第96階 護衛の任
シンガプーラちゃん同行の為に
両親であるマサムネ夫妻を
説得しに行った私は
アビシニアンさんに力を示す様な
形となり、打ち破り!?
「負けたわ....完敗ね
全部出し切った.....
戦いに興じて
色々忘れられたわ」
アビシニアンさんの
吹き飛ばされた剣を二本とも持ってくる
マサムネさん
「....なんだ、アビシニアン
その...美しかったぞ?」
「馬鹿ね、めちゃくちゃカッコ悪いわ
ターとシンには見せられないわ」
和かな夫妻
「...いつでも叩けたのに
あのタイミングなのは
吸収効果が無い状態だと
あれまでという事か?」
真面目な表情なゼムさん
「あら、流石ね!その通りよ
吸収が通じない相手に
あれ以上動いたら何処か壊すわ
.....もっと強くなれるのでは
無いかしら?」
私は和かに剣達をしまった
「ねぇ...次期魔界の天皇様から見た
私はどうだったかしら?」
真っ直ぐ私を捉えて離さない
蠱惑的な瞳
「私に総評は難しいわ...
けれどもルヴァイに負けず劣らずと
言った所かしら」
「..まぁ、とても光栄ですわ!...」
とても美しい涙が流れていた
とても悔しかったのだろう
負けて。
「あのルヴァイでさえ
次期魔界の天皇様には敵わぬか
何とも言えんな...」
ゼムさんがフッと笑う
「私が目指す所は
大勇者だから」
「....最強の中の最強。
勇者の中の勇者、
大勇者キレ・ルイデ
私もかつて目指して剣を振るった
魔神達をバッサバッサと一刀両断
更にその拳1つで
魔の者共を蹴散らす..
よくやったなぁ、ゼムよ」
「おう!!魔界最強のゼム様が
勇者最強のマサ・ムネと
世界の命運を握って熱く戦う
あの日々を!」
「まぁ、結局ネク殿が
ケーキを綺麗に切り分けて
まるで意味を成さないのだがな!」
ハッハッハッハ!!と
マサムネさんは高笑いしていた
「なぁ?もう諦めてるとか
言わないよなぁ?」
ゼムさんが邪悪な表情を見せる
「まさか!いつでもかかって来い
魔界最強よ!!
この勇者最強が相手してやる!」
「「クフッハッハッハッハ」」
「...そうね、さしずめ私は
健気なお姫様よね?」
「おう...」
ゼムさんの歯切れが悪い
「あぁ、そうとも
アビシニアン!」
「えぇ、あ・な・た」
「私とアビシニアンさんが戦っていて
血が滾ったのかしら?」
コクっと深く頷くゼムさん
「そう、でも私も子供達に
憧れられる様な魔界の王者として
君臨しなくちゃね」
私は静かに微笑んだ
「おう!それにさ!アオナなら
キレを倒せそうだな!!!
これは確信に近い何かだぜ!
絶対先代魔界の天皇を
超えてくれ!!」
「えぇ、私もそんな気がするわ
今までよりもずっと強く私は思える」
うっすらと蠱惑的に微笑む
アビシニアンさん
「だけど大丈夫なのか?
剣を与えてしまって...」
マサムネさんが
申し訳なさそうにしている
「そう言えばそうだったな!」
「問題無いわ、私を殺すつもりで
創って欲しい....」
空気が歪む音がした様な気がした
「....分かった、一切手を抜かない
私達を恨むなよ?」
マサムネさんの声はそれはそれは
優しい風の様に通り過ぎていった
「まさか、戦う相手に
武具を届けるなんて素敵な美談ね
私も手伝うわマサムネ
覚悟してね、アオナちゃん?」
「3撃目程度で折れる様な剣
作ったら圧政してやるんだから!」
その場に笑い声が響いた
そして私達は元の場所に戻り
旅立ちの準備を始めた
「......」
シンガちゃんは
ターキッシュちゃんの
後ろに隠れていた
アビシニアンさんは笑みを
1つ零した
「シン...素敵なお友達が
出来たのね..」
うっすらと笑うアビシニアンさんに
シンガちゃんは困惑していた
「でもね、あなたは
亜人の国の王女様なのよ?
それだけは忘れないで」
「......ママ?....」
ターキッシュちゃんが小さく呟く
「アオナ殿に余り
迷惑かけるんじゃないぞ!」
「パパ?」
シンガちゃんが
後ろから少しだけ出て来る
「....アオナ殿すまんな
それではアオナ・エカルラート殿に
亜人の国の第一王女
ターキッシュアンゴラと
亜人の国の第二王女
シンガプーラの
護衛の任を与える
期間は旅が終わり
亜人の国に帰って来るまで!!
良いな?」
ターキッシュちゃんと
シンガちゃんは手を合わせて
喜んでいた
「御意」
私はそう夫妻に伝えた
「お願い致します!!!」
アビシニアンさんに
両手でしっかりと託された
握手という形で