表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/31

出会いの運命〜後編

断罪クロス十字バニッシュ本部の敷地内にある闘技場。


ここは普段なら隊員達の実力向上のための訓練施設として使用されているが、必要とあらばその目的に応じた別の施設へとその場を変える。


その一つが今回のような一騎打ちのための決闘場だ。

戦友と共に腕に磨きをかける場合、はたまた階級別けのための模擬戦のような神聖な試合のためにこの施設は用いられる。

周りには観客席もあるため、ある者は娯楽ついでにまたある者は見聞を深めるために試合を観戦できる。


レックスの闘いを見るためにラッセルもこの場に居た。

彼は既に「セイバー」の階級を持っている指折りの実力者のため、特別に良い席を簡単に取ることができた。他にも彼と同ランクの者達が噂の新人を見定めようと続々と闘技場に足を踏み入れていた。


「思った以上に注目されてるな」


それもその筈。今回の様なケースは前例が無い。新参者がいきなり格上の猛者と一騎打ちするなど組織の規律を乱しかねない。


(ここでみっともない闘いなんてしようもんならレックスは組織での居場所を失う。いきなり大舞台を背負わされたもんだなあいつも…)


顎に手をかけて考え込むラッセル。

そんな彼の横に突如、思わぬ人物が座り込んだ。


「へぇ〜盛り上がってるね〜♪」

「ソフィール!?なんでこんな所に?」


いきなり泡を喰う羽目になったラッセル。

本来なら「巫女」である彼女は不用意に出歩いてはならない。だが好奇心旺盛な彼女は隙を見ては逃げ出すのだ。昨夜も二時間にわたる大論戦の末にようやく追い返したというのに…。ラッセルは頭を抱えて蹲るしかなかった。


「頼むから…ほんっと頼むからさぁ」

「まあまあせっかくのイベントなんだから楽しまないと♪あっポップコーンと飲み物要る?」


そういってラッセルの分のポップコーンと飲み物の入ったコップを差し出すソフィール。

そもそも事の発端は彼女自身だというのに暢気なものだ。

ラッセルはため息をつきながらモシャモシャとポップコーンをつまみ始めた。


やがて進行係の騒がしい男が勝手にアナウンスを開始する。


「HEY!皆さん元気かい!?今日の司会は皆お馴染みこの☆」

その男に向かって様々な暴言・ゴミ砲撃の雨嵐が降り注ぐ。


「痛い痛い…心も体も痛いよ全く。それじゃさっさと選手登場と逝きますか・・・

 第一回!階級別けを賭けた真剣勝負!勝ったほうがセイバーだ!!!」


ボロボロの司会者がまずは指差した方向から現れたのは…。


「我らが組織の威信をかけて登場するのはこの御方!時期「セイバー」クラスへの最有力候補!

 その華麗なる細剣レイピア使いはまさに芸術!『雷帝』フランツ・ゲルトの登場だぁ!!」


その声を受けて一人の男が姿を現す。

その顔は兜に隠れて見えないが、身に纏った美しい装飾のされた防具から有力者の家柄だと推測できる。

男は闘技場の中央まで来ると自分の兜を高々と脱ぎ捨て、同時に腰に下げていた細剣レイピアを抜き放った。

兜が空中でバラバラになり、周囲から黄色い歓声が飛び交う。

歓声に応えるようにフランツは手を振っている。彼は顔立ちも整っており、先程のパフォーマンスからも解かるように確かな実力も有る。聖騎士ロイヤルガード所属の組織のエースであるシリウスやその好敵手として名高いラッセル程ではないが密かにファンクラブまでいるくらいだ。


周りの拍手喝采を受けながらフランツは内心ほくそ笑んでいた。

(ここで昇格すればまた僕はシリウス先輩に一歩近づける。

 新入りには悪いが僕の踏み石になってもらうか…ククク)


彼はシリウスに憧れていた。

あの優美な物腰、瞳の奥に見える儚いまでの美しさ、華麗な双剣捌き。全てが完璧だ。

元来傲慢ですぐに他人を見下していたフランツが唯一認めたのがシリウスだった。


(いつか必ず彼の隣に立つ!今日はそのための前哨戦だ!)


「対峙しますは期待の新人!経歴不明とはいえその実力はあのシリウス氏も認める…」

「何だとっ!?」


司会者の一言にそこまで機敏に反応したのは彼自身初めてだった。

だが聞き逃すことは出来ない。どうあっても認められない!


「(新人如きが?あのシリウス先輩に「認められている」だと!?

  この僕でさえまだ直接声をかけられたことは無いというのに?)」


プライドの高い彼には納得できなかった。

そんなフランツの内心も知らずに司会者の実況は続く。


「あいつはただのお騒がせ者か!?それとも組織の新たな風か!?

 それが知りたきゃこの一戦を見逃すな!期待の新星レックスの登場だ!!!」


フランツのとき以上の口上とジェスチャーで迎えられ主役が顔を出した。

周りには見慣れない人間ばかりだというのにその立ち振る舞いは威風堂々としている。

レックスは黙って周りを見渡すとラッセル(とその隣のソフィールに)視線を投じた。

絶対に勝つ!そんな気持ちがアリアリと現れている眼差しだった。

挨拶代わりに軽く手を振ってからフランツの方へと歩を進める。

すると…


「レックス〜頑張れー!!!」

「!!?」


レックス・ラッセル共に転倒。

あろうことかソフィールが大きな歓声で応えたのだ。ラッセルは慌てて彼女を諌めるがもう遅い。

彼女の一言は周囲に興奮と驚愕が振りまくと同時に一人の男を更に苛立たせた。


「シリウス先輩だけじゃなくソフィール様にもだと!」


フランツはシリウスに憧憬の念を持っていると共にソフィールにも特別な感情を持っていた。


(あの御方に相応しいのはシリウス先輩だけ・・・そうでないなら自分だけだ!)


それは一目惚れだった。ただ遠くから横顔を眺めただけ。

ただそれだけで彼はソフィールに心を奪われた。気がつけば彼女のことばかり考えていた。

今まで女性など幾らでも自分に言い寄ってきた。

そのうち気になる女がいたら適当に娶って家系に名を連ねる。そう思っていた彼が初めて自分から近づこうとした女性がソフィールだった。


(その彼女が何故!?僕ではなくあんな男を応援しているんだ!!?)


許せなかった。

会って間もない男にここまで殺意を覚えたのは初めてだった。


(レックス……)


視線に込められた殺気に気付いたのかレックスがフランツに向き合った。


「アンタが対戦相手か?」


威圧感を込めて「怨敵」と言葉を交える。


「ふんっ。光栄に思えよ新参者君この僕が直々に相手に…」


気がつくとレックスはフランツから視線を変えていた。

その視線の先にいたのは…。


「「シリウス(先輩)!?何故此処に?」」


いつの間にかシリウス本人が司会・進行の席に座っていた。

ただ座っているだけでここまで絵になる人物もそうはいまい。


「今日は何と!シリウス卿ご自身が!解説者として来てくれました〜!!」


やたらハイテンションな実況者が聞いてもいないのに説明してくる。

心なしかシリウスがムスッとしてるように見えた。


「レックス」


突然シリウスがレックスに声をかける。フランツのほうには目もくれずに・・・だ。


「貴様の力と覚悟…どれ程の物か見せてもらうぞ」

「上等だ。特等席で拝んでいきな」

「ふんっ」

「はっ」


口数こそ少ないが双方に特別な想いが根付いていることは間違いない。

その証拠にあのシリウスの表情が和らいでいる。


(気に喰わない!)


新入りなのだから手心を加えてやろうかと思っていたが気が変わった。

この男の無力さを!不甲斐なさを!シリウス先輩とソフィール様に知らしめてやる!!


「試合開始の宣言をしろ司会者ぁ!!」


もう我慢の限界だ。

さっさと憎たらしい小僧を足元に這い蹲らせてやる!


その迫力に蹴落とされ司会者が試合開始を宣言する。


「試合開始ーーーーーっ!!!」







「いくぞっ!」

「全く、無礼な輩だ…!」


双方剣を抜き、ぶつかり合う。


フランツの突きをレックスは大剣のなぎ払いで返した。

その威力に体格で劣っているフランツは余波で吹き飛ぶ。

まだ大剣に慣れていない筈なのに大したものだ。


「くっ!」


だがフランツも伊達や酔狂で生き残ってきたわけではない。空中で一回転するとそのまま着地、レックスの追撃を横に転がって避ける。


「やるね先輩」

「ほざくな!!」


またもフランツが攻め入る。

時折フェイントも織り交ぜた連続突き。獲物がでかいレックスは迂闊に反撃も防御も出来ない。


「そらそらそらぁ!どうした?反撃も出来ないのか!?」

「喧しい奴だ…な!」


レックスは一歩大きく下がると地面に向けて思い切り剣を叩き込んだ。粉塵が巻き上がり視界が狭まる。


「なっ!?無粋な…」


目潰しをまともに受け、攻撃の手が止まるフランツ。


「お上品にやりゃ生き残れるってもんでもねえだろうがっ!!」


高らかに吼えるとレックスは再び大剣を振りかざし斬りかかる。今度はフランツが防戦一方だ。

接近戦では不利と悟ったフランツは今度は魔力による遠距離攻撃に転じようとする。


「舐めるなよ新参者!」


フランツが自身の細剣レイピアに魔力を注ぎ込もうとすると…


「甘い!!」


レックスは上着に仕込んだ投げナイフを投擲する。堪らずフランツが回避すると魔力の充填が途切れる。


「術なんて使わせない!」


一気に距離を詰め怒涛の斬撃を繰り出すレックス。


(こいつ…闘い慣れている!)


思わぬ強敵に戦慄を覚えながらも反撃の機会を伺うフランツ。

予想以上の勝負に観客が沸き立つ。


「シリウス卿今回はどちらに分があると思いますか?」


司会者が勝手にシリウスに話題を吹っ掛ける。

シリウスはしぶしぶといった表情でそれに応えた。


「レックスの獲物は大剣。対するフランツという男の獲物は細剣レイピアか。

 双方の実力・経験にどれ程の差が有るかがものを言うな」

「何故です?接近戦の威力なら明らかに大剣使いが有利では?」


司会者の呆れた発言に眉を潜めながらシリウスが答える。


「貴様は馬鹿か?確かに威力で言えばレックスの大剣という選択はベストだ。

 だが威力と共に重量も増す。それと同時に速さも劣る。一長一短というのはこういうことだ。

 まして無闇に振っていたらすぐに体力が底を付く。そうなれば防御もロクに出来はしない」

「つまりフランツ殿有利という考え方ですね?」


二人のやり取りを聞いてほくそ笑むフランツに…


「貴様は馬鹿だ」

「余所見してんじゃねえ!」

「グハッ!!!」


シリウスの毒舌とレックスの攻撃が直撃する。

レックスの強烈な蹴りをまともに受け、悶えるフランツ。


「奴は確かに俊敏性と小回りという観点ではレックスに勝っている。

 だが一撃の重さ、射程距離リーチ、防御力では明らかに劣っている。

 迂闊に飛び込めば格好の的。かといって離れれば防戦一方になる。

 大規模な術を使おうとしてもそれだけの隙を与えるレックスではない。

 しかも奴は紛いなりにも、俺と互角に渡り合った実力者だ。

 そうそう負ける道理は無い」

「何だって!!!?」


最後の一言に会場中が喰い付く。

シリウスは組織でも指折りの実力者であり、「聖騎士ロイヤルガード」の称号を持つ猛者だ。

それと互角に渡り合える人間など好敵手のラッセルか同じ「聖騎士ロイヤルガード」くらいだ。

その事実に周りがざわつき戦慄が奔る。

そしてその言葉に最も強く反応したのはフランツだった。


「ふざけるな」

「?」


レックスは敵の「風」が急変したので、警戒し距離を取った。

するとフランツは…


「ふざけるなよ貴様ぁぁぁ!!!!!」


突然凄まじい怒声を挙げて仁王立ちした。

その頭髪が怒りを表すかのように逆立つまさに「怒髪天を衝く」といわんばかりに。


「おっと?これは分からなくなりましたねシリウス卿。いよいよ「雷帝」の本領発揮ですよ」

「やっと余興程度にはなりそうだな」




フランツの咆哮が消えた後もその頭髪は逆立ったままだった。

心なしか帯電しているようにも見える。まさかこれが「雷帝」の由来するもの?


レックスは慎重に距離を取り、再び剣を構える。


(まずは相手の出方を伺う。先手を打たせて射程距離を見切れば致命打を受けることも…)


その思考は突然の雷鳴によって遮られた。


「!?」


自身の足元のすぐ隣の地面が焼け焦げている。

天井に目を向けると丁度真上に風穴が空いて雷雲が見えた。


(落雷を操れるというのか!?)


だとしたら相当厄介な相手だ。落雷の速度は人間に見切れるものではない。そんなものを乱発されたら…


だがその考察は間違いだと知った。

落雷は闘技場の地面という地面に傷跡を残し、とても狙いが有るとは思えない。


(何が目的なんだ?ただの神頼みの無差別砲撃か?)


すると…


「ガアァァァ!!!!」


落雷がフランツ自身に直撃した。


「なっ!?自滅!?」


レックスも思わず唖然としてしまう…一体何がしたかったんだ!?


だがその疑問はすぐに明らかになった。


「!?」


フランツの能力を知らないものが見ればそれは「奇跡」としか映らないだろう。


彼の能力は一種の憑依のようなものだった。

感情の臨界点を超えたときに発動し、周囲の精霊を使役し雷雲を発生させる。

そしてその雷を自らの体に落とすことでその力を吸収、あらゆる力を限界まで引き伸ばす。

それが彼の二つ名「雷帝」たる力の全貌だった。


「生きてる?落雷を受けて?」


レックスはこの現象こそが彼の力によるものだという考えに行き着かなかった。

そしてそれが敵にとっての決定的な隙となった。


ザクッ!


「えっ?」


いつの間にか接近していたフランツの細剣レイピアがレックスの左肩を貫いていた。

しかもその刀身は雷撃を帯びていた。つまり…


「ぐああああぁぁっ!!?」


傷口から直に体内に雷撃を流された。生物にとって体内は須らく鍛えようの無い急所。

まさに致命的となる一撃を受けたのだ。


「ガッ…ぁハッ…!?」


全身が麻痺し、痙攣する。

常人なら即心拍停止に陥るであろう一撃を受け、それでもなおレックスは意識を保っている。

だがフランツの追撃を受ければもうそこで終わりだ。


「レックス!」


客席からラッセルが叫ぶ。ソフィールも顔が青ざめている。

これ以上は命に関わる。例え先送りになろうがレックスの戦いは決して恥じるべき内容ではなかった。いつか必ず組織に加入することは出来る。だから…


「シリウス!試合を中止しろ!!もう充分だろう!?これはあくまで模擬戦だろうが!!?」


シリウスに向けて叫ぶ。

フランツは一度能力を使うとしばらく意識が戻らない。あくまで本能のままで闘い続けるのだ。

それ程階級が高くないのもその力を抑えきれずに暴走するという致命的な欠陥があるから。実力自体は既にセイバーの上層部に匹敵するのだ。

そんな相手の前に瀕死のレックスを放置すれば…確実に殺される!


「レックスはこれからまだまだ強くなる!今、命を落とすことは組織にとって何の得も無い!

 早く!早く止めろシリウス!!!」


声を上げて叫ぶラッセルに対し、シリウスは何処までも冷静だった。


「喚くなラッセル」

「シリウスッ貴様ぁ!!!」


観客席から飛び掛ろうとするラッセルに、シリウスはただ一言だけ言った。


「奴はまだ闘う気でいる」

「何っ!?」



思わず闘技場のレックスを見ると。


彼は近づいてきたフランツに投げナイフを投擲し、牽制を仕掛けていた。


体の内側から雷撃に焼かれたにも関わらず。


痛みでロクに意識も無いであろうにも関わらず。



震える手足を必死に引きずり…真っ直ぐに敵を見据える戦士が立っていた。



「レックス!」


ラッセルが、ソフィールが、いや会場のほとんどの人間がその名を叫んだ。


ある者は畏怖を込めて、またある者は敬意を込めて、その名を叫んだ。


レックスはラッセルの声に振り向かなかった。

だが会場の全ての人間に向けて応えるかのように大剣を高々と振り上げた。

その瞬間、闘技場の中を満員の歓声が飛び交った。


シリウスは唖然とする司会者に一言だけ告げた。


「見ての通りだ。試合続行しろ」

「はっ…はいっ!!両者戦闘可能とみなし試合を続行します!」



(さあて…どうすっかねぇ)


レックスは辛うじて歓声に応える余力はあったが体はズタボロだ。

あと一撃でも受けたらマズイ。


対するフランツはこちらの余力を測るかのように先程から仕掛けてこない。

だが、いずれこちらの限界を感じ取って攻め立てるだろう…形勢の不利に変わりは無い。


(せめて敵の欠陥でも掴めれば…!)


とうとう痺れを切らせたかのようにフランツが襲い掛かる。

目にも停まらぬ刺突、斬撃、時折刀身から雷撃が奔りレックスを追い詰める。

だが今度はそうそう直撃しない。


(予備動作を見逃すな!一瞬でも目を離せばやられる!)


攻撃の速度は半端ではないがそこまでの予備段階では常人の域を超えていない。

シリウスと闘ったときに比べれば若干の余裕さえ感じる。

逆にこちらからも反撃を開始する。

レックスが斬りかかればフランツが避け、フランツの刺突をレックスが叩き落とす。

双方一歩も引かない互角の剣戟を奏でる。

だが実力が拮抗していればこそ、先程のダメージがものを言う。


(何か突破口は無いのか?このままでは何れ体力を消耗している自分が先に…!)


一瞬の迷いがレックスを更なる窮地へと追い立てる。

フランツの突撃姿勢から刺突だと判断し、レックスは後ろへと飛んだ。だが…


一瞬フランツの口元が荒々しく歪んだ。

気がつけば時既に遅し、フランツの動作を読み違えてしまった。


刺突の体勢から一気に魔力を込め、一気に解き放つ。


「ザアアアァッ!!!」


フランツの渾身の雷撃がレックスに襲い掛かる。


(まずいっ!今こんなもん喰らったら確実に殺られる!)


今度は体の内部に直接電撃を流されるわけではない。だが既に満身創痍の肉体には耐え切れる筈も無い。

避けようにも、一度放たれた雷撃を見切って避けるなど人間に出来る業では無い。


絶望の二文字がレックスの脳裏に浮かぶ。

ここまでかと目を閉じようとした瞬間…


「負けないでレックス!」

「!!ソフィール?」



ソフィールの叫び声が聴こえた。


人のペースを乱しまくる変わった女。


自分を救ってくれた…絶望の淵から立ち直らせてくれた大切な存在。


俺は彼女を守りたい!




負けられない!


諦めることなど出来ない!!



雷撃が当たる刹那、懐の「何か」が光った。


「!?」


自分を飲み込む筈だった雷撃はその光に呑まれて消えた。

突然の現象にフランツも息を呑む。


(一体何が?)


思考を巡らせながら懐を探るとラッセルから貰った「お守り」があった。


「何だこれは?」



「危ねえ危ねえ…危機一髪だったなアイツ」


観客席からラッセルがため息をつきながらぼやいた。

その「お守り」の別称は宝珠オーブ彼がレックスに渡した保険だった。


宝珠オーブとは、特別な能力を保有した道具「魔具オーパーツ」の一種であった。

魔具オーパーツには精霊や神々の力が宿っており、人の科学では解明出来ない力を持つ。


今回ラッセルがレックスに渡したのは「吸収ドレイン」の能力を秘めた宝珠オーブ

これは敵の魔力を吸収し、無力化することが出来るかなりのレア・アイテムだった。

先程の現象はレックスの強い意志によって彼の魔力の一部が開放され、この魔具オーパーツの能力が発現したために起こったものだった。


(何だか知らんが今が勝機…!)


見ると、フランツの体表で迸っていた雷光が薄れていった。

それだけでは無く頭髪も垂れ下がりかけている。


フランツもまたレックスとの攻防でかなり力を消費していた。

エネルギーの補給無しでは絶大な能力を維持できない。そして補充の際には絶大な隙が出来る。

それがフランツの弱点だった。


「ガアアァァァァァ!!!」


フランツは再び落雷を乱発し、エネルギーを吸収しようとする。

だが、一度能力を把握したレックスがそれを許す筈も無い。今のうちに止めを刺そうとするが・・・


「ぐっ!体が…」


今までの戦闘で酷使され続けた肉体が悲鳴を上げる。

四肢に強い倦怠感と疲労感でロクに動かすことも出来ない。


(せっかくの勝機が…クソっ!なんて様だ馬鹿野郎!)


憤るレックスの耳に…


「魔力を使えレックス!!」


ラッセルの怒号が響いた。

思わずレックスも彼のほうを向くが…


「なっ!?んなこと言ったってやり方が」

「馬鹿野郎!さっき出来ただろうが!!」


説明になってない。あんな危機的状況で冷静に手段を模索出来る人間などいない。


「とにかく聞けぇ!面倒くさい法則も胡散臭い理論も要らない!

 魔力を引き出すのは「想い」だ!精神力だ!!

 全ての想いを込めて敵にぶつける!それだけだ!」


なんて無茶言うんだあの野郎とレックスはぼやいた。


だがそれなら出来る!

この想いを、決意を、信念を!この剣に込めて撃つ!!


意識を大剣に収束させる。

やがてその刀身が紅く輝きだす。

紅く、燃え盛る炎より紅く、何処までも純粋な紅蓮を生み出す。


「よしっ!あいつやりゃ出来るじゃん!」


ラッセルが歓声を上げるのも束の間、フランツが落雷を受けて復活する。


「ガアアアアァァ!!!」


再びレックスに向けて雷撃を放とうとするフランツに目掛けて


「ハアアアァァァァア!!!」


レックスは紅蓮に染まる大剣を投擲した。


「何っ!!!?」


剣を投げた?

剣に精通する者達からすれば何と愚かな行為だろうか?

だがその愚かな決断こそが今のレックスには最善の選択だった。


紅蓮は回転しながら高速で飛来し、唖然とするフランツに直撃した。


「ぐぽぁ・・・!」


腹に直撃を受けたフランツは涎を垂れ流しながら悶絶しそして…


ズガァーン!


爆炎に呑まれて高々と宙を舞った。


そのまま地面に叩き付けられたフランツはピクリともしなかった。

司会の男が様子を見てみると彼は白目を剥いて失神していた。


右手を掲げ、審判を下す。


「フランツ氏を戦闘続行不可能とみなし、勝者!レックス!」


その直後、闘技場は歓喜に沸いた。




数時間後・・・


シリウスはジガードに報告をしている所だった。

報告を聞く前も聞かせた後も彼が主人と崇める男は始終笑顔のままだった。


「ではレックスは特例扱いで暫定的に「セイバー」の権限を持って組織に加入させます。

 ただし暫らくは飽くまで権限のみ任務遂行は必ず直属の上司の指示を」


「まあ待てシリウス。今は彼の健闘を祝ってやらねば」


ジガードはテーブルに置いてあったグラスに葡萄酒を注ぎ、一口含んだ。

そして満足げな表情で自慢の懐刀に話しかける。


「やってくれるねえ彼は。

 未だロクな訓練も受けてないのにフランツを倒すなんて期待以上だよ。

 そう思わないかシリウス?」


「まだまだです。奴ならもっと手っ取り早く勝負を決められても良かった筈です。

 まして大剣を投げつけるなど非常識極まりない」


責める口調ではあるが心なしかシリウスも楽しそうだ。

いつもは決して感情を表に出さない部下の意外な一面に思わず声をかけた。


「珍しいなシリウス。

 お前が他人に友情を感じるなど」


「友情?何を仰るのですか主よ。

 私にとって奴は「獲物」です。

 只弱い、狩られるだけの「家畜」ではなく互いの命を貪り合うに値する「敵」なのです。

 あのような小物如きに狩られては興醒めではありませんか」


シリウスの笑顔、それは内に秘めた修羅の血が見せるものだった。

戦場で数多の敵の首を刈ったその剣は弱い獲物の血などとうに吸い飽きていた。


(レックス…久々に巡り合えた極上の獲物!

 もっと強くなれ!更なる高みに昇って俺の渇きを癒し!飢えを満たせ!!

 その時こそ俺の全力を持って貴様を潰す!!)


「やれやれ困った部下だ…」


何処までも無邪気に、且残酷に微笑むシリウスは主の一瞬の感情の変化に気付かなかった。


常時は優しげなその表情は一瞬だけ変貌し、また元に戻った。


その刹那ジガードの表情を見た者は誰も居なかった。



裏世界最大の力を持つ組織の創始者にして今もなお君臨する男ジガード。



彼が描く「計画」を知るものは誰も居ない…誰一人として。




果たしてそれは神の慈悲か…あるいは…







本部の一角にある食堂。


そこは数百人の隊員が一斉に食事をしても賄えるだけの広さと人員が配備されていた。

そのことからも組織内で宴会がある時は大体この食堂か使われた。


そして今、フランツを打ち破った新人を盛大に歓迎するための宴がここで行われていた。

レックスは体中傷だらけだったがせっかくの好意を無下に扱うことが出来ず、結局宴会に出席するハメになった・・・。


「じゃんじゃん喰いな大将!」

「まさかあのフランツに勝っちまうとはなぁ・・・信じられんくらいだ!」

「畜生・・・このままじゃ俺は新入りの下に付く羽目になっちまうぜ・・・」


皆が皆レックスを歓迎する訳ではないが隊員達は概ねレックスのことを快く迎え入れた。


「いやあれはラッセル…殿のご協力あってこその成果です。

 決して賞賛に値することでは」


当の本人であるレックスは困惑していた。

今まで「家族」以外との交流を極力避けていたため、ここまで他人に歓迎されたことが無かったからだ。


「何言ってるんすか大将?」


振り向くといつの間にか自分の隣の席に見慣れない顔があった。

歳はおそらく自分とそう変わらないだろう。身長が高く、体格もいいため黙っていれば威圧感があるだろうが、始終笑顔が絶えないため穏やかな印象を受ける青年がいた。


「俺はカイルっていうんだ!宜しくなレックス!あとため口で頼むわ」

「あぁ…こっちこそな」


いきなり積極的に話しかけてくるカイルに尻込みするレックス。


「協力って言ったって宝珠オーブ一つと試合中のアドバイス一回だけじゃんか。

 それで勝ったんならそれはアンタの実力だよ!」


そう言いながら彼は二つの杯に火酒を注ぐ。

カイルはその内の一方をレックスに手渡し言葉を続けた。


「俺もフランツと何度か闘ったんだけどいっつも負けちまうのさ。

 だからアイツが偶然マグレうんぬんでは勝てる相手じゃないってのは知ってる。

 胸を張りなよ、な!」


「…」


レックスはいつもの癖で相手がどんな輩なのかを考察していた。


「(変わった奴だ…)」


いきなり馴れ馴れしく話しかけてきたのに何だか憎めない。

打算や策略などこの男の頭には一切存在しない。ただ相手を楽しませよう、和ませようと思って話しかけてきたのだろう。


「よおレックス!初勝利オメデト!」


気付くとラッセルまで自分の隣に腰をかけていた。

遅れてきたにも関わらず周りの隊員達は嫌な顔一つせず上官を迎え入れた。


「ラッセル。アンタには世話になりっぱなしだな」


先程の試合も彼のくれた宝珠オーブが無ければ勝てなかっただろう。


「気にすんなって!その代わり出世払いだからな!」


そう言って笑いながら火酒を手にするラッセル。


「あっ隊長!本当にレックスと仲善いんすね〜羨ましいっすよ〜」

「わはははは!羨め崇め奉れ!」


カイルとラッセルもどうやら交流がある仲らしい。

まるで兄弟のように親しく会話する二人を眺めながらレックスは思いに耽っていた。


家族でもないのに自分を受け入れ、支えてくれる人間がいる。

自然と胸が熱くなっていた。



「改めて自己紹介!俺はついこないだから戦斧アクスに配属されたカイル!

 趣味は詩を書くこと!今度なんかお前さんの詩でも書いてやるよ!」


そういって杯を掲げる。


「ラッセルだ!所属はセイバー!趣味は酒!酒が無ければやってられん!」


満面の笑顔で同じく杯を掲げる。


「レックス…配属はまだ不明だ。趣味は喰う事に寝ることか」


自分も杯を掲げる。


「乾杯!俺達の出会いとその行く末に!」


そういってカイルは嬉しそうに火酒を喉に流し込む。


「(こういうのも悪くは無いな)」


レックスは二人の仲間と新しい居場所に感謝しながら酒を呑んだ。

それからカイルは自分の故郷の自慢やこの組織の思い出、さらにはちょっとした冒険談などを楽しそうに話しかけてきた。

レックスはラッセルや他の隊員達と一喜一憂しながら彼の話に耳を傾けていた。


酔いと共に眠気も廻ってきた。

だが今夜からはもうあの悪夢に悩まされることはないだろう。


もう一人じゃない。


家族以外にもこうして自分を受け入れてくれる「仲間」が出来たから。


もう強がったりしない。


そんな必要が無くなるくらいに俺は強くなる。



それはカイルのお節介のお陰か、はたまたラッセルのお陰かは知らない。


レックスは「家族」を失ってから初めて心の底から笑っていた。




本部敷地内・後宮にて。


ここは組織の中でも特に重要な人物や特別な階級の人間のための宮殿だった。

勿論、あの気紛れなトラブルメーカーもここに住んでいる。


「はあ〜行きたかったな歓迎会」


ソフィールは頬杖を突きながら不満を募らせていた。

彼女は「巫女」・・・詳細は本人と極一部の人間しか知らされていないが組織でも特に重要な人材。

そのためいつも護衛兼監視役の騎士がいて自由な時間が無い。

今日も試合終了とともに御付きの給仕に捕まり、レックスに話しかけることが出来なかった。


別に彼に用事があった訳ではない。

ただ…


「(何だか気になるんだよね)」


彼女自身何故ここまで彼に関わろうとしているのかわからないでいた。

感情を持て余すというのはこのことだろうか。


そもそも彼にあまり良い印象は無かった筈。

初対面で向かいに座った自分に、彼はいきなり斬りつけて来た。

あんな危ない人は今まで見たことが無かった。


「(でも仕方ないよね)」


自分は自由こそ欠けるが裕福な、満たされた生活を送って生きていた。

暇ならこっそり抜け出せばいいし、話し相手が欲しければラッセルや他の隊員達に会いに行けば良い。

だがレックスは違った。

「家族」以外の誰にも心を開かず、周りは敵だらけ。

孤児達に食べさせるために貴族の家に毎日盗みに入り、助けてくれる仲間など居なかった。

敵を殺し、潰し、奪わなければ生きられない世界。

レックスが居たのはそういう世界だ。


「(そんな状況では生きることに精一杯で、辛くて、強がって)」


次に会った時に彼は壊れていた。

大切な唯一の「家族」を殺され、助けられず、張り詰めていた精神が限界に達していた。

破壊衝動に駆られ、あのシリウスでさえ退けたレックス。

あの時の彼からは凄まじい狂気と底知れぬ悲しみが感じられた。


そして昨日のことを思い出す。


絶望に打ちひしがれ、声にならない声で泣いていたレックス。

ただ彼を支えたい。そう思って気がついたら彼を抱いていた。まるで母が子にそうするように彼の全てを抱き締め、共に温もりを感じていた。


「(………)」


思い起こすとかなり恥ずかしい。

「巫女」の自分は他の人と交流する機会が少ない。当然相手が異性となると尚更だ。

にも拘らずあんな大胆な行動をするとは…


「(御付きのメイドさんにバレたら一大事だよ…)」


いつの間にか本題を忘れていた。

何故、自分はレックスをこうも気に掛けているのか?


「(解からない…何で私は?)」


ソフィールが物思いに耽っていると


コンコン!


「ひゃあ!?」


窓を叩く音がした。


「だっ誰!?」


まさか敵勢力の手の者だろうか?

裏世界最大規模の力を有する断罪クロス十字ヴァニッシュを善く思わない連中は山と居る。

だが、今回の来訪者はその何れでもなかった。


「よっ!元気だったか?」

「レックス?」


無意識に声が弾む。

ソフィールは彼を部屋に入れようとするが


「あっ気にしないでくれ。少し話をするだけでスグに隊舎に戻るから」


流石に夜に異性の部屋に押し入るのは気が引ける。

そんなことしても双方に都合が悪い誤解を招くだけだ。

レックスは彼女の部屋の窓越しに話を始めた。


ソフィールは少し残念そうにすると話を切り出した。


「話って何?」

「さっきのお礼言いたくてさ」


レックスは少し気恥ずかしそうに頬を掻きながら話しかけた。


「さっきの試合で…その…応援してくれたろ?

 あの大人数の中からでもハッキリとお前だって分かった。

 凄く…心強かったよ」

「えへへ」


ただのお礼の言葉だけだというのにこうも嬉しいのは何故だろうか?


「そんなことまた次に会ってからでも良いのに」

「それこそ無理だ。お前いつ来るか分からんからな。

 頭パニくって言いたいこと忘れちまうだろ」

「あう」


痛いところを突かれた。


でも、やはり自然と胸が高ぶる。

何気ない彼の言葉がどうしてこうも自分を熱くさせてくれるのだろうか?


「どうしたソフィール?顔赤いぜ?」

「!」


小柄な背筋がビクッと震える。

彼女自身が感じた通りその顔は夜闇でもハッキリ解かる程に紅くなっていた。


「あっ!えと…その…ほら!

 どうしてレックスはいきなりあんな無茶をしたのかなぁって気になってさ!」


かろうじて誤魔化す。

それにそのことも本心から聞きたいと思っていた。


上の階級に配属できれば財産も権力も多く手に入る。

だが、危険も責任も増加するし、何よりレックスがそんなことのために無理して今日の試合に臨んだとは到底思えなかった。


レックスは少し気恥ずかしそうに頭を掻くと、視線を横にずらして口を開けた。



丁度二人の間を風が通り過ぎた。


流れてきた心地よい風にソフィールは目を細めた。


レックスは軽く微笑んだ。



「なぁソフィール…『風の音』を聴いたことがあるか?」



「えっ?」



風の音?一体何のことだろうか?

組織の所有する数多の書物の殆んど全てに目を通した彼女にもその言葉は初耳だった。


そんなことを考えているとレックスはまたも軽く微笑んだ。


「そう悩むな。知らなきゃいけない言葉でも無い」

「あっ笑いましたね!?私これでも頭は良い方で」


ムキになって反論するソフィールにレックスは少し悲しそうに話しかけた。


「やっぱり…まだ駄目か」

「何がですか?」


いきなり駄目だしされて少し不機嫌に頬を膨らませる彼女にレックスは応えた。


「お前は心から笑っていない」

「!」


唐突に自身の内面を見抜かれたことに戦慄を覚えながらレックスの話に耳を傾けるソフィール。


「お前は俺を救ってくれた。

 俺が逃げずに生きることを選べたのはお前のお陰だ。

 でも…」

「でも?」


「俺にはお前の笑顔が泣き顔に見えた」




レックスが悲しそうな顔をしているのは別にソフィールに対してではない。


一人の少女から心を奪った非常な現実に。


そして自身を救ってくれた恩人を助けられない自分に対して嘆いていた。


だから…


「俺はお前の本当の笑顔に会いたい。

 お前が笑いたいときに素直に笑えるように。

 その表情を曇らせる影を俺のこの手で消してみせる!」


「レックス…」


今まで以上に胸が熱くなる。

自然と瞳は潤い、頭の中が目の前の青年で満たされる。


嬉しかった。


自分をここまで理解し、勇気付けてくれた人間が居ただろうか?


「だから・・・シリウスに無理を承知で頼んだんだ」

「本当に・・・?」

「当たり前だ」

「絶対?」

「あ〜もうっ!」


レックスは頭を掻き毟ると天に向かって吼えるように言い切った。


「冗談でこんなこと言えるか!?

 本気マジ本気マジ大本気オオマジだよ!!!」


その顔は先程のソフィール以上に紅かった。


「レックス…」


目の前に居る彼の存在を確かめようとするように手を伸ばした瞬間


「曲者〜!!」

「侵入者だっ〜!生かして帰すな!土に還せ!!」


「ヤバっ!叫んじゃった!」


衛兵が近づいてきた。結構な数の足音がする。


「捕まったらシリウスに殺される!」


レックスの顔からは一気に血が引いていた。


冗談でなくシリウスなら殺りかねない。


「あっレックス!」


まだ伝えたい言葉があるのに!


もっともっと話したいのに!


そんな想いが表情から溢れそうだ。


悲しそうなソフィールに向かってレックスはただ一言だけ言った。





「風が吹いたらまた逢おう」





そう言ってそのまま闇夜に溶けるようにレックスは消えていった。


衛兵が直後に駆けつけたが侵入者の影も形も見当たらない。


「巫女様っ!ご無事でしたか………巫女様?」


衛兵が顔を顰めるのも無理は無い。


巫女の視線は衛兵を捕らえていない。


ただただ一点の虚空をその先に居る青年のことだけを見ていた。




ほんの小さな笑顔。でもそこには偽りなど無かった。





こうして物語は始まった。


                      







如何でしたでしょうか?

物語はここから始まります。

今までの三話分を第一章とし、物語全体の序章として書いています。


今回キーワードの「風」という言葉が出てきました。

「風の音」とは何なのか?

「信念」とは何なのか?

「運命」とは何なのか?


そして「答え」はどこに有るのか?


それがこの小説のテーマです。



これからもTHE・ANSWERをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ