11 学園生活の始まり
心地が良くなる暖かな太陽の光が降り注ぐ中、屋根が付いたベンチに三人と一人のメイドの影があった。
今は昼食の時間で大抵の生徒は学食に、貴族様方もご自身の家が用意した料理を食べに学食に行っているため今外に出ている人はほとんどいない。
「ススム君はあんなに難しい授業がよくわかるね」
エリナが自らの手元にある弁当から綺麗に切り分けられた料理を口に運びながらススムに話しかける。
「全然難しい内容じゃないよ。エリナはちゃんと授業聞いてる?」
「え~? リナリーも難しいと思うよね!?」
「あんなの簡単よ! 毎日知ってることの繰り返しだからつまらないわ!」
リナリーには初等部に入ったばかりの今の内容は既に自らの家で学習済みみたく、それは他の貴族の子供も同じ様で算数、国語、一般教養などの知識はある程度持っていて授業中はつまらなそうにしているか教師の質問に対して自慢げに発言するかのどちらかだった。
「う~……私だけ置いてけぼりな気分」
「まだ学校は始まったばかりだよ。ゆっくり学べばいいさ!」
「そうよエリナ。あなたもフォードの人間ならしっかりとしなさい!」
「は~い……」
リナリーは6歳の女の子らしからぬ貴族の娘として振る舞う。たまに忘れてしまうがこの二人はまだ六歳なのだ。エリナとリナリーはフォード家の娘として恥ずかしくないように英才教育でも受けていたのだろう。他の子と比べて話し方が子供らしくない。
教室での二人の会話はちゃんとした気品のある話し方であるのでまだ高貴な喋り方に慣れていない子供に比べて大人びて見える。
そんな二人でもススムと一緒にお昼ご飯を食べるこの時間は気を張らずただの少女として時間を過ごしていた。
「リナリー様、エリナ様。紅茶のおかわりはいかがでしょうか?」
傍で控えていたメイトが紅茶を勧めたので二人の会話が止まり少しだけ静かになる。
ちなみにこのメイド、アリアさんは『運搬保存』なるスキルを持っているようで一日程度だったら物の状態を変化させることなく持ち運びができるらしく、フォードのお屋敷から学園まで毎日温かいお弁当を持って来てくれている。
「アリアさん。いつも僕の分までありがとうございます」
「いえ、ススムさんにはいつもリナリー様とエリナ様がお世話になっているので」
この騎士学園では学食は有料なのでこのようにお弁当があるとその分お金が浮くので助かっている。と言ってもこの学食分の御小遣いはフレイド様からもらっているため本当にいろんな意味で世話になっているのだ。
「違うわアリア! 私とエリナがススムの面倒を見ているのよ!」
「私はススム君に面倒を見られたいな……なんて」
「ちょっとエリナ! それでいいの!?」
エリナの低い志の答えに驚いたリナリー。
アリアさんとススムはそんなやり取りを見ていて少し笑っている。その二人に笑われていると気が付いたエリナとリナリーはまるで保護者にからかわれた子供の用に怒っていた。
そんな楽しい時間が過ぎていく。
〇
「明日はどこにお出かけしましょうか!」
「私この前行ったお店がいいな」
ススムは一週間のうち学園の休みの日はエリナ、リナリーと商業区に遊びに行くのでその計画を二人は立てていた。
「じゃぁまた明日!」
「うん、また明日ね」
「明日のお出かけ、楽しみにしてなさい! ススム」
昼食を食べ終わった二人はススムと別れを告げ校門へと向かっていく。二人について給仕兼護衛のアリアさんも帰ってゆく。
初等科の一年生は午前のみの授業となっているので午後になるとみんな学園から帰って行く。
貴族の子は自分の家に帰り、平民は寮の自室に戻るか自由な時間をみんなで遊んで過ごしてる。だが、ススムにはそんな無駄な時間は無い。
エリナ達と別れると踵を返すように寮とは反対の方角に歩みを進めて行く。
向かったのは学園の裏手にある雑木林。この王立騎士学校は初等部、中等部、高等部の三つがあり中等部と高等部はこの雑木林を挟んで反対側に隣接して立っている。
だがススムの目的地はその二つの校舎ではなく、雑木林の中にある学園所有の王立図書館だ。
整備されているとはいえ少々荒れている道を進んでいく、おそらく初等科であの図書館に行く人はそうそういないので道はあるがあまり手入れがされていないのだろう。
目的の建物に着き、扉を開くと独特の本の匂いがした。ここ数週間ずっとここに通っているのもあってか受付の人とは顔パスで入る事ができる。ここは一般開放されている施設でところどころに学生ではない人がちらほらといる。本来、ここは平民は有料なのだが学園に所属している人は無料で使えたのだ。
初等科でここを使うよう人はススムぐらいしか居らず、しかも今は中、高等部の学生は授業でこちらに来れないのでここを広々と使う事ができる。
「さてと、今日はあの棚からだな」
ススムはここで自分が強くなるための方法を探していた。
レベル上昇不可。
それによってステータスによる強化ができないススムはどうにかして力を手にすることができないか模索していた。初めは教師や町にいる冒険者に聞いたが皆ステータスによる強化しか知らなかったためススムはとにかく何でもいいから知識を求めた。
ほとんどの人が『鑑定』スキルを持っているためなぜススムがそのようなレベルによらない強さを求めるのかはすぐに理解してくれた。だがその人達はみんな同じことを言った。
「あきらめろ」と。
諦められるわけがない。今のままだと自分の人生を何一つ選ぶことすらできない。
ススムは自分のやりたい道を選ぶことができる『力』が欲しかったのだ。
だからこの図書館に通っている。ここには元の世界とは全く違った知識や研究の資料が山ほどある。ススムはそこに可能性を賭けたのだ。
また一つ新しい本を手に取った。そのタイトルは――
「魔物か……」
少し間が空いてしまいました。
見返すたびに修正箇所に気が付いているので大変でした……。
頑張れススム!




