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魔皇の魔法とハツミリア ~名のない帝国の花々~  作者: 道草 遊者
異世界ミリカンテア編

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第4階 宿敵との対決

 桜色の居城、【セイクリッド・エレガント・ザナドゥ】は

ラブラビアのとても大きな妖気と魔力で周辺を威圧していた。

それは和泉の国からでも、分かるぐらいに。


 私はその城内を何事も無い様に進む。


*


「あら、招かれざる客でありすね」

何が起こっているのか把握したのか。

ラブラビアの表情は穏やかではないわ。


「ねぇ? ここにいたのは美形の人間かしら?」

 もうどこにも何も城内にはいなかった。

答えだって分かっている。

だって悪魔の翼を沢山斬り刻んだから。


「...…ヴァンパイア・デビル・キングと親衛隊のみなさま……ぁぁぁあ……

異世界の一つ程度、我が物に出来ない魔王では逆立ちしても足掻く事すら出来ない

強大な魔力を保有する統括の立場のヴァンパイアと部下達を集結させていたでありすよ」

 ラブラビアはわなわなと震えていた。


ーー最速滑

 私は無言で滑り込み、左手でラブラビアの首根っこ掴む。

私との距離が一瞬で縮んだことに、ラブラビアは何も理解出来ない表情をしていた。


ーー鬼握力

 (くっ!? 動けないでありす)


 私は後ろに飛んで距離を開けた

私が掴んでいた首から凍て付いた氷が花の様に生えた。


「それでは質問! ヴァンパイア・デビル・キングさん達は

無音で消滅する事はあり得るのかしら?」

 私は少し得意げだった。


ーー最速斬


ラブラビアの左肘より下が宙を舞った。


舞わせた


私が。


 ラブラビアは驚愕の表情をみせる。

そして強い怒りの目で私の方を睨みつける。


「ねぇ…...? どういう気分かしら」

私は血の気が引いていくラブラビアの表情を舐める様に見つめていた。


「あり得ないでありすね.....」

ラブラビアは荒い息をしている。


「否、一撃で葬り去られたのでした」

 私は右手で白亜剣を気持ちだけ、強く握り締めていた。

力で握るような剣ではなにのね。


「あら? あなた、この程度で勝ったつもりでありすかね?」

 ラブラビアの額から汗が滲み出ている。

これは強がりだわ、でも。


「流石は真祖と言うべきかしら? 左腕はまだ生きてる、ふふ」

切られた腕がビクンビクンと震えている。魔力がまだ残っている。


ーー剣持構

 私は白亜剣を構えたわざと見えるように


 そして私の白亜剣は二撃目の為にラブラビアの顔に近付けていた。

一瞬、ラブラビアのほのかに青ざめた顔が確かに認識できて満足していた。


ーー強反発

ーー地獄炎

「もう左腕さんは繋がっていないし、再生しようとすると

反発する様なきずにして差し上げたから。

きっと物凄くねぇ? 感じたことあるのかしら?」


ーー垂直斬

 私は次に左足を斬り落とした。

ドチュッと床に白く細い美しい足が落ちる。

美脚というより神の美しさを持つ神脚かしら。


「あ..…が.…..」

 ラブラビアから悲痛が呪いのように燃えていく。


 再生する力が強ければ強い程に反作用を起こす液体の様なものを地獄炎として

白亜剣にまとわせるイメージで私は左腕と左脚を斬り落としていた。

激痛を超えた地獄の痛みに強ければ再生は可能だけど。


 でも真祖ラブラビアはその強大な強さゆえに痛みを得る事が少ない極めて少ない

稀な戦闘種族、だから多分痛みに強くないはずで。


 それでも超新星爆発を一般的な人間種が受けるぐらいの痛みは感じてもらえるはずだわ。

きっと今は太陽に左腕と左足を突っ込んでいるような心地ね。


ーー遅世界

 ラブラビアの首から下を《遅い世界》で包み込み拘束する。

動いた感じはラブラビア自身の思考では感じられるのだけど、

現実には何も進まないという現象が起きているはずよ。


 瞬間満ちた。

尋常ではない魔力がこの場を。


「えぇ? そう貴方がメイユール……」

 突然の来訪者に私はラブラビアの表情がパァッと

明るくなるのが見えたわ。


 禍々しい怒気を放つローブを纏う骸骨の何かは

「フォールンコズミック」

と言い放った。


 私は宇宙が近付いてくる力を感じていた。


ーー墜世界

ーー万分裂

 私も力をほんの少しだけ解き放った。


「降って来ないでありす、メイユール様の宇宙が」


「まさか少女よ…...打ち消したのか?」

 メイユールは骸骨なので、表情の全く分からない顔で私に問いかけてくる。


ーー墜消去

「そうみたいね、流石に八百万の世界を墜とそうとしたのは

挨拶としては不適切だったかしら?」

 私は八百万の内の一つすらいらなかった事に気付いてキャンセルしていた。

フォールンコズミックが弱過ぎたみたい、

よってフォールンコズミックは遥かな次元の彼方で消失している。


「なんと……ラブラビア! お前は……逃げろ」

ラブラビアは涙を流していた。

「できませぬ……メイユールさ……ま」

 天を仰ぐように上を見るメイユール。

 「俺はこれ以上仲間が傷付けられ痛ましい姿をしていることに

耐えられる程出来ちゃいねぇぞ」

 カタカタと骨が震える音がしている。


「うん、私も逃す気は無いかな」

私は笑顔で答えた。


ーー白亜剣

 狙いは残りのラブラビアの左半身。


「あくまでラブラビアを痛めつけようと言うのだな?」

 メイユールに魔法発動一歩手前が集まっていく。

気付かれていないつもりなのか、百を超えて千にも及ぶ

強化魔法の数々がメイユールに集まっている。

 私はあの残りの三人に加えて、さらに多くの仲間がいると認識する。

これは私とメイユール達の闘いだという事実。


 でも私は待った。

堂々と強化されても特に構わなかった。

私はこの白亜剣を確かめたかった、斬れ味を。


ーー超範囲

 速度で詰めてもいいけど、私は技を綺麗に叩き込みたいわ。

メイユールを斬ったままラブラビアに余波を与えるのも面白いかもしれないわね。


ーー超十字

またの名をエクス・カリバーン。


「大当たり!」

 完全に補助魔法がメイユールに全ての効力を与えた刹那、

物と魔の両方を込める混合剣技エクス・カリバーンの十字が

メイユールとラブラビアの残りの左半身を削り抉りとる。

 エクス・カリバーンは父に習った初めての剣技。

剣による斬撃に魔力の力で叩き、剣技の波と魔力の波が

十字に敵に叩きこまれる事から、そう名付けたらしい

私の偉大なお父さんは。


「ぎゃああああああああああ!!!」

 ラブラビアの悲痛がセイクリッド・エレガント・ザナドゥの玉座の間に響き渡る。

ラブラビアの顔から下の左半身に無慈悲に一撃が入り消滅する。

私が創った"遅い世界"ごと吹き飛ばすのはわけもない。

 きちんと研究され認知された魔法なら、自身の魔法の影響を無効にする方法が

いくつかあるのだけれど、私が使用する魔法は全てにおいて非合法魔法ともいえる。


 エクス・カリバーンによって消失した左半身の影響で

ラブラビアの魔力が急激に失われいくのが感じられた

 肉体が削られ、再生出来ず肉体が半壊した為に血が流れる様に魔力が消失した。


 これでアカナも回復出来るわ。

私は達成感に満ち溢れていた。


「とても素晴らしい眠気覚ましになられたのではないかしら? 

メイユールさん?」


 メイユールの全ての強化魔法の効力は失われていた。

それに骸骨の身体が剥き出しになりローブが消滅していた。

高価そうなローブだったけど。

 メイユールはその場に魔力の抜けたスケルトンのように

ガシャンと音を立てて崩れてしまう。


 仲間の気配はするけど、悔しそうな表情をしているのが

ヒシヒシと感じられる、それも今にも噴火しそうな怒気を含むね。


「ねぇ? 私は魂がほぼ消失直前になる本当に一歩手前までになる様に

調整したのだけども効いていますかねぇ?」

 強い生命はその強靭な意志という思いゆえに現実に染み付く。

それが魂や霊魂と言われる者の正体。

 特に生きているわけでも、記憶を保持しているわけでも無い

最も強い部分を持ったまま現実に突き刺さる。

 まるで売れない画家の作品のように。

いわゆる意志が後世になって評価されるのと非常に似ている。

 ポポポと。

メイユールの意思が湧き上がる揺らめく青い炎のように。


「仲間を見逃して……助けてやって欲しい

それだけだ、それだけが心残りだ。

私は負けた、それでも今回は構わん。それでも仲間だけは」

 残火のような意志は語り始めた。

私には無い気持ちを、私はこの意志を滅する気持ちで

今この場に立っていた。

 アカナへの呪術を解くために、ラブラビアが心底絶望し傷付くように

メイユールを私はあてつけで消しに来た。


「私が気に入らない事したなら、みんなまとめて消すけどいいかな?」

私は微笑んだ。


「...…フフフフフフ、面白い小娘だ...…良いだろう

いつでも殺すが良い」

 メイユールは笑っていた。


「御仲間は全て自らの世界へ返し平和ボケさせること。

ラブラビアについては私の大切な人に呪いをかけたから

右半身だけで過ごしてもらいます。

 再生は可能ならご勝手に。

あとは貴方は私に協力すること。

いわゆる人質ね。お仲間が暴れたらね?」

私は条件を飲まないなら残念だけど消すつもり、危険過ぎるわ。


「フフフフフフ、言ってくれる

お前達も満身創痍だろ? 戻れ! すまんな」

 意志だけの存在なのに、隠れている御仲間達が土下座する姿がハッキリと見える。

意志で通じ合っているかのように。


「貴方が私にたっぷりと貢献してくれたら、会いに行かせる時間ぐらい作ってあげるわ」

ーー肉体戻

 私はメイユールを再生させた。


「安心した」

 メイユールの骸骨の表情がなんだか読み取れた気がした。

穏やかな。

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