剣に込めた想い
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「……」
闘技場に三人の男の姿があった。
一人は大剣を構えて目を瞑っている青年。
もう一人は腕を組んで見守っている紫髪の男。
そして最後の一人は盾を構えて何かに備えている大柄な青年だった。
「…いくぜ」
「さっさとしろ」
「頼むから加減はしてくれよ…」
大剣の青年はレックス、紫髪はラッセル、盾を構えているのはカイルだ。
レックスは大剣に意識を込め、ラッセルは目を細め、カイルは重心を低くする。
「……らぁ!!!」
レックスが剣を振り下ろす直前、刀身を紅蓮の炎が包み込む。
それは剣から放たれる剣圧と共に矢のように飛来する…かに見えたが
ズガアアアアンッ!!!!
地面には本日いくつめか数えるのも面倒なクレーターが完成し、ラッセルは呆れ、カイルは吹っ飛んだ。
「またかよ」
「昨日は一発で出来たのに今日はこの様か…」
「ゴホッゴホッ!俺を殺す気か!?怨みでもあんのか!?」
二人はレックスの訓練に付き合っていたのだ。
先日の決闘でフランツに勝利したレックスだったがまだ組織については右も左も解からない。
そこでラッセルの直属の部下となって経験を積み、その後に正式に剣に所属することとなった。
今は魔力の使用について徹底的に叩き込まれていたが…むしろ叩き込まれてるのはカイルの方だった。
断罪の十字の戦闘員として、最低限度の魔術は必要不可欠。
そこでカイルを(勝手に)実験台に、最も初歩的な魔術「衝羽」の練習をしていた。
「衝羽」とは読んで字の如く魔力を伴なった衝撃波を飛ばす攻撃手段だ。
軌道も単純、トリックも何も無いシンプルな技だがこれが有るか無いかは天と地ほどの差が生じる。
攻撃速度、威力、物理的補充の皆無、射程距離と全てに秀でる万能技。
上級の実力者ならコレを連射するだけで一小隊を遠距離から壊滅させられる。
前回フランツが放った雷撃もこの「衝羽」に当て嵌まる技だった。
そして同じく前回レックスが投擲した大剣も途中まではまさしくこれに値する。
「ハアっ、昨日はぶっつけで出来たのに…」
「ため息吐きたいのは俺の方だよ…」
「いや、本当にため息吐きたいのは突如誘拐されて的にされてる俺だから」
三者三様に愚痴を吐き出す。
既に早朝から三時間ほど特訓しても成果はゼロ。一度も成功しない。
成功するのが先か…カイルが殉職するのが先か…?
ラッセルが二人に特訓再開を告げる前に、三人の腹が空腹を訴える。
「……飯にするか」
「ウィ〜ッス」×2
朝の食堂が込むのは何処も同じだ。
通路はごった返し、割り込みする輩と飢えた大人とのちょっとした激戦が繰り広げられる。
そしてやたらとデカイ包丁持った人相悪い料理長が…
「じゃかぁしいわ超弩級ボケども!!これ以上騒ぐと晩飯の食材にすっぞ!!!」と吼えてやっと収まる。
そんな殺風景極まりない情景を眺めて…
「…平和っすねえ隊長〜」
「あぁ、今日も世界は優しさに満溢れているぜ」
「ちょ待てwww」
あまりにもラッセルとカイルが惚けてるので突っ込むレックス。
どうやらこの風景こそが組織の「正しい朝の景色」らしい。
(どこが平和だ?死人出てるんじゃないのか!?)
全く理解に苦しむ…と言いながら今日もレックスの食料輸送機としての性能は些かも衰えていない。
どうやら組織には「一般人」は居ないらしい。
(しかし…朝飯なんて久しぶりだな)
レックスは此処に来るまでまともな朝食を取ったことが無かった。
大概の民衆は貧しく、特にたくさんの兄弟が居たレックスは子供達に自分の分を譲っていた。
せいぜい薄切りのパン一枚と水。水ではなくミルクだったらラッキー。チーズ一切れでもあれば祝日。
しかし組織では違う。
パン一切れといわず山の様に積まれている。
飲み物もミルクだけでなく新鮮な果実を絞った飲み物やコーヒーなんて洒落た物まで。
他にもチーズだけでなくサラダ、具沢山のスープ、鶏肉や魚まで有る。
食堂には優に百人以上の人間が居る。
レックス程食う輩は居ないがこれ程の人数に十分な食料が周っている…組織の財力がどれ程のものか言うまでも無い。
やはり何時の時代、何処の場所でも裏の世界の方があらゆる面で勝っているのだ。
少し後ろめたい気分になるがどうやら手と胃袋と口は本能に正直らしい。一向に止まらない。
「あっ!俺の肉取るなよレックス!」
「意地きたねえなぁ…テメッ俺の皿から持ってく奴があるか!?」
「ふぉふぉふぇひひいや(この手に言いな)!」
三人で騒がしい食卓を満喫していると…
「ふんっ!朝から無粋な奴だ…」
「げっ…!」
闖入者の顔を見てカイルが顔を顰める。
「おはようございますラッセル隊長…それとおまけ共も」
「フランツ…もう少しまともな言葉は無いのか?」
相変わらずの後輩の態度にラッセルも顔を曇らせる。
フランツは彼の部下なのだがあまりラッセルを好ましく思っていないらしく必要なこと以外は彼の意向を汲み取らない。
「隊長殿も何故このような輩に構っているのですか?それとも…余程隊長職はお暇なのですか?」
半ば見下すような物言いにラッセルも眉を強張らせる。レックスは最初他人事のように聞き入っていたが自分に善くしてくれる二人への侮辱に流石に頭に来た。
だが…ただ正面から口論しても時間の無駄だ。何かいい方法は…
そう思って食卓を見渡すと偶然「良い物」を見つけた。
レックスは「ソレ」を一つ掴むと大口で頬張った。パリッとした音と溢れてくる肉汁が絶品で思わず口元が緩む。そして…
「なぁこれ美味いぜ。お前も食わないかフランク・フルト先輩?」
「!!!」
辺り一辺の空気が変わった。
そう…レックスが食べたのはソーセージ…別名フランクフルト。
そして嫌味な闖入者の名前はフランツ・ゲルト……。
「ギャハハハハ!!なんじゃそら!?」
「こらケハッ…カイルククあんまりぷぷ…笑うなダハハ!!」
「ハハハハハ!おいっ誰か俺にもフランツ…じゃなかったフランクフルト取ってくれ!」
大爆笑だ。笑いは伝染する。元々フランツは印象が悪かったため尚更このジョークは皆のど壷にはまったらしい。影で女性陣もクスクスと笑いを堪え切れずにいる。
「きっ貴様ああぁ!よくもその名で俺を呼んだなぁ!!」
フランツ激昂…実は彼昔もこのあだ名で呼ばれていてかなり恥をかいていたらしい。
「そんなに怒るなよ。朝飯くらい静かに食おうぜフランク」
「俺はフランツだ!!」
「まあまあ落ち着けよフランク」
「貴様まで言うかカイル!?」
「こらこらレックスもフランツもその辺にしておけ」
「誰がフランツだ!?」
「へぇ〜www」×3
「あっ……」
こうして騒がしくも平和な朝食は幕を閉じた。
一人の男の心に深い傷を残して……。
「俺はフランツ・ゲルトだぁぁぁ!!!」
三人は食後にしばし休憩を挟んで特訓を再開しようと約束して一旦別れた。
ラッセルは酒を呑みに、カイルは怪我を治しに、レックスはぶらぶらと本部内を散策していた。
長い廊下を特に何をするでも無くトコトコ歩いていると…
ヒュンッ!
「!」
咄嗟に気配を読み取り飛来してきた物体を避けるレックス。
ソレは音を立てて近くの壁に突き刺さった。
柱を即席の遮蔽物にして身を隠し、投擲された物体を観察する…。
「ナイフ…しかも相当使い込まれてる…」
一見すると只のナイフだったが握り手の部分の磨耗具合や見事に手入れが行き届いているところから…
「中々の使い手だな…」
「ご名答〜♪」
「!」
声のする方を向くとそこに三人の少女がいた。
一人はショートヘアーの勝気な印象を受ける目をした背の高い少女。
動きやすそうな飾り気の無い服装で右手の指先でナイフをくるくると弄り回していた。
先程の投擲者は彼女だろう。
他の二人は彼女に寄り添うように立っていた。
内一人は大人しそうな印象のロングヘアーの少女。先程の少女より余程女の子らしい服装だ。
一見するとただの街娘のようだが左手に装着している小型の自動弓がそうでないことを伝える。
最後の一人は背の小さな少女…というか見た目子供。
彼女の服装は……おかしかった。
背丈に似合わない無骨な鎧、手甲、そして騎士剣。
背に刺しているにも関わらず剣の切っ先は床を擦っている。……レックスは正気なのかと我を疑った。
組織の中には女性も確かに居たがこの三人ほど浮いていなかった。
レックスは三人目の子供を見ながら聞いた。
「……ここでは幼児委託所も経営してるのか?」
「子ども扱いするな!私はこれでも16歳だー!」
「はぁ!?」
16歳!?この子供が!?
「おぃ…コイツの言ってることは本当なのか?」
ロングヘアーの少女に聞く。
「まぁ…ほぼ全員が疑問に思いますが本当ですよ」
苦笑いしながら答える…やはり誰でもそう思うのだろう。
「同じ年齢不詳だが…こっちは信じられない」
何を考えているのか解からない英雄を頭に浮かべながら呟く。
「だから私は16歳だ!嘘じゃない!!」
「はいはい元気なお嬢ちゃんですねーママと逸れたのかい?」
「ムキャー!お子様扱いすんなー!!!」
「淑女扱いされたきゃ十五年後にでも会いに来な」
「うっがー!殺す!今殺す!スグ殺す!たちどころに殺ーす!!!」
「落ち着いてエレン!」
剣を抜こうとする少女をロングヘアーの少女が止める。
ここまでの会話で解かったのは見た目も中身もお子様の成人の名前がエレンだということ、ロングヘアーの少女は見た目どおり大人びているということだけ…。
「お前らさっきからあたしを無視すんなー!」
…それとショートヘアーの少女が騒がしくて目立ちたがり屋だということか。
「俺に何のようだ…奇天烈二人と苦労人一人」
「誰が奇天烈だ!!」×2
「自覚してるじゃんお前らだ」
「うっがー!殺す!!」×2
「落ち着いて二人とも…!」
俺は見逃さなかった…ロングヘアーの少女が「解かってくれます?」みたいな表情で苦笑いしていたのを。
やはりあの二人とつるむのは気苦労が絶えないらしい…。
「それで?生憎俺は暇人じゃないんだ。さっさと用件を言え」
「お前が嫌いだ!」
「誰がお前の好みを聞いた?俺だって幼女相手なんて御免被るぜ」
「幼女と申したか!?宜しいならば戦争だ!!」
「取り敢えずお前は黙ってろ!!!」
話が進まないのでエレンに当身を喰らわせて気絶させる。
女に手を上げるのは不本意だが…餓鬼相手なら「お仕置き」という面目が立つから問題ない。
「あぁエレン!やっぱり危険な奴め…!」
「だから何だよお前ら!?」
ショートヘアーのナイフ使いが答える。
「私はソフィール様親衛隊隊長のニーナ!」
自動弓装備の少女も答える。
「同じくアイリスです…騒がしくて済みません…」
「アイリス!こんな奴に謝ること無いよ!」
「えっと…」
ソフィール親衛隊?予想通りやることも奇抜だな…。
「その親衛隊が何の用だ?」
「決まっているお前のことだ!
近頃ソフィール様に急激に近付いている不審者め!ソフィール様に仇名す輩は私達が成敗してくれる!」
「はぁ…やっぱりそんなことか…」
ここまで予想通りだと呆れるを通り越して感心してしまう。
どちらかって言えば近付いてきたのはソフィールの方だと言うのに…。
「何呑気な顔してやがるこの不審者!」
こちらの心境など露知らず猛々しく吼えるニーナ…厄介そうな奴に睨まれたものだ。
人に嫌われるのは慣れているが、男女に絡まれることは慣れてなどいない…。
レックスは深くため息を吐くと覚悟を決めて吼えた。
「口で言っても無駄みたいだし…不本意ながら相手してやるよ!」
「上等よ!その命知らずな根性だけは認めてあげるわ!」
「喧しい!黙って闘技場に付いて来い!」
(所詮女三人…食後の運動程度に蹴散らしてやる…!)
(フランツを倒したのは驚いたけど…組織は甘くないって事を教えてやるわ!)
(うう…レックスさん御免なさい…!エレンは一度言い出したら聞かないの…)
(むきゅ〜)←気絶中+アイリスに背負われている。
それぞれの思惑が交錯する中、四人は闘技場へと歩を進める…。
その背中を包帯だらけの男がひっそりと見守っていた。
闘技場…レックスが先日フランツと一騎打ちを演じた神聖な舞台…。
今日は観客も居なく、物静かな雰囲気だが四人…というか三人が苛立っているので殺伐とした居心地の悪い空気が流れている…。
「え〜とルールは…」
唯一冷静なアイリスが話を切り出すと…
「面倒だ!三人まとめて掛かってきな!一網打尽にしてやるぜ!」
「あ〜らそんな余裕ぶっこいて…負けた時が余計に無様になってしまいますことよ?」
「黙れ男女!気色悪い言葉を吐くな!」
「人の忠告は素直に聞きなさいよ!可愛くないわねえ!」
「お前に愛着持たれても嬉しくないんだよ!」
「ムッカー!」
レックスとニーナはどうやら相当相性が悪いらしい…フォローするアイリスも難儀なことだ。
「乙女の柔肌に傷をつけた恨み…思い知れ!」
「黙れ自称16歳!あれは聞き分けの無い子供に対するお仕置きだ!」
「うがー!!」
(……あぁ何でこうなっちゃうの?)
殺気満々の三人に挟まれ一人苦悩するアイリス。
しかし悲しきかな…一人の聖人が足掻いたところで荒れ狂う獣は止まりはしない。
レックスは大剣を、ニーナは投げナイフを、エレンは騎士剣をそれぞれ構える。
「アイリス!こんな奴さっさと畳んじゃうよ!」
「えっ!ええっ!?」
ニーナに急かされ不本意ながら自動弓を構えるアイリス。
「いくよ皆!」
「幼女扱いされた心の痛み思い知れ!」
「血祭りに挙げてやる…!」
「ええ〜!?」
殺気立つ三匹の獣と一人の被災者の叫びが闘技場に木霊した。
「先手必勝!」
レックスが開幕早々に突撃する。
元々頭数で引けを取っているため速攻で勝負をつけるつもりなのだろう。
一番気に食わないニーナに向かって突進する…と眼前に小さな影が立ちはだかった。
「積年の怨み…覚悟!」
エレンだ。どうやら騎士の格好は伊達ではなかったらしい。
だがその背丈はあまりにも心許無い…レックスの大剣の前では木の葉のように…
ガキィィン!!
「!?」
軽く吹き飛ばされるかと思っていた小さな騎士の一撃は何とレックスの剣戟を受け止めた。
突進力の加わった尋常でない一撃を何故小柄な女騎士が止められたのか?
「まだまだぁ!」
今度はエレンから攻撃が来る。
今度は見た目どおりの俊敏な動き…そして見た目からは想像も着かない強大な一撃。
「クッ!」
「それそれぇ!」
(何だ…何故こんなに攻撃が強い!?)
それがエレンの能力だった。
フランツの様な魔術では無く、単に肉体を強化する魔力付加。
普通はレックスのように身体能力を多少支援する程度の能力なのだが、エレンはそれだけを徹底的に極めた。
その結果小さな背丈にも関わらず強大な膂力と俊敏な動きを併せ持つ屈強な前衛が出来上がる。
「だがこの程度なら!」
接近戦のセンスならレックスに引け目は無い。
エレンの一撃を受け流し、返す刃で急所を狙うレックス。
「殺った!」
「私を忘れてないかな新人君?」
「!?」
今まさに止めを刺そうとしたレックスに無数のナイフが飛んでくる。
攻撃を中断して一旦距離を取るレックス…。
「助かったよニーナGJ!」
「まあね〜」
口先は生意気だが腕は確かな男女が犯人だった。
しかも前衛が小柄なため剣戟の最中でも援護射撃が加えられる…厄介な連中だ。
(そう言えばあと一人居たような…!?)
視界を巡らせていると小さな矢が飛来してきた。
「御免なさい!御免なさい!御免なさい!」
「言ってることとやってる手が違う!」
アイリスだった。こちらも腕は確かだ。体勢を立て直す暇も無い連射。
表情と口調は申し訳なさそうにしてるが攻撃の手は一切止まっていない…仕事出来る人種だなこりゃ。
「遊ぼうよ〜!」
エレンの騎士剣を受け止めると…
「ほらほら死んじゃうよ〜!!」
剣戟の最中にニーナの投げナイフが邪魔をする。
それをなんとかやり過ごすと今度は…
「御免なさい!御免なさい!」
容赦無用の連射が襲い掛かってくる。
(成る程そういうことか…!)
彼女達の戦術は徹底した一対多の波状攻撃…。
エレンが敵の動きを止め、そこをニーナがサポート、体制を崩した敵にアイリスの自動弓による追撃が来る。
しかも後衛の二人の距離が適度に離れている。
これではエレンをやり過ごしてどちらかを潰そうとしても必ず二方向から援護が来る…攻め入る隙が無い。
「隙有り〜!!」
不意を突いてエレンの剣閃が襲い掛かる。
「しまった!」
騎士剣はそのままレックスの腹部を貫く…と思われていたが違った。
ガキィン!
「!」
剣は固いもの同士がぶつかり合った時特有の高い音を響かせて止まった。
「何だ…これ?」
レックスの眼前には無骨な鉄隗が壁となって立ち塞がっていた。どうやらこれがエレンの剣を防いでくれたらしい。
「やれやれだな大将…」
「カイル!?」
そこに居たのは両手に小型の手斧をそれぞれ握って構えるカイルの姿があった。
「お前怪我は大丈夫なのか?」
「傷付けた本人が言う言葉か?組織の医療班を舐めるなよ」
そう言って腕を軽く回す。どうやら本当に大丈夫みたいだ。
「いくらなんでも三対一じゃ分が悪すぎるだろが…」
「うっうるさい!あんなじゃじゃ馬如き俺一人で…!」
いきなり痛いところを突かれて憤るレックス。
だが実際今のレックス一人では彼女達三人相手は荷が重すぎる。
「……助太刀を頼んでいいか?」
「じゃなきゃ来ないぜ」
「良し…イケるぜ!」
レックスは強く頷くと三人に向けて声をかける。
「おい!一人増えても構わないか?」
「はんっ!そんなつい最近昇格してきた戦斧もどき一人加わっても状況は変わらない!」
「あの…そんなこと言ったら駄目だよニーナ…」
「いいじゃん!ここまで一方的じゃつまんないよ」
どうやらカイルが参戦することに異論は無いらしい。
「なら…頼むぜカイル!あの男女とチビっ子に一泡吹かせてやろうぜ!」
「あぁっ!派手にいこうぜ大将!!」
再び大剣を構えるレックスとそれを支援する形で手斧を構えるカイル。
「また言ったな!?もう勘弁してやらない!行くよ皆!」
「ニーナ!もう少し落ち着いて…あの二人の実力は…」
「誰が超絶ミリ単位どチビかぁ!!ぶっ飛ばす!!」
殺気満タンのニーナとエレン、二人に振り回されるアイリス。
試合再開だ。
レックスは再びニーナに向けて突進する。
「覚悟しろよ!」
だが先程と同じようにエレンが援護に回る。
「無駄無駄ぁ!また返り討ちだよ!」
再びエレンを盾にしての援護攻撃で仕掛けてくるが…
(ニヤリ)
レックスの狙いはそこにあった…。
「行けぇカイル!」
「!?」
「ハアアァ!」
アイリスに向かってカイルが突進する。
ニーナとエレンがレックスに意識を向けている隙にアイリスを速攻で沈める。
それが二人の狙いだった。
(こいつらは確かに強い…だがそれはあくまで三対一の場合だ!)
攻守に長けた盾役のエレン。
支援能力に優れるニーナが前衛を飛び道具でサポート、体制を崩し…。
冷静に戦況を見ることが出来るアイリスの追撃によって闘いの主導権を支配し続ける。
これがこの三人の戦術だ。
この体勢を維持し続ける限り彼女達に死角は無い…逆に言えばどれか一角だけでも潰せば勝機は見出せる!
先程の短い問答で既に、レックスはこうなる事を察していた。
(最近昇格してきた戦斧もどき…)
そう、ニーナはカイルのことを軽視していた。
三人をまとめるリーダー的存在の彼女がカイルを軽視するなら必然的に他の二人はレックスを標的にする。
そこに隙が出来る!
「覚悟!」
「!?」
自動弓使いのアイリスでは接近戦に持ち込まれたら勝ち目が無い。
なんとか距離を離そうとするが…
「遅い!」
キィン!
「しまった!」
カイルの右の手斧がアイリスの武器を弾き飛ばす。
彼女は武器を失ってもまだ戦おうと腰のナイフを抜こうとするが…
「甘いな!」
カイルの唇が小さく何かを刻むと地面から何か細かい粒子状の物体が彼の左腕に集まってきた。
「鋼鎖縛!」
その言葉が鍵となり粒子はアイリスの体の周囲に展開される。
それは直に鉄の鎖となって彼女の動きを締め上げ、行動不能にする。
『硬質結晶化』…それがカイルの能力だ。
地中に含まれる砂鉄や鉱石の類を意のままに操る能力。
素手の状態からもいつでも武器を生み出せるだけでなく、このように敵の行動を阻止するのにも最適な強力な能力…一種の使役術だ。
欠点はカイル自身の質量以上に大きな重量の鉱石は制御できない…という点だが、今この能力は支障無く発動している。
「やるなっ!」
「当然!」
互いに鼓舞し合うレックスとカイル。
即作とは言え何回も同じ特訓をし、元々気が合う間柄だったので連携もさほど苦にはならない。
そしてカイルの技量。
ニーナが先程言ったとおり、彼は長い期間、短剣に所属して戦っていた。
だが、決して腕が悪かったからではない。
カイルはフランツとは同期でその時から何度も一緒に戦っていた…そんな二人はお互いを好敵手だと認識していたのだ。
取り分けカイルはフランツとの勝負に真剣で『奴に勝つまでは奴より上の階級には行かない』と強く主張していた。
カイルの能力が『硬質結晶化』に対してフランツは『雷帝』…。
五行においてカイルは『金』、フランツは『火』の力を持っていると区分できる。
火が金を焼き、溶かすようにカイルとフランツの能力はカイルにとって相性最悪…。
元々分が悪い勝負なのだがカイルは『自分が未熟なだけ』と聞き入れず、結局今の今まで一勝も出来ていない。
しかし『実力が有るのに何時までも最下位の階級に居ては周りの兵の士気に悪影響が出る』とジガード自らに説かれ、渋々ながら戦斧に昇格したのだった。
つまりニーナ達三人との実力差はほぼ無く、逆に彼女達を上回っていたのだ。
そこにフランツを一騎打ちで打ち破ったレックスが加わった…この時点で彼女達に余裕など無かったのだ。
増して互角以上の相手を侮って軽率な攻撃を仕掛けたのだ…戦況が一変するのも無理は無い。
「アイリス立って!」
「無理よ…このままじゃ身動きなんて取れないわ!」
「そんな〜!」
一番視野が広かったアイリスが戦闘不可能になっているので彼女達の戦術は完膚なきまでに瓦解した。
そして…
「あっはっはっはぁ!ここまでだなあ問題児コンビ!!」
「お前…それ悪役口調…」
漫才じみた事は口に出しているがレックスもカイルも隙は全く見せていない。
そんな相手と対峙している方からすれば、これ以上不愉快なこともないだろう。
「くっ…!」
「ひえぇ〜!!(汗)」
気のせいかレックスの体から凄まじい魔力が溢れ出て来る。階級剣は伊達では無い。
「お前等の負けだ!
大人しく負けを認めろ…さもなくばその愚かさを死んでからも後悔することになるぞ」
「落ち着け大将!それ以上の追い討ちは軍法会議モノだぜ!?」
暴走寸前のレックスをカイルが必死に塞き止める。
しかし…
「負ける…もんか…!」
「!?」
ニーナの体から立ち昇る強大な魔力。
彼女の周囲の背景が霞んで見える…こうも簡単に目視出来る程までに。
「ソフィール様を…お守りするのは…!」
「ニーナ!?落ち着いて!」
エレンの静止も振り切って立ち上がるニーナ。
「あれやるよエレン!援護を!!」
懐から新たに取り出された無数のナイフ。
その表面には幾つかの文字が刻まれている。
ニーナはそれらを自身の周囲に展開するように突き立て、詠唱を始める。
何か危険な香りがする…!
レックスの戦士としての感覚が訴える。
即座に大剣を構えてニーナに突っ込む!…が
ガキィィン!!
「やらせない!」
エレンが二人の間に割って入る。
今まで以上に容赦無い斬激の嵐…そして気迫。
「レックス!」
カイルが援護しようと駆け寄るが…。
「馬鹿!こっちじゃなくてニーナに…」
二人の意見の相違は皮肉にもニーナ達の目論見を成り立たせてしまった。
「……詠唱完了……」
次の瞬間…!
「!」
カイルは込み上げる殺気を感知し、即座に鋼鉄の障壁を展開した。
堅牢さに関しては数ある『力』の中でも上位に位置するカイルの能力…だが…
その強固な壁が…溶け始めた…。
「なっ!?」
鉛色だった壁が次第に紅くその色を変える。
やがて発熱しだし形状が崩壊していく。
「まさか…これは!?」
そして自慢の障壁に風穴を空け…紅き化身が牙を剥く。
咄嗟に手斧で防ごうとするカイル。
だがそれすらも瞬時に溶かしその身に喰らいつく!
「ぐああぁぁぁ!!」
「カイルッ!」
長大な炎に捲かれて倒れるカイル。
レックスが助け起こそうとするが……
「!」
カイルを倒した紅蓮の炎が襲い掛かった。
「何だ…これ?」
軽く3メートル程はあるだろう巨大な体と翼を持つ炎の鳥……。
離れているレックスにも感じられる程の圧倒的な熱量。
まるで生きているかのようなその姿にレックスは無意識のうちに後ずさっていた。
「驚いたでしょ…ハァ…ハァ…」
「ニーナ!?」
見れば術師である筈の彼女も辛そうにしている。
猛々しく君臨する炎と裏腹にニーナは今にも倒れそうにしている。
「これが…私の能力…『凰炎』。
標的を焼き滅ぼすまで止まる事は無い…荒ぶる炎の化身…」
「お前…大丈夫か!?今にも死にそうじゃないか!今すぐ止めろ!ただの模擬戦で…」
「私は!!」
「!」
彼女の身を案じて中断しようとしたレックスにニーナは叫んだ。
「私はソフィール様を守ると誓った!!」
「ニーナ…」
「アンタはどうなのレックス!?」
「俺…?」
彼女は一体何を言いたいのか?
その疑問は彼女の次の言葉が解き明かした。
「アンタもソフィール様に言ったんでしょ…守るって!」
「!」
「あの方が何を背負っているのか…何に苦しんでいるのか…!
アンタは何も知らずに守ると言った!
ただそうしたいという強い思いだけでそう言った!!」
「……」
そうか…。
彼女が俺に突っかかってきたのはただの気紛れでは無かった。
ソフィールを守ると誓った者同志として…彼女自身の信念に賭けて…俺を見極めようとしたのか…。
「だけど思いだけでは守れない!気持ちだけで何でも出来るほど世界は甘くない!!
そしてアンタが守ることを諦めた時…誰よりも傷つくのはソフィール様なんだ!」
確かに…俺はソフィールの事など何も知らない。
口先三寸と言われるのも仕方ないだろう……けど…
「アンタの意志が本物なら…今此処で私と本気で闘えレックス!!
口先だけの偽善者なら…!」
「いいだろう」
「!」
レックスは傷だらけのカイルとカイルが倒れたことにより開放されたアイリスとエレンを見比べ言った。
「アイリス!エレン!」
「はっはい!」
「なっ何!?」
突然話し掛けられて戸惑う二人。
「カイルを連れて医務室へ行ってくれ!頼む!!」
「!?」
二人は息を呑んだ。
目の前に居る青年の纏う空気が一変している。
その瞳には一切の隙が無く、迷いも無い…死線を潜り抜けてきた戦士の目。
「はい…」
「まぁ…良いかな、うん」
思わず顔を赤らめる二人。
それには気付かずレックスは言葉を続ける。
「此処に居たら火傷じゃ済まない…速く行け!」
二人はレックスに顔を見られないようにそそくさとカイルを連れてその場を離れた。
それを見届けてから正面のニーナに向き合う。
「これでお互い遠慮は要らないな」
「へぇ…やっぱ根性あるじゃないアンタ…」
まだ魔力を上手く扱えないレックスにとって今のニーナを相手に戦うのは得策ではない。
だが、ここで退くことなど考えられなかった。
「行くぜ…ニーナ!」
「吼えろ凰炎!!」
再び戦いの幕が切って落とされる。
レックスが神速の速さでニーナに突っ込み、ニーナの指示で炎の鳥がレックスに襲い掛かる。
本来なら回避に専念すべき強大な力にレックスは敢えて正面からぶつかって行った。
「ハアァァァ!!!」
全身全霊の力を込めて炎の鳥に切り掛かるレックス。
だが…
ガキィィン!!
「!?」
本来なら物理的に無力の筈の炎が凄まじい硬度を有していた。
ニーナの能力『凰炎』はソフィールの『召喚』と同系列の上級術。
大量の魔力とそれに伴う炎の精霊の集合体はあらゆる鉱石よりも強固な壁となり、あらゆる武器よりも強靭な剣となる。
「その程度?所詮アンタも口先だけなの!?」
「くっ!」
防戦一方のレックス。
やはり魔力を伴わない攻撃ではニーナは倒せない。
隙を突いて本人を強襲しようとも思ったが、その前に自分が燃え尽きるのが先だろう。
「力無き意志など所詮は踏み躙られるだけ!」
強大な力を使役して体力などとっくに底を尽いてる筈のニーナだがその瞳は一切光を失っていない。
「ならばここで灰になれ!!」
術者の激情を表すかのように炎の翼が荒れ狂う。
レックスも常人を超えた速度で降り注ぐ業火を避けるが状況は誰から見ても絶望的だ。
「!?」
(術者の…感情を表す?)
その時レックスの脳裏に一筋の光が見えた。
確証など微塵も無い希望的観測…だがこのままでは戦況は覆らない。
なら…
今まで休み無く駆け回っていたレックスが動きを止めた。
咄嗟に警戒して凰炎を止めるニーナ。
今までの騒音が嘘のように一瞬で静まり返る闘技場。
だがこれは嵐の前の静けさ…静寂が深ければ深いほど嵐もまた強くなる。
(何か企んでいる?)
ニーナは油断無く標的を観察する。
不意を突くつもりなら再度自慢の凰炎が吼えるまで……だが
レックスは両目を閉じ、意識を内面に集中させていた。
まるで…
(まるで…上級術を使うような?まさか!?)
レックスはまだ魔力付加による肉体強化ぐらいしか見せていない。
剣士としては一流だが魔術師としては初心者の筈。
そんなレックスがいきなり上級術など有り得ない。
だが次第にレックスの魔力が高まっていくのが解かる。
途方も無く強大な魔力が渦巻いている…このままではマズイ!
「吼えろ!凰炎!!」
何を企んでいようがこの強大な炎の前には関係ない。
その策ごと焼き尽くすまで!
荒れ狂う炎がレックスを呑み込もうとした瞬間…
風が吹いた。
「!」
レックスを中心に凄まじい風圧が発生する。
その勢いに炎の鳥さえ軌道を外れて向かいの壁に衝突する。
ニーナ自身、炎の壁に守られているにも関わらず吹き飛ばされそうになっている。
「まさか風の能力者!?嘘でしょ?」
『風』。
五行のどの力にも分類されない力。
それもその筈……風は何者も拒まず、何者も受け入れる。
常にあらゆる力、現象に風は寄り添う様に存在しているのだ。
それゆえに何よりも扱いが難しく、制御も困難な力。
組織でも風を力として振るうことが出来る人間は居ない。
レックスが薄く微笑む。
「ようやく解かって来たぜ…俺らしさってやつを」
「らしさ…?」
吹き荒れる烈風の中心でレックスが不敵に笑う。
「最初に俺が魔力を使ったときに具現化したのは炎だった。
だから俺は今まで『自分の能力は炎なんだ』と錯覚してしまっていた」
「…何が言いたいの?」
「解からないのか?」
衝突しながらも些かも衰えないニーナの業火を睨みながら言う。
「能力はその者自身の心や感情を映す鏡。
荒れ狂う炎は正しく今のお前そのものだ。
だが…俺は違う!
あの時の俺は怒りと殺意、憎しみの虜となっていた…だから全てを焼き滅ぼす業火を生んだ。
でもそれは本来の俺では無かった!
訓練でいくら精神を研ぎ澄ませても力が使えなかったのはそのせいだったんだ!」
「なら…アンタの力の本質は…」
大凡の理解が出来たニーナが敢えて問うた。
「そう、風さ。風こそが俺の本質を映す力!」
レックスは今まで幾多の困難にぶつかって来た。
ただ生きること…それすら間々ならない日々を生きてきた。
傷つき、利用され、苦しみ続けた。
だがその中でもレックスは上を向いて生きることを諦めなかった。
「どんな強固な壁でも風の流れを止めることは出来ない!
全ての苦痛も、屈辱も…否定はしない!敢えて受け入れよう!
だが決して地に這い蹲る気は無い!
そして必ず辿りついてみせる!
俺の夢…俺の望んだ世界…それがどんなに遠くに在ろうと!!」
レックスに応える様に風は勢いを増す。
徐々に…徐々にではあるがニーナの皇炎をも上回る気迫と力を見せる。
「まだだ!」
圧倒的な力に飲み込まれないよう…自らを奮い立たせるように叫ぶニーナ。
再び凰炎を突進させる。
だが…
「無駄だ」
風の流れが変わる。
荒れ狂う炎はその流れに翻弄され、またも標的を見失い地に墜ちる。
「言っただろう…風は全てに寄り添い、介入する力。
どんな大きな力もその流れの前には無力!」
あらゆる力を受け入れ、ただその流れの矛先を変える。
それだけで…それ故に風は強大な力なのだ。
「ここまでだニーナ。
それ以上は無駄に寿命を縮めるだけだ」
事実…凰炎の威力が落ちている。
術者であるニーナの限界が近いのだ。
だが…
「嫌だ!」
ニーナは諦めない。
今のレックスには効かないと解かっているのに何度も凰炎を飛ばす。
その度にレックスは受け流すが決して諦めない。
(このままだと…アイツは死ぬまで止まらないだろう…)
それは…嫌だった。
同じ想いを胸に戦う者同士…こんな所で死なせるには惜しい。
それは今までのレックスなら考えられない思考だった。
(これ以上引き伸ばす訳にはいかない…)
静かに…しかし渾身の力を込めて大剣を握る。
(一撃で決める…!)
凰炎を受け流したと同時に、一気に地を蹴るレックス。
その動きは風の加護を受け先刻よりも遥かに速度を増す。
一瞬でニーナとの間合いを詰める!
「!」
その速度に驚愕するニーナの…ほんの一瞬の隙を見切り…
ドゴォォッ!!
「かはっ…!」
大剣の横薙ぎの一撃が直撃する。
最初の激しさと打って変わって…その決着はとても静かなものだった。
暫らくしてニーナが起き上がるとそこは病室だった。
「!ニーナ気が付いたんだね!」
「エレン…」
ベットのすぐ横に付き添っていたエレンが抱きついてくる。
その横でアイリスがほっと胸を撫で下ろしながらニーナの好物の林檎を剥き始めた。
「私は…あの時…」
「レックスさんがあの後ニーナを抱き抱えて連れてきてくれたの」
アイリスが林檎を切り分けながら答える。
「なっ!?」
逆にニーナは仰天しながら飛び起きる。
その反動でエレンがベットから振り落とされた。
「ぐえっ!?」
「あっ御免エレン!」
しかしやはり顔を赤らめて同様するニーナ…。
その横で寝ているカイルは唇を尖らせて面白くなさそうにしていた。
「いい性格してるぜ大将…」
同時刻の闘技場にて…
「こらレックス!また勝手になんかやらかしたらしいな!?」
勝手に午後の訓練をサボり、挙句隊員と騒ぎを起こしたと聞いて激高するラッセルとそれにへこへこと頭を下げるレックスの姿があった。
「まあまあ落ち着けよラッセル!成果は有ったんだからさ!!」
「成果!?」
「あぁ!もう衝羽なんかお手のモンさ!ようやくコツが解かったからな!」
自信満々に答えるレックス。
やはり初歩の初歩が踏み出せなかったのは相当ショックだったらしく、とても嬉しそうだ。
「ほほぉ〜ならやってみろよ。
失敗したら只じゃおかねぇからな」
「驚いて卒倒して入院するなよ〜〜!」
適度に距離を取るレックス。
意識を集中させ、魔力を開放し、やがて強大な気流を生み出す。
「へぇ…やるじゃねえか」
後輩の成長を肌で感じて微笑むラッセル…だが…
「喰らえ衝羽ぁぁ!!!」
渾身の力を込めて振り下ろされた大剣の生み出したカマイタチの様な一撃は…
あまりにも強すぎた。
本来ならそれ程強い術では無い筈の衝羽が…レックスによって放たれたものは常識を遥か彼方に置き去りにするほどの威力と大きさだった。
「えっ!?」
刹那、断罪の十字が誇る精鋭ラッセルが宙を高々と舞った。
その後ラッセルは大怪我で入院。
任務に巨大な支障が生じ、レックスはシリウスに散々叱られた。
ギャグセンスが欲しいです…本気で。
これからもこの作品をよろしくお願いします。
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