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伸ばすその先に~天(かみ)か地(ひと)か

断罪クロス十字ヴァニッシュ本部・闘技場~


小隊ほどの人員ならば広々と展開出来るであろうフィールドに今、存在するはただ三人。

一人は大柄で立派な体躯を持ち、もう一人はやや細身ではあるが力強さと鋭利さを感じさせる、最後の一つは他の二つに比べてあまりにも小さく、脆弱にすら感じられた。

しかし彼ら三人が激突し合うには、このフィールドは若干手狭にすら感じられただろう。


最も大柄な影、聖騎士ロイヤルガードが一角・クリフが拳を振るう時、大地はいななき。

最も鋭利な影、セイバーが精鋭・フランツが細剣レイピアを閃かせる時、雷鳴が轟く。

最も小柄な影、戦斧アクスの中でもある種『異質』な存在・エレンは戦場を所狭しと駆け巡り隙有らば即、是に牙を突き立てんと剣を振るった。


真っ向からぶつかれば否が負うにもクリフの圧勝となる。

だが今、この三人の戦局に『一方的』な展開などあり得ない。


クリフが拳を振るう時、他の二人はその拳の届く空間の遥か先の場所に居る。

拳の直撃は無論、衝撃や礫なども回避出来得る『安全圏』へと全速力で跳んでいるのだ。


フランツが細剣レイピアを振るう時、他の二人は雷撃を防げる伝手を必ず講じている。

クリフは自身と一体となっている神~『貪食龍ウロボロス』にその雷を喰わせる。

エレンは腰のベルトやブーツの側面に括りつけられている投げナイフを上空に放り、自身は体勢を低くしつつも疾走をやめない。


エレンが戦場を駆け続ける限り、二人は決して攻撃、及びその予備動作となる手段を止めようとしない。

フランツは勿論、クリフでさえ一瞬たりとも警戒を緩めず、手を、足を、力の行使を止めようとしない。

一瞬でもそれを行った瞬間、その小さき影が引導を渡しに来ることを知っているからだ。


本来このような光景はあり得ない。

組織の戦闘員における階級の違いとは即ち『次元』の違いに直結する。


戦斧アクス隊員であるエレンは熟練した剣の腕と常人の思考を超えた身体能力を持つ。

しかしその上に値するセイバー隊員のフランツはエレン以上の身体能力と剣捌きに加え、強大な『魔力』を持ち合わせている。

そして全ての頂点に位置する最強の称号『聖騎士ロイヤルガード』クリフは更には『神』との契約を果たしているのだ。


釣り合う筈が無い。

一瞬たりともこのような状況は作れる筈が無い。弱者は強者を超えることなど出来ない。




最初はフランツとエレンもそう思っていたのだ。


この状況が生み出されたきっかけはささやかなものだった。

フランツとエレンが、クリフに頼み込んだだけだ。


『自分を鍛え上げて欲しい』と。


クリフはそれを受け、一つだけ問うた。


『どこまで鍛え上げれば納得する』と。


二人は応えた。


『神に通ずるまで』と。



余りにも無謀な発言だった。

セイバーであるフランツだけならまだしも戦斧アクスであるエレンまでもが神に対抗したいと言い出したのだ。

しかもフランツに至っては『神と契約する気はない』とまで宣言した。


クリフは言った。


『叶わぬ夢と諦めろ。それだけがお前達を守る唯一の術だ』と


しかし二人はそれぞれの想いを真っ向からぶつけた。


エレンは言った。

『それでは自分の守りたい者を守れない』と。


フランツも言った。

『それでは自分は永遠に戦友の隣に並び立てない』と。


本部襲撃の際に二人は見て、感じていた。


己が無力…ただ茫然と消えていく命を見つめた。

己が敗北…失った者の名を、奪った者への呪詛を叫んだ。


己が罪……自分達は弱かった。


それを直視し、認識した瞬間からフランツとエレンには『諦める』などといった言葉は消えていた。



そしてクリフは…その想いを無下に出来るような男ではなかった。


クリフは自身の神の能力を二人に告げた。

フランツはジガードの口からそれを知っていたため動揺はなかったが、エレンは大いに動揺した。

それでは話にならないと。

棒切れを持った子供と真剣を持った剣士が切り合う様なものだ。

お互いが同じ舞台に立たなければ『勝負』など付けようものが無い。比べるまでも無い。それほどまでに『神』という存在は大きかった。


だがクリフは自身の能力の『欠点』まで二人に告げた。

これは同じ聖騎士ロイヤルガードであるシリウスとセシリアにも許していない最重要機密だ。


しかし二人の覚悟に痛感したクリフは敢えてその言葉を口にした。

絶対無敵、完全無欠に見える自身の『神』~その綻びを。


貪食龍ウロボロスの能力は言わば食事だ。

 目の前に出されたものだけでなく、運ぼうとしている皿にすら喰い付かんばかりの気狂いまがいの食事だ。

 だが、人は食事を行う時、『自らが認識出来ない料理は食すことが出来ない』……!』



そう、認識外の攻撃~つまり完全なる『奇襲』だけは貪食龍ウロボロスでも防げない。

数々の戦場、数々の闘い、星の数ほどの攻撃を受けて来たクリフだが……一度たりとも敵の攻撃に『反応』出来なかったことは無い…!


この世界に存在する毒素から作られた毒ならば、どれ程濃かろうが鱈腹呑み下そうが認識した瞬間まったくの無意味となる。

だが、認識していても『喰らう』ことが出来ないものがある。この世界とは異なる住人の毒素だ。エキドナの呼びだした九頭龍ヒュドラの毒がまさにそれだった。




時には矢の雨が、有る時は炎の濁流が、またある時は数十を超す槍がその身に襲い掛かった。

だがクリフには分かっていたのだ。

自分に向けて何本の矢がどのタイミングで突き立てられるのか。

押し寄せる炎がどれ程の熱を持ち、それを受けた場合の自分の肉体がどうなるのか。

どれ程の力を込められて繰り出された槍が自分に届こうとしているのかを…!


実践に裏付けられた実力と経験、どこまでも高め上げられた感覚器による戦場の『把握能力』。

これこそが貪食龍ウロボロスを最強無敵の『神』として確立させた『クリフの力』。


故にクリフが特訓前に二人に告げたのはこうだ。


貪食龍ウロボロスは防御面においてならば比肩する存在の無い最強の神。

だが、クリフに『傷を負わせられる』ならば、相手が神だろうと攻撃が『届く』…!


フランツは前回の戦闘で一度、アーサーに傷を負わせてはいた。

だがそれはあくまで『神としての力を発揮していなかった』アーサーに一太刀浴びせたに過ぎず、その後本気になったアーサーによってあえなく破れている。


ならばもし自身の技を、剣を、速度を…『神』にさえ当てることが出来ればどうなる?

ずっと打開出来なかった、それどころか蹂躙されるのみだった自分達が、『神を殺せる術を得た』ことに等しい。


故に二人は特訓に励んだ。

自身の肉体を、精神を、これまで以上に痛めつけ、酷使し、疲労と苦痛で泡を吹くことがあろうとも希望は失わなかった。


そして二人は手に入れたのだ。『神と闘う権利』を。

無論、まだ完成してなどいない。フランツとエレンがクリフと『渡り合える』のは今の段階では三分が限界だ。

だがこの『三分間』はその辺の時間と比べられるものではない。 

これは『人と神が戦える時間』だ。以前は零だった『可能性』そのものだ。

しかもこれはフランツ&エレン対クリフでは無い。完全なる実戦形式の訓練。


時には共闘してクリフを狙う。

また有る時は共闘するポーズを取ってその背後から襲い掛かる。

綺麗事などでは無く『力』と『技』と『意思』の闘いなのだ。


敵が一人とは限らない。

味方が敵に回る可能性を拭えない。

何もかもが目まぐるしく変更し、絡み合う、それが戦場。


今、彼ら三人が行っているのは実戦と何ら変わることの無い。

つまりいつその『時』が来ても躊躇い無く動けるということだ…!


やがてその拮抗は崩れ、結果としてはクリフの一人勝ちとなる。

だがそれもいつまで続くことか?


フランツの細剣レイピアはクリフの髪を…数本『斬りおとして』いた。

雷撃は全て吸収されたが、その一瞬を見計らって放たれた一閃は僅かながらもクリフの予想を『超えて』いた。


エレンの騎士剣の切ッ先にはクリフの上着の一部が『こびり付いて』いた。

フランツを迎撃し、自身の予想を微かに上回られたという一瞬の『思巡』に漬けこんだエレンの一撃はクリフの感覚を『掻い潜って』いた。



今はまだ小さな灯に過ぎない。

だが消えることが無ければその火はやがて大きな強い光を持って周囲を導く『篝火』となる。


フランツとエレンを見つめるクリフの目は不出来な子の成長を喜ぶような気持ちと、両者を別つ境界を越えつつある若者に寂しさを訴えるかのような感情が入り混じった…そんな光を灯していた。








体の感覚はある。

剣を握っているのも解かる。

だが、何故こんな場所に居るのか解からない。



うっすらと開かれた視線の先に拡がるは無明の闇。

最早どれ程の間、この空間に身を置き続けたことか?


解からない。

もう思考が枯れているのではないだろうか?

もう俺は正気を失ってしまったのではないだろうか?




体の感覚はある。

剣を握っているのも解かる。

だが、何故こんな場所に居るのか解からない。



体中が悲鳴を上げている。

養分が足りないとはらわたよじられ、潤いが足りぬと喉が焼け、血の臭いから逃げようと鼻がもげそうだ。

このままだとどうなるか?


簡単だ…死ぬ。ただそれだけ。



体の感覚はある。

剣を握っているのも解かる。






だが…何故この腕が剣を握る力を緩めないのかが解からない。



満身創痍だ。

最早、この肉体には必要最低限の養分も気力も残されていない。

なのに、この腕は剣を放そうとしない。


何故だ?

剣を握っている俺はただ一振ひとりのセイバーでしかない。

それも綺麗な剣なんかじゃない。

亀裂の入った…ボロボロの『ナマクラ』でしかない。


俺は負けたんだ。

為す術も無く、戦友を守ることも出来ずにただ目の前でその命を奪われる様を見せつけられた。


カイル…得難えがたき友よ。誰よりも直向ひたむきに強さを求めた戦友よ…!

お前は俺を嘲笑わらうか?失望するか?

応えなど無い。帰ってくる筈が無い。

カイルは死んだ。


もう二度とカイルは笑わない。

もう二度とカイルは語りかけてなどくれない…!


レベッカのように…もう二度と届かない場所へと逝ってしまった。



何故だ?

何故俺の大切なものは…俺の求める者は…俺の幸福は何故こうも失われてしまうのだ!?


レベッカも!カイルも!!!何故居なくなってしまったんだ!!!?


俺に笑いかけてくれた少女は!俺を必要としてくれた少女は死んだ!!!

砕かれ!汚され!!俺に壊された!!!!


俺を支えてくれた友は!俺に此処に居ていいと言ってくれた友は死んだ!!!

あっという間に!瞬く間に!!彼の命の光は消えた!!!!


何だ…この想いは何だ!?

胸を焼き、脳髄を震わせ!朽ちかける腕に力を与えるこの慟哭は何だ!!!?


その時、一人の男の顔が浮かんだ。

冷たく光る銀髪と、対照的に強く光る金色の瞳、その手に握るは聖剣カリバーン…カイルの胸を貫いた剣…!


覚えている…。

覚えているぞ……!


そうだ。奴だ…奴が全ての元凶だ…!


体の感覚はある。


剣を握っているのも解かる。


必要なのは敵だけだ…この牙を!この想いを!!憎しみを喰らわせる相手だけだ!!!!




力強く双眸を見開く。


無明の闇も最早、見慣れた。


その中を蠢く影など最早、見飽きた。



そうだとも…俺は望んで此処に来た!


『洗礼の間』。神との契約の資格の有無を裁く無情の闇の中へ!!!


重い足音と供に何体もの『敵』が近づいてくるのが解かる。

だが、恐れなど無い。

こいつらは磨石とぎいしであり、鎚であり、火だ。

俺というしがないナマクラを生き返らせる為の『道具』だ!!!


四肢に力が漲ってくる。

まだまだ斬れる!まだまだ砕ける!!まだまだ壊せる!!!


俺はセイバーだ!一振りの凶器だ!!

引き裂き、喰い千切り、蹂躙するものだ!!!


もうこの空間の細部に至るまでを知っている。

奴らがどれほど硬く、どれほど大勢居るのかももう把握している。


障害なんて無い!此処にある全ては俺を縛ることが出来ない!!


大剣を取り巻く風が一瞬縮み、刹那にその規模を数倍に膨れ上がらせた。

現象を視認することが出来ずとも、最早この身は剣其の物。


触れ得る全てを…斬り!滅ぼす!!!


「消し飛べぇええええええええ!!!!」


剛剣一閃。

それに伴って生み出された衝撃波は嵐となって敵に襲い掛かる。

一瞬で周囲に居た全ての敵が呑みこまれ、ひしゃげ、千切れ飛ぶ。


無明の闇は…今度こそ静寂に包まれた。






断罪クロス十字ヴァニッシュ本部・洗礼の間~扉前


余りにも巨大、かつ異質な扉の前に、一人の少女が佇んでいた。

名はニーナ。戦斧アクス隊員の中でも最も魔術に精通し、強大な炎を駆って敵を屠る実力者にしてレックスの最も身近な仲間の一人だ。

彼女はレックスが洗礼の間に入ってから毎日、何時間にも渡ってここに来ていた。

無論中に入ることなど出来ず、声が聞こえる訳でも無い。


ただ、誰よりもレックスの傍に居たいと思っての行動だ。


『洗礼の間』―――――神々へ至る道、その第一の関門。

一切の光の差し込まない広大な空間。中は迷路のように入り組んでおり一度入ったら最後、出口まで自力で辿り着かなくては出られない。

それだけでも人の精神に多大な影響を与えるが、試練はこれだけでは無い。


呪石ガーゴイル』―――――それこそがこの試練最大の関門にして強敵の名だ。

聖戦の際に失われた『禁呪』の一つ、指定空間を徘徊し、侵入者を屠ることのみに徹する魔道生命体がその正体だ。

ジガードの力によって無数に生み出され、以後この領域に足を踏み入れた者に無情に襲い掛かってきた。

何よりも恐ろしいのはその『増殖力』だ。

『オリジナル』の呪石ガーゴイルは翼の生えた禍禍しい悪魔の様な外見をしている。

だが、この領域に居る呪石ガーゴイルの中には人の形をしている者も多々ある。

これは敗北者達の成れの果て。

番人に殺された者は皆、全身を石にされ魂の抜け殻となり、自分の命を奪ったモノ同様、挑戦者に牙を剥く様になるのだ。


複雑に入り組んだ迷路と、命令の赴くままに敵を殺さんと蠢く番人達。

神を目指した精鋭たちの無念と血を吸って存在し続ける、第一関門にしては余りにも高すぎる『壁』。


最悪の事態を想像してニーナは一人震える。

レックスは本部襲撃の直後、ジガードと謁見し、すぐにこの洗礼の間に入ったと言う。もう一月半は経った。

これは余りにも予想外だった。

あの激しい戦闘の後、傷も癒えない内にこの過酷な領域に足を踏み入れてしまうなど自殺行為だ。

中には水も無い。食料となる物も無い。呪石ガーゴイルは石その物、煮ても焼いても食えはしない。

とっくに衰弱死していて当然…そもそも人は養分の補給無しでは一週間も持たない。


そんな状態で無数の呪石ガーゴイル達を相手に闘い、脱出するなど最早正気の沙汰では……



ガゴ……!


重い…あまりにも重すぎる音を響かせながら眼前の扉が――洗礼の間の出口がゆっくりと開かれていく。

もう何年も開くことの無かった扉が…中から押し開けられていく…!


「レックス…!?」


ニーナの問いに応えるように、彼は姿を現した。


任務でいつも愛用していた軽鎧も篭手も全体がボロボロ。

髪も血でごわごわに固まり、肌も黒ずんでいる。

満身創痍の外観の中、それでも瞳と、凶暴性を隠そうともしない大剣だけが強い光を放っていた。


「は…っは……はぁ…!」


ぷるぷると全身を震わせながらも、確かに彼は生きていた。


「レックス…!」

「……レックス……!」


彼に駆け寄ろうとしたニーナの耳に、か細くも確かに届いた『もう一人』の声。

レックスからは見えないだろう位置、ニーナの近くの柱の陰から彼を見つめる存在。


ニーナ同様レックスに想いを寄せている少女。

ニーナが忠誠を誓った唯一人の主。

『巫女』と崇められ、守られる唯一無二の存在―――――ソフィールだった。


以前の…ほんの一月半まで前のニーナだったらば、我が身より先に彼女を優先させただろう。

ソフィールもレックスが洗礼の間に入ってからずっと、それ以前もずっと彼の身を案じていた。

その気持ちは痛いほどわかる。


視界から消えても、瞼の裏から、思考の裏からレックスの姿が消えない。

誰よりも傍に居たくて、誰よりも彼に見てもらいたくて、誰よりも彼に愛されたい。

心も体も…レックスを強く求めている。


分かっている…誰よりもソフィールを知っているニーナはその気持ちを解かっている。



解かるからこそ…そうはさせない。


心の奥底で、ニーナは笑った。嘲笑った。


『解かっていますよ…貴女は今、レックスの胸に飛び込みたくて仕方が無い。

 例えその手が鮮血に汚れていようと、レックスが貴女を穢すことを拒むことを知っていようと、貴女は彼を抱き締めるでしょう。

 でもそうはさせない。

 臆病な貴女にそんな資格は無い…!彼に触れる権利なんて無い…!

 レックスは…誰にも渡さない!』



ニーナもソフィール同様、レックスに飛び込みたいと願っている。

でもニーナはそうしない。


『自分勝手な巫女とは違う…私は彼の望みを叶える手伝いをする!

 決して自分の想いを、願いを押し付けたりなんてしない…!私は貴女ソフィールとは違う!』


ソフィールとレックスの間に滑り込むように、ニーナはレックスに駆け寄る。

そして感情の波を必死に押し留めて、レックスに…あくまで静かに話しかけた。



「第一関門突破…流石ねレックス」



レックスは静かに顔を上げ、そして見惚れた。

闇から解放されて初めて見たのは、美しい微笑を浮かべた一人の少女だった。

もう随分と…何年もその顔を見ていなかったかのような感覚。

そして同時に込み上げる想い。疲れ果て、渇き切った心に染み込むかのような心地よさ。


「ありがとな…ニーナ」


レックスの声に、思わず素直な笑みを浮かべるニーナ。

その幸せそうな表情にふっと癒され、同時に若干の思考の余裕を取り戻す。


「それにしても何故ここが解かったんだ?

 神との契約への試練は極一部の人間を除いて誰にも伝えられていないと聞いたんだが…?」


契約に挑む際にジガードの口から直接伝えられた情報の中にそんな言葉があった。

神の存在を知っていることすらあり得ない戦斧アクス隊員のニーナが何故、自分がこの場所に辿り着くと知っていたのだろうか?


「簡単よ。私もその『極一部』の人間だからよ。

 私の家系は聖戦の以前から続いていてね、総帥にとっての忠実な家臣ってところなの。

 だから私も、そして姉さんも組織の構成員としてだけでなく、特別な役割も受けているのよ」


「姉さん?お前に姉が居たなんて初めて聞いたぞ?」


レックスの問いに、ニーナは軽く微笑みを交えて応えた。


「貴方も会ったでしょう…聖騎士ロイヤルガードが一角・炎帝セシリア。

 彼女が私の実の姉なのよ」

「何?特別って…そういうことだったのか…」


そう、ニーナとセシリアの家は組織に、引いてはジガードに仕える特別な家系だ。

その中でも特に能力の優れていたセリシアは神と契約し、ソフィールを守る最強の盾・聖騎士ロイヤルガードとなり、次に能力の優れていたニーナは姉を補佐する形でソフィールに仕えていたのだ(親衛隊云々もあながち間違いでは無かった)。

それ故に戦斧アクス隊員でありながらもニーナは『神』についての情報及び聖戦についての知識、見聞があったと言う訳だ。


「もう少しゆっくり貴方と話していたいけど、まだ試練は二つ残っているわ。

 次の試練の間に案内を…する前に一回休息を取りなさい?」

「何を言っている…試練はまだ…」


先を急ごうとするレックスの顔の前にニーナの手が制止を訴える。


「一か月以上暗闇の中で闘い続けていたのよ?

 食事はおろか睡眠も取れず体はボロボロ、そんな状態で攻略できるほど試練は甘くないわ!

 監視員の権限を持ってして、一日の休息を命じさせてもらうわ!!!」

「う…」


久々に会った少女の変貌に若干の驚きを感じていた。

レックスの記憶の中の彼女は内面はともかく、外聞はそっけなかったり突っ掛かったりしてきた筈だった。

だが今、レックスに話しかけるニーナはとても優しく、気遣う様に接してきてくれている。


慣れない反応に若干戸惑いながらも、彼女の申し出を受ける。


「分かった…そうさせてもらうよ」


闘いの余韻はまだ、レックスの全身に漲っている。

先程の戦闘でレックスは確かに、今までに無い『何か』を感じていた。

極限状況下においての激戦―――まるで体の奥底に眠っていた力が目覚めるかのような感覚だった。

このまま勢いに乗って突き進みたい、という考えは勿論有る。

だがレックスの体は確実に限界に近い。

ジガードの命令はあくまで『神との契約』。その準備段階でつぶれることなど望まれてなどいない筈だ。


「まずはお風呂場で汚れを落としてきなさい?

 その後で貴方の部屋に食事を持って行って上げるから、今日はゆっくり休むこと!いいわね?」

「分かったと言っただろう……ありがとう」

「ほら早くしなさい?こっちに個別の小さなお風呂場が在るから…」


歩き出すレックスの前を、ニーナが先導する。

一瞬視界の端に淡い薄紫色の何かが見えた様な気がしたが…今のレックスにはそれが何を意味するのかを考える余力は無かった。





「……レックス……ニーナ……」



淡い薄紫色の髪を持つ、自分が誰よりも守りたいと思った少女に気付かない程に――――

自分達を見つめるその瞳が、孤独と不安の色に染まっていたことに気付かない程に―――――――――



レックスは、以前の自分と今の自分がどれ程掛け離れているのか気付かなかった。















同時刻―――――ジガードの私室にて


「レックスはようやく『洗礼の間』を終え、今は一時休止のため浴場へと足を運んでいるところです。

 ここまでのペースは今までの挑戦者の中でも上位ですが…」

「どうかしたのかい?」


ジガードはシリウスの中間報告に耳を傾けていた。

内容は当然レックスの契約準備の過程。『神』の契約者が一人増えるか否か、それだけで戦局を一変させかねない。

組織に与える影響力も甚大なため、常に数人の監視者を配備して随時状況を報告させていると言う訳だ。


シリウスも監視者の責任感としてこの任に就いているのだが、先程部下から渡された報告書に『一行』驚くべきことが書いてあったために言葉を曇らせてしまったのだ。


「あくまで報告書での情報によりますが…。

 レックスは洗礼の間に配備されていた『呪石ガーゴイル』、原種オリジナル173体、増殖種レプリカ38体の総勢211体を『全て』撃破した…とのことです」

「全て…だと…?」


驚くのも無理は無い。

呪石ガーゴイルは決して弱くない。

単体でも現・セイバーランクの戦士達に迫る力を持っている上に、感情も迷いも無い。

挑戦者の視界を奪う闇も関係無しに敵を補足し、突然の襲撃にも決して怯むことも無い。おまけに砲弾の直撃を受けても持ち堪えるほど頑丈だ。

欠点は魔術が一切使えないと言うこと、巡回ルートが決められていること、魔術に対しての抵抗が若干低いということの三点のみだ。

数が少ないならば集中して魔術で各個粉砕という手法も取れるが、200を超える軍団相手ならばまず魔力は持たない筈だ。


レックスの力、風を自在に操る能力ならば確かに迷宮の全体像を把握し、敵の位置も数も把握できるだろう。

だが、他の人間が彼と同じ能力を使ったならば、まず間違いなく『戦闘を極力避けた上で最短での脱出を図る』筈だ。

しかし報告書によれば、レックスが行った行為は真逆の暴挙。これではまるで…否、自殺行為そのものだ。



「いささか信じ難いこと故これから私自らが赴き、真偽の確認をと思うのですが…」

「その必要は無い…」


シリウスの言葉を制し、ジガードはゆっくりと目を瞑り、精神を研ぎ澄ませる。

呪石ガーゴイルは彼が生み出した『使い魔』とも呼べる存在だ。

魔力の供給及び、使役しているという感覚は消えることは無い…正常に機能している限りは。

つまり目で見ずともジガードには呪石ガーゴイルの状態が把握できるのだ。


ジガードは数秒の後に目を開け、シリウスに応えた。


「なるほど…確かに全て破壊されているようだ」


その言葉にシリウスは目を見開いたが…すぐに落ち着きを取り戻して応えた。


「以前の奴ならばあり得ないことですが…どうやら試練の中で劇的な変化を来したのやも知れませんね。

 この分ならば契約成立の確率も良好かと思われます。

 監視の目は一層の強化を、私はこれから数名の部下を率いて奴らの本拠地を探って参ります」


「いつもの様に抜かり無く頼んだよ。シリウス…全てはこの世界の秩序のため…」

「お任せください我が主よ…」



シリウスはジガードに膝を就いて一礼すると、主に背を向けること無く退室していった。

彼の今の任務は敵勢力『鮮血ブラッド騎士団マリアン』の拠点を探しだすこと。

敵はこちらの拠点を知っているが、こちらは敵の本拠地を知っている訳ではない。

現状ではいつ、また前回の様に奇襲を受けるか解からない。

警備は増強しているが連日連夜の警備に音を上げる者の数も見過ごせない。

一刻も早く敵の拠点を見つけ出し、こちらから討って出なくてはならないのだ。


シリウスを見送った後、ジガードは自身の右手をそっと宙に向けて掲げた。

その指先に一匹の蝙蝠が降り立ち、小さく鳴いた。数あるジガードの使い魔、そのうちの一匹だ。


「さて…今のうちに下準備を施しておこうか…」






レックスは浴場で体中の汚れを洗い落とした後、ゆっくりと湯船に浸かった。

個人向けに設定された浴槽とは言え、両足を伸ばすだけの余裕がある。疲れ果てた体には嬉しい限りだ。


「一か月以上もあんな場所に居て…よく五体満足でいられたものだな」


呟きながら自身の腕を見つめる。

この手がずっと大剣を握り続けていたなんて我ながら信じられないな…と苦笑しながらレックスは浴槽から立ちあがった。

もう充分体は温まった。汚れも悪臭も無い。

そろそろ上がってもニーナには叱られたりしないだろうと判断して体を拭き、服を着込む。

破損した鎧などの防具は交換するから良いとしても、大剣と宝珠オーブ付きの手甲ガントレットはレックスだけの特注装備だ。

これだけは替えが効かないため後で整備をしなくてはならない。


「久々の食事か…どれ」


手甲ガントレットは革袋に入れて腰に下げ、大剣を肩に担ぎながらレックスは自室へと向かった。

その足取りは…とても一ヵ月半もの間何も口にしなかった人間のものとは思えないほど生命力に満ちていた。




自室に戻ると既にニーナが食事の用意を済ませていてくれた。


「ようやく人間らしい姿に戻ったわね」

「好きで汚れた訳じゃない…」

「食事の支度しといてあげたんだから怒らないの」


美味そうな匂いの湧き立つ数々の料理やスープ、色彩鮮やかな果実に山積みのパン…全てレックスの好物ばかりだ。

広いテーブルの上に所狭しと並ぶ料理の前に鎮座しているのは二人分の椅子と食器類だけ。

傍から見れば余りに不釣り合いな人数だがレックスは一人で十人分以上は軽く食べるので丁度いい。


「何から何まで済まないな…ありがとう」

「気にしないで?これくらい何てことないから…」


二人は隣り合わせに座り、静かに食事を開始した。

レックスは早速、好物の骨付き肉に手を伸ばす。香辛料を利かせた熱々の焼き肉はレックスの大好物だ。

久々の御馳走に豪快にかぶり付き、そして…


「?」


レックスは黙って骨付き肉を一本食べ、手を止めてしまった。

以前ならばそのまま残る肉を全て平らげ、次の料理へと移行したであろうレックスがだ。


「どうしたの?具合でも悪いの?」

「いや…何でもない。疲れ過ぎたせいか食欲がな…」


レックスは内心戸惑っていた。

料理は記憶している限りではいつも通りの味付けだった。確かに美味かった。


だがどこか…『違和感』を感じてしまった。



「せっかく用意してくれたのに…ごめんな。

 今日はもう寝るよ、お休み…」

「ううん…片付けとくね?お休みなさい」


不安げに自分を見つめるニーナの視線から逃げるようにレックスはベッドに倒れ込んだ。

先程の感覚を忘れようとするかのように…


まるで『自分の食事では無い』と言わんばかりの拒絶感を……



翌朝―――――――――――――


朝食もロクに喉を通らなかったが、ニーナの制止を振り払ってレックスは試練へと望むことを決めた。

既に新しい鎧と防具で身を固め、装備は万端だ。

レックスとニーナの二人は本部の周りを囲っている城壁の一角に、強いて言うならそこに造られていた小さな出入り口の前に来ていた。

そこは地下へと続くかのような下り階段が見えるだけ。

だが、その先に何があるのやも知れないと警戒させるには十分すぎる威圧感があった。

見張り兵の一人も居ないのは、誰もここに入って行こうとしないからだろう。


「ここが第二関門『深層の間』の入り口よ」

「深層ねえ……地下深くだからって訳じゃないんだろうな」


軽口を叩きながらも、レックスは背負っていた大剣に手を添える。

神への試練がどれほど過酷かはもう、身をもって知っている。

階段に一歩足をかけた瞬間罠にかかって瞬殺…というのも有り得るのだ。


「出来るだけ、さくっと行きたいところだが…無理だろうな」


そう言いながらレックスが一歩、歩き出そうとした時ニーナは言った。


「この試練は…すぐ終わるわ」

「何…?」


ニーナの言葉の意味が解からない。

第一関門であれだけ時間がかかってしまったと言うのに、更に険しい筈の第二関門がすぐ終わるなど…。


「洗礼の間は闘い方次第では幾らでも時間が稼げるし、引き延ばすことも出来たの。

 あの広大な迷宮は一度把握してしまえば、そのまま広大な逃走経路にもなるから当然ね。

 短期決戦に挑むもよし、自身の安全を確保させつつ可能な限り長期戦に挑むもよし…まあ後者の場合よっぽど念入りに準備しておかないと飢え死にするだけだけどね。

 でもこの『深層の間』には逃げ道なんてものは最初から無いの。あるのは唯一つ…」


一度言葉を区切り、彼女はゆっくりと息を吐き、こう告げた。


「襲い掛かる存在に勝てるか、否か…それだけよ」



余りにも簡潔な応えに、レックスは一瞬呆気にとられたかのような顔をし、その後不敵に微笑んだ。


「上等だ…!」


そして堂々と階段に足をかけ、躊躇することなく地下へと降りて行った。

元より短期決戦を望んでいたこの身には小細工や回りくどい手段などは煩わしいだけ、単純で、それでいて決して覆らない『強さ』の証明こそを望んでいたのだから。



振り返ること無く進んでいくレックスの背中をニーナは静かに見つめ続けていた。










「……ほんとに地下深くだから『深層』なのか?一体何処まで降りればいいんだよ?」


もう体感で10分ほどは階段を降り続けている。

所々に油灯ランプが灯されているおかげで踏み外したりすることは無いが、いささかこの状況は精神に堪える。


いい加減、風を使って内部構造の把握に移ろうかと思った途端、視界がこれまでと違う光景を捕らえた。

何の装飾も施されていない平凡な木製の扉だ。


「…ようやく本番だな!」


残りの階段を超え、扉をゆっくりと開ける。

扉を開けた瞬間に何かが飛び込んで来る可能性も考慮して風の防護膜も展開させてある。




扉を開けた先、そこは本部の闘技場よりやや狭い―――それでも十分な広さのある部屋になっていた。

天井には何やら絵の様なものが描かれており、幾層の広がりを見せている。

俗に言うドームになっているのかと思考を巡らせていると、部屋の中心に何かが置かれているのを見つけた。


それは立派な鏡だった。

高さはレックスの身長を優に超し、彼の体を全体移すことが可能な大型のものだった。


「こんな所に…鏡?」


怪訝に思いながら大剣を構え、鏡の前に立った。

そこに映るのはやはり―――同じく大剣を構えたレックス自身の姿だ。


他に誰の目も無い静かな闘技場で、鏡に映る自分と睨めっこ…何とも酔狂な状況だ。


「いい加減にしろ…とっとと試練を始めやがれ!!!」


そう言ってレックスは大剣を鏡に叩きつけようとして――――――




ガキイィィイン――――――!



鏡に映るレックスの握っている剣が―――――折れていた。


「!!!?」


レックスはまだ鏡に大剣を叩きつけてなどいない。

慌てて自分の剣を見ると――――そこには変わらず鈍く光る自身の大剣があった。


「え…?だって…鏡は…!?」


レックスは気付いた。

鏡に映る自分が握っていたのは獣の牙の如く湾曲した大剣などでは無く、ただの―――そこらの騎士侯などが良く使うかのような若干細身の剣だ。

それだけじゃない。


鏡に映る自分は―――――来ている服も全体の印象も、今の自分とは似て非なるものだ。

まるで昔…組織に入る前に町で暮らしていた自分の様な…


ドクン…!


思考を横切る最悪の可能性。


鏡の中で――――怯え切って、全身を震えさせても尚、上着に手を伸ばす自分の姿が――――――――


急速に近づいて行く鏡の『視点』が―――――あの時自分に、『自分達』に襲い掛かった何かの視点に見えてしまう。


鏡の中のレックスは、上着から引き抜いた投げナイフを襲い掛かる『何か』に向けて投げ、そして―――――







ズパッ…!!!



一瞬で四肢を深く斬り付けられて、鮮血を流しながら倒れた。

そしてレックスは見てしまった。


怯え切った子供たちを抱きしめ、必死に守ろうとしている最愛の女性の顔を…!



「止めろぉおおおおおおおおおお!!!!!!」


レックスは今度こそ大剣を鏡に叩きつけ、砕いた。

破片が飛び散って、自身を霞めようと関係無かった。


「こんな…!こんなものをよくもぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


何度も何度も、原形が完全に無くなるまで砕き続けた。

やはり思った通りだった。


あの鏡が映していたのは…『あの日』あの場所で自分達に襲い掛かった『悪魔』の視点だ。

レックスに瀕死の重傷を負わせ、子供達を喰い殺し、そして…!


「誰だ…!誰がこれを俺に見せたあああああああああ!!!!!!」


大剣を振りかざし、大気を震わせんと叫ぶレックスに―――――応える存在が一つ。


(スタ…スタ…)


軽く…それでいて背筋が凍るほどに耳障りな足音。


(した…した……)


地面を舐める…黒くて長い尻尾。


(ハァアアアアアア…!)


血生臭い、余りにも不快な息遣い。





居場所を見つけても尚、仲間を得ても尚、時折レックスは悪夢を見た。

だから見覚えがある…なんてレベルじゃない。

最早、精神傷トラウマになるまでにレックスの『深層心理』に刻み込まれた化物の姿。


それが、再び肉を伴ってレックスの前に現れた。





ジガードは一人、思索に耽っていた。

考えるのは勿論、現在の戦局についてだ。



まず思い浮かべるは自身の最強の三枚の切りカード聖騎士ロイヤルガードの現状。

シリウスは現在単身で敵の拠点を探っているが他の聖騎士ロイヤルガードの二人もそれぞれの役割を担っている。

セシリアは以前と同様、ソフィールの警護に勤める傍らに破損した施設全体の再建の指示を。

特に後宮付近は全壊に等しく、敵の襲撃が如何に苛烈を極めたかを物語っている。再建を急ぐセシリアの手腕に期待が掛かっている。

クリフは部隊の再編制と特訓。だがこちらの問題も厄介だ。


療棟に送られた隊員たちは続々と復帰してきてはいるが、連日の警備に人手を食われているため、以前と比べて訓練に割ける時間と人員が減っているのだ。

中にはクリフ直々に叩き上げられて、腕を磨いている隊員が数名居るようだが只の戦士では『大局』を揺るがすことは出来ない。

今のところセイバー隊員の中で契約に挑んでいるのはレックスだけだ。


「現段階ではこちらが劣勢。だが…」


それでもジガードは薄く微笑んだ。

組織全体で言えば、浮足立っているこちらが不利だろう。

だがこちらの手札には『大局』を一気に手中に収められる最強クラスの『神』との契約者が三人。

三鬼将と聖騎士ロイヤルガード。双方を正面からぶつければ勝つのは九割九分九厘、こちらだ。


そして今契約に望んでいるレックスは……『必ず』神との契約を果たす。

中間報告の段階で解かった。

レックスは今…確実に『変化』を起こしている。

レックス自身も、シリウス以下監視者も、レックスに親しい仲間ですらその変化に気付く者は居ないだろう。


知っているのは…他ならぬ自分だけ。

『そう在るべくして組み上げた』自分だけだ。


後はいつ、アーサーに己が不利を認識させ、焦らせるかだ。

そうなれば彼は間違い無く、自身の絶対の切り札を…『疫病神ジョーカー』を切るだろう。


己が勝利を…絶対の勝利を信じて………



「そう…私は物語を紡ぎ、語り継ぐ者。

 全ての悲劇も、全ての喜劇も……その辿り着く先でさえ、私の掌の上だ」




そう、全ては…未来永劫に続くこの世界の『秩序』の為―――――――――――――――



それ以外など――――――何の意味も無い。










中々投稿速度が上がらないのは最早定石なのでしょうか?^^;

何とか解消したいものです。

これからも頑張って投稿していきますので打ち切りは無いと断言します!


どうかご愛読よろしくお願いします。

感想等いつでもお待ちしております。

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