第93階 イムと私
皆様々な思いで臨んだ会は
夜明けに差し掛かる前に
終わっていった
私は美味しかった料理と
今後に思いを馳せて眠るのだった
「....ハツミ!ハツミ!」
「うん?何?」
ふわ〜と反射的に背伸びと欠伸をした
私は正直まだ眠たい
パジャマ姿のイム
白いもこもこの非常に
可愛らしいものだった
「.....これ、食べて良いのかな?」
うん、どれどれと私はのそのそと
起き上がりイムの指の指す
隣の部屋を見てみた.....?
「....朝食?」
イムがそっと手渡してきたのは
一枚の紙切れだった
"愛のフルコース
君のハートにロックオン"
「.........怪しくないよ
これゼムさんだわ」
こんなおふざけゼムさんしかいない
キョロ、キョロと周囲を見渡すと
イムだけが起きてる
あぁ、そうか!イムは魔法的な適正が
殆ど皆無だからこの紙にまとわりつく
超個性的な魔力が感じ取れないのね!
この紙は預かっておこう
練習用に使えるかもしれない
「ハツミ...誰かに告られたの?」
ん?.....
「ねぇ、イム?」
「いや、そのぉ」
ニコッと笑顔で誤魔化すイム
「"誰にでも"
愛とか可愛いとか美しいとか
言う人いるから気を付けてね」
あははと苦笑するイム
「あ、そうだハツミ!
お姉ちゃん達まだ寝ているから
お話しない?」
もじもじと恥ずかしがるイム
どうやらイムは自分の本当の気持ちを
表現するのが得意ではない様
...まぁそれが可愛さに拍車をかけていると
私は思う
「いいよ、席に座ろうか?」
コクっと頷くイム
とは言ってもイムに会話に
誘われてみてもイムから話題を
くれる事は無い様だった
まるで幼い頃の両親を前にした
私みたいだった
両親の話が聞きたくて
私は両親の近くに行って
母はいつも何かお話しをしてくれた
母は特に気持ちを汲み取るのがうまい
父はニコッと微笑んで
「お話し」と私が言うと
父はそうか!と言って
武勇伝を聞かせてくれる
大体母が赤らめる
父の話のヒロインはいつも母だった
「イムは戦いとか怖く無いの?」
ほぇっとしたイム
「お姉ちゃん達が頑張っているのに
私だけ怖いなんて言ってられない
それにマス姉がいつでも
支えてやるぜって
何だかお兄ちゃんみたいだよね
マユ姉は相手が強くても果敢に
立ち向かっていくし
マテ姉はみんなをフォローしながら
かっこよく戦うんだよ」
「そんな気がするね!」
と私が言うとイムはうん!と頷いていた
「....ねぇ、それでね、ハツミ.....」
多分ここからが本題だった
「私のあの力ってなんなのかな?
マテ姉とマユ姉2人で立ち向かって
ハツミが戦ったあの時の」
ルヴァイ戦でみせた
白いゲイスダリゲードの片鱗
「難しく言うなら"反世"の力
簡単に言うなら全ての状況を
打破出来る力、私も使えるから
心配しなくて良いよ?」
私の持つ白いゲイスダリゲードと
同種だった
フォアローゼズは私を元に創ったから
私の力や考え方の一部を
それぞれ受け継いでいる
「そうなんだ、怖がらなくて
いいのかな?」
イムは不安そうな表情を隠す
「えぇ、問題無いわ
マスカリアが与えた
"テンイムホウ"が護ってくれている」
私がいるし、感情に直結するけど
"テンイムホウ"がイム自身の
崩壊を緩和している
マスカリアが強くなれば
その緩和範囲は増すし
私は自国の重役に置こうとしている
彼女達や彼等に対して
常に強化集然を行使続けている
特にフォアローゼズには
生まれた時から行使している
ルヴァイ戦で白いゲイスダリゲードの
行使に対応出来るだけの要素が
整ったから使用出来たに過ぎない
私が台頭するにあたって転生した
未来人達と熾烈な戦いを繰り広げる
のは予測出来た事
私は人世界の積み上げて来た
確固たる法則の崩壊を
推し進めているのだから
死ぬ筈だった人達を救い
生きる筈だった人々や
思想を踏みにじり続けている
マサムネさんの家族が生き残り
黒髭海賊団が死んでいったのも
その一環
弱者は淘汰されるという
正当なる世界の法則を捻じ曲げれば
私にその歪みが返って来る
でも私は確信している
返って来た所で全て撃ち砕けば
全て良しと
弱者が淘汰されるのが当たり前の
世の中ならば私は弱者=?の等式
自体を変えてしまえば良い
今日の強者は明日の弱者なのだから
全ては私の赴くままに
「マス姉のすっごいおまじないって
凄く効果あったんだね!
でも初めてマス姉に使って貰った時に
私ね!お姉ちゃん達の力になれる気がしたんだ」
イムは恥ずかしそうにはにかむ
「大丈夫よ、イム!私も含めて
イムには支えられているから!」
イムから笑みが零れ落ちた
「ハツミも同じ様な事言うんだね!
私、ずっとお姉ちゃん達の
足手まといだって思っていたの
それで悔しくて感情を吐き出したら
3人とも口をポカーンと開けて
4人で笑う為に戦っているんだって
マテ姉とマユ姉、そして
誰1人欠ける事は許さんって
マス姉に無茶苦茶怒られた
マス姉の笑顔しか知らなかったのに」
イムは苦笑していた
「それは私も怒るよ
イムは勿論みんなと
同じ世界を生きる為に
私には力があると
私は思っているから
急がなくて良い
焦らなくて良い
イムはマイペースで進みなさい
全て正しいわ
今はたっぷりお姉ちゃん達に
甘えておきなさい
それがイムのする事よ」
「甘えるって猫みたいだね」
イムは涙を一雫零した
だけども見せない様に顔を伏せていた
..........
「子供のうちだけですよ〜」
「と言う事は今だな!!」
笑う父の声と
「えぇっ、でも大きくなっても
たまには良いかもっ!」
呆れた様に赤らめる母の
嬉しそうな声がする
..........
私は貴方方がしてくれた様に
この娘達にするよ
暖かくて安らげる私の居場所
ハツミリア・ルイデの居場所