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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
東の大国編
30/262

第29階 強い想い

父と母はきっと言わないと思う

フォアローゼズを助けて戦った事も


私が気恥ずかしさを

抑える事が出来ずにいる事も

良い子でいたい夢物語も


父程の人が

この神々の世界で戦えば

その力は分かる


部屋で私は父と2人になっていた

料理の得意な母とフォアローゼズは

アルテンさんの王城の

食料庫に向かっていったから


「元気そうで良かった」

私はきっと頰が緩んでる

父の言葉は染み渡る


「...すべて知っているよね」

父は穏やかにニコッと笑った


「ミリカンテアの勇者が

神々を討ち亡ぼしたって事か?

...あぁ、知っている

ハツミが気にする事じゃない

出来る事なら殺させたくなかった

それだけが悔しい」

父は笑みの中で一瞬俯いた気がした


私は神殺しとなった

それは変えられない

変えようの無い事実だった


「俺も...ナティラ母さんの為に

他の魔王を滅ぼした事がある...

今のハツミの気持ちが分かると

俺は思っている

だから...大した事じゃない

俺の娘だから、仕方ない

俺もナティラ母さんも

一緒に背負ってやるから」

そう言って私の

頭をポンポンした

もう...父にも分かっている

私を守れると言えない事も

それだけ私は力を行使した


それだけ泣いていた

それだけ訴えていた

それだけ泣き叫んでいた

エンシェントルーラエルフ達は

神々への怒りを


私がここまで"力"を示せば

悪として討とうとする輩が出てくる

善悪の心の動きを別にしても

"力は悪"なのだから

だから私は身の周りを固めた

女である私の強さを

素直に認められないにしても

魔皇配下の全天さんと三竜王は

その本能に突き刺さる程の

圧倒的な恐怖と畏怖を不逞な輩に

指し示す事が出来ると私は思っている

その時私は言えばいい

しおらしく、弱々しく

彼等のおかげで事を成せましたと....


「私は神殺しを行った

だけどお父さんの...

娘で...良い...です...か?」

辛くても本心だった

もしかしたら、父に限って

そんなはずは無いけども


「良いんだよ、何をしても、俺達

親が子の自由を束縛する権利はない...

俺もナティラ母さんも

ハツミの事を信頼しているからな!」

父は太陽の様に笑っていた

それとは正反対に私は

荒れ狂う大津波の様に

顔をくしゃっとして泣いていた

そんな私を父はそっと

暖かく包み込んでくれた

まるで風邪を引いて辛くて

泣きじゃくったあの日の様に


どれぐらい時間が経ったのだろう

母をいつも赤らめさせる

父の真っ直ぐな黒い瞳は

私を安心させた

時が止まったかの様に

時の魔法が効かない私に対して

これ以上の時魔法は無かった

私は娘で良いんだという

心地よさと安心感が

まるで永遠の様に刻まれていった


「俺...行くからな」


うん...

声が出ない

ただただ俯いていた


「俺とナティラ母さんはずっと

味方だからな!」


うん...私は

何もしなかった

...出来なかった...


部屋を出る時

父は笑顔で手を振っていた


私はそのまま近くの

ソファーに倒れ込んだ


靴下も靴も脱ぎ捨てて

仰向けに遥か天を衝く様な

天井を見ない様に腕で目を隠した


「また...村が一つ死んだ...」

私が呟き終わると

ドアが静かに開き

マテハがそこに立っていた


「ハツミにも分かるの?」

あまり良い表情はしていない

正義感が強く素直で真っ直ぐな

マテハが許せるわけ無い


「気付けるのは貴女だけよね

でも...明日までは家にいなさい

悪いんだけどこれは命令ね」

私も今までこんな風に

言った事は一度も無い

でも今回だけは

マテハが今にも飛び出しそうだったから


そしてマテハは苦虫を

潰す様な表情を一瞬見せた


「戦争したいの?

東の大国893(ヤクサン)と」

私は更に追い討ちをかけた

自国の村への虐殺行為なのは

あからさまだ

ゲスの様な理由だろう


「..............従順でも奴隷」

マテハが言いたいのは

村人の末路の事だった


「人はそんなに弱くないわ...!」

私とマテハの瞳がぶつかり合う


「....強かろうがなんだろうが

薬や暴力では人は壊れる」

マテハの口調に怒気が入り混じっている


「皆殺しにする覚悟ある?」

マテハは驚いている

出来る事なら私は女性としても

助けてあげたい

893国の女性の末路は

悲惨なものだった


「別に...893国を徹底的に

屠る気持ちがあるなら良いわ、

止めないわ

893国の性質上

先手必勝で真っさらに

滅ぼした方が良いのよ

報復が必ずあるわ

今回だけ助けて...というのは難儀ね

その報復の手段も苛烈かつ卑劣なのは

理解出来るわよね?」

マテハはコクっと頷いた


「ハツミ...今日は報告だけにしておく

辛くて悔しいけど....ね.....」

マテハの頰にツーっと涙が一雫伝った


「滅ぼす算段は必ずつける

明後日以降乗り込んで

現場を確かめて来て欲しい

貴女のその"天才"は必ず

貴女の為になる」

私は小さな背中を震わせる

マテハを抱き締めた


「...辛いよ!!!

苦しいよ!!!

なん..で!!!

女ってだけであんなに酷い目に

合わなければならないの!?」

マテハの幼い部分が泣いていた

頭では分かっている

マテハは絶対に

でも心がついて行くはずも無かった


「私が必ず893を滅びに導いて

"必要悪"の本当の意味を

教えてあげるから

授業料はゲスの命でね」

マテハは感情の赴くままに

叫んで泣いていた

私はマテハを更に強く抱き締めた

辛い時、苦しい時に

母がそうしてくれた様に

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