第36階 1つの変えられない真実
年内最後の更新となります。
来年は1/4の初更新を
予定しております。
マユナとイムが部屋に戻るというので
私はマスカリアを抱えて書庫へ向かった
書庫は王城の地下にありあまり広く無く
本が無造作に山積みにされているだけの
散らかった場所である
こういった整理されていない場所は
このアルテンさんの王城では
非常に珍しい場所だった
それだけに古さと歴史が顕著に感じられる
棚も無く足場も無いといえば無い
本と本の間の隙間を縫うように
足先を置いて歩く程度の足の踏み場
しか無い場所を私達は
風になって空中を歩いていた
自身の身体を風に変化させる集然である
「この力も強弱はあれど
姉妹皆んな使えるんだ
会う人会う人誰も使え無かったのに...
なぁ、ハツミも使えるから
その...分かるのだろう?
どういった人間が使えるんだって」
マスカリアが少しだけほんの少しだけ
本当に少しだけ不安な表情をして
笑顔で覆い隠した
多分...本を沢山読んで気付いたんだと思う、
少しだけ違う事
自分達だけが外れて異質だという事に
「.....」
私は無言で次の言葉を待った
何を感じて何を思っているのか
それが重要だったから
「私は私達姉妹の両親は
何処にいるのかな.....?」
当たり前だと思う
時間の流れが速い世界である
このミリカンテアに置いて
生まれてさほど経っておらず
通常の生物は両親を求める
彼女達は生物ではあるのだけれども...
ただ一重に嬉しい
悩みを打ち明けてくれる程に
私は信頼を得たという事を
確かに感じたから
「私が思う事を貴女に伝える前にマスカリア?
貴女は私に何を思って接してくれている?
私をどう思っている?」
マスカリアはキョトンとして...
「ハツミからは何か暖かさとか
安心感を感じるんだ!
それが何か分からないけど
似てるんだ!そう思う!」
私はマスカリアに微笑みかけた
書庫にある本でマスカリアが
触ったであろう本がどれかは
集然を使わなくとも大体分かる
母子に家族、人間....
私と両親を見て疑問に思った
そんなとこだろう
私の母なら私に対しては
どういった心境かまで分かる
「私に感じる気持ち、
それが母に対する想いと一緒なんだよ
それに貴女が見つけた"答え"が
何であろうとも私にとって
貴女達は掛け替えの無い
尊い大切な人達なんだよ?」
マスカリアは少しだけ俯いていた
「うん...でも親とは違うの?」
ようやく振り絞った、
そんな感じの声だった
そしてあいつなら
魔皇ミラース・ラーバ・ラーサなら
自分が創った全天さんや倶天さんに
"親"だとハッキリ告げるだろう
「"親"だよ!私しかいない」
マスカリアはキョトンとした
「4人皆んなのか?」
私は問いにニコッと
「勿論!」
と私は答えた
マスカリアはニコッと微笑んで
ぺこりとお辞儀をした
そして...
「私はなんてハツミを呼べば良いんだ?
“ハツミ”のままで良いのか?
それともお母....さ...ん...?......」
目尻に涙を貯めるマスカリアを
そっと抱き寄せた
「どちらでも構わない
好きな様に呼んで
マスカリアが呼び易い様に」
私の胸は泣きじゃくる
マスカリアの涙で濡れていた
私は素敵だと思う
こうやって思ってくれている事
安心してくれている事
信頼してくれている事
泣く場所に私を選んでくれた事
全てが愛おしい
一挙手一投足に愛らしい目に
クルンとしたまつ毛
貴女の全てが可愛いらしい
「ねぇ...マスカリア?
何があっても私は味方だから」
コクっと頷くマスカリア
私はもっともっと言ってやりたかった
その小さい心と身体に"生きて良いよ"と
例え神様や悪魔がダメと言っても
生きて貰うつもり
それは私の父もそうする
私は...出会えて嬉しいと思いながら
寝息を立てるマスカリアの
温もりを感じていた
本年度は大変御世話になりました。
来年もよろしくお願いします。