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とある神無世界の物語  作者: 詩蓮
1/1

そのいち

僕は夢を見る。

机を挟んだ向こうに「彼女」がいる。

その机には焼きたての食パンや、サラダなどが置いてあったが、手を付けようとは思わなかった。

そして、「彼女」は決まってこういった。


『私はだあれ?』

それは僕が聞きたいのに。

でも、夢の中の僕は「彼女」が誰か知っていた。


「あなたは・・・・。」


いつもここで目が覚める。

「彼女」が誰なのか分からない毎日。

でも、怖い夢じゃないから同じ夢を何度も見るのは苦じゃない。

もう、「彼女」が誰なのか考えることはとっくの昔にやめてしまったのだけれど。

僕が上半身を起こすと、足を挟んで両端に黒犬と白猫が鳴いていた。


「ん、おはよう。ロンア、アルス」

この子たちは僕のおばあちゃんが飼っていた二匹。

おばあちゃんは随分前に居なくなってしまった。

左耳の後ろに青くて大きいミズアオイの花を付けた白猫、ロンア。

首から鍵穴の付いた錠をかけた黒犬、アルス。

その二匹の頭を撫でると、アルスはワンワンと元気に吠え、尻尾をふり、ロンアはなで終わってからにゃあと小さく鳴いた。

そしてベットから起きあがると、朝の支度を始めた。

髪を解き、歯を磨き、朝ご飯を食べ、食器を洗い、洗濯物を干し、靴を履く。

外へでると、羊や牛が牧草を食べていた。

その子たちを通り過ぎた所に小さな菜園がある。

燦々と照らす太陽に負けじと青々とした葉に笑みを浮かべながら、水をやる。

この生活は今を思えば懐かしい話になってしまったのだが。


その日は市場に買い物に出かけていた。

市場の店主とは仲がよく、よくおまけといろんなものを頂いた。

お返しできるものが何もないとこが歯がゆいがそれは仕方がない。

自分の所で作っているものは、生活できる最低限のものだけなのだ。

俗に言う「困窮者」というやつなのだろう。

別段、苦だとは思ったことは一度もないが。

そう思いながらも買い物をしていると、


「あんた、ソレルだろ?」

耳にヘッドホンを当てている青年から声をかけられた。


「は、はい・・・、そうですけど。」


「白猫を見なかったか?」

そう聞かれた。

この地域は白猫は珍しくない。


「いいえ、見ていませんけど・・・。」


「あんた違うわよ、青い花を付けた白猫よ。」


「ロンアのことですか?」

青い花を付けた白猫なんてロンアしか知らない。


「そんな名前だったかしら?・・・まあいいわ、その子に会いたいの、案内してくれる?」

笑みを浮かべてお願いしてきた。

悪い人ではなさそうだけど、見ず知らずの人を家に招き入れるのもどうかと思う。

返答に困っていると、ペストマスクをつけた少女がてててっとぼくの方に寄ってきた。


「お兄ちゃん、見せて。」

その少女がそういうと僕の腕にしがみついた。

何をやっても離してくれはなさそうなので、家に連れて行くことにした。

手を出さない事を条件にして。


「ただいまー。」

誰もいない家に僕の声が木霊する。


「あんた、こんな小さい家に住んでんのねー。」

派手な服を着た人が自分の家の中を見回す。

すると、奥からロンアがにゃあと鳴きながら、向かってきた。


「ただいま。」

あの子はあまりなでられることは好きではないが、足首をすりすりとこすりつけるのが好きらしい。

いつも帰ってきたらすぐにしてくれるのに、その日は、そのまま連れてきた人たちの方に向かっていった。


「ロンア、どうした・・・?」

いつもとは違う行動に疑問を抱いた僕は後ろを振り向くと、彼らはロンアに対して、跪いていた。

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