6 裏野ドリームランド
天海先輩は死んだ。
他殺だった。他殺以外考えられなかった。
翌日の朝、天海先輩は自室で死んでいるのが発見された。
死体はひどく損傷していた。
彼女の身体はバラバラにされていた。腹は裂かれすべての臓器が取り出されていた。臓器は部屋の壁に釘で打ち付けられていた。
彼女の胃が、小腸が、大腸が、肝臓が、腎臓が、子宮が、膀胱が。
まるで部屋を飾り立てているようだった。
二つの眼球は、天井に打ち付けられていた。
部屋の惨状を見続けるように強制されているようだった。
天海先輩の死体を発見したのは、いつまでも我が子が起きてこないことを心配した母親だった。
主のいなくなった文芸部の部室は、ずいぶんと広く感じられた。
天海先輩は死んだ。
殺された。
彼女の話では、裏野ドリームランドにいた兎の着ぐるみに。
そんなことは信じられなかった。
でも、彼女の話が全て出鱈目だなんて、考えられなかった。
考えたくなかった。
だから僕は、高校の裏にあるあの山に登った。
頂上、新月の夜、深夜二時。
最初は、何も起きなかった。
もう帰ろう。
そう思って歩き出したとき、背後で赤紫色の光が射したのを感じた。
振り返った僕の目に、不思議な光景が広がっていた。
つい先ほどまで何もなかった空間に、忽然と遊園地が出現していた。
『裏野ドリームランド』
入場ゲートにはそう書かれていた。
僕は少しだけ迷った。
しかし好奇心には勝てそうになかった。
僕は、この謎に満ちた遊園地へと足を踏み入れた。