第87階 強襲黒い甲冑
「グ.........我が国を蹂躙しようとも
我等魔獣は滅びぬ」
紅黒くうねる魔獣の王
自国にて大公(666)を名乗る
唯一種、皇帝蛇は
空に浮く魔力さえほぼ失い
満身創痍だった
「良く、闘った!されど雑魚は雑魚
お前を滅ぼす男の名を教えてやろう」
全身を黒い甲冑で包み
魔術に近いもので
魔王ネロを圧倒した
「我が名は
クゥインクゥエ・フトゥールム!!!
ドゥオ程の最強を極めし者が
魔界から戦略的撤退を
選ばざるを得なかったこの地...
だがお前は"少女"ではないな」
「ドゥオ....」
「ほぉ?知らぬか、
やはりお前では無かったらしい
だがお前はここで終わりだ!!!」
クゥインクゥエの右手に
"雷"が集まる様にネロは思えた
「死ねぃ!!!」
だがその雷はクゥインクゥエの
真の実力を垣間見る事に値した
ネロは先程までの闘いが
ほんの戯れに過ぎない事を
刻みつけられる程に
強大なエネルギーだった
「技を使ってやろう
意気込みとか精神論とか
そういうのだよ.....」
不敵にニヤッと底冷えする様に
微笑むクゥインクゥエ
「金電!!!!」
集まったエネルギーが
4本に裂け悪魔の爪の如く
ネロに牙を剥いた
「魔界が滅ぶ....終末の雷か....
グリモワールよ
クソババァ、あんたならどうした?」
ネロはそれでも後先考える思考を
捨てて残りの魔力と自身の命で
この金電を少しでも軽減する為に
突っ込んだ
止める事は出来ない程に
濃厚で凝縮されたエネルギーの塊の様に
感じられたからだった
激しいエネルギー波の中で
「ゼム...貴様がいれば
魔獣はどうにでもなる
生きよ..........................」
ネロは状況が掴めぬまま
魔力を失い落下していった
あれ程の魔界を滅ぼす程の
エネルギー波が
ネロの目と鼻の先で
消失していったのだった
「....殺されたいって事でいいかしら?
腕を持っていてあげる」
ネロは失われていく意識の中で
クゥインクゥエに声を投げつける
エルエルの少女を夢に見た気がした
..................
「ありゃ、なんだ!!!!」
船内の周囲を見渡せる場所に
到着するなりゼムさんは叫んだ
明らかに魔界の地表を抉り
蒸発させるだけのパワーを持つ
雷と似て非なるエネルギーが
黒い甲冑の者の右手に集まっていた
その黒い甲冑の者は対峙する
紅黒い蛇と共に街の遥か上空で
ぶつかり合っていた
「ネロ...あいつが負けたら
祖国がやべぇ」
グルルルと唸るゼムさん
「あの甲冑の男と対峙するのが
魔獣達の王、ネロ様なのね」
私はゼムさんから降りた
「放たれる!!!!」
ゼムさんが叫ぶ
任せて...私はそう呟いて
その場を離れた
................
「我が金電が消失するなど...!!!」
私は小さく笑みを浮かべた
「見えないのかしら?」
私の背後にエネルギーが収束する
ある一定の規則を持ってクルクルと
渦を巻いていた
「...貴様がドゥオとトーレスを!!!!」
「..怒りに身を寄せるよりも
現実を見た方がいい」
収束したエネルギーを私は放った
「究極未来!!!!」
黒い鎧の男を光が包み込み
エネルギーを吸収していた
「自らの技に殺される程
間抜けではないわ!!!
己に打ち克つ事こそ
強者の鉄則だ!!!
魔女の如き小娘よ!!!
汝の首を捧げよ!!!!!!」
具現化したその力に魔界は軋みと
悲鳴をあげる筈だった
私がこの場に立っていなければ
それ程の力を彼は開放した
「最早何をしたとは問わぬ...!!!
不可思議だ我が金電を逆に操り
我がシャーハンシャーの具現化によって
木っ端微塵に吹き飛ぶ筈だった
この地の地表が未だ存在する理由!!!
貴様の首を取れば全て
カタがつく!!!!!!!!!!!」
それは槍の穂先の様だった
私に向けられたそれを中心に
エネルギーが集まる
刹那の出来事だった
彼は飛び出した
破壊とも蹂躙とも呼べる
魔法という知恵で創り出せる
雷の最大を遥かに超えた
雷と似て非なる雷撃と爆音と共に
私の首根を狙っていた
速さ、それに身体の使い方
どれをとっても一流すら霞む
必殺の雷槍の一撃が唸った
...それでも、私以外なら殺せていたと
私は彼の理解でき得ぬ状況の元凶が
私であるというその事実に
導いた彼自身の知に
私は賞賛の意を込めて御名答と
小さく呟いた
「な..ぜ.....届かぬ.....?
一瞬がこれ程までに遠い筈が...無い
時の技法に対する対策も
我が次元爆速衝撃は
可能たらしめていた筈だ....」
私は向かって来る彼に微笑みかけた
「貴方の計算通りに全て進んでいるわ
でも一つ度外視しているわよ?
私はその一瞬を永遠にさえ
広げる力があるって事を!!!!」
私は右手と左手を伸ばした
「ターキッシュちゃんに会えた事を
感謝に値する!何故なら私は
もう一段強くなれるのだから!!!」
右手に白いゲイスダリゲード
左手に黒いカゲード
対の力を持つモノを同等にし
掛け合わせた
そしてマホウノランプで包み込んだ
クロとシロ
ヨとハンヨ
相容れぬ筈の力が掛け合わさり
黒と白が渦巻き激しく暴れまわる
薄い膜に覆われる様にして
そして私はそれを構えた
その大剣は光と闇が混沌という
規則を持ってして包まれていた
全真カゲード・ゲイスダリゲードと
なってゴルテッカーを易々と打ち砕いた