第66階 懐かしの味
「"イナマ"の地...」
よっこらっせと
そう言いながらばっちゃは
荒れ果てた神社の様な
場所に腰かけた
「ハツミもきんしゃい
懐かしかろうて」
ばっちゃはそう言いながら
笹の葉に包まれた小振りな
おにぎりを開けて差し出してくれた
「うん!」
母とばっちゃと私は
本が好きで魔物の国の本の世界に
どっぷり浸かった後に
こうして出掛けた
「ナティラもキレも
数奇な運命を歩いておったが
聖域に黙って連れて行きおった
ハツミもとはねぇ」
「あはは」
と私は一つ笑ってから
おにぎりにかぶりついた
むぐむぐ...
お米の甘みと塩加減が堪らない
「美味しい!」
ばっちゃは少しばかり
再試行錯誤したがねと笑っていた
「そりゃ、良かった!」
と笑顔のばっちゃ
またお母さんも一緒に食べれたらなと
しみじみ思った
おにぎりは二口サイズの小振りだった
ばっちゃによると
夕食に近いからだそう
それもそうだねと私は納得していた
私は綺麗な空気を目一杯吸って
深呼吸した
「綺麗じゃろ?
ここに来させた事ないから
ミコンはまだまだ心がすさんどる
あやつがしかっとせんと
魔物達はついてこん!」
と笑顔で語っていた
ばっちゃはネクさんが非常に
気に入っている様子だった
まるで親の様に世話を焼いている
風にも感じられた
「してハツミよ」
ばっちゃの顔が真剣なものになる...
というか
"真剣"と書かれたページがめくれる
「ん?何?」
「さて行くかの...ハツミなら
何か分かるかもしれんしな」
ばっちゃはそう呟いて
また歩き出した
少し歩くと龍が向き合っている
結界、それもかなり強力かつ凶悪な
「私でも危ない時があるんよ
あの龍王が作った結界だからね」
そう言って護符を取り出す
なんでも龍王アルテンさんから
作り方を教えて貰ったらしい
術者による抜け道の護符
それでも体力と魔力が万全で無いと
命に関わるのは感じ取れた
ここでいう結界とは
いかに侵入者を排除し
良く言えば深部の何かを守護する為の
ものだと理解できる
ばっちゃでも危ないか...
天才と謳われる巫女が
1000人集まっても
同種の結果は張れないわね
破るなら術者か私、それに
"鬼才"である伝説上の
紅白巫女かしら?
「ばっちゃ私は大丈夫だよ!
ミリカンテアの神様の力が込められた
伝説の剣があるから」
そう言って私は闘剣「無神」を
取り出した
「こりゃたまげたね!
勇者でもこの結界は
危ないのかい?」
「難しいかな?
魔王と勇者は本質は同じだから
方向性が違うだけで
だから父もその護符がいると思う」
ふむふむとばっちゃの
白紙のページに書き込まれた
それに危険な匂いしかしない
アルテンさんさえ無事には
通れない程の効力を放っている
アルテンさん自身の戒めも含めて
無傷で通れる存在は
現段階ではいないという意味を
成して張られた程に強力だった
私という例外を除いて
「それにしてもハツミ
良い時に来たね、龍王様の
この護符を作るには
次は1000年後に
なりそうだからねぇ」
結界の解き方を知っていて
1000年ねぇ
千年王国が思い浮かぶけれど
あぁ"あれ"が...あるのか
ひしひしと感じる
「そう!私も良い時に来たわ!」
「なら進もうかねぇ」
私たちは更に奥に進んだ
更に重く濃い霊気が満ちる
もう時も止まりかけ
時魔法自体の効力すら
かき消すだろうと思われた
魔王が魔法を使えない程の濃さ
だけど先まではっきり見える
それが本当の怖さか
見える=進めるにはならない
見えるという餌を元に蝕んで
行くのがこの結界の始まりにも
満たない部分から設置されている
本当の恐怖は見えないのだから
「....これが入り口....」
ばっちゃがそう言った先には
湧き水が溢れ出していた
私は結界からの効力は
全て集然で打ち消している
闘剣「無神」は意味をなさないけれど
ばっちゃを安心させる為には
物を見せた方が良いかなと思ったから
神様を食べて成長しているから
神々しくなってきているから良かったわ
「その水、綺麗ね?」
生命の水よと言って護符を浸した
その瞬間時空が揺れる
上下左右が逆転し
あらゆる感覚がごちゃ混ぜにされて
世界に引き込まれているのが
私は薄い膜で覆われて分かる
けど単純に地下深くに
エレベーターの様に向かっている
魔力を削り体力に負荷を与える
効力が夥しい程に淀んでいる
一番の対処法は心を鎮めて
魔力の消費と体力の浪費を抑える事
ばっちゃは良く分かっている
簡単に言うと精神統一してゆっくり
一歩ずつ進む事
ここの結界の特徴としては
簡潔に言えばあらゆる負荷を
増大させる事を起源とする
しかも指、足、目など部位によって
細かく解く方法が違う
しかもこの魔法のこの部分は
発動負荷が異常に高いなど細かく
結界内のルールが定められているし
更に魔法の誤認などの
特殊結界も多重に重ねられているから
正攻法で打ち破るのは限り無く
不可能に近い




