第79話 予兆
カシャ、カシャ
「うん?...この音は」
ネクさんが"骨"というページを出す
「あの方じゃねぇか?」
「その様だな、つい最近は
クリスマスとか言って
ストロベリーのチョコを
配りにこなかったか?」
ゼムさんとテュポさんが
そわそわしている
「手下いねぇけど
魔王と同列に考えられてる程の
魔術の使い手らしい」
「ほぉ、そのお方の様だな
娘達も大変お世話になった」
マサムネさんも話に加わる
「いらっしゃい!
はよ、あがんなね!」
カシャ...カシャっと
音が響く
「グリモワールさん
新しい文化を発見致しましたので
実践してみようかと!」
初めて聞く声だった
「良いから、良いから!
今日は早く入りなさい」
ばっちゃは笑顔だった
「どうも、皆様!
私です!サタンクロース...
ん!?その可愛らしい
女の子達は!!?
と、その前にマサムネ王
ワタクシは心配しておりました!!」
カタカタと歯がなる
「...不死の王?」
魔力がネクさんより大きく
ばっちゃより少ない程度
「そうです!!
ワタクシは魔人と魔物の間ですね
人であったけども物言わずと
いった...アンビシアンさんは
相変わらずお美しい事で!!」
「あら、いつもありがとう」
「それにしても錚々たる
顔ぶれかと思いましたら
まぁ繋がりがある面々ですね」
「不死の王さんよ
良く知っているな!!
俺達4人は固い絆で
結ばれている!!」
ゼムさんが意気込む
「良いですね!そういうの!
さてさて今日はというと
バレンタインデーと
いう文化を文献で見つけまして
チョコを配ってまわっているのです!」
バレンタインデー...あぁ、あれか
「この"214"という数字の羅列が
まだ解読不可能なのですがね
チョコをあげる文化があったとの事で
人間暦で2月14日である今日!
配っているのです
プレゼントといえば紅白衣装の
サンタクロース!!
すなわちワタクシです!!!」
まぁ、なんでもいいよな
味良いんだし
ゼムさんがぼやく
ちょっと違うけど良いか!
貰っちゃえ!
「チョコの方は私が
基礎を叩き込んだから
問題無いと思うけどね!」
おいおいまた裏で糸引いてるのかよ
お前の所の魔王様はと
ゼムさんがネクさんに耳打ちする
「うむ、いつもの事だ」
と軽く答えるネクさん
何かあるとばっちゃが
絡む事が多いみたいね
それだけの力を持つもの
「それでは早速頂いて
貰いましょう!」
大きなサンタさんの白い袋から
ドサっと一口サイズのチョコが
色とりどりの包装に包まれて
机の上に所狭しと散らばった
「あ!美味しい!!」
シンガちゃんは
もう複数個頬張っている
開けた袋がシンガちゃんの前で
幾つか散乱している
「「どれどれ...あ!」」
イムとターキッシュちゃんも
幸せそうな微笑みを浮かべている
「おい!!!戦場だぁ!!」
「そんな事しなくても
沢山ありますからゼムさん!」
表情は骸骨なので
読み取りずらいのだけど
微笑んだのだと思う
「..メイユール....さんみたいだな...」
私は懐かしんでいた
我が祖国に侵略して来た
男?骸骨の名を
「おおおお....おおおおお」
サタンクロースさんが
泣きそうだった
「知り合いなの?」
カクッコクっと動く
「そう」
正直複雑である
「我が師は天に召されたというが...」
「弟子だったのね、
魔皇が眠らせたわ」
驚いたそぶりを隠す何人か
「かの魔界の天皇様が...
なんと慈悲深き...
神々にかの地を焼き払われ
黒竜となって破壊の
化身となられた時は
ワタクシ祈りました
異界の神々に、ご無事を」
彼が祈った対象の
異界の神々ももういない
仲間には慈悲深かったけれども
彼の寛容さがアカナの持つ流れの
方向性を決定付けてしまった
「大変です!!!」
絵画のマリアンヌさんと
同じく絵画のモナ・リザさん
「どうした?魔力が殆ど
枯渇しているではないか...」
"心配"のページを開く
私には分かってしまった
何が起こっているのか
これ程までに強大な存在が
この魔界にいるなんて