第34階 連戦
呆気なかった
父にお酒を注いで貰って
それを飲み干すよりも
転生者かつ魔神という事で
私は必要以上に力んでいた
転生者の魔神はあてにならない
肩書きとは別に存在の重さが
通常の10程度の次元が違うのは
明確だった
しかし他愛ない
魔神ブナガはもう眉一つさえ
動かせず身体のありとあらゆる部位が
細切れになってそこに積まれていた
私は神剣ハリハラに食わせた
魔神の力を
グチャグチャガリガリと
神肉や神骨を始めとする神体が
粉砕する音が響いた
今現状で私が今いる東の大国である
893には強大な力が3つ程あった
そしてその1つが目の前で木っ端微塵の
粉々になっていた
魔界を騒がせ別の世界に
追いやる事でしか対応出来ず
その後、魔皇が魔界の天皇に成った為
なりを潜めたという事だろう
魔皇以下神々以上があと二柱と
いったところだった
私の受け継いだ"戦士としての血"が
あまりの弱さと拙さに嘆いている
今度父に相手をして頂こうかしら
ギィ...
ギィ....
赤く目と尻が光る獣神がそこに居た
銀毛が月に照らされ輝いている
日が西へ沈む時間にはまだ早いのに
夜なら殺せると?
ふふふ、笑わせてくれる
「儂の体毛金色の体毛が
色素を失い、抜け落ちて
天使の様じゃろう?
まるで儂を讃えるなぁ?
小娘!!!!!!!!!」
多分お怒りだろう
ブナガを殺したからね
まぁいい
「ねぇねぇ!お猿さん!
貴方は人間のお侍さんと
お友達だったの?
私とお侍さんは決闘して
お侍さんが負けたんだよ!」
私は現状の容姿の通り
10歳程度の仕草で訴えてみせた
「こやつは西洋の魔女じゃな
ブナガ様を殺すとは
若しくは東方の妖魔か?」
九尾の狐辺りの事を
指しているのだろうけど
全て間違いだし
「うーん...死神かな?
お猿さん専門の
いや......」
月が銀色に輝く
意味も無く美しく
そして紅く染まった
「893専門のねぇ」
グチュグチュと
空中から落ちて来る
猿神の歪な肉片が
わなわなと震える
金毛の猿の醜い顔
「どうかしら?
ブラックホールの要領で
集めて圧縮する簡易的な技だけど?」
ザッ!
「.....」
私の前を金色の棒が伸縮し
空を切った
少しだけ真面目にやるか...
案の定
神剣ハリハラは受け止められない....
筈だったけど
禍々しく変貌していると思ったら
神剣六天に変化していた
「まともに打ち合える...?」
私はワクワクした
「グヌゥ...この小娘がぁ!!!
行け金毛!!!!」
うわー...
金色の毛が膨れ上がり
獣神を形成していっていた
そしてグジャっと弾けた
「飛行機が急に開くと
吸い込まれるでしょう?
その要領で頭だけ
飛ばしてみたのだけど?
無しでも動けるのかなぁ?」
白目剥き出しで金色の猿は
顔を真っ赤にさせていた
う...いや分かるけど
大切な体毛だって
でも自己責任なんだけどなぁ
「私以外なら足止めできたかもねぇ」
ぐおおおおおおおおおお
天を衝く咆哮を上げた金色の猿
「儂の名は獣神デヨシ
今まさに怒りの頂点であるぞ!!!」
ザシュッ!!
「遅過ぎる....
隙だらけよ?」
獣神デヨシの左耳が落ちた
ポトッと...滑稽な左耳は
静かに大地とキスをした