第2階 私の魔法
赤子になった私は、人質にされそうになっていた。
でも私のお姉ちゃんであるアカナは、身を挺して守ろうとしてくれたわ。
痛々しさと不自由さの残る右目に眼帯をつけて、更に杖を左手に持っていた。
それでも私に笑いかけていた、きっと辛さを胸に閉じ込めて・
ラブラビアは確実に真祖と推測したわ。
人間じみた容姿にあの攻撃の速度と力。
それに真相クラスと決定付ける、吸血鬼のエリートとも言うべき存在が行使する
凶悪な呪術という置き土産を置いていかれました。
私は笑顔の不得意な赤子になってしまうかもしれないわ
「むううううう」
アカナの右目と左足は、ハツミリフィの祭壇に祀られていた。
ハツミリフィは不死鳥の神、いわゆる四神の朱雀。
朱雀の力を持ってしても、ラブラビアの強力な呪いは解けなかった
それもそのはず、ラブラビア本人の魔力を激減させるか
この世界"ミリカンテア"を超えた力の介入がないと再生出来ないから。
解呪の行使自体は簡単だけど、呪いの媒体となった幾つかの世界が壊れる事になる。
ラブラビアは面倒な事に六百六十の異世界を媒体に呪いをかけている事が
私が秘密裏に解呪しようとした時に異世界が六百六十個震えた事で分かったわ。
もちろん解呪と共にラブラビアに強烈な副作用が跳ね返って来るのは明白なのだけど
生命と再生の強力な一柱である朱雀で手が出せない次元とすれば
その六百六十個の異世界は反動で半壊程度は免れず、弱い異世界なら木っ端微塵。
私はハナっからラブラビアの利き腕に相当する左半身を永久追放する算段だわ。
むしろアカナを傷付けられて、怒髪天極まりない気持ちで溢れているから
この方法を私自身に強く推奨したいわ。
ラブラビアの半身が失われば、魔法や呪術を行使する能力が著しく低下する。
真祖ゆえにどれだけ痛めつけても、ほぼ死ぬ事は無いし。
まず私と同一次元と言う事はありえないから、
ラブラビアは弱体化して初期魔法が使える程度に落ち込むと思う
これで、私が自由に動いていい年齢になった時の方針が決まったわ。
まず、ラブラビアを弱体化させる事。
次に、メイユールをラブラビアの目の前で抹殺する事。
今後の方針が決まったので、私はスヤスヤと寝てしまった
あの日から幾度と無く季節が通り過ぎ、もう私は三歳へと成長していた。
わりと自由に動ける事に感慨の涙を浮かべていた。
このところ、アカナが私と共にいない日が増えていった。
アカナは女王として対応に追われていたんだと思う、あの四人の。
私は兼ねてより創っていた四人の人間達。
即ち使い魔と言うべきか悩む、私のクローンとも呼べる
四人をこの世界に生み出す決意を決めていた。
私が生まれて初めて創った異世界、マスカリアに加えて
去年創造したマテハとマユナ、そして今年の春に創造したイムを
四姉妹として、この世界に転生させようと思っているわ。
人は世界を創造し、宇宙のゆりかごの中で海70%と大地30%の星を
燃える星で温め、その星の中で生まれるわ。
そこに時の流れを与え、私の血を世界に垂らすと私のクローンが出来る。
火の当て方と宇宙の星の配置によって、人の数と性別を選定出来る。
特に星の数が重要で、多ければ人数が多くなる
よって今回の宇宙には、温めるための星と一つの星しかないわ。
ーー次元移動
指をずらして発動させる。
ある程度人としての主体が完成しているため、
私は私の世界から四つの異世界が移動する感覚を味わったわ。
特に何もこそばゆいとかなかったけど実にあっさりしていたわね。
母に借りた人世界のお話では、この手の力は選ばれし美少女が
世界中の祈りを集めて命を賭して発動させるいわゆる高度な封印魔法であるか、
世界を混沌で満たした魔導の王、即ち魔王が人類の三分の一程度の犠牲を払って、
ようやく完成させる禁忌とされ、勇者が見つける頃には禁呪法として
固く固く封印されているとかのはずなのだけど。
私が使用魔法の場合はマッチの火がつく感覚に似ている。
【集然】だと感覚か魂、心? そのどれかで理解していたわ。
父に聞いても、知らないと言っていたわね。
手で世界をなぞると発動出来て、
ほんの少し指で空を切るだけでもいいわ。
物語の様な詠唱を一切必要しないし、特に指で無くてもいいわ。
眼球の動きとかね。
要するに私が思考できて、頰でも残っていれば。
世界に触れる事が出来るから発動可能で。
私の魔法は私の思考に大きく影響しているみたいで、
私は自ら使用する集然の解明もしてみたいと思っている。
私はアオナになる前から非力極まりなくて。
父の持つ短刀が重過ぎて、両手でさえも持てずに
父の片手の上に落としてしまう程に。
でも私は父とまともに剣を打ち合えるのは集然のおかげ。
私は父に勝つために、私だけの魔法である集然で【白亜剣】を創る。
この魔法は私だけにしか知らない、強さは一級品で。
父はオリハルコンという硬くて有名な魔法の金属の剣を
数本所持するけれど。父自身の本気の剣技に耐え切れずに
一本の武器で二撃しか放てず、他の武具に至っては一撃で砕けるわ。
そのオリハルコン製の剣を、白亜剣でケーキを切る様に斬り裂き
父に一撃を与えて勝利した私。
父はとても驚いていたわ、そしてよく頑張ったなと褒めてくれたの。
そしてにこやかに頭を撫でてくれたのを、今でも鮮明に覚えているわ。
オリハルコン製の剣をいともたやすく切断したことから、
私の白亜剣はおそらく最硬かつ軽い金属で出来ていると推測している。
もしくは私自身が潜在意識で白亜剣を保つ為に集然が自動的に私自身を
強化しているとも考えられるけれど。
そもそも白亜剣を持つという願い自体がその状態を引き起こしている
可能性は十分にあり得るはずで。
現に母は重い物を運ぶのが得意だけど、
それは重力軽減の魔法を唱えて運んでいるから。
母は毎回ちゃんと一字一句詠唱をしているわ。
そして私は僅かながら神性を持つけど
どの神様からも外れた全く異質なもの。
僅かでも神性を持つおかげで魔法学園Gloryに通えた事で、友達二人に出会えたわ。
女の子の友達であるハツミリフィ、男の子の友達であるハツミリムが
二人仲良く朱雀と玄武として新しい世界の神として元気にやっているというのは
私としては嬉しかった。
でも実際は二人の統治する世界が、
他の強い力を持った存在に蹂躙されようとしている現実を目の当たりにしているわ。
アカナが帰って来るまでまだまだ時間がある。
私は父と念話する事にする、母を通して。
「いきなりびっくりしたよ!?」
母はまごう事なき白金の美少女で一際輝くプラチナブロンドに
純白の澄み切った柔肌、私は母の肌を触った事があるけれど
ツルツルで瑞々しくスベスベだったわ。
その時、美の全てを兼ね備えていると私は思ったわ。
そんな母は【プラチナムフェアリー】に【ダイヤモンドハイエルフ】など
様々な別名で謳われて、女神かもと疑われている程の美しさ。
でも綺麗に半分神様で魔王の一柱でもあるわ。
ーー私声音
私は魂に刻まれた転生前のハツミリアの声を集然で創って喋る。
「ねぇお母さん、お父さんは?」
私は早く【メイユール】の名を父に報告したいわ。
「はい! 今代わりますね」
念話越しでも分かる母の微笑みは私の三年のぬくもりで包み込んでくれた様な気がしたわ。




