔らかいものが後頭部に当たる。このギルドでも一番の美人がこんな風に男と密着しては冒険者からの嫉妬を買いそうなものだが―――


  「ニアちゃん、またススムにべったりしてるのかよ……あまり教育上良くないと思うぜ?」

  「そうだぜニアちゃん。いくらススムが可愛いからってそんなにくっ付くと……なぁ?」

  「そうよ! 私だってススム君をギュッとしたいんだから!」

  「ニアさんばっかりずるい!」


  逆にススムの心配をする声が多い。


  ここ数年毎日のようにギルドに顔を出しているのですっかり冒険者の人達とは顔見知りになっているのであった。平民の冒険者にとってはススムの境遇は過酷だった自らの境遇以上に厳しい現実と戦っているススムに同情し面倒を見てくれる兄貴分となっており、女性冒険者には童顔な顔で懸命に生きているススムに対して母性本能をくすぐられていた。


  「いやよ! 私はススムのお姉さんだからね」

  「ニアさんは受付担当ですよね……」


  そんなごたごたも既にすっかり日常の一部となっている。ススムは資料に目を通していく。それはギルドが所有している魔物の情報が載っている資料で今後の肉体強化に必要な情報を集めていた。


  魔物の肉は同じものを食べ続けると効果が薄くなっていく、そして魔物によって重点的に強化の

される部位も変わる。足の筋肉が早い魔物は足の筋肉、剛腕に魔物は腕といった強化になるので事前に特徴を調べ強化部位が被らないようにしているのだ。


  ときより疑問に思った部分を後ろのニアさんに聞いてゆく。こうやって資料を見ているといっつも隣にいるのでせっかくだから質問を投げかける。


  「ススム君毎日仕事ばっかりで疲れてない? 実は私回復魔法が使えるからかけてあげようか?」

  「だめ……いえ、大丈夫ですよ!? 鍛えてますから!」


  日付が変わる時間になったのでギルドを後にして学園の寮へと歩みを進める。


  未だにあの時の傷が歩くたびにずきずきと痛むが回復魔法をかけてもらうわけにはいかないのには訳がある。回復魔法やスキルの回復術は肉体を元の状態に戻す行為で傷ついた肉体を『直す』のだけども治療術は自然治癒力を高め再生を促す、つまり細胞分裂による回復。


  筋肉の増加は傷つけて再生の繰り返しだから今日一日傷ついた筋肉繊維を回復魔法で元に戻してしまっては強化において一日を無駄にしてしまうからだ。

  

  神託で唯一よかったのがこの『治療術』である。これのおかげで急速な筋力増加が可能となっているからだ。しかもこのスキルにもレベルがあり使っていくと効果が上がって普通『治療術』は進化して『回復術』に変化してしまうがススムの場合レベル上がらないのでそれが起きないのだ。


  既に静まった寮を歩き自分の部屋を開く、この時間はもう共同浴場は使えないが水浴びはギルドで済ませてしまった。


  もう寝る時間だが、ススムには寝る前に筋トレを行う。本当はそれをしてから水浴びをしたいのだが学校に仕事で時間が取れないススムには寝る前しか時間が無いのだ。ススムは制服を脱いでラフな部屋着になると床へ腕立ての姿勢をとる。


  といっても自重トレーニングで方腕立てや腹筋、背筋、スクワット、その他色々と行う。


  だが最近このトレーニングの効果があまりなくなってきたのだ。力を付けていったおかげで筋肉にかかる負荷が軽くなり新たな筋肉が増えなくなっている……。


  自分が決めた就寝時間になるまでトレーニングを続け、決めた時刻になると部屋に置いてあった干し肉にした魔物の肉を取り出しそれを喰らった。


  素早く食べるとベットにもぐりススムは目を閉じた。圧縮が始まるまで三時間ある……それまでの睡眠がススムの唯一休まる時間だった。


                     〇


  ススムは全身の激痛と共に目が覚める。軋む全身に耐えながらそれが収まるのをただ待った。


  圧縮による痛みは30分ほどで収まりススムはベットから体を起こす。まだ外は暗く日は出ていない。ススムは制服に着替えて仕事へと向かうのだった。

  


  

  

 実はリナリー様をめっちゃスタイルよくするかどうかめっちゃ悩んでいます。どうしよう……。


 読んでくださりありがとうございます!


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