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努力戦士 〜彼女の為に俺は身一つで最強へと辿り着く〜  作者: ペペロンp
2章 成長期

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14 ススムの努力

  「アァ!? 魔物の肉だと!?」


  ついさっきまで陽気なおじさんだった男性の声が荒くなった。


  「こちらでは冒険者が狩った魔物の解体して素材や魔石に分けていると伺いました。その際に魔物の肉があるのではないかと……」


  そう、ここは冒険者ギルド御用達の解体屋だ。魔物の魔石は高額で売る事ができるが魔物の素材も価値がある部位なのだがちゃんとした解体を知らないと価値が大幅に下がるので解体方法を知らない冒険者はお金を払ってこの解体屋を頼るのだ。


  「そりゃ、魔物の肉なんざ腐るほどあるが……坊主。まさかそれを……」


  この人が言おうとしていることはよくわかる。魔物の肉を求める人などいるはずがないのだ。


  なぜなら……。


  「知ってます。魔物の肉は”毒”ですよね。もしくは”呪い”とも言われてる事も」

  「知ってるならなぜあんなものを求める。廃棄するしか道は無いんだよ。もし食おうものならまず無事じゃいられねぇだろ」

  

  この事についてはどの魔物の資料、本にも乗っている後世にまで広がっている常識だ。


  「俺の知り合いも昔酒の勢いでふざけて食っちまってな……そん時は大変だったぜ」

  「ま、魔物の肉を食べた人がいるんですか! その人は今どうなっているんですか! その時はどんな事が起こったんですか! 教えてください!」


  おじさんの胸倉に掴みかからんぐらいにススムは近づいていた。

 

  この時ススムは今までにないぐらいに興奮していた。まさか実体験の話が聞けるなんて思ってもいなかった。この話はススムの仮説を立証する大きな材料になるからだ。


  「落ち着け、落ち着け坊主。教えるから……あん時、そいつはふざけて肉を食ってな、その後宴も終わって家に帰ろうとしてた時だったな。あいつが急に苦しみだしたんだよ、「体中が痛い」ってな。んでそいつを回復魔術が使える奴のところに連れて行ったんだが全然効かなかった」

  「まさか……死んだんですか?」


  資料にもあった内容だが肉を食べて死亡した事例も存在するらしい。


  「いや、翌日そいつのところに行ったら死にかけの顔をしてやがったが生きてたよ。だけどそいつは俺みたく筋肉質な男だったんだがな……一晩でガリガリのひょろい奴になっちまってたよ……多分毒と呪いであんな体になっちまったんだな。それがあってあいつは冒険者をやめちまったよ……」

  「そうなんですか。でも心配しないでください! 僕は学校の実験で使ってみたいだけです」

  「ならいいんだ。どうせ捨てるもんだ、好きに持っていけ!」


  おじさんの了承を得たススムはこのあたりに生息している兎型の魔物ラッドラビットの肉を200グラムほど貰って家路に急いだ。


  衝撃的な体験談を聞いて岐路に帰るススムは……笑っていた。


                     〇


  学園の寮へと戻って来たススムは部屋に戻るとすぐに持ってきた肉塊を包みから取り出す。

  

  今からススムがやろうとしていることは死ぬ可能性がある賭け、魔物の肉を食す事である。本来はもっと時間をかけて体験談や魔物事態の資料を探して確証を高めてから行おうとしていたが、学園がフレイド様からの援助を断ち切ったせいでその時間を取る事が難しくなってしまった。


  もし確証が得られるまでバイトの合間の時間だけで研究を続けたらどれだけ時間がかかってしまうか解らない。


  ススムは力を得に入れるためには何でもすると決めたのだ。だったら初めに己の命を懸けよう!


  決心したススムは生のまま肉を喰らい始めた。


  血抜きがまともにされていない肉からは血が滲み出て口の周りを赤く染める。生臭さと独特の味に一瞬吐きそうになるがそれを無理やり胃に押し戻す。


  「は~っ……」

 

  気が付けば貰っていた肉は全て胃の中に押し込んでいた。


  口に着いた血を拭いながらススムはベットへと腰を掛けその時を静かに待つ。


  一時間、二時間、刻々と時間が過ぎてやがて来る恐怖の事を思うと少し体が震えた。これは恐れから来るものかそれとも武者震いか、そんな思考をするだけの余裕がまだススムにはあった。


  三時間を過ぎたころだったか、徐々に体のあちこちにピリッと痛みが走り始めた。


  「始まったか……さて、頑張りますか!」


  その痛みはさらに増加し始めススムは体をベットに横にする。


  痛みは止まることなく体を蝕んだ。


  やがて痛みは激痛へと姿を変えた。まず激痛が走ったのは腹のあたりからだった。そこから太もも、ふくらはぎ、足、腕、手。体の四肢が上げる悲鳴にススムの体はベットの上でもがき苦しむ。


  「ア……ガッ……カッ」


  声にならない悲鳴を上げながらススムは激痛と戦う。それもこれも全ては力を手にするため。


  ある日ススムは図書館で古い研究資料を見つけていた。それは魔物の肉体構造に関するものだった。魔物は魔石を持っていて魔力を持っている危険な生き物だが魔物が危険とされている理由は魔力だけではない、その体そのものも十分脅威であった。


  強靭な牙、硬い皮膚、硬化した鱗、それらを動かす強い筋肉。それらが魔物が危険とされる原因でもあった。では、どうやって魔物はそういった強固な肉体を作っているのか?


  答えは簡単である。他の魔物を喰らうからだ。


  魔物にも動物と同じような生態系が存在し、弱肉強食のピラミットの上に行くほど魔物は強い。強いという事は他の魔物よりも強い体を持っている証拠である。


そして他の魔物を喰らった魔物は元の状態より強く、強靭になっていると。


ステータスという恩恵があるせいでこの世界には生物の肉体構造についての知識が圧倒的に無い。そのせいか資料にはただ強くなるとしか書かれてはいなかった。


だが、ここである仮設が浮かんだ。


  もしかして魔物の肉には肉体を凝縮する作用があるのではないかと……。


  それならば他の魔物を喰らった個体が強固な鱗や、強靭な筋肉を持っていることに説明がつく。筋肉繊維を圧縮し小さくしてまた新たに筋肉を付けて圧縮し、外皮はより密度を上げ硬くなる。それを繰り返せば驚異的な身体能力を手にすることができるはずだ。


  だが、人間でも同じ作用があるか解らなかった。ただ肉体を破壊するだけかもしれない。でももしこれが本当だったらステータスやレベルによる強さとは全く別の強さを得る事ができるのだ。だったら十分命を懸ける価値がある!


  そして解体屋での話を聞いた時、行動に移すことを決めた。ススムにとって一番聞きたかったのは筋肉質な男がガリガリになったという部分だった。つまり、人も筋肉の圧縮があった証拠だった。


  ススムの全身がみしみしと音を立てて変化していった。急激な体の変化、筋肉の圧縮、それによる種変細胞の破壊と治療術による再生。その全ての激痛に耐えながら一秒が永遠と感じられると言えるほどの時間が過ぎていく。


  そして三十分から一時間ほど痛みが続いた後、段々と痛みがなくなっていった。


  まだ少し痛みがある中、ススムはいち早く仮設の立証をするために自らの上着を脱ぎ去り窓に月明かりで映る自分の姿を確認した。


  「はは……ひょろひょろだ……」


  ススムは同い年の子供よりも筋肉質な肉体にしていたがさっきまでの自分とは思えないほどの筋力が無さそうな体をした自分が映っている。


  近くにあった椅子を持ち上げてみると今までと変わらない負荷で持ち上がる。つまり―――


  「成功だ……成功だ成功だ! やったぞ! やってやったぞ!」


  ススムの肉体は魔物の強化と同じように変化を遂げていた。再び筋肉を付けて魔物の肉を食べればさらに筋力を増やせる。


  それはつまりススムは力を手にする方法を見つけたのだった。これは神託によって自らの可能性を全否定されてもめげずに努力を続けてきたススムが勝ち取った可能性。


  今は子供の筋力の域を出ないがこれを繰り返していけばきっとステータスによる強化をしている人にだって負けないほどにだって強くなれるはず。そう信じたススムは一人部屋でその成功を噛みしめていた。


  そして窓の外から朝日が上がるのが見え部屋とススムを明るく照らし出す。そんなススムの瞳にはかつての夜にともった炎がさらに大きくなっていた。

はい、これがススムの強化方法です! 魔法やステータス、レベルによる強化がある世界で筋トレで強くなるススム君です! 拳系主人公です!


作者は肉弾戦大好きです。

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